提督は、艦娘たちの状況が懸念事項です。
彼を応援してくださいね。
そろそろ鎮守府が見えてきた。
「おい、お前らしっかりしろ」
俺が声を掛けても、返事は帰ってこなかった。
艦娘たちは船べりにしがみつきキラキラと海に向かって餌を撒いていた。
「どうした。
お前ら艦娘だろ。
船酔いなんかしてんじゃねえよ」
「うー、揺れが、ウップッ、ぎもぢわ、く、エロエロエローーー」
「川内、情けねーぞ」
まあ、ここまで来れば大丈夫だろう。
両舷の出力を下げ、減速する。
ちょうど引き潮時に陸風の中で波が高めになったところを疾走してきた。
船体が半浮上するので、波を乗り越える上下動とウオータージェットの出力調整で前後に揺れる。
慣れない分船酔いも仕方がなかった。
「ゆっくり走るから、しっかりしろ」
≪≪はい≫≫
全員、小破程度のようだ。
(ユニホームは、繕わないといけないか)
「うん?吹雪。
お前、そのスカートは、古い方じゃねえか」
『はい、まだ、使えますので』
俺の問いに答えるとまたぐったり横になる。
「おいおい、破けてるじゃねえか」
『?、あ、すみません。
これじゃ、もう履けませんね』
船酔いの辛さで気が回らないせいか、スカートを捲り上げて確認していた。
(パンツ丸見えだろ)
吹雪のスカートは、裏地が切れて焦げていた。
繕ったところに被弾したのが原因だ。
繕い直しても裏地の切れたスカートは、きっと売り物にならねえ。
貴重な資金源が・・・・ふと【裏切られた】とダジャレを思いついた時には、チビたちが慰めるように肩に乗っていた。
(お前らを売った方が絶対に儲かるな)
建設的な思考の瞬間、耳にしがみついたチビズが頬に蹴りを入れてきた。
「お前ら、串にさしてタレ塗って焼くぞ」
言ってみただけだが効果はあった。
ただし、座り直しただけのこと。
(こいつら、心を読んでるな)
「あ、見て見て、鎮守府に帰ってきたー」
(吹雪、スカートを押さえろ。
パンツが見えてんぞ)
「生きててよかったっぽいー」
「提督のおかげです。
ありがとうございました」
駆逐艦たちは、改めて生還を喜んでいる。
「川内、鬼怒、よく頑張ったな」
「「提督」」
軽巡たちは、ねぎらいの言葉に少なからず、誇らしさを覚え、身体の痛みが薄まっていくような感じがした。
(しまった!褒めかたを間違った。
もっと高圧的にしないとダメな方向で頑張りやがる)
「まあ、鎮守府に着いたら、工作艦に見てもらえ。
で、その後、24時間待機を命じる。
気が向いたら私室に来い、治ったかどうかじっくり調べてやる、キヒヒ」
(いつもの調子でいい。
これでうまく収まるはずだ)
((どうしよう、これってお誘いなんだよね。
いいのかな。
大淀さんや天龍さんが怒りそう))
(((あーん、まだ、暁ちゃんみたいに慣れないよう【っぽい】)))
提督は、駆逐艦が揃って鼻血を出したため、ボートの速度を上げた。
= = = = =
「おがえ゛りー」
「おいおい、娘がそんなことをするもんじゃない」
中尉は、中佐にしがみついた。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を大切な先輩に擦りつけていた。
中佐は中尉の頭を優しく撫でる。
「少将、ご迷惑をおかけしました。
ありがとうございます」
「こうして無傷で帰還したんだ、気にするな。
これから、大変になるかもな」
少将は顎をさすりながら、言葉を探していた。
「今回遭遇した深海棲艦が、おそらくはこの周辺海域で艦隊を刈り取ってる単艦だと思われる」
「はい、記録でも見たことのない艦種でした」
徐々に事の重大さが見えてくる。
「で、貴様の艦隊はほぼ無傷で生き残った」
「・・・・何をおっしゃりたいのですか?」
「艦隊をつぶされたのが、過激派の鎮守府だとしたら」
「艦隊の運用に問題があると」
「そういうことだ。
穏健派としては、大々的に喧伝させてもらう、いいな」
少将は、にやりと笑う。
「どうせ、小官には断る権利はないのでしょ」
「グスン、
泣き止んだ中尉がまたわけのわからないことを言い出した。
「中尉、穏健派が小官を利用するのは了承するが、それと挨拶は何の関係がある?」
「いいの、挨拶しに来てくださいね、中佐どの」
中尉は、中佐に抱き着き直した。
「中佐、オレと勝負しろー。
ちゃんと待ってたんだぞ」
「提督、そんなヤツはほっといて、オレと勝負だ。
何なら負けてやってもいいぞ。
せっかく生き残ったんだしな」
「おい、オレの方が先だろ」
「お前は、昔の艦娘だろ、でしゃばるなよ!」
『そ、そんなこと言うなよ。オレだって、中佐が・・・・』
『いきなり・・、じゃねえよ。
オレの方までバレるじゃねえか』
いきなりヒソヒソ話を始める生巡ズ。
まだ先は長そうだった。
最初に用意した食事は冷めてしまったので、
間宮がせっせと料理作っています。
伊良湖がお手伝い。