ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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3人の包囲網にはめられた提督。

ハメてはいませんが、不機嫌になる艦娘

彼を応援してくださいね。


第31話 誤解を嫌がらない

「くっそー、記憶がねぇ」

 

「き、貴様ー、わたしに何をしたー!」

「何をしたのかもな」

「わ、わたしは覚えていないんだぞー。

 どうしてくれるー!」

 

「て、てーとく。

 せ、責任とってください!」

「なんだよ、奴隷としてこき使って欲しいのかぁ?」

 

「提督。

 あ、あの、きちんとできていましたでしょうか」

「全く記憶がない」

 

艦娘たちが朝食を終えた後に執務室に押しかけてきた。

 

記憶がないからどうしようもない。

 

艦娘たちも記憶がないようだ。

具体的に説明しろと言ってもはぐらかす。

 

 = = = = =

 

「なあ、眼鏡」

「何でしょうか?」

 

「お前は、かろうじて覚えているんじゃないのか?」

「・・・・だったら、責任とってくれるんですか?」

「何すればいいんだ?」

「そ、それは、その・・・・」

眼鏡は顔を逸らしたまま、動かなくなった。

 

「分かった。

 俺のできることなら、やってやろう。

 で、どうなったんだ?」

「あ、あの。

 ・・・・そ、それはですね」

「それは?」

「それは・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

「眼鏡、お前も覚えていないんだな」

「ギクッ、ヒュッヒュ、ヒュー」

眼鏡の奴、口笛が吹けていない。

 

「・・・・めーがーねー」

眼鏡は、事務用の机を執務室に持ち込んでいる。

その机は執務机に並べて置いている。

ちょっと手を伸ばすと眼鏡に手が届く。

で、俺はたぶん嘘を吐いた眼鏡の髪の毛を掴む。

 

これは悪手だと知っている。

しかし、俺みたいな心の狭い人間が艦娘たちの信頼を得られるわけがない。

そうなると権力、恐怖を植え付けるかで、抗う気持ちを削いでおかないと我が身が危ない。

我ながら、見苦しい限りだ。

 

「い、痛い。

 すみません、すみません。

 覚えていません。

 で、でも、そ、その、てーとく」

言葉少なに身体を縮こませたままだった。

 

「バーカ、嘘を吐くなら、もっとうまくやれ。

 まあ、艦娘(オマエ)らは俺みたいなブラックじゃねえからな。

 何をどうすればいいかわからんだろうな」

掴む手を放し、眼鏡の頭を小突く。

 

頭を押さえ、恨めしそうに睨んでくる眼鏡。

「そうそう、その眼だ。

 美人だと、様になるから、得だよな」

軽口を叩いてはみせたが、巡洋艦(コイツ)の主砲だと、俺は半身が裂け爆ぜるだろう。

 

「う、うーーー、そんなお世辞に誤魔化されませんから」

口角をヒクヒクさせる。

見方によっては、にやけているように見えた。

 

「・・・・眼鏡、お前はもうこの部屋で仕事しなくていいぞ」

「え!」

「ほら、アレだ。

 これから、俺は艦娘をとっかえひっかえ連れ込む。

 その時にお前が仕事してっと、邪魔なんだよ」

言ってしまった。

どうして、こんなことを言ったのだろう。

コイツと一緒にしてしまっても気を使う必要もないのに、悟られてはいけない。

悟られてはいけない。

 

「おっと、間違いだったな。

 お前も一緒にすればいいんだ」

そうだ、俺を憎め。

なれ合いじゃ無力な人間といつまでもやって行けない。

 

人間は、特に男は、概ね我儘だ、俺みたいに。

近隣のイケメンみたいなヤツはそうそういない。

提督の身辺調査をして、大本営には報告している。

度が過ぎると配置転換が起きる。

 

ただ、人格だけで務まらないのも事実。

だから、俺でも提督として着任できた。

元帥や中将は、ほんと甘ちゃんだ。

人を見る目がない。

 

 = = = = =

 

眼鏡は、昼飯を食いに行った。

俺は、私室で針仕事をしていた。

ここの艦娘(アイツ)らには秘密にしている。

知られたら、舐められるからな。

「ふふ、悪ガキどもめ。

 おっさんを舐めるんじゃねえぞ。

 うーん、中尉の分も作らないとな。

 あいつ、なんでか、俺が構わないと中将に言いつけるっていうもんな。

 年頃の女の子だったら、手製の手鏡入れとかはどうかな?」

せっせと運針する提督には、威厳もカッコよさもなかった。




執務室攻防戦は、停戦です。

鎮守府機能再開に向けて動き始めす。

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