眼鏡とふくよかな胸の組み合わせの威力はいかに
彼を応援してくださいね。
「ほらほら逃げねえと被弾すんぞ。キヒヒ」
俺は、泣きながら攻撃から逃げる駆逐艦1隻を眺めていた。
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急な朝礼での一言。
「本日より、強化演習を行う。
全員、覚悟するように、クヒ」
この中身が過酷なモノだった。
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ひとりの艦娘に全員が攻撃する。
爆撃、雷撃、艦砲射撃、あらゆるアウトレンジ攻撃に曝され、ボロボロになってゆく駆逐艦。
「わたし、もう撃てません」
「こんなのって酷いっぽい」
「みんな、止めようよ」
同じ駆逐艦たちが泣きながら訴える。
「オラ、次行けよ、キヒヒ」
「提督、これって、やり過ぎじゃないかしら」
「なんだよ、ビッグ7と謳われたお前が、手抜きするつもりじゃねえだろうな、あぁ?」
陸奥は、納得していない。
その隣で長門と武蔵は、駆逐艦に至近弾を見舞う。
直撃したのか、小柄な駆逐艦が宙に舞った。
「ありゃ、だらしねえな。
次行け。
加賀、お前の妖精、なかなかやるなぁ」
「・・・・ありがとうございます」
「生巡、もう少し精度上げろ」
「やってるよ」
巡洋艦を始め、空母、戦艦までもが、提督の指示に従って、駆逐艦を
強化演習は、永遠に続くかと思われた。
駆逐艦たちには、心が折れそうな演習となった。
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演習を終え、艦娘たちは、食堂で夕飯を食べていた。
小破でも逃げ回り過ぎた艦娘は、食欲がなかった。
提督の訓示は【残さず食え、残したヤツは、次はない】だった。
必死に胃袋に詰め込んでいた。
「お疲れさまです。
毎日大変ですね」
「ああ、精神的に消耗するよ」
間宮の労いに答える長門。
「ねえ、長門。
あなた、なぜそこまでこの演習に取り組むのかしら?」
赤城ちゃんや加賀さんまで。
天龍や大淀もあなたたちが不満の一つも言わないのはなぜ?」
陸奥は辛抱の限界に近かった。
この演習がどうしても必要だと思えなかった。
今や駆逐艦という小型船舶と軍艦の間に軋轢が生じていた。
「てーとくのお考えに納得したからです」
「その考えというのは」
眼鏡に提督の真意を確かめる陸奥だった。
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「おい、眼鏡。
お前の想像で余計なこと言うなよ。
俺が面白いから、やってんだからな」
最近、俺は、食堂に顔を出すようになった。
艦娘たちの俺への反感を確認するためだ。
あの演習を黙々と
もしかしたら、いやいや、これほど悪意に満ちた人間だから、うわべだけ従っているだけだろう。
「次から、お前らも餌食になれよ。
駆逐艦ども、今までの仕返しをしろよ、クヒ」
俺は、手をヒラヒラと振って、食堂から立ち去る。
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「てーとくは、あんなふうにおっしゃいましたが、全員のことを考えてのことだと思います」
大淀は、ツイッっと眼鏡を整える。
「みんな、聞いてください。
これは、わたしの想像です。
もし、深海棲艦の艦隊と遭遇、交戦したとき、手加減してくれますか?
わたしたちが1隻だからといって、見逃してくれますか?」
「そんなの、大淀さんの想像じゃないですか!」
「有りえません!」
「提督は、いじわるなだけです!」
駆逐艦たちが一斉に反論する。
リンチのような演習を強いられた駆逐艦たちは到底納得のできることではなかった。
大淀にも彼女たちを納得させる言葉はなかった。
ただ自分の知る事実を組み立てるのみ。
少将の鎮守府の艦娘たちの、中尉の態度が、てーとくの本当の顔を知っているせいだと思うしかなかった。
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「お久しぶりです。
提督、約束の模擬演習の件、いかがですか?」
俺は、イケメン提督の鎮守府との模擬戦の約束を取り付ける。
「あ、武蔵は野良艦娘だから使えねえか」
圧倒的火力の戦力が使えないことに気が付いた。
ブラック鎮守府で、駆逐艦たちは苦しみます。