ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

21 / 111
外での仕事を終えた提督。

苦労人です。
野望をもって頑張ります。

彼を応援してくださいね。



第21話 居場所

鎮守府に戻ってきたときには、すっかり日が落ちていた。

 

「表向きには、灯火管制って感じだな」

 

真っ暗な鎮守府の駐車場にクルマを停める。

玄関は施錠するように指示しておいたので、通用口に向かう。

 

通用口横の階段を上がるとすぐに執務室がある。

この間取りは、不用心でもあるんだが、ここで陸戦になるくらいだと終わりだしな。

 

「ただいま」

おっと、柄にもなく挨拶をしてしまったか。

 

部屋の灯りはついていなかった。

「勤務時間外か、書類が溜まっているだろうな」

灯りをつけて、書類の処理を始める。

 

(眼鏡、頑張ったな。

 よしよし、スケベスカートを新調してやろう)

 

一通り書類を処理する。

明日の午前中には、追い付くだろう。

 

不道徳な俺は、晩酌を始める。

町で買ってきた缶ビールを執務机の上に置く。

今日はツナ缶を買っておいた。

蓋を取り、多めのマヨネーズと醤油を一垂らし。

 

兵学校時代を思い出す。

兵学校で手当てのほとんどを仕送りをしていた俺は、支給直前に困窮を毎月繰り返していた。

そんな時、必須アイテムが缶詰だ。

保存が利くので、酒保の放出品を安く手に入れておく。

表示されている賞味期限から2年過ぎていても大丈夫だ。

 

突然、両親が亡くなり、天涯孤独になった今となっては、自分のために生きようと思うようになっている。

 

艦娘が居て、俺は、そいつらを化物にけしかける役目を引き受けている。

 

「誰も死なないのが一番なんだがなぁ」

 

両親が死んだことは、悲しくなかった。

物心ついた時から親孝行を心がけて育ったつもりだったが、両親はそうは感じていなかった。

仕送りが少ないだの、帰りもしない実家に食費を入れろだの、金しか見えていなかったようだ。

それが判った時点で、冷めてしまった。

 

運よく鎮守府(ここ)が支配できるようになった。

配置転換まで1年は時間がある。

 

 = = = = =

 

缶ビール(発泡酒)を3本開けたところで、眠くなってきた。

昼間のトレーニングが、心地よい疲労感をもたらしている。

 

私室に入って着替えるとふと何か香っているような確信のない錯覚をしている。

 

「おかしいな、部屋の匂いが違うような」

 

それより眠気の方を優先して、布団に入る。

昨日、眼鏡が寝ていたせいか、ほんのりメスの匂いがするようなしないような。

 

灯りを消して、眠りに落ちかけたその時、異変に気が付いた。

窓を背景に人影があった。

シルエットで単なる人間じゃない、艦娘だ。

 

一瞬で導き出された答えは「死」。

おそらく入り口横のクローゼットに隠れていたのだろう。

わざわざ気配を消して、今ここに立っているということ。

血の気が引くのを感じた。

 

その時、その影は、布団の上からのしかかってきた。

身動きが取れない。

次の瞬間、布団が剥ぎ取られ、腹に手がかかる。

腹を破かれ、はらわたを引きずり出されるところまで想像してしまった。

仰向けの俺にマウントポジションで見下ろす艦娘。

 

「どうした?

 ()るなら()れよ」

俺は、精一杯の強がりを言い放つ。

灯りがついていれば、はっきりわかっただろう。

たぶん、真っ青な泣きそうな顔だと自信があった。

 

「慣れていないのでな、痛かったら言ってくれ」

(ひと思いに殺せよ)

 

その影は、上から身体をずらし、横に寄り添うように寝ころぶと少し躊躇していた。

(いよいよか。

 あんまりいい人生ではなかったなぁ)

 

影がかぶさってきた。

「自覚はあまりないんだが、重かったら、柔らかさに免じて許してほしい」

「お、おい。

 何のつもりだ?」

「提督に逆らうつもりはない。

 しかし、皆が不本意にその身を弄ばれるのも見過ごすわけにもいかない。

 わたしが代表して、満足させるように奉仕する」

その時、彼女の攻撃に対抗すべく、俺の主砲が対空射撃の準備ができていた。




きましたわー。

とうとう、ここまできました。

R15でどこまでいけるか。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。