ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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チープなカップ麺も工夫1つで、勘に障るアイテムに。

いたずら好きな提督。

彼を応援してくださいね。


第8話 食べるって大切

よしよし、日が落ちる前に乾きそうだ。

 

干した布団と洗いたてのシーツの気持ちよさと言えば。

 

そういや、昨日は、ワクワクして眠れなかったんだよな。

 

機嫌がいい俺は、屋上の物干し場を後にした。

 

 = = = = =

 

「長門さん、皆さん。

 少ないですが、これを召し上がってください」

間宮が大皿を差し出す。

上には、懐紙が敷かれ、一口に切り分けられた羊羹が置かれていた。

 

「これは・・・・」

長門がある意味的外れの質問をしてしまった。

 

「あは、これは・・・・あの、・・・・」

間宮は答えなかった。

 

「ふむ、いただこう」

貴重な甘味を楊枝で刺し、口に運ぶ。

ムクムクと味わい、久しぶりの甘さを堪能した。

頬を何かが伝う。

 

「長門さん、どうしたんですか!」

「うん? どうかし・・・・どうしたんだ?」

長門は、自分が涙を流していたことに気が付いた。

 

他の戦艦や空母たちも同様だった。

先任(クソ)の横領のため、ひっ迫していく鎮守府。

駆逐艦たちに自分たちの食事や物資を回す毎日。

そのうえ弾薬もギリギリで出撃させられた毎日。

回復も悪臭のするぬるま湯に浸かるだけの毎日。

 

艦娘だ、空母だ、戦艦だと言っても、女の子には、辛すぎた。

いっそ、ほかのブラ鎮のように壊れてしまえば、楽だった。

 

しかし、彼女たちは、耐えてしまった。

壊れずに踏みとどまった。

 

そんな苦労を労うさっぱりした優しい甘さだった。

 

間宮は、その艦娘たちを嬉しそうに眺めていた。

 

 = = = = =

 

「よう、ビッチ」

「提督、せめて眼鏡にしてください」

 

「おっ、お茶美味かったみたいだな、クヒヒ」

空になった湯のみを横目に<眼鏡>の顔を覗き込む。

 

巡洋艦は、目を逸らす。

 

「おやおや、羊羹はともかくチョッコレイツはどぉーしたのかなぁ」

ニヤニヤしながら、嘗め回すように<眼鏡>を見回す。

 

「クサッ!」

俺は思わず叫んだ!

 

「わたし!臭くなんかありません!」

顔を真っ赤にして反論する眼鏡巡洋艦。

 

「で、チョコは?」

「あわわわ」

俺が真顔で質問すると狼狽える眼鏡。

 

「まあいい、元々ワイロだしな、キヒヒ」

「うーーー」

 

「おー、ずいぶん片付いたじゃねえか、優秀、優秀」

「あ、あの、提督」

「何ィー?」

「わたし、臭いですか?」

「おー臭いぞぉ」

俺は、書類に目を通しながら、眼鏡に話しを合わせる。

「そうですか」

がっくりと机に手をつく眼鏡。

 

「お前くらいの年頃のヤツは、メスの匂いがプンプンするもんだ」

「え?・・・・それって?」

「メス臭い」

「な、何ですか、それぇ!」

「うるせえよぉ、これから俺は仕事だから、風呂でも入ってこい」

「は?」

「行け!グズ」

俺は眼鏡にキックした。

まともに入ったのか、正面から床に張り付くように倒れ込む眼鏡。

 

「ふぇーーーん」

泣きながら立ち上がる眼鏡。

「ああ、眼鏡、ヒトキュウマルマルに全員食堂に集合させろ。

 食事と風呂は、集合時間だけ外すように通達しとけよ」

「・・・・・」

「復唱しろ」

二発目のキック炸裂。

面白いように二発目も決まった。

「ふぇーーーーん、復唱、えっぐっ、ヒトキュウマルマルに全員食堂に集合」

 

いじめられっ子のように泣きながら去っていく眼鏡。

俺は、柄にもなく思った。

(いじめっ子に負けるなよ。てか、俺か、キヒヒ)

 

「チョコレートは、駆逐艦あたりに分けてやったんだろうな」

掃除していない執務室の床に残る複数の足跡から名探偵【俺】は推理した。




巡洋艦<眼鏡>の災難は続きます。

それは、眠るところまで。

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