ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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影響力のある中尉

他の間宮と初めて出合った間宮。

彼を応援してくださいね。


第39話 ワイロの使い方

「本日のご用は何でしょうか?」

爽やかさが眩しいイケメン提督。

相対的に俺の黒さが目立ってくる。

 

「これまで哨戒を代行いただいて感謝しています。

 実はささやかですが、砂糖を40キロを持参しました」

「砂糖ですか、それは助かります。

 甘いものは、艦娘(かのじょ)たちへのご褒美ですからね」

さすがイケメン提督。

艦娘たちへの配慮に余裕があり過ぎる。

 

「准将のご配慮、小官も見習いたい。

 どうでしょうか、もう10キロ」

「この時期、どこも砂糖は貴重品。

 ウチにそんなに回してもらうわけには」

「たまたま物資がだぶついたので、所帯の大きいところで使っていただく方が良いでしょう」

嘘を言う時に俺の舌は、数枚になっているのだろう。

滞ることなくよく回る。

 

「提督、ちょっと早いが、昼食は、いかがですか。

 ウチの間宮の腕は、ちょっとしたものですよ。

 おっと、そちらの間宮さんと比べるつもりはありませんよ」

「お言葉に甘えます。

 准将、階級でお願いいたします。

 日が浅いので、提督と呼ばれるとむず痒いものです」

飯を勧めてくれたので、快諾する。

中尉が脇腹をつついてくる。

「中尉は、どうされます?」

お嬢さま(・・・・)は、何か言いたいらしい。

「中佐、隣の席は?」

「貴官の指定席ですよ」

第三者がいると中尉とのやり取りはやりづらい。

 

「ほー、噂も当てになりませんね」

「准将、それはどんな噂でしょう?」

イケメン提督の言葉に中尉が少しムッとする。

 

「失礼を承知で申しますと【男嫌い】と」

「フフフ、そうですよ。

 小官は男嫌いです」

鈍感な水兵がいても気づくだろうあからさまな腹の探り合い。

 

 = = = = =

 

食堂の隣にある瀟洒な部屋に通された。

元帥の鞄持ちをしていたころ、地区拠点の鎮守府で見かけた記憶があった。

要人をもてなす来賓席スペースだ。

俺が中佐だから、中尉が居るからだろう。

 

「准将、ウチの艦娘たちも食事をさせたいんですが」

「彼女たちは、食堂で好きなものを摂って(・・・)くれるといい」

イケメン提督の意外な言葉。

(こいつ、人間と艦娘を区別してやがる)

 

「ねえねえ、大淀、間宮、わたしと一緒に食事(・・)しようね」

男前だ。

この娘、昔からそうだ。

中将にまっすぐに育てられた。

ある出来事でなおさら、彼女はまっすぐに育った。

俺には眩しい存在。

 

「わたしは中尉ですから。

 中将と違いますので、特別扱いは無用です」

「・・お嬢さまが、そうおっしゃるなら」

 

 = = = = =

 

「A定食4つです」

にっこりとここの間宮がカウンターに並べてくれた。

「旨そうだ」

「こういうのって鎮守府ごとにおいしいですよねぇ」

中尉が相槌を打ってくる。

「「・・・・」」

ウチのふたりは、緊張していた。

 

イケメン提督の表情は微妙だった。

気のせいか、秘書艦が寂しそうにしている。

「提督、定食です」

「ありがとう。

 うん、旨そうだ」

トレーを受け取るイケメン提督。

 

≪≪いただきまーす≫≫

まだ混雑する前の食堂の一角で食事を始める。

提督の傍らに秘書艦が控えていた。

彼女は、後で食事を摂る(・・)ということだった。

 

「ここは設備が充実していて、維持管理が大変でしょうね」

つい社交辞令を口にしてしまう。

 

「いえいえ、みんなが手伝ってくれるおかげでなんとか維持できてます」

中尉が距離を置いている相手は、あちら側(・・・・)が多い。

その手の人種は、俺のそれ(・・・・)とも違う。

 

食事は普通に美味かったが、会話は盛り上がらなかった。

 

 = = = = =

 

「ごちそうさまでした」

「中佐、おいしかったね」

「ああ、間宮は、どこでも一流だからな」

中尉は、俺の気持ちを知っている。

情報部に居た頃が懐かしい。

あの時は人に気を使う必要がなかった。

それが懐かしい。

 

「准将、そのうち演習をお願いしたい」

「いいですよ。

 ウチの艦娘たちは手ごわいですよ」

「存じています。

 お手柔らかに」

 

交わした握手は、出合った時と微妙に異なっていた。




こっちの間宮は、面識がありませんでした。

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