機嫌のよい中尉。
彼を応援してくださいね。
「ムーーーーー」
セダンの後部座席で膨れる中尉の姿があった。
「まだまだか。
早く孫の顔が見たいんだが」
横に座るのは、すっかり親の顔になっている中将。
「パパは、運転しててくれたら良かったのよ」
窓の外を眺める中尉。
表情は見えないが、明らかに不機嫌だとわかる。
「お嬢さま、それは元々護衛の仕事ですので」
伊勢が中尉を窘める。
「閣下が運転しておられたら、ゆっくりとお話しできませんでしょう」
日向は、ルームミラーに映る中尉を見ていった。
「日向、先にハンドルにしがみついたキミにそういわれると納得しづらいな」
おじさまはちょっとオコだった。
中将は、運転が好きだった。
休暇の日には、家族で出かけるように心がけていた。
彼にとってはかけがえのない大事な家族。
海軍でもその家族思いは有名だった。
海軍上層部は、艦娘の護衛が付く。
その任務の性格上、緊急時に対処できる運転技術を身につけている。
この日向は、中将の運転好きの影響を受けたためか、テクニックは大本営で1,2位の腕前だったりする。
前をサイドカーが走っていた。
彼女たちも護衛として訓練を受けている。
= = = = =
時間は少し遡る。
ブラック鎮守府の朝は早い。
体力づくりに励むもの、釣りで食料を確保するもの、
目的はほぼ共通していた。
何人か集まるとつい口から出てしまう
艦娘たちは、大淀のしらせで中将パパの入府を知る。
失礼があっては、鎮守府の不名誉。
食堂の混雑が収まり始めた頃、食堂の出入口から空気が変わった。
出入口近くの艦娘たちが、立ち上がり直立不動で敬礼し始めた。
「傾注!全員、閣下に敬礼!」
大淀は、号令をかけた。
食堂は緊張に包まれる。
「全員、楽にしたまえ」
声の主は、シブいおじさま。
艦娘たちは、提督と違った優しさを感じ取った。
生巡’と眼鏡’は、驚いた。
自分たちの提督の先輩であり、穏健派の実質トップが、深海棲艦と遭遇したばかりの翌朝に来訪した。
護衛はいるだろうが、提督の少将とくらべて海軍においての影響力は格段に大きく、もしもの時のリスクは想像がつかなかった。
「閣下、粗相があれば、すぐ解体しますから誰でも選んでください、キヒヒ」
「貴官、誰でもいいのかね」
提督の申し出に興味を示す中将。
((((ひぇーーーーー))))
会話の聞こえた艦娘たちは、少し不安になった。
提督のいつもの冗談だと思ったが、偉い人が一言言ったら、命令として実行されるのじゃないかと。
「こらこら、オッサンたちが艦娘を脅すんじゃない」
中尉が中将と中佐の後頭部にチョップを入れる。
ちょっと不機嫌だった。
「そんなことより、中佐!
パパにわたしと結婚するって言ったでしょ。
ちゃんと聞いてましたからね」
≪≪ザワザワザワ≫≫
中尉の声が食堂に響くとざわめきが始まった。
「中尉。
あれは結婚じゃなくて、配属して欲しいってことだ。
貴官は、艦娘たちと仲良くなれるからな」
提督の言葉が大淀には不自然に思えた。
(布団の中で一緒だったことの説明ができてないじゃない)
「そうだ、武蔵。
どうして、提督と一緒に布団の中にいたの?」
中尉が口を滑らした。
((((中尉と武蔵が提督と一つの布団で!!))))
「提督ーーー、今の話は本当なのか。
オレにはセクハラ止まりなんだぞ。
なんてうら、破廉恥なことしやがってー」
「そうだ、そうだ。
今からでもオレたちがもいでやるから、誘えよ!!」
生巡に生巡’が加勢する。
「わかった、わかった。
ふたりまとめて相手してやる」
「「ぅ、ひゃん」」
提督は、生巡ズを腰に手を回し、続けて尻を鷲づかみにした。
生巡ズは、思わず小さい悲鳴あげたが、嫌がらなかった。
その様子は、中尉を始め、艦娘たちに見られていた。
厨房の奥で間宮が
続いちゃいます。