彼を応援してくださいね。
「おい、巡洋艦」
「なんだよ」
(お、生意気なヤツ。解体するぞ)
「物資が届いてるから、運搬しろ」
「なんでだよ」
「なんでだとぉ。貴様ぁ、反抗的だな、解体してやろうか」
「へっ、できるもんなら、やってみろ。
一発ぶち込んでやるぜ」
生意気な巡洋艦が艤装を展開して俺に砲身を向けやがった。
「ほー、そう来るか。
じゃあ連帯責任でお前のところの駆逐艦を解体してやろう。
同型艦を手配するから、お前の艦隊に影響は少ない。
俺も気が済むし、Win-Winだな、キヒヒ」
「ゲス野郎」
「ありがとう。その言葉が聞きたかった、クヒヒ。
で、手伝ってくれるよな。
巡洋艦さんよー」
「チッ、わかったよ」
生巡(生意気巡洋艦)を連れて中庭に行くと横流し品と大本営の正規の物資が積まれている。
「コレ、頼むわ」
「こ、これをひとりでか!」
俺、生巡に蹴りを入れた。
(硬い、いってー)
「馬鹿か、誰がひとりでって言ったよ」
「はぁ?」
「お前なら、運び込む場所、作業の負荷とか目算できっだろ」
「お、おお、できる」
「じゃあ、細かいことは言わねえから、速やかに効率よく仲間を使え。
命令だ。
とっとと、始めろ。
グズ!」
今度は、俺が痛くないように生巡の尻を蹴り上げる。
「ひゃん。
な、何しやがる!」
生巡が顔を真っ赤にして殴りかかろうとするのをするりと躱す。
「ひゃんってか。
どうした、俺のテクニックに感じたのか、このドМ
さっさと行け、ビッチ」
「くっそー」
「おいおい、ビッチ、そういう時は、ウンコーって言うんだぞ、キヒヒ」
ドスドスと悔しがりながら去っていく生巡を俺はヒラヒラを手を振って見送る。
= = = = =
「やっぱりか」
俺は、これでもかというくらい汚れた風呂場に立っていた。
おそらくこの汚れた風呂に浸かってかろうじて回復してきたんだろう。
「臭いな」
気が付いたら、掃除を始めていた。
「
奉仕させる情景を想う。
「艦娘同士っていうのを眺めるというのもおつかもな、キシシ」
妄想はどんどん広がっていく。
「生巡とこの駆逐艦を戦艦どもにイジメさせるとかいいかもな。
ふふん、俺に逆らえないのを悔しがるのが目に浮かぶ。クヒヒ」
我ながら、ゲスな妄想だ。
提督の役得は、金じゃ買えないからな。
俺は、そこそこ清潔になった風呂場を眺めて満足していた。
= = = = =
食堂では、間宮がせっせと戦艦と空母に粥を渡していた。
大食い選手権のごとく粥を飲んでいくので、お玉じゃ、よそう量が足りず、お代わりが間に合わない。
「間宮、何してんだ?」
俺は呆れて声を掛けた。
「え?」
間宮の間抜け面が俺に向く。
「馬鹿か、こいつらに構ってたら、仕事ができねえだろ。
柄杓でも渡しとけ」
「え、でも」
俺の指示に間宮が戸惑う。
「さっさとしろ。
命令だ」
間宮が厨房から柄杓を持ってくる。
「貸せ。
お前ら、間宮の手を煩わすな」
間宮から柄杓を取り上げて、粥の入った寸胴に投げ込む。
「こいつらには、これで充分だ。
間宮、食料が倉庫に搬入されているからチェックしてこい」
俺は反応の鈍い間宮に蹴りを入れ、倉庫に行かせた。
寸胴鍋を囲む大食いどもが睨みつけてくるのに気が付いたが無視した。
「おい、お前とお前。
風呂に来い」
目についた駆逐艦ふたりに命令すると青ざめていた。
「身体の隅々まできれいになるんだ、うれしいだろ
クヒヒ」
「あ、あのわたしたち、入渠の必要は」
「命令に従わないなら、解体ね」
そのときの俺は爽やかな笑顔だっただろう。
いよいよ最初の犠牲者か?