間抜けなのに提督やってます。
彼を応援してくださいね。
「そろそろ送って行こう」
「えー、今日泊って行くー。
みんなとお話ししたいよぉ」
「中尉、外泊は、中将に迷惑がかかるぞ」
「それを言われると考えちゃうなぁ。
中佐、わたしを誘拐したことにしない?」
(コイツ、とんでもないことを言いやがる)
「じゃあ、艦娘の誰かが拉致したことにするか。
犯人役は、解体になるけどな」
見回すと駆逐艦は身を寄せ合って視線から逃れようとしている。
「仕方ないかぁ」
「仕方ないのかよ!」
= = = = =
「中佐、これから予定ある?」
「どうした、寄り道か?」
夜の湾岸道路を
「うーん、小官、疲れたからどこかで休憩、痛い!」
俺は、助手席の中尉の側頭部に手刀を打ち込んでいた。
「もう、
中尉が、プンプンとわざとらしくふくれてみせてくる。
「俺から中将に叱ってもらうように電話するわ!」
「それは勘弁」
年頃の娘の悪ふざけにしては度が過ぎる。
他に誰かが居たら、ここまでではないのだが。
「中佐、結婚しないの?」
「相手が居れば、結婚するんだがな。
見てくれが大したことない上に、甲斐性もないしな。
出会いにも事を欠くありさまだ。
てか、貴官、抉るようなこと聞くなよ」
「そうか。
相手、もういないのか。
クフ」
どこか嬉しそうな中尉に大人げなくムカついた。
「なんだよ。
嬉しそうに」
「仕方ないなー。
わたしがもらってあげる」
「まるでイヌ・ネコ扱いだな」
(中将のところでは、そういう認識なのだろうか?)
「違うよ。
継いで欲しいんだって」
「誰が?」
「
「何を」
「ウチの家系」
「貴官には、軍医の兄弟がいたと思うが?」
「軍人の息子が欲しいんだって。
わたしもそろそろ
中尉は、キャッと照れながら顔を隠す。
その仕草は、容姿にふさわしく女らしい
「そうか。
他所を当たってくれ」
「どうしてよぉ」
「もうすぐ到着だからだ。
与太話もおしまい」
軍区統括鎮守府がもう目と鼻の先。
「与太話って」
「中将の話が出た時点で判るって、キヒヒ」
「・・・・バレてたのね。
もうちょっと、乗り気になってくれてもいいじゃない。
プンプン」
「現実味のない話に乗り気も何もないだろう」
鎮守府の通用門脇にクルマを停める。
「めんどくさいから、ここまでな」
「部屋まで送ってよぉ」
「入府手続きのハードルを上げてどうすんだよ。
ほら、行け」
中尉を降車するように促す。
「はーい。
じゃ、またね」
中尉は、クルマを降りると小さく手を振ってきた。
「おう。
ジムに顔を出すわ」
俺は手のひらをヒラヒラさせて返した。
≪バンッ≫
中尉が軍用車のドアを閉める。
その音は、結構響いた。
その音を確認しようと通用門の詰め所から憲兵が覗いてきた。
サーチライトが軍用車を照らし出した。
詰め所の中で憲兵が電話で何かを話していた。
サーチライトが興味を失くしたように、周辺を探り始める。
中尉が入門するのを見届けて、クルマを出発させた。
= = = = =
「中尉殿って、気さくな方でしたね」
「偉い人がパパっぽい」
「スタイルもよかった」
「てーとくのこと、良く知っていましたね」
「ふん、胸はオレの方が大きいけどな」
「胸が大きい方が好みかどうかは、わからないぞ」
戦艦の一言が、艦娘たちの心に少なからず動揺を与えた瞬間だった。
たびたび話に出てくる中将。
海軍は、主流の穏健派と過激派に分裂しかかっています。
元帥、中将は穏健派。
上級大将、大将は過激派。