このまま、酔わせれば、提督の野望に一歩近づくかも。
彼を応援してくださいね。
「うん、うまい酒だ」
「とっておきなんですよ」
「どこにあったんですか」
戦艦は酒を褒め、間宮は自慢し、眼鏡は出所を尋ねた。
俺は、酔いつぶれる直前だった。
今、かろうじて意識があるが、明日の朝は、記憶が飛んでいると思う。
「てーとくは意地悪れす」
「そうだろ。
俺はブラックだからな」
「貴様は艦娘をどょう思っているんだ」
「俺の欲望の捌け口だぞ、クヒヒ」
「どうして可愛がってくれないんでしゅ」
「うーん、ビッチは何をしてほしいんだー」
= = = = =
息苦しさに目が覚めた。
意識が飛んで畳の上でそのまま寝ていた。
私室には、一段高く、下に収納スペースがある畳床がある。
外はまだ暗い。
窓から星が見える。
うん?
何やら弾力のあるものが、身体の上にのしかかってきている。
「うん、どうした、起きたのか?」
「せ、戦艦。
お前がどうして俺の頭を抱えているんだ」
「仕方ないだろ。
間宮と大淀が、お前の両脇に居るんだから」
「え゛」
その言葉はにわかに信じがたかったが、両腕が全く動かないことではっきりした。
酒臭い。
彼女らは、酒を飲むこと自体は、人間よりはるかに分解する能力が高い。
しかし、酔うことに関しては、人間と変わりなかった。
おまけに酒癖が悪いというか、このまま捻られでもしたら、骨ごと捻じ切られてしまうことさえありそうだ。
まずは、身体から引き離そう。
「戦艦、もう部屋に戻ったらどうだ?」
「ダーメ。
わたしがいなくなったら、このふたりに手を出すつもりだろう。
そうはいかない」
「そうだな、心配は解った。
じゃあ、このふたりを部屋に連れて行ってもらえないか」
「イーヤ。
可愛い子を起こすのは、不本意だから、拒否する」
「このままだと、風邪をひくかもしれないから」
「う、それは正論だな」
「じゃあ」
「うん、じゃあ布団をかぶろう」
戦艦は、掛け布団をまとって、覆いかぶさってきた。
「これなら寒くないだろう」
「いやいや、これは解決になっていないぞ」
「うるさい。
知っているぞ。
貴様、さっきから、ここに凶器を準備して、機会をうかがっているだろう」
戦艦は酔っている。
それもいい酔い方じゃないと心のどこかで警鐘が鳴っていた。
「提督、間宮さんのことをイジメないでくれ、カワイソーなのー」
戦艦は泣き出した。
おいおい泣き上戸かよ。
「提督、ありがとうございます」
「あ、間宮、起きたか。
風邪を引く前に部屋に戻れ」
「・・・・はい」
間宮はモソモソと布団から出る。
「きゃぁぁ、こんなに寒いなんて、死んでしましますぅ」
わざとらしい小芝居のあと、布団に潜り込んでくる。
「提督、凍え死んでしまいます。
温めてくださいね」
コイツも酔ってやがる。
腕に纏わりつく上に身体を擦りつけてくる。
「てーとく、何をしてやがりゅんです」
ダメだ、呂律も回っちゃいない。
「悪い手は、わたしの脚で挟んでメッってします」
眼鏡は手を太腿で挟みやがる。
「貴様、ふたりに何をしている。
そんなヤツは折檻だ」
戦艦が頭から布団に潜り込んできた。
「「わたしも」」
「お、重い」
3人がのしかかってくるとさすがに重い。
「「「重くなーい!」」」
「あ、敵戦艦の主砲発見!」
戦艦が言ってはダメなこと口走った。
「・・・・」
「・・・・」
「「「提督?」」」
3人の重さで息が吸えなくなっていた俺は、その言葉が聞こえたあたりで意識を手放していた。
酔った勢いでしょうか、それとも酔わなくても?