ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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腕がしびれる提督

早速反逆でしょうか。

彼を応援してくださいね。


第35話 初めての食堂なるか?

「てーとくは、この鎮守府の支配者なんですよ」

「そうだ。

 で、お前が俺に指図してんだよ」

眼鏡の口調は、わかりやすかった。

俺がある状態だったとき、周りから叱咤されたときのそれ。

 

「ここに来てから、3食しか食べていないじゃないですか」

「晩飯はここで食ってるだろ」

「お食事の量が全然足りていないじゃないですか!

 このままじゃ、わたしたちより弱ってしまいます」

「いいじゃねぇか。

 お前らには好都合だろ」

「やっぱり、わたしはてーとくが嫌いです!

 失礼します!」

眼鏡は、執務室を飛び出していった。

 

「うーん、まずいなぁ。

 懐かれ始めたか?」

 

 = = = = =

 

「大淀さん、どうしたの?顔色が悪いですよ。

 お粥にしますか?」

「そ、そうですね。

 お粥がいいかも」

「じゃあ、作り「長門さんたちとご一緒します」・・・・はい」

 

「大淀、大丈夫か?」

「長門さん、ありがとうございます」

 

 = = = = =

 

「あらあら、若旦那。

 お久しぶりです」

とある施設の玄関先で、若旦那をご婦人が出迎えていた。

「すみません、零細企業は休みなしですから」

「奥様に来ていただいて、助かっておりますから」

若旦那は、寄り道をしていた。

「中佐がよろしくと」

「ありがとうございます。

 あの方には感謝しきれません。

 子供たちも待っていますから」

「はい、気にかけておいででした。

 ほんと、自分ではブラックと自称しているというのに」

「うふふ、お言葉を借りれば【騙されているんだ】ですってね」

2人の表情は、共通の知り合いの話題ということで穏やかだった。

 

 = = = = =

 

「風呂をどうするかなぁ」

思わずひとりごちていた。

普通は、時間割りにしておけば使える。

ただ、それをすると遠征やら、大破した連中の入渠の妨げになる。

 

「鎮守府の運用効率と損耗率を落とすわけにはいかんしなぁ」

そう、効率重視でなければ、評価が悪くなる。

裏ルートを確保すれば、評価を維持できるが、それを追い詰めるヤツが居た。

俺だ。

手塩にかけた弟子もいる。

自分の首を絞めている。

 

「間抜けだなぁ」

ショットグラスにウイスキーを注ぐ。

軽く呷る。

 

「せっかくブラックを自称しているのにな。

 第3者の評価が絡むと意外と難しいか。

 俺は、存外、知恵が回らない、はぁ、ダメだなぁ」

俺は、努力は惜しまない人間だと思う。

だが、思い通りにならないことがある。

たぶん基本的に頭が悪い。

だから、悪知恵が幼稚なレベルで限界を迎える。

 

俺が隠し事をすると必ず見破られてしまう。

中尉、眼鏡、たぶん間宮()、ガキども、元帥、中将・・・・

ああーーーー、接触のあった関係者全部じゃねえか。

駆逐艦も懐いてくるし、あの軍艦も気づいているかも。

 

「くっそー、俺はブラックなんだぞ。

 根っからの悪人なんだぞ。

 ・・・・そっか、見事に騙されているってわけだ、アハハハ、はぁー」

俺の笑いは、一瞬で勢いを失い、弱いものになった。

 

 = = = = =

 

「間宮さん、お代わりを」

赤城さんの当たり前のような言葉。

 

大食いさんたちと一緒にお粥を食べているつもりだった。

違う。

レベルが違う。

彼女たちの食事の様を見ていると食欲がなくなっていく。

見ているだけでおなか一杯。

 

なんとなくわかった。

てーとくがこの状況を設定したのは、補給の状況を考慮したからだ。

判っていなかった自分が情けなかった。

提督(かれ)の見せかけの言動に騙されていた。

感じていた違和感は、これだったんだ。

 

わたしはどうしたいんだろう。




種明かしでしょうか?

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