ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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結局頬をつねられ続けた提督。

セクハラは、その間続きました。

彼を応援してくださいね。




第23話 ある迷子の証言

夕食も終わっているのに、食堂が混んでいた。

普通は、娯楽室に集まったり自室で趣味に浸ったり体育館で汗を流すものもいたはず。

 

居心地の悪さを感じつつ、厨房際に新設されたカウンター席にいる。

「痛ぇー」

「わたし、悪くないもん」

俺は、氷嚢で頬を冷やす。

中尉は、開き直ってる。

 

頬の腫れが引かないので、氷がある食堂(ここ)に居る。

「中佐が、ほかの娘には(・・)構うから、悪いんだよ」

拗ねると同時に肩に頭を乗せてくる。

「貴官、寂しいなら早く彼氏(おとこ)を見つけろよ」

レンジでチンした冷凍シュウマイを口に入れる。

「小官も欲しいであります」

「ハイハイ」

箸でつまんで口元にもっていくと中尉が、パクついた。

クムクムと咀嚼する筋肉の動きが肩を通して伝わってくる。

 

 = = = = =

 

「いいなぁ、アレ」

「羨ましいのかよ」

「ち、ち、ち、違うぜ。

 シューマイが美味そうなんだよ」

「へぇーーー、そうなんだぁ」

思わず言葉を漏らした生巡を(ダッシュ)が揶揄う。

 

「てーとくは、やっぱり艦娘じゃ相手にしてくれないのかな」

「そんなことない。

 前の仕事の時は、色々してくれたんだから」

「仕事だったからじゃない?」

「うう、そうじゃないかもしれないかも」

眼鏡が望み薄を実感しているのを否定するも自信がない(ダッシュ)だった。

 

「ねえねえ、中尉殿って提督の恋人さんなのかな?」

「なかよしなのは、間違いないっぽい」

「提督は意識していないように見えるよ」

駆逐艦たちは、提督と中尉を観察し、今夜、私室に行くかどうか思案していた。

 

「夜戦だー」

「ちょっと声大きいよ」

「夜戦だー」

「ちょっと?」

「夜戦だー」

「川内さん、鼻血」

「夜戦だー」

「入渠して穿き替えて来よ」

巡洋艦は心の準備ができつつあった。

 

 = = = = =

 

「話を聞かせてもらおう」

「長門、別に聞くことじゃないんじゃない」

「いや、敵の弱点を知っておくのは悪いことじゃない」

「ちょっと、弱点って」

「べ、別にいいじゃないか。

 いざという時に反撃ができないと【ごうちん】じゃない轟沈をしてしまう」

「長門、鼻を摘まんでいるのはなぜ?」

陸奥は、慌てて鼻を摘まんだ姉妹艦に質問した。

「陸奥、いつもよりしつこいぞ」

長門型一番艦は、圧迫止血を実践しながら、慌てていた。

 

「わたしは、どうしたらいいか?」

武蔵は、少し頬を染めていた。

どうやら、提督と過ごした晩を思い出していたようだ。

「そうだった。

 聞かせてもらおう」

「そうだな」

武蔵は長門の依頼に応えた。

 

「別に大したことはない。

 わたしは提督の前で全裸になった。

 

 提督はわたしの舌を摘まむと入念に調べた。

 次に座らされ、腕を頭の上で組まされた。

 うなじから腋の下まで入念に見られた。

 

 次は胸だと思ったとき、布団に四つん這いに成れと言われた。

 明るい部屋では、丸見えになる。

 こういうことかと覚悟決めたら、内ももや大事なところ、拡げられ見られた。

 恥ずかしさで顔から火が出そうになったころ、こういわれた。

 【所属が判る登録因子が無いな】

 

 そう、提督は手がかりを調べるためだけにわたしを診た。

 

 そして、服を着るように言われたが、断ってそのまま布団に潜り込んだ。

 どんなにやさしかった提督でも(オス)として行動する。

 ここまでしておいて、我慢する(おとこ)はいないと体験で知っていた。

 その時は、彼の配慮に感謝して、身体を提供してもいいと結論に至った。

 きっとお互い心地よい時間を過ごせると思えた。 

 

 彼は寝着(ねまき)に着替えると布団に入ってきた。

 いよいよだと思って、覚悟した。

 やはり、知り合ったばかりの(ひと)と肌を重ねるのは、緊張する。

 気を使って、わたしが落ち着くのを待っていると思った。

 うれしかった。

 しかし、待っていても触れようとしない。

 

 ただ、じらしているだけかと、こちらから掴んでみた。

 手ごたえは、充分以上だった。

 彼は言った。

 【記憶が戻るまで、追い出さねえから、安っぽいことは、しなくていいぞ】

 

 身体の芯に熱いものが流れ込んできた気がした。

 わたしが、彼を信頼した瞬間だったのだろう。

 

 彼の腕を掴んで無理やり腕枕にして眠った。

 そして、残念なことに何もなく朝を迎えた。

 

 いつか、彼がわたしを求めてくれたら、うれしい。

 それだけのことだ」

 

武蔵は語り終わると喉を潤すためにやや冷めたお茶を飲んだ。

自然体で叙述した武蔵の表情は、柔らかく【女】だった。

 

いつの間にか武蔵の周りに艦娘(ひと)だかりができていた。

話を聞いた全員が、微熱を帯びる病にかかってしまっていた。

 

長門の鼻血は、しばらく止まらなかった。




艦娘は開発時に生体データを身体のどこかに記録されるという設定です。

この話の武蔵は、専用の読み取り装置で読めます。
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