ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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ミヤコワスレの花言葉は、しばしの別れ

しばしの憩い、強い意志、短い恋

彼を応援してくださいね。


第36話 ついつい気になる

≪コンコン≫

「入れ」

執務室で仕事中にノックの音、入室の許可を出す。

 

≪≪失礼します≫≫

艦娘たちがゾロゾロと入ってくる。

そう広くはない執務室に入りきれないかと思ったが、ドアが閉まる音がした。

どうにか入れたらしい。

 

「なんだ、俺は忙しいんだ」

俺は内心ビビッていた。

ついさっき殺意を向けられ、逃げ場がない。

艦娘たちは俺を睨んでいる。

 

「コホン、提督、正直に答えてもらいたい」

改まった態度の長門に、提督は身じろぎして姿勢を整えた。

 

(即砲撃()たれることはないだろうが、用心しないとな)

「軍機以外なら、答えよう」

「・・いや、そういうことではなくだな。

 そ、その、なんていうか」

戦艦の態度は、途中から平静を保ちきれなくなっていく。

「もう、長門ったら。

 わたしが換わるから」

姉艦の不甲斐なさに妹艦が仕切り直す。

 

「単刀直入にお聞きします」

陸奥が執務机に乗り出してくると胸部装甲が重力の影響を受け変形する。

「お、おう」

提督は、気圧され力のない返事をする。

 

「あ、あの、その、なんていうか」

陸奥もたいした差はなかった。

 

「仕方ない。

 提督、軽巡たちにしたことを詳しく説明してもらいたい。

 で、なければ、我々は反乱を起こす」

横から宣言したのは、机に座った武蔵だった。

我儘船体の太腿が主張してみせている。

 

「そんなことか」

(まあ、危険は無さそうだな)

俺は緊張を解くことができた。

 

「隠し立ては無しにしてもらいたい」

ズイっと念を押すように顔を近づけてくる武蔵。

 

「なるほど。

 そういうことが気になるお年頃というわけか、キヒヒ。

 だが、断る!」

俺は、全面的に拒絶した。

全員の前で手の内を明かしてしまっては、虐待の効果が薄められる。

個別に責め立てるからこそ、辱めを共有できず、俺への敵意が育つというものだ。

精神的ダメージは個体差があるからこそ有効なのだ。

 

少将の鎮守府、艦娘たちはうまい具合に俺を敵視している。

その分、少将への信頼度は高まっているだろう。

俺は少将のように強くない。

艦娘たちの結束を強めるために、敵に回ることで目的を果たす。

あの日、見殺しにしてしまった勇敢な艦娘への償いを。

 

 = = = = =

 

「なるほど。

 そういうことが気になるお年頃というわけか、キヒヒ。

 だが、断る!」

 

提督は、わたしたちには向き合ってくれない。

大淀は胸の奥にチクリと痛みを感じた気がした。

少将のところの大淀とは黙っていても通じ合っているように見えた。

彼女の去り際に身を案じる言葉をかけた。

彼自身は気付いていない優しさを見せつけられた。

 

彼女たちは訪問も淫奔などと違い、純粋に提督の傍で過ごしたかったのだろう。

同艦だからわかる、ここの天龍さんも見ていて理解できる。

 

わたしたちはどのくらい提督と過ごせば、彼女たちのような関係を築けるのだろうか。

 

≪イクー、だーめーなのーーー!≫

提督に胸部装甲を弄ばれる伊19の叫び声だった。

答をはぐらかすように悪ふざけを始めてみせたのだった。

 

「オラオラ、無駄に胸部装甲を発展させてんじゃねえぞ、キヒヒ」

「あーん、おしおきは、イクがする方なのにー」

「わっぷ」

「倍返しなのねー」

潜水艦は、反撃に転じて被さるように提督の頭を抱え込んた。

 

伊19は、提督の頭を包み込むように抱きしめていた。

その姿に艦娘たちが羨ましいやら妬ましいやらないまぜになった視線を投げていたことは、提督には見えなかった。

 

大淀は、潜水艦の反応を見てすぐに解った、そして思った。

(こやつは、この野郎は、このゲスは、この提督は!)

仕草が、ほぼ豊胸マッサージ!

大きくするなら、ほかの艦娘にしなさいよ。

敢えて言うならわたし!

まだ提督には心の叫びは届かなかった。

 




眼鏡、設定は水着Ver.に倣っています。

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