ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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漂着した戦艦「武蔵」

新型の深海棲艦と関係あるのでしょうか?

彼を応援してくださいね。


第6話 迷子

「おかわり!」

 

(よく食うなぁ)

目の前で、どんどん食料を胃袋に収納していく眼鏡戦艦。

気持ちのいいほどの食いっぷりだ。

 

彼女は、自分の艦名まで忘れていた。

所属を示す所持品もなかった。

 

「てーとく、彼女はどうなります?」

「キヒヒ、知りたいか?

 大本営の判断に委ねることになるが、概ね解体処分だよ」

眼鏡の顔から血の気が引いていく。

食堂の野次馬たちも同様だ。

 

「それは大本営といえども、横暴ではないか」

「戦艦、記憶もないような大食いを誰が飼うんだよ?

 解体でお国の役に立つんだよ、キヒヒ」

 

(その気もないのに、意地悪な(ひと)

 

「提督、お夕飯を召し上がってくださいね」

間宮は、提督の前に有無も言わせず焼肉定食(味噌汁、漬物付き)を置いた。

 

「間宮、俺は食券を出してないぞ。

 勝手なことをするんじゃねえ」

「じゃあ、あのお客さんのお食事はどういう扱いなんですか?」

間宮は、引き下がらず、言い訳のできないところを突いていく。

 

「口答えするんじゃねえよ。

 蹴りを入れるぞ」

「どうぞ、ご自由になさってください。

 体調が戻ったので、人の力くらいじゃ、痣どころか赤くもなりませんよ」

「生意気なヤツめ、こんな飯が食えるか。

 おい、眼鏡戦艦、お前が食え!」

提督は、定食を珍客に押し付けると食堂から出て行った。

 

「赤城さん、加賀さん、おむすびを作りましょうか?」

正規空母が、焼肉定食(味噌汁、漬物付き)を凝視していたのに気付いた間宮は、ささやかな提案をしたのだった。

 

 = = = = =

 

≪コンコン≫

「入れ」

夜の執務室に訪問者が来たようだ。

 

「失礼します」

眼鏡が入ってきた。

後ろの眼鏡戦艦がついて来ていた。

 

「そうか、指示していなかったな」

「どうしましょう?」

「眼鏡、もう下がっていいぞ、クヒヒ」

「え?」

「クヒヒ、察しろよ。

 彼女の歓迎するんだよ」

俺は、眼鏡を下がらせ、眼鏡戦艦とふたりきりになった。

 

「提督も同じだな」

「記憶が戻ったのか?」

「いや、この手の記憶は残っているみたいだな」

「そうか、じゃあ、ご期待に答えるとしようか、クヒヒ

 まずは脱げ、じっくり見てやる、キヒヒ」

「・・・・はい」

「素直なのは、いいことだ、キヒヒ」

「アッン!」

 

 = = = = =

 

私室の布団で目を覚ます。

「コホン、提督おはよう」

「おはようさん、よく眠れたか」

「あ、ああ。

 ・・・・色々見られてしまったな」

眼鏡戦艦が頬を染める。

 

「文字通り隅々までな、クヒヒ」

「ンフフ、ゲスな笑いだな」

 

俺が先に寝床を離れる。

「俺は偽善者だからな、クヒヒ

 服を着ろ、朝飯を食いに行くぞ」

「提督よ、もう少し一緒にまどろむというのはどうだ?」

身を起こした眼鏡戦艦は布団で前を隠してはいるが、胸が零れそうになって存在を主張していた。

 

「俺を懐柔しようと無理をするもんじゃねえよ。

 お前が役に立つなら、記憶が戻るまで、ここに置いてやってもいい」

(そういうつもりではないのだが)

 

眼鏡戦艦が服を着始める。

朝日の中、褐色の肌が映える。

 

「どうだ、押し倒してみるか?」

腰に手を当てポーズを決める眼鏡戦艦。

「近距離で主砲を食らう趣味はねえよ」

 

しばらくすると食堂に言い知れぬ空気が漂っていた。

 

提督(ゲス)が姿を現した。

それはそれで珍しいかもしれないが、もっと重大なことがあった。

武蔵が居た。

それも提督(ゲス)と腕を組むように。

いや、彼女の方から、一方的に腕に抱きつくように。

 

間宮は思い出したかのように包丁を研ぎ始めた。




私室で何があったのでしょう?
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