ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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わたしは帰ってきたー!

提督が帰ってキターーーー!

彼を応援してくださいね。


第44話 失ったモノ得たモノ<中編>

執務室に荷物を置いて、食堂に向かう。

 

「中尉、あの荷物はなんだ?」

「えーっと、着替えとかですけど?」

「大型のキャリーバッグが4個って、多くないか?」

「中佐は、男だからわからないんです」

「そうか?」

「そうです!」

自信に満ちた中尉のさまを見て、首を傾げながらも納得する提督だった。

 

 = = = = =

 

食堂に入ると艦娘たちが立ったままでいた。

 

「俺が生きていて残念だったな、キヒヒ。

 気楽な日々は今日終わるぜ」

復活の第一声で、艦娘たちを脅しておく。

 

「てーとく、お戻りになるのをお待ちしておりました」

「ほう、眼鏡。

 早速ゴマすりか。

 いいぜ、今晩可愛がって、ヒーヒー泣かしてやる」

「え!あ、あの、傷に障りませんか?」

「目ん玉が吹っ飛んだだけだ。

 お前を泣かすのに支障はねえよ」

眼鏡は、俺の顔を見ようとしなかった。

(そうだろう、そうだろう。

 とうとう俺の餌食になるんだ。

 死にたくなるくらい苦痛だろうよ)

 

「提督、それは軽巡には荷が重い。

 我ら、戦艦と空母の連合艦隊で、いかがだろうか?」

「ちょ、長門さん!犠牲になるのはわたし【だけ】で充分ですから」

「おいおい、大淀、そういうことなら、オレが引き受けてやる。

 提督とおそろいだからな」

そう言って艦娘をかき分け前に出てきて、親指で眼帯を指し示す生き生きした生巡だった。

「いいえ、あなた方には譲れません」

加賀が口を挟むと食堂内が険悪なムードになる。

 

「中佐、全員面倒見ちゃう?」

「無茶を言うな。

 変な気を起こされたら、生き延びたのに八つ裂きにされるわ。

 あー、気が削がれたから、今の話は、なしだ」

小心者の提督は、結局ビビってしまった。

 

「ワレワレガ、アイテヲシヨウカ?」

「キガイヲクワエナイト、ヤクソクシテアゲル」

 

 = = = = =

 

陽炎ちゃんの知らせを聞いて、もう何も手につかなかった。

「マミヤ、ウレシイカ?」

「はい、レ級さんも嬉しいのでしょう?」

「ウレシイ。

 シンジテイテモ、オチツカナカッタ」

レ級は、二パ二パと笑う。

「レキュウニ ツラレテキタガ、カレハ、キョウミブカイ」

飛行場姫も微笑む。

(提督は、わたしたちの敵にも・・・・)

 

廊下から足音がしたのか、艦娘たちが立ち上がる。

傷の具合は、中尉さんから教えてもらっていた。

陽炎ちゃんの態度を窺うと思ったよりも酷くないみたいで安心していられる。

 

間宮は、ちらりと傍らにいる武蔵を見た。

彼女は提督の傷の深さを知っている。

提督が医局に収容されてから、ほとんど食べていない。

願掛けの【断ち物】で食事を断ってきた。

今日から食事ができるだろう。

間宮は、しばらく武蔵の好物を拵えようと思った。

 

 = = = = =

 

「ちょっと待て。

 深海棲艦が、なぜ俺の鎮守府の食堂で飯食っているんだ?」

その言葉で飛行場姫の頬のケチャップをレ級が拭い取った。

 

「カンサイキヲ カバッテクレタカラネ」

レ級は、二パ二パと笑った。

「ゼイジャクナ ニンゲンニ シテオクニハ、オシイ」

飛行場姫は、その白い肌が赤くなったように見えた。

ケチャップのせいかもしれない。

 

「で、ウチの備蓄を減らしてんじゃねえよ」

 

「それが、食料は定期的に持込みされてまして」

眼鏡が言いづらそうに説明をする。

「それで駐留を許してるのかぁ?」

「はい。

 今もパトロール艦隊に同行している戦闘艦もおりまして・・・・」

「センカンセイキ、タキュウ、ヲキュウ タチダ」

レ級は当然のように教えた。

 

「誰かわかるように説明してくれ。

 現状が想像の範囲を超えている」

 

肩に深()チビとチビたちを乗せた提督がひとり唸っていた。

 

「中佐、モテモテだね、アハハハ」

中尉の笑い声が、食堂の険悪な雰囲気を霧散させた。




もうカオスな鎮守府、高雄一家はどこに。

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