彼の野望と向きが同じはずですが。
彼を応援してくださいね。
スモークチーズを肴にウイスキーを嗜んでいた。
眼鏡が出て行ったあと、床にモップを掛けてすっきりした。
今から、土足禁止にする。
スリッパを入り口に置いておいた。
来客の頻度はどうなんだろう。
スリッパの数は足りるだろうか?
そんなどうでもいいことに気が向くのは、余裕ができたおかげだな。
≪コンコン≫
「入れ」
「失礼します」
駆逐艦が入ってきた。
「おう、どうした?」
「あ、お酒」
「なんだ、お前も飲むか?」
「え!・・・・」
「冗談だ。
子供が飲むもんじゃない」
「わたし、そんなに子供じゃありません!」
「クヒヒ、ムキになるのが、子供なんだよ」
「むーーーー」
この駆逐艦は、俺の周りにいなかったタイプだ。
「で?文句があるんだったら、解体するぞ」
「ち、違います!」
「じゃあ、何だ」
「あ、あの。
・・・・あの、・・・・すー。
スカート大事にします!失礼します!」
≪バタンッ≫
スカートを繕ってやった駆逐艦は、勢いよく飛び出していった。
「廊下を走るんじゃないぞぉ」
≪コンコン≫
(忘れものか?)
「入れ」
「失礼します」
「なんだ眼鏡か」
「お言葉ですが、扱いがぞんざいじゃないですか?」
「そうか。
じゃあ、念入りに扱ってやるぞ、キヒヒ」
「ヒッ!」
胸の前で腕を交差させ、身をよじる眼鏡。
(コイツ、起きてるときは、ほんとに弄りがいがあるな)
≪コンコン≫
(誰?)
「入れ」
「失礼する」
戦艦だ。
「要件は?」
「特にない。
貴様の気が向けば、好きにするといい」
「・・・・はい?」
≪コンコン≫
(なんなんだ、いったい)
「入れ」
「失礼します」
「「間宮さん」」
間宮だ。
「なんだ?」
「あ、あの・・」
間宮は、戦艦と眼鏡に意識を向けた。
「気にするな。
別に俺が呼んだわけじゃない。
で、お前の要件はなんだ?」
なぜか戦艦と眼鏡の視線が刺々しくなったような錯覚がする。
「あ、あの、おつまみを作ってみました。
材料は、あ、あまりものです。
けど、捨てるのも勿体ないし、わたしが
ちょっと多いなって、提督とご一緒させていただいたらなぁって思って。
あ、自分の分のお酒はあるんですよ。
ですから、その、良かったら」
間宮の説明は、言い訳そのものだった。
ツッコミどころが多々あるが、何を企んでいるのやら。
「そうか、じゃあ、貰おうか。
そうだな、戦艦、眼鏡、お前たちもどうだ?」
「あ、あの」
間宮は戸惑いだした。
「どうした?仲間が一緒だと何か都合が悪いのか」
やっぱり何か企んでいるのか?
「提督、お時間ください。
長門さんが加わるなら、量が足りませんから」
間宮の答えはいたって順当なものだった。
「な、わたしは、そんないやしんぼじゃないぞ」
「まあ、柄杓で飯を食うからな」
「アレは貴様の指示だろう」
戦艦が真っ赤になった。
今更恥ずかしがることもないだろ。
さんざん俺を睨んでいたくせに。
= = = = =
間宮が追加のおつまみを作ってきた。
俺、間宮、戦艦、眼鏡の4人という妙な面子で酒盛りが始まった。
眼鏡がうるさいので、仕方なく狭い私室のほうに場所を移した。
野菜の皮のきんぴら、キャベツの芯の浅漬け、炒ったかぼちゃの種、俺の缶詰。
間宮の味付けは、絶品だった。
おまけに艦娘は燃料を摂取することもできるだけあって、たいして酔いもせず、ウイスキーの瓶が空になった。
さあ、酒盛りが始まってしまいました。
艦娘がどんな酔い方をするでしょうか?