提督は自分のブラックさには自信があったようですが。
彼を応援してくださいね。
「しまった」
寝過ごしたことを後悔している俺が居る。
つい今しがた眼鏡が起こしに来た。
それはいい。
私室の布団の中だった。
それもいい。
中尉が横で眠っていた。
それはどうにかなる。
なぜか武蔵が増えている。
この辺から少し不味い。
中尉と武蔵がシャツしか着ていない。
いよいよピンチ。
中将が横に立っていた。
銃殺の危機がすぐそこにあった。
= = = = =
0700
鎮守府に来客があった。
サイドカーが先導する黒のセダンが鎮守府の鉄門前で停車する。
群青地に金の桜のマークが4個記されたプレートがナンバープレート代わりについていた。
当直の艦娘が通用門から運転席のところに用件を確認しに駆け寄った。
当直が敬礼をし、屈むと運転席の窓が下がる。
「おはよう、急ですまん。
み、中尉を迎えに来た」
白髪の混じり始めた男性は、シブいおじさまだった。
「おはようございます。
鎮守府にようこそお越しくださいました。
一応、身分証明をお願いいたします」
うさ耳リボンの駆逐艦は、しっかり当直していた。
前に止まっているサイドカー、舟側の兵士が、振り向いて艤装を展開した。
艦娘の連装砲3基が素早くその兵士に照準を合わせていた。
「ほう、なかなかいい動きだな」
おじさまは感心しながら、身分証を当直に渡す。
「訓練の成果でーす。
はい、ありがとうございます。
お返しします」
当直は、少し照れて答えた。
「護衛の艦娘たちも入府してもいいかね?」
「はい、どうぞ。
駐車場は、軍用車の隣をお使いください」
サイドカーとセダンが敷地に入って行った。
= = = = =
「ここの島風は、一段と速いですね」
「反応も早かったわ」
後部座席の航空戦艦2隻は感心していた。
「彼のことだから、当然と言えば当然だが、この短期間というのは、さすがだな」
= = = = =
「参謀本部次長閣下が、お越しになったの?」
≪はい、今駐車場にクルマを停めました≫
「わかったわ、ありがとう」
眼鏡は、内線電話を切ると出迎えるために玄関へ向かう。
眼鏡は、いつもと変わらない態度だったが、内心驚いていた。
大本営の要人の場合、普通事前に連絡がある。
鎮守府とはいえ、昨日の深海棲艦との遭遇で、最前線になってしまった。
護衛が何人いても決して安全とは言えない。
玄関には、航空戦艦2隻、防空駆逐艦2隻を従えたシブいおじさまが待っていた。
「閣下、ようこそお越しくださいました。
提督の執務室にご案内します」
「できれば先に中尉に会いたいのだが」
「承知しました。
まだ提督の私室でお休み中と思いますので、そちらにご案内しますね」
「私室?」
中将の表情が明らかに変わった。
「大丈夫です。
提督でしたら、執務室の方でお休みしておられますから」
眼鏡は、娘を心配する父親の心境を察して、フォローをした。
「いや、むしろ、約束を取り付けたかどうかが心配だね」
「はいー?」
中将の言葉は、眼鏡の想定外だった。
= = = = =
「ここが、提督の私室です。
わたしは、提督を起こしてきます」
眼鏡は、中将に一礼すると隣の執務室の扉の前にたった。
≪コンコン≫
「てーとく、起きてください。
参謀本部次長閣下がお見えですよ。
起きて、支度してください。
入りますよ」
≪カチャ≫
眼鏡が見たのは、無人の部屋だった。
とんでもない状況で迎えた朝。