ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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中将の心境はどのようなモノでしょう。

中尉、思わず叫んでしまいました。

彼を応援してくださいね。


第33話 パパ帰る(娘と一緒)<後編>

≪な、な、なんてこと言うのよーーー!!≫

 

悲鳴に近い中尉の叫び声だった。

中将に何か言われたようだが、中将の表情は穏やかだった。

 

父娘の間に入るのは、野暮というものだ。

 

「閣下、そろそろ日勤の時刻になりますので」

野暮かも知れないが、給料分の仕事の義務はある。

歩み寄り、中将に帰投して(追い出て)いただくことにした。

 

「ああ、そうだね」

「閣下、何か良い知らせがありましたか?」

機嫌の良い中将につい理由を聞いてみた。

 

「孫の名付け親になりたいんだが」

(孫?確かに孫と言った。

 軍医のところか?)

「名前の候補は多い方が良いと考えます」

 

昔、俺の名前の候補は3つ有った。

どれもパッとしない名前だったが、どれになっても名前負けしなくて良かったと大人になってから思った。

 

「美鳳、いいね。

 父さんも考えるよ」

(え?中尉のことですか)

 

「中尉、貴官おめでたなのか!」

まるで甥か姪が生まれてくるような感覚かもしれない。

「ほらーー、あーーー、もうーーーー」

中尉は、嫌気がさしたようにごちている。

 

「クヒヒ、恥ずかしがることじゃない。

 愛の結晶、子は宝だよ」

結婚式に呼ばれるかどうか怪しいので、祝辞を送っておく。

 

「日取りについては、おいおい決めたいと思う」

「そうですね。

 閣下の日程が最優先でしょう。

 中尉は、退官しても差しつかえありませんし」

中将は気が早いようとも思えたが、祝い事だし仕方がないと思った。

 

「むしろ、貴官の任務の方が重要になるんじゃないか」

中将は提督の肩に手を置いた。

 

なぜか閣下が肩に手をかけてきた。

俺は中尉の結婚と任務の関連性を見いだせないでいた。

「閣下、小官の任務とお嬢さんのご結婚に関連事項を見いだせないのですが・・」

正直に聞いてみた。

それしかない。

 

「ははは、貴官何とぼけておる。

 まずは式の日取り、次に住居、そして生まれてくる子、美鳳たちと家庭を育む。

 軍務に比べて難易度は多いぞ」

中将は終始ニコニコしていた。

 

「パパ!!わたしまだ妊娠なんかしてないよ!」

落ち着きのない中尉がようやく悲壮な叫びで存在感を示した。

 

「美鳳、中佐に遠慮はしなくていい。

 きちんと責任を取ってもらいなさい。

 中佐、娘を頼んだよ」

中将は娘に微笑みかけているが、提督の肩にある手は、ギリギリと握り潰さんとばかりに力が籠っていた。

 

「中尉、貴官、中将にそんなことを言ったのか?」

(痛い痛い、肩痛いです、閣下)

 

「違うのー、パパの勘違い、錯覚、誤解、空想、想像、もう何でもありなのー」

中尉は、自分が妊娠したと思い込んでいる父親の誤解を解く説明が思いつかなかった。

 

「だってお前、できちゃった婚の話をしてだな・・」

「だーかーらー、それが誤解なの。

 わたし、まだなんだか、ハッ!」

中将の誤解を解こうと出てきた言葉の途中で中尉はハッとなる。

中佐の前で自分がまだ未体験であると白状してしまった。

(えーん、ますますチャンスが減りそうだよ)

 

「そうか、いや、父さんが悪かった。

 許しておくれ」

中将の手は、ようやく獲物を解放した。

 

「閣下、中尉の身持ちの固さは、小官が太鼓判を押します。

 外出に同行する機会もありますので、悪い虫は追い払いましょう。

 お任せください」

俺はようやく状況が飲み込めたので、中将を安心させるため誓うことにした。

(恩人ともいえる閣下の娘だ。

 俺を倒してからにしろって)

自信満々で父娘の顔を見ると違和感があった。

 

「そうか、よろしくたのむ。

 貴官なら安心だ、ハハ」

(何?

 中将はしょんぼりしてる?

 孫がまだなのが、そこまで落胆するものなのか)

 

「わたし、先にクルマに乗ってるから」

中尉は踵を返してクルマに向かう。

叫んでいたときと打って変わってあまりにも無表情だった。

 

「わたしも帰ろう」

中将もクルマに向かい、伊勢の開いた座席に乗り込んだ。

航空戦艦がドアを閉じるとサイドカーが発車する。

クルマはその後を追いユルユルと動きだし、正門から出て行った。

 

その間、提督は、クルマが見えなくなるまで敬礼していたが、クルマのふたりから答礼はもらえなかった。




こうして<前編>の車内に続きました。
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