ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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ほのぼのした日常もつかの間。

提督に襲い掛からんとする戦闘マシーン群

彼を応援してくださいね。




第40話 深海棲艦強襲<前編>

始まりは、イケメン鎮守府への敵艦隊来襲だった。

 

圧倒的な航空兵力により、迎撃に出た航空機が無力化され、爆雷撃により艦娘たちに損害が出た。

暗号通信では、鎮守府が防御に徹することでかろうじて持ちこたえたが、敵艦隊を見失ったとのことだった。

 

出港したばかりのパトロール艦隊を呼び戻す。

「眼鏡、平文で構わん、パトロールを呼び戻せ。

 彩雲(偵察機)、全機発艦、イケメン鎮守府方面に扇展開。

 なお、敵艦隊哨戒は、潜水戦隊にも留意し、厳とせよ!」

 

嫌な予感がした。

夜明けとともに敵航空部隊が飛来したという事実。

 

裏返せば、夜間に偵察された可能性がある。

夜間哨戒のパトロール艦隊をやり過ごし、未明に空母から発進させたとなると味方の位置を把握されていたと考えた方が納得できる。

 

ここはまだ航空戦力が不足気味だ。

そのために偵察機を優先して、攻撃を集中できるように準備をしてきた。

ここの艦娘たちでは、戦力が分散してでの対空戦はまだ無理だ。

 

「発令、駆逐艦を護衛に空母前進、楔形陣形。

 陣外縁に戦艦、巡洋艦。

 盾として、被害担当。

 なお対空防御の薄い艦は後方へ、戦艦、巡洋艦は三式弾、対空砲弾をあるだけ積み込め」

俺自身は、嫌な予感が外れてほしいと祈るしかすることがなかった。

 

 = = = = =

 

「イケメンのところがやられたらしい」

「どうするね?」

「まだ戦闘になるとは決まってないよ」

「いいじゃねえか、お手並み拝見だ。

 お前たち、怪我すんじゃないよ」

≪≪はい!≫≫

 

 = = = = =

 

「てーとく!彩雲から入電。

 【ワレ、潜水ソ級ヲ発見セリ。

  位置ヲ送ル】」

「暗号文か?」

「平文でブラックな方です」

 

「眼鏡、全艦に連絡。

 敵機動部隊は、潜水艦を先行させている。

 対空対潜戦闘準備!」

「復唱します。

 全艦に連絡。

 敵機動部隊は、潜水艦を先行させている。

 対空対潜戦闘準備!」

敵発見の報で空気が張りつめる。

 

欺瞞通信なら良かったが、ブラックな暗号は危機的状況においてのみ使用すると決めていた。

この鎮守府で決めた符丁を使って、そのまま平文で発信させる。

敵に海軍の暗号が解読されていないとも限らない。

敵に読まれても意味不明であれば、何でもいい。

 

「眼鏡、戦闘機、艦爆、艦攻を順次発艦。

 敵潜水艦を燻りだす。

 攻撃終了後、全艦帰投」

「え!?

 帰投ですか?」

大淀は提督の命令に戸惑った。

おそらくは潜水艦を仕留めて、有利に戦闘を進められると感じていたからだ。

彩雲からの情報を元に作戦を立てれば、決して負けはしないと。

 

「眼鏡、復唱は!」

「・・はい、復唱。

 戦闘機、艦爆、艦攻を順次発艦。

 敵潜水艦へ攻撃。

 攻撃終了後、全艦帰投」

大淀は、納得いかないさまを隠さなかった。

 

「てーとく、伺ってもいいですか?」

「許す」

「なぜ、全艦帰投なんですか?」

「先手をこっちが打てたからな。

 敵は、ここの総力を知らないままだ。

 おそらく、威力偵察を繰り返すことになる。

 その間に他の鎮守府に増援要請をすれば、挟撃できるだろ。

 大勢が決められたら、降伏勧告してみる」

「深海棲艦に降伏勧告ですか!?

 応じるなんてありえません!」

眼鏡の言うことはもっともだ。

俺もそう簡単に事が運ぶとは思っちゃいない。

 

 = = = = =

 

潜水ソ級は、4隻が先行していたが、その悉くを探知され、対潜攻撃にさらされ後方に下がった。

代わりにイケメン鎮守府に飛来した航空兵力が進出してくる。

帰投中の艦隊に今襲い掛かろうとしていた。

しかし、その目論見はとん挫した。

準備していた三式弾の斉射で散らされる。

 

「クスクス、ワカッタカナ?」

「クッ、アノコタチガ、ユダンシタダケヨ」

 

 = = = = =

 

「報告。

 敵航空兵力の撃退に成功、味方の損害無し。

 目下、全速で帰投中。

 ・・よかったですね、てーとく」

ほっとする眼鏡。

模擬戦で負かされた鎮守府の艦娘たちがてこずった相手に損害が出なかった。 

「よしよし、入渠の必要がねえなら資材が減らずに済むってもんだ、キヒヒ」

腕を組み、顎を擦るブラックな提督。

 

大淀は気付いていた。

このゲスは、ほっとしたとき、この仕草をすることに。




初手は、提督の勝ちとしましょう。

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