わけのわからない中尉。
彼を応援してくださいね。
軍用車を降りた中尉の開口一番。
「中佐の鎮守府って、思ってたよりボロい」
中尉は俺に関わることは、歯に衣を着せない。
「本当のこと言うなよ。
先任の横領が深刻だったんだからな。
俺が厨房と風呂を掃除したくらいだ」
中尉の目つきがジトッとなった。
「どうしてお風呂優先なんですか?」
「ここの連中が汚くて臭かったんだぞ。
洗濯機も売られて無くなってたから、俺が買う羽目になったし」
「なんだかんだ言って、艦娘ちゃんたちを大事にするのは変わってませんね」
中尉が、またわけのわからないことを言い出した。
「何言ってんだ、殴る蹴る、罵声を浴びせ放題だ。
本番は、これからだ、これから。
あんなことやこんなこと、色々楽しませて貰わねえとな、キヒヒ」
「少将の鎮守府と同じようなことなんでしょ?」
「よき理解者だな」
「はぁぁーーーー。
まあね、わたしとしては、それくらいわからないとね」
中尉が大きなため息の後、自慢げにフンスと鼻を鳴らす。
「何なら中尉にもさせたり、してやろうか、クヒヒ」
「え、そんな」
脅しが効いたのか、中尉は怯えたように縮こまって、頬を染めている。
「中佐、ケガをするプレイだけは、やめてね」
「なんだ、プレイって。
される側が同意した和姦みたいに言うな」
中尉とのこの手の話は、どこかズレて困る。
「早速食堂に案内するわ」
俺は先頭をを歩き出す。
「小官は、提督の私室を希望するであります」
中尉は姿勢を正し敬礼をしながら言い放った。
「あー、私室はなぁ。
窓ガラスが割れてるし、まだ手付かずでな」
「ふーん。
そんなに見られたくないんですね」
上目遣いと言えばかわいいが、中尉の場合、下から睨みつけてくる。
「なぜそうなる?
まあいいか、今更何かが変わるわけじゃないしな。
間宮、夕飯の用意をしてくれ」
「提督も召し上がるんですか?」
指示された間宮が、不安そうに聞いてくる。
「客人が来たのに俺が食わないで済ますわけねえだろ。
・・・・違うか、俺がいない方が団らんになイッテーーーーッ!!」
言い終わる前に中尉が足の甲を踏みつけてきた。
「何すんだ!
お前、ローヒールでも痛いわ」
「今すぐ間宮に謝れ!
鈍感にもほどがあるわ!」
これほど意味不明の言いがかりは、初めてだった。
大人げなくも流せなかった。
「お前に何が判るんだ。
こいつらは、艦娘ってだけで命がけで戦わされるんだぞ。
それをいとも簡単に命令するのが提督だ。
今それが俺っていう最低のゲスがやってるんだ。
顔を合わせず、声も聞かないなら、それに越したことはねえだろが!」
言ってしまった。
いつも心にしまっていたことを口にした。
= = = = =
艦娘に慕われる提督は、彼女らの身を案じ、そして
おそらく良心の呵責に押しつぶされそうになりながら、彼女らとともに戦っているだろう。
俺はそんなに立派じゃない。
たった一人の戦艦を庇いきれず、逆に彼女に助けられ、彼女は
あの時、俺は知った。
俺は、自分のことで手一杯の卑怯な無能者でしかなかったのだ。
背中の古傷が痛み出す。
頭から離れない最後の言葉。
「わたしたちしか戦えないから、仕方がないの」
単艦で特攻していった彼女の爆炎が水平線に巻きあがるのが見えた。
ズタボロの俺は、気を失った。
艦娘に嫌われることが気にならない提督
戦艦を犠牲にして生き延びたようです。