ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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脅迫された妖精さん。

艦娘たちの試練再び。

彼を応援してくださいね。


第2話 あまりに当て外れ

朝食の後、状況開始前、体育館兼講堂は賑やかだった。

艦娘たちのユニホームの更新が始まった。

 

先任(くそ)がピンハネしていた艦娘たちの給料を大本営に補償してもらうことができた。

おかげでユニホームを一気に更新することになった。

 

艦娘たちに臨時収入ができたので、出入り業者にインナーも見繕って持ってきてもらう。

 

「写真を撮った人から、ユニホームを着替えてください。

 着古した衣類は、ランドリーバッグに入れてください」

古着姿の撮影と古着の回収をする眼鏡。

妖精たちも手伝い作業は進んでいく。

 

 = = = = =

 

「眼鏡、これで全部か?」

数個の大型のランドリーバッグを前にして確認する。

 

「はい」

【ジーーーー】

 

くたびれた下着をゴミ袋に放り込んでいく。

「うーん、やっぱりめぼしいのはないな」

ほとんど売り物にならないボロ布ばかりだった。

先任(くそ)の視野の狭さに呆れてしまう。

もう少し小綺麗にしとけば、目の保養になるだろうに。

 

「てーとく、何をなさっているんです」

「選別」

「何のですか?」

雑巾(ウエス)

「?」

「眼鏡、工作艦か妖精に聞いてみろ。

 こういう布地は、機械整備で機械油を拭いたり、ねじ穴にねじ込んでオイル漏れを止めたりするんだよ」

【ジーーーー】

眼鏡が疑いの目を向けてくる。

嘘じゃない。

俺は、兵学校時代の実習で見てきた。

 

「眼鏡、ちょっとこい」

「何ですか?」

ノコノコと無防備に近寄ってくる眼鏡。

 

「キャーーーー」

スケベスカートを一気にめくってみると眼鏡が悲鳴を上げた。

「お、眼鏡、それ脱げ」

眼鏡は、この間、買う羽目になったインナーを穿いていた。

 

「うーーーーー」

唸る眼鏡。

「また買ってやるから」

「えっ!本当ですか」

「おう、次から1週間穿き続けたら、取り換えろ」

≪ガッコン!≫

眼鏡が艤装を展開して、こちらに主砲を向けてきた。

 

 = = = = =

 

眼鏡が飯を食いに行った。

眼鏡の居ぬ間に古いユニホームの選別に取り掛かる。

 

どれもこれもじっくり見るとボロ布だった。

ほつれはかろうじてクリアしていても、汗ジミみたいな汚れがあったりする。

「不味いな。

 これじゃ、売り物にならねえんじゃねえか?

 あの店の商品、着古してても小綺麗だったりしたもんな。

 えーと?

 繕ったスカートが見あたらないな」

 

 = = = = =

 

食堂では、艦娘たちが新しいユニホームで盛り上がっていた。

 

眼鏡は、ある駆逐艦が一部古いままのユニホームを着ていることに気が付いた。

「吹雪さん、そのスカート」

「あ、大淀さん。

 まだ穿けますし、大事にしたいなぁって」

 

「・・・・」

「大淀さん?」

「いいなあ、いいなあ。

 いいなあ、いいなあ」

何かのスイッチの入った眼鏡。

 

(いいなあ、いいなあ)

こっちでもしゃもじを持った艦娘に何かのスイッチが入っていた。

 

 = = = = =

 

「なあ、頼むよ。

 お前たちなら、かけつぎとかできるんだろ?」

提督は、妖精に手当たり次第に頼み込んでいた。

 

「じゃあ、シミ抜きとかはどうだ?」

執拗に縋りつく提督。

もう恥も外聞も関係なかった。

当てにしていた副収入のその「当て」が外れていた。

 

「くっそー、これじゃ営舎のリニューアルの資金が・・・・

 いやいや、俺の遊興費ができねえじゃねえか」

戦艦ふたりが、すぐそばに立っていたことに気が付いた。




私腹を肥やす機会が先延ばしになった提督。

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