後を追う武蔵。
彼を応援してくださいね。
「なんだよ、こいつら。
全然やる気がねえじゃねえか」
「姉御、そろそろ弾がなくなっちまいまさぁ」
「ダメ、こっちに合わせて包囲を変えてくる」
「どちくしょー、一思いにやりやがれー」
重巡4隻、駆逐艦4隻は、深海棲艦の圧倒的航空兵力に押されていた。
何機かの深()チビは、叩き落とせたが、艦娘たちは小破のまま消耗している。
= = = = =
「コノカンムスタチハ、カレノカンムスジャナイ」
「ナゼ、ワカル?」
「ウゴキガニブイ。
カレノハ、ニゲアシガ、ハヤイ」
「ソウ、ダッタラ、シトメル?」
「ソウスルト、カレト、ハナシガ、デキナクナル」
「・・・・モウスコシ、アソンデオク」
戦艦級と飛行場姫は、短い会話を交わした後、じり貧になっていく艦娘たちを眺めていた。
= = = = =
「おー、まだ生きてたかってか、損傷少ねぇな」
外洋に出てチビたちが乗り込んでいることに気が付いた。
チビたちと握り飯を分けて、チビたちが食い終わるころ、包囲網が見えてきた。
深海棲艦と艦娘の間にボートを割り込ませる。
「やっぱり、お前だったか」
「ヒサシブリ、マタ、アエタ」
深海棲艦戦艦級は、微笑んだ。
前回は、恐怖が先に立っていたので見間違いかと思ったが、冷静に観察すると見覚えがあった。
「あいにく、今日は弁当を持ってきてねえんだ」
「ソレハ、ザンネンダ」
そう、戦艦級とは将校クラブのある街で逢った少女だった。
あの時は尻尾の頭は無かった。
アレが艤装なのだろう。
「ネェ、レキュウ。
ワタシニ、ショウカイシテクレナイノ?」
もう一人の深海棲艦が会話に加わった。
「お前たちは、美人が多いな」
「フフフ、ニンゲン、コノヒコウジョウキガ、オダテニノルト、オモウカ」
そう言って見せたが、顔が引きつっていた。
(素直にうれしいのか?
まあ感情はあるようだから、わからなくもない)
「ちょっと待てよ!
お前ら、グルだったのか!?」
高雄が後ろで叫んだ。
提督が振り返る。
「そんなわけねぇよ。
こいつらが酔狂で俺を揶揄ってんだよ」
「ほー、その割に、ずいぶん親しそうだな」
高雄は提督の言葉を信じなかった。
「信じなくていいさ。
俺が身代わりだから、お前らは鎮守府に帰れ。
後のことは大淀に任せた」
提督は、深海棲艦の方に向きかえる。
「ヤクソクダ。
ダガ、アノ、カンタイハ、ゲイゲキスル」
飛行場姫の視線先には、駆逐艦たちが居た。
「あー、ちょっと待ってくれ。
あいつらは、俺の迎えに来ただけだから、手は出さないように命令する」
「コノジョウキョウデ、シンジロト?」
「提督、うふふふふっ。
あはははっ!
このまま勝っちゃえばいいじゃない」
荒潮がボートの縁で海面に浮かぶ深()チビに照準を合わせる。
「やめろ、戦意の無いヤツを撃つんじゃない!」
「何をきれいごとを言っていらっしゃるのかしら。
オレたちが命がけで戦ってきたんだよ。
お前たち軍人の指図は受けねぇーの」
≪パーン≫
= = = = =
深海棲艦の航空兵力を威嚇しながら、最初に駆け付けたのは初月だった。
しかし、それは彼女にとって不幸なことだった。
ほんの10m先で駆逐艦が発砲した。
その先に海面に浮かぶ深海棲艦の
そして撃ち抜かれたのは、提督。
初月には
ボートに突っ込むように駆ける初月。
ボートの縁でぐったりする提督を抱き起す。
「提督、提督しっかり」
彼の顔を見て絶望した。
右のこめかみから右目にかけて顔がなかった。
「あううあうあうあう」
荒潮が気を失いそうになる。
「キサマラーーーーー!!」
レ級の尻尾の砲身が包囲している8隻に向けられる。
「コレハ、ユルセナイ」
飛行場姫が、滞空中の艦載機に合図を送ろうとしたその時だった。
「やめてくれ。
お前たちが無駄に争うのは、み・・た・・く・・な・・ぃ」
一瞬意識の戻った提督は、手で深海棲艦に制止を促し、一言残して、またぐったりした。
血まみれの初月を見て、遅れて駆け付けた駆逐艦たちは立ちすくんでいた。
艦娘は、溢れるような出血はしない。
その見慣れない光景に未知への恐れを抱いてしまった。
「初月!提督はどうなった?」
「武蔵さーん、提督の、提督の顔が、顔が半分なくなってるー、僕、僕ーー」
武蔵が提督と狂わんばかりに叫ぶ初月ごと抱きかかえる。
初月の言わんとしたことは、すぐに理解できた。
俯いた提督の顔は見えないが、ドロドロと血糊が垂れてあっという間に血だらけになった。
武蔵は、ふたりを寝かせ、さらしを解いた。
提督の顔にさらしを巻く。
見る見るうちに赤黒く滲んでくる。
どうなる!提督!