長門を断ってしまって格好がつかない提督。
彼を応援してくださいね。
「さて、そろそろ帰るか」
シブいおじさま中将が、護衛艦娘たちに合図する。
「中佐、今、ホッとしたでしょ」
「そ、そんなことはないぞ」
ホッとした中佐の機微を見逃さなかった中尉。
長い付き合いで誤魔化しきれていなかった。
「もう、いじめてやるな」
娘の肩に手を置く中尉パパ。
「でもさ」
「銃殺か婿入りを選ばせるだけだ」
「それなら、・・まあ、仕方ないか」
「この父娘、とんでもないことをサラッと言いよった!」
思わず突っ込む提督。
「ブラックな提督の運命には、ちょうどいいよ」
中尉は、ニシシと楽しそうに笑った。
「銃殺はともかく、婿入りは、相手を選び放題の貴官にとってデメリットと思うが?」
ブラックを自称する
「な、何言ってるのよ。
わたしのワガママに付き合うことになるのよ。
もしかしたら、イケメンと浮気するかもしれないし』
急に語尾が萎むように弱弱しく小声になる中尉。
「?、またわからん事を。
貴官、それなら、婿入りはおかしいと思うが」
全く、中将までがおかしなことを口にしたものだ。
「何?婿入りが不満なの!」
中尉の方が不満そうだ。
「いやいや、婿入りじゃない別の選択肢を閣下に、ウォっ、ぃててて」
中将と中尉の父娘のコンビネーションで肩を決められて、床の模様を間近で堪能する姿勢になっていた。
「何が不満かはっきり言いたまえ!」
「ちょっとは喜んだらどうなのよ!」
異口同音の詰問は、提督を追い詰める。
「不満はありませんよ、いてて」
「嘘ばっかり!
どうせ生意気な女って思ってるんでしょ」
「そうなのかね」
「いててててて、推測は勘弁してください!
俺が中尉と歳が近かったら、玉砕覚悟で告白してますって」
「「えっ!」」
≪≪え゛!≫≫
俺は解放された肩を回すことができた。
しかし、解放されたわけではなかった。
食堂のちょうど中央のテーブルに座らされていた。
窓が暗幕で覆われ、灯りは目の前のチープな電気スタンド(LED)がある。
「さあ、説明してもらおう。
お嬢さまに告白するというのは、本心か!」
「生半可な気持ちだと、われわれが許さんぞ!」
伊勢と日向が口調も厳しく尋問をしてくる。
(こいつら、噂に聞く美鳳組(中尉のファンクラブ)だったのか)
「あー、言った通りだ」
嘘ではないので、そのまま答えた。
「けしからーーーん!!」
「お嬢さまは、嫁に行かせーーーん!!」
(ガチだ。
美鳳組は、中尉が絡まない限り、動かない。
ただし、中尉に言いよる者が現れるとその者に不幸が何重にも起きるとして、情報部でも調査したことがあった)
そのころ、一番の被害者は中尉だった。
=> 情報部の調査報告は大きなミスを含んでいた。
この当時から、中尉(当時准尉~少尉時代)の気持ちは、すでに決まっていた。
そのため、本人への精神的ダメージも皆無だった。
中将と中尉は、護衛の防空駆逐艦に執務室へと連れられて、ここにはいない。
その様子からいつものことなのだろう。
「こうなれば、覚悟してもらおう」
「われわれが貴官を篭絡させる!」
航空戦艦2隻が提督ににじり寄る。
「天龍、大淀、提督を安全なところへ!
貴艦たちの相手は、ビッグセブンと武蔵がお相手しよう」
武蔵が2隻の前に立ちはだかる。
「武蔵、航空戦艦とあいまみえるのは別に構わないのだが・・・・」
「
「・・・・」
武蔵は、言いづらそうな長門とズバリ指摘する陸奥の疑問を認識すると汗をダラダラと流していた。
= = = = =
「こら、バカ、やめろ。
お前ら、解体すんぞ
コラ、手ぇ放せ」
「うえるせぇ、そっちの手、押さえろって。
悔しかったら、オレたちと砲撃戦しやがれ。
うっ・・・・少しだけ優しくしろよ・・」
主砲を掴んで確認した天龍’は固まってしまった。
「お前、何言ってんだ。
せっかくの砲撃戦だぞ、手加減なんか・・・・あった方がいいかな」
「何、どうしたの。
ほかの
「もう、みんな、せっかくのチャンスなの・・・・に、わたし慣れてないの」
鎮守府内裏庭芝生上砲撃戦は、圧倒的な攻撃力を目の当たりにした艦娘たちが戦意喪失したため、開始されることなく終了した。
先は長そうです。
もう少しお付き合いを。