ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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先手を打てた提督

無傷で帰る艦娘たち

彼を応援してくださいね。


第41話 深海棲艦強襲<中編>

「おいおい、せっかく勝ってるのに転身ってか?」

「なーんだ、ただのヘタレじゃないの?」

「なあなあ、姉御。

 オレたちだけでぶっ叩きにいこうよぉ」

「だな」

 

 = = = = =

 

「てーとく!艦娘が離脱しました!」

「・・どいつだ?」

「高雄以下8隻、新着のメンバーです」

「・・・・そうか」

「ご存じだったのですか、特命か何かでしたか?」

提督の態度に納得を見て取った大淀はあまり驚かなった。

 

「眼鏡、あいつらの転属辞令は確認できたか?」

「いいえ」

「そういうことだ。

 意図は判らんが、連中がここに来たのは公式じゃない」

「では、脱走艦として追跡しますか?」

「放っておけ。

 今は深海棲艦への対処が最優先だ。

 損害を抑えれば、俺の評価になるからな、クフフ」

顔を歪めて下卑た笑みを浮かべる提督が居た。

 

「提督、おむすび召し上がってくださいね。

 大淀さんも」

ここは食堂。

指令室はあったが、なぜか妖精(チビ)たちが、設備一式を食堂の一角に移設していた。

食事、軽食に不自由がないので、作戦に専念できた。

間宮は、提督たちの様子を見ながら、戦況を聞きながら、仕込みをしているのだった。

 

いつもと違って自前の食事を準備できない提督は、おむすびに手を伸ばす。

「間宮、何笑ってやがる」

「そうですね。

 提督がほっぺにお弁当をつけると思ったら、楽しくなってきました」

「ガキじゃねえんだ。

 つけるわけねえだろ」

提督は、悪態をつくと一気に一つ目を胃袋に納めてしまった。

二つ目に手を伸ばした時に通信が入る。

 

「この周波数は、現在海軍で使用中です。

 直ちに送信を中止しなさい」

大淀が、コールサインの無い通信に対応する。

片手におむすびを持ったまま、大真面目に話す姿は少し滑稽だった。

 

「テイトクニ、ツゲル。

 キカンノカンムスヲ、ホウイシテイル。

 キカントノ、コウショウヲコウ」

「眼鏡、代われ」

提督は、固まりかけた大淀からマイクを取り上げた。

間宮は嫌な予感を感じていた。

 

「交渉とは?」

「トリヒキガ、シタイ」

「ほう、面白そうだな」

「アリガタイ。

 ゴソクロウネガウ」

「場所は判ってるだろってことか」

「フフフ、ハナシガ、ハヤイ」

「俺が行けば、包囲を止めるんだな」

「シンカイセイカンノ、メイヨニカケテ」

「了解した、しばらく待ってろ」

サイカイ(・・・・)ガ、タノシミダ」

 

提督は、マイクのスイッチを切ると逡巡しているかに見えた。

 

「間宮、大急ぎで握り飯一つ、塩の濃いヤツ。

 大淀(・・)、鎮守府の指揮を任せる。

 味方の呼応があるまで立てこもれ、持久戦だ」

「てーとく!

 無茶です、無茶苦茶です!」

大淀は、思わず叫んだ。

 

「まあ、こういうのもおもしろじゃねえか。

 一度同じ釜の飯を食った連中だしな、何もせずに見捨てるのは性に合わねえよ」

「そんなぁ・・・・」

 

「提督、あの、お夕飯までには帰ってくて下さいね。

 わたし、当てつけに朝までだって待ってますか・ら・・ね・・・・」

間宮は握ったばかりのおむすびを提督に渡しつつ、送り出す言葉を絞り出す。

息が詰まって、最後まで言い切るのに苦労した。

 

「生意気なやつめ。

 帰ってきたら、いたぶってやるからな。

 お、眼鏡、お前もドジってたら覚悟しとけ」

 

 = = = = =

 

十数分後、一艘の大型ボートが鎮守府を出港した。

 

「提督が出て行った。

 わたしは後を追いかける」

武蔵は、ためらいなく進路を提督の追跡コースへ舵を切った。

 

「武蔵!

 勝手な行動は・・・・」

「長門、彼女を連れ戻しに行くのは、命令違反にはならないんじゃない?」

「だな、空母群は、鎮守府の防衛を願う」

長門は、空母たちに視線を送る。

 

「仕方ないですね。

 鎮守府はみなさんが帰ってくるのを待ってますよ」

「一航戦の出番ですね。

 五航戦の出番は知りませんけど」

赤城、加賀を始め、空母たちは鎮守府に帰着した。

 

対空防御に自信のある艦娘たちは、戦艦たちに先行して、提督の後を追った。




また、生身で出張する提督。

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