ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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よくよく考えると周りの娘に勝てない提督

野望がどんどん遠のいているんじゃないか

彼を応援してくださいね。


第38話 なぜか同行する女性士官

「買ってぇ、買ってぇ、服買ってぇ」

「ああ、うるさい。

 自分で好きに買えよ」

「中佐の財布にダメージがあるからいいんじゃないですか」

「貴官、いいたい放題だな」

中尉のおねだりを撥ねつける提督。

 

「ねぇー、ふたりもそう思うでしょ?」

「わ、わたしは、てーとくの鎮守府に所属している艦娘なだけで」

「わたしも任務ですから」

中尉の言葉にためらいで返す眼鏡と間宮。

 

「いいのかなぁ」

キシシと笑いながら艦娘に近寄る中尉。

二人だけに聞こえる小声で一言。

『彼、推しに弱いからね』

 

中尉は艦娘から離れると提督と腕を組んでみせる。

「中佐、おっと提督。

 ささ、鎮守府巡りに行きましょ!

 助手席はわたしが座るね」

「「な!」」

「ついてくるのかよ」

提督は、中将の娘の我儘に付き合うしかなかった。

 

 = = = = =

 

店を後にして軍用車に乗り込む4人。

 

「中佐、ささ、シフトレバーを出しなさい」

「貴官、口だけはいっぱしになってきたな」

「ええー、お口にいっぱい出すの?

 クルマが揺れたら、喉詰まっちゃうよ」

俺は、中尉の頭を鷲掴みにする。

小顔の彼女の頭はちょうどいい具合に掴める。

「痛い痛い、ごめんなさい、もう言いません」

「そういう会話は、中将が見込んだ男と夜中にしろ」

最初の鎮守府に向けて出発する。

 

「あの、てーとく。

 中尉さんとはどういうご関係なんですか?」

後部座席の眼鏡が我慢しきれず聞いてきた。

「別に「わたしが泣き寝入りする相手かな?」・・お前とんでもないことを言うな」

中尉はいつも以上にとんでもないことを口走る。

 

「何なら、これから、ラブホに行って試しますか?」

「お前、俺が銃殺になるのがそんなに見たいのか」

「もしかしたら、銃殺にならないかもよ」

「ハイリスクなことを敢えてしねえといけない理由が見つからねえよ」

 

最初の鎮守府についた。

飛行場もあるから、相当な規模だ。

ここの提督は、いうなればエリート。

フリーだったら、中尉の婿筆頭だったろう。

 

「小官が受付に行ってきます!」

軽く敬礼した中尉が外に飛び出していき、憲兵に話しかけている。

ゆるゆるとクルマを寄せていくと中尉が戻ってきた。

「入って右奥の建物だそうです」

鉄門が開き始めた。

憲兵が手招きするので、クルマを中に滑りこませる。

小銃を奉げ筒状態で不動の憲兵に対して、敬礼をし、前を通過する。

 

「苦手だな」

「小官も」

「貴官はこういうところが務まる士官に嫁ぐんじゃないのか?」

「うーん、それは、あんまり考えたくない」

女の考えていることはよくわからん。

クルマを指定された建物横の駐車場に停める。

 

ルームミラーに緊張する艦娘ふたりが映っていた。

「挨拶に来ただけだ。

 緊張するようなことじゃない」

何気なく声を掛けてしまった。

「中佐、優しいですねぇ」

中尉がすかさずツッコミを入れてくる。

 

 = = = = =

 

建物の受付に話しをすると部屋に通された。

応接室だった。

規模が大きいと応接室も一つじゃなかった。

執務室に応接セットを置いている我が鎮守府(ウチ)とは大違い。

 

しばらくするとコーヒーが運ばれてきた。

ここの間宮だ。

 

「どうぞ」

「ありがとう」

「他の方は、ワゴンを置いていきますので」

ここの間宮は、小さく会釈すると部屋を出て行った。

 

今、ソファに座っているのは俺だけ。

他の3人は、後ろに立っていた。

この場合、ここの提督に促されるまで、座らない方が無難なのだ。

縦社会の堅苦しいところ。

 

コーヒーを半分ほど飲んだところでドアが開いた。

「お待たせした。

 わたしが、当鎮守府の司令を務める。

 あー、お噂はかねがね」

気さくな笑顔で右手を差し出してくるイケメン提督。

俺は、敬礼をした後、握手に応じた。

 

将校クラブでは、体操服上衣で階級正確にわからなかった。

准将は、中佐より2階級上。

俺が特進しないと届かない階級だ。

 

「あ、お嬢さま。

 気が付きませんでした。

 どうぞお掛けください」

中尉に気が付いた提督は、慌てて席を勧めるのだった。




さあ、一癖あるキャラになりました。

中尉はこれからです。

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