ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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イケメンと並ぶと見劣りする提督

実は、違っていたり。

彼を応援してくださいね


第40話 転がす先の・・・

「イケメンの元で働くって、やりがいあるだろうな」

「「・・・・」」

 

「中佐、わざとらしい」

「そうか?俺にモノ扱いされるのとは格段の扱いだろ」

 

次の鎮守府に向かってクルマを転がしていく。

工作艦は拾いものだ。

軍用車(ポンコツ)の調子がいい。

「工作艦は、何で喜ぶかなぁ」

リトルシガーをふかしながら、つい独り言をこぼした、らしい。

 

「中佐、後ろのふたりが睨んでますよ」

「なんで?」

「知りません。

 知りませんけど、なんとなくわかります」

「なんだよ。

 貴官、時々意味ありげに意味不明なことをいうな」

 

中尉まで睨みだした。

 

「これがイケメンとの差だな、キヒヒ」

茶化すように笑ったのマズかったのか。

 

中尉がホルスターに手を掛けた。

眼鏡が艤装を展開する。

 

「ダメです!!」

間宮が何を思ったかシート越しに抱きついてきた。

ハンドルから手が引き離される。

目の前にガードレール、その奥に大海原。

 

 = = = = =

 

「気をつけろ、ボケ」

後ろで小さくなっている間宮をなじった。

「運転中だろ、海へダイブさせるつもりか!」

「・・・・」

縮こまった間宮は、何も言い返してこなかった。

 

「中佐、間宮は悪くないから」

「てーとく、わたしも反省してます」

中尉は間宮を庇い、眼鏡はやり過ぎを反省した。

 

「きっちり反省しろ。

 お前らが死んだら、周りが悲しむだろうが。

 そういうことを考えろ!」

「「「はぃ」」」

3人揃って反省しているようだ。

 

「判ればいい。

 ったく、躾しなおす必要があるな」

追い打ちの脅しをかける。

部下ではない中尉はともかく艦娘はビビっているだろう。

 

・・・・ルームミラーには、奇妙な行動をするふたりが映る。

頬を染め、俺と視線が合っては、目を伏せ身を捩るふたり。

助手席の中尉と言えば、首を傾げて覗き込んでくる。

3人の不可解な行動は、鎮守府に着くまで続いた。

 

 = = = = =

 

「こっちもデカいんだよな」

「大きいの?」

「元々の造船工廠があるからな。

 護衛艦と・・・・貴官、中将が悲しむぞ」

中尉は、てへぺろとあざとい仕草の後に、助手席を飛び出していった。

 

「中尉殿はかわいいですね」

「どなたかと結婚されるんですよね?」

中尉への興味が膨らんでいっているようだ。

「そうだなぁ。

 可愛いんだから、早くいい男を捕まえろって言ってるんだがな。

 中将に孫の顔を見せて安心させてやれとかも」

ハンドルに顎を載せて、警備員と話をしている中尉を眺めてながら、つぶやいた。

 

「中佐、入って右が鎮守府です。

 って、知ってましたよね」

「ああ、まだボケる歳じゃないからな」

「そうですか。

 すぐにおじいちゃんになっちゃいますよ」

「貴官、本当のことを言うな」

ふたりのやり取りを見ていた艦娘は、自分たちの知らないつながりがあることを痛感していた。

 

 = = = = =

 

造船所の一部を艦娘用に改装された鎮守府。

設備は若干古いものの作業者用の施設を増設、流用することで艦娘たちにも過ごしやすくなっていた。

司令部用の建物は、地上は資材倉庫を改造し、窓が少ない。

主要部分は地下に建設され深海棲艦の強襲に耐えるほど強化されていた。

強化基準は、バンカーバスターの初撃に耐えるようにと要求され、そして実施された。

 

鎮守府側に提督と憲兵以外の男性は入れないという不文律があるが、艦娘たちが工廠側に立ち入っても咎められない。

 

他の鎮守府に比べて、寿退艦の多い鎮守府かもしれない。

 

 = = = = =

 

「中佐」

食器を洗う手を止めて、つぶやく間宮がいた。




鎮守府巡り、二ヵ所目です。

ここは、元々民間企業の造船所で、鎮守府が併設された後も引き続き
造船所として、稼働しています。

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