しかし、提督になるほどの男はめげません。
皆さん、彼を応援してください、
「おい!寝てんじゃねえよ」
厨房の奥で蹲って動かない艦娘を見つけ蹴りを入れてみた。
「ぎっ」
痛みに反応したのか、呻きやがった。
髪を掴んで顔を上げさせ確認すると<間宮>だった。
やつれて生気が失せているため、面影で判断するしかなかった。
「オラ、提督さまに面見せろって」
掴んだ髪を無理やり引っ張り上げる。
間宮の顔が歪み、濁り掛けた瞳がうっすらと潤むと滴が零れた。
「なんだぁ、艦娘が提督に逆らうのかぁ!あぁーー!」
間宮に向かって怒鳴ると彼女はビクりと身体を震わせた。
『・・・・ん』
唇がかすかに動き何かをつぶやいていた。
「オラ、さぼってんじゃねえ。飯作れってえ」
間宮の髪をひっ掴んだまま、シンクに目を向けて驚いた。
汚い、臭い。
「ああ、水道も止められてたか」
大本営で聞いていたのを思い出した。
(クソが、もっとうまくやりゃいいのによぉ)
このままだと俺が飯を食えねえ。
間宮も動きそうもない。
考えた末、シンクに溜まった調理道具を洗うことにした。
「くっそ、くせぇ。なんだよ、こびりついて落ちねえじゃねえか」
= = = = =
俺の尊い努力のおかげでシンクと調理器具が一応使えるようにできた。
「コイツに効くかな?」
こんなこともあろうかと<バケツ>はいくつか横流し品をクルマに積んできた。
この<間宮>に使って、飯を作らせることを考えたが、大丈夫か?
決めた。
「おい、これを飲んで、これを食え」
俺用に持ってきた濃厚流動食と羊羹を渡す。
間宮の反応は、鈍いままだった。
このままじゃ、埒が明かねえ。
彼女の鼻を摘まんで無理やり流動食を飲ませる。
「ゲェッヘ、うえっぷ」
咳込みながら、飲み込んだが暴れだした。
振り回す手を封じ、抑え込んで、包装紙を剥いた羊羹を口にねじ込んだ。
間宮をねじ伏せ馬乗りになった俺は、羊羹を食い終わるまで押し込み続けた。
バタバタと足をばたつかせるが、状況は変わらない。
「逆らうんじゃねえ。おらー、食いやがれ」
間宮がおとなしくなった。
「ふう、俺に逆らうな。次は、こんなもんじゃねえからな」
俺は立ち上がると制服を整える。
足元で泣きながら、モソモソと羊羹を食う間宮がいる。
「おい」
「・・・・」
「おい」
「・・・・」
「返事はっ!」
俺は、返事をしない間宮に蹴りを入れる。
『ぎゃっ』
間宮は小さく呻いただけだった。
俺は、再び間宮の髪を掴み上げると彼女は身体を小さく丸め抵抗する。
「いいか!これからお前は!め!し!を!つ!く!るんだ!」
耳元で叩きつけるように怒鳴りつける。
俺は、髪を掴んだ手を放し、姿勢をただし制服の埃を払う。
「そこに置いてある背嚢に米とカレーのルーが入っている。
これから、お前は、10倍に薄めた粥とカレー汁を作って、
食堂に居る全員に食わせろ。
動けるものには手伝わせろ。
提督としての俺様の命令だ。
反抗は許さん。
その時は、解体するから、覚えとけ!
ボサっとしてんじゃねぇ!
とっとと働け、グズ!」
言い放った俺は、丸まったままの間宮を踏みつけ食堂を後にした。
うっぷん晴らしにちょうどいい。
間宮さん、かわいそうですね。
まだまだ試練は続きます。