ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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少将のところの艦娘は、何を考えているのでしょう。

きっと騙されているのでしょう。

彼を応援してくださいね。


第15話 知ってしまった

提督(中佐)は、執務室を抜け、午後担当のパトロール艦隊を見送っていた。

「貴官はそういうところは、治した方がいいぞ」

後ろから声がした。

 

「トイレで用を足すことは治しようがありませんよ」

そう、ここは、男性用トイレだ。

よほどのことがない限り、艦娘たちには用のない施設。

 

「ずっと海を見ていたようだが?」

「ここからの眺めが結構気に入っているだけです」

「素直でないな」

「何のことでしょう」

俺は少将と連れションをする羽目になった。

変に焦って、出なかった。

 

 = = = = =

 

「そうですか。

 みなさんが見えなくなるまで、窓から見ていたのですね」

赤城は、哨戒編隊からの電信を受信していた。

 

「加賀さん、出撃するなら、一航戦としてですよ」

「赤城さん・・・・。

 手ごわいですよ」

「望むところです、うふふっ♪」

 

 = = = = =

 

「みんな、無事に帰ってきてね」

中尉は、執務室から艦隊を見送っていた。

 

≪コンコン≫

「どうぞ」

 

「お食事の用意ができました」

大淀がゲストを呼びにやってきた。

 

「ありがとう。

 でも、少将が戻ってこないんだ・」

「すまん、すまん」

中尉が言い終わる前に大淀の後ろに少将が立っていた。

 

「では、ご案内します」

大淀は、お辞儀をするとゲストふたりの前を歩きだす。

 

「少将、中佐は居ましたか?」

「ああ、居たぞ。

 海を眺めて、すっきりしていたな」

「奥様にセクハラされたって、電話しますよ」

中尉はスマホを取り出し、少将の自宅の番号を表示した。

 

「ちょ、ちょっと待て。

 娘同然の貴官にそんなことをするわけないだろ」

「反抗期です」

スマホを持ったままにじり寄る中尉。

「いやいや、ウチの娘でさえ、そこまででは、なかったぞ」

「おねえちゃんは、きっとファザコンなんです。

 世の中の娘は、父親の天敵といってもいいんです」

 

(先輩、苦労してたんだな)

少将は、末っ子が娘という家族構成の怖さを知った。

 

「クスッ、人間もなかなか大変ですね」

大淀は、少し緊張が和らいだ。

 

 = = = = =

 

食堂にはゲス()席が用意されていた。

規模の大きい鎮守府と違い、特別な部屋はない。

厨房から離れたテーブルに清潔なクロスがかけられているだけの質素なものだ。

 

「うん、中佐らしい」

「そうだな」

付き合いの長いものだけが解るもてなしの気持ち。

 

少将と中尉は席に着く。

中佐が食堂に入ってくるのが見えた。

真新しい第一種軍装を着ていた。

提督の証である飾緒は付けていなかった。

これも中佐の気持ちだ。

中尉が同席するので、士官の食事会に落としどころを持ってきた。

判っていたのか、少将は最初から飾緒は付けていなかった。

 

伊良湖と鳳翔がテーブルに料理を持ってくる。

 

前菜を鳳翔が、主菜を間宮が、伊良湖がデザートを担当した。

 

「食材は大したことはないし、俺が同席していますが、料理の腕は保証します」

 

気の置けない仲間の食事会は始まった。

 

 = = = = =

 

「敵艦隊発見、我敵艦二遭遇ス、我敵艦二遭遇ス」

 

鎮守府再稼働後、最初の悪夢が産み落とされる。

 

航空攻撃、初期雷撃で始まった戦闘は、一方的に敵戦力をそぎ落としていった。

 

 = = = = =

 

哨戒任務の1編隊が、哨戒最遠海域で深海棲艦の戦艦級を再び発見した。

刹那、戦いの幕が一方的に押し広げられる瞬間だった。

航空兵力妖精は、正規空母に<敵発見>を打電。

 

「提督!

 敵艦発見。

 戦闘に突入しました」

赤城が悲鳴に近い声で食堂に飛び込んできた。

 

「眼鏡、警報発令!

 総員戦闘配置、周辺鎮守府に情報伝達!

 直ちに航空支援出撃!

 急げ!」

恐れていたことが起きた。

間違いがないか、繰り返し考える。

 

 「了解!

 警報発令!

 総員戦闘配置、周辺鎮守府に情報伝達!

 直ちに航空支援出撃します」

眼鏡が復唱する。

思わず眼鏡を抱きしめる。

「大丈夫だ。

 今度は、誰も轟沈させない(死なせない)

眼鏡の微かな震えが止まった。

 

≪総員戦闘準備、総員戦闘準備、これは演習ではない、繰り返す、これは演習ではない≫

 

鎮守府は直ちに警戒態勢に入り、近隣鎮守府に警告する。

 

「提督、わたしが行こう」

武蔵が名乗り出る。

 

何もできない臆病な俺は、自らの震える手を噛む。

「いやダメだ。

 俺が行く。

 今のままじゃ、誰が行っても轟沈する(死ぬ)




単艦で艦隊並み戦力の深海棲艦です。

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