ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

94 / 111
提督が眼球を失う原因になった8隻。

彼女たちの正体は。

彼を応援してくださいね。


第46話 流離の艦娘艦隊

「謹慎って、人間だったら死んでんじゃねえか?」

 

鎮守府の裏手に鉄骨が置かれていた。

 

「大丈夫です」

眼鏡をツイっとする眼鏡。

 

「お前たちもだんだん俺が判ってきたな、キヒヒ・・・・

 尋問するから全員出せ。

 汚れてそうだから、風呂にも入れろ」

「そのような処置は必要ないかと」

「臭かったら俺が嫌なんだよ」

どうも横にいる中尉が俺の顔を見ている気配がするが、右からなので見えていない。

死角ができていることに慣れないと不便だな。

 

高雄たちは、あの場に居合わせた艦娘と深海棲艦に袋叩きにあったらしい。

轟沈はしないように手加減されたとのことだったが、穴が掘られ鉄骨が蓋代わりに置かれ、閉じ込められてきた。

 

明石がクレーンで鉄骨を退()けていく。

 

「艦娘の力でもどうしようもないってことか」

1隻づつ仰向けに寝かされ、鉄骨の重みで身動きのできないだろう。

手首の動く範囲は、土が削られていた。

(最初は抗ってみたわけか)

鉄骨がすべて退けられると8隻がぐったりと横たわっていた。

「懐かしい眺めだな、キヒヒ」

『てーとく、状況は違いますよ』

眼鏡から意味不明のつぶやきが聞こえた。

 

襟元を掴まれズルズルと引きずり出されてきたボロボロの8隻。

同じ艦娘扱いは、されていない。

 

「意識がないんじゃ話にならん。

 このまま入渠させろ」

「はい」

眼鏡が手短に返事をすると艦娘たちが意識のない8隻を風呂場まで引きずっていく。

 

 = = = = =

 

「こらこら、貴官は入ってんじゃない」

「えー、わたしもおフロー」

「だったら、水着か何か着なさい」

「そんなの、持ってきてないよー」

入渠のため、風呂場に向かおうとしたら、全力疾走の中尉の後姿が見えた。

その後、今のやり取りとなった。

 

「中佐、小官は気にしないから」

「俺が気にするんだよ」

「えー、中佐のエッチー」

「ああ、俺の性欲は危険だから、早く出なさい」

どうも中尉は俺に対する警戒心が希薄だ。

 

「提督、こいつら先にぶち込んでいいか?」

生巡が痺れを切らして聞いてきた。

持ち上げたその腕には、荒潮がぶら下がっていた。

 

「ああ、そうだな。

 中尉、艦娘を放り込むからな」

提督は、艦娘たちに道を開けた。

 

 = = = = =

 

ボロボロの8隻は、デッキブラシで洗われている。

俺はそれを眺めている。

 

原因は中尉の暴走だ。

艦娘たちに俺を湯船に連れ込むように命令した。

 

もう何が何だかわからない状況になっている。

 

制服は水を吸って重くなり、シャツは肌に張り付き気持ちわるい。

やむを得ず脱いだ。

 

諦めて湯船で中尉と並んで湯につかっている。

「えへへー、裸の付き合いだね、中佐」

「ああそうだな」

極力視線を動かさないように返事をする。

 

「もう、人と話すときは相手を見ないとだめだよ」

中尉が顔を掴んで、自分の方に向ける。

油断していてされるがままになった。

 

思ったよりボリュームのあるものが浮いていた。

「どうですか、ご感想を」

中尉が照れ気味に聞いてくる。

「貴官の夫は、幸せ者だな」

こうなれば、大人の対応をするしかない。

「イシシ、誰だろうね、その幸せ者さんは?」

「俺が知ってるヤツか?」

何人か心当たりがあるから、聞いてみた。

中尉は、のぼせたのだろう。

真っ赤な顔で風呂から出て行った。

「ヤレヤレ、アレじゃ告白を待つ側だな」

俺は、さっきより汚れが落ちてきた8隻を眺め直した。

 

 = = = = =

 

「オレたちをどうするつもりだ!」

「姉御たちは何もしてねえよ、アタイだけ解体して収めてくれ。

 気が済むまで犯した後でいいから!」

湯船に放り込まれた8隻は、お湯を飲んでしまったせいか、意識が戻ってまくし立ててくる。

 

重巡たちが前に出て駆逐艦たちを庇うように喚いてくる。

それを乗り越え荒潮が自分だけの責任だと言い張って引き下がらない。

 

「お前らはもう家族だ。

 お前が解体されたら、少なくともオレも同じだ」

「姉御が・・、ダメだよ。

 みんなが、みんなが・・・・」

かばい合う艦娘。

鎮守府の艦娘たちは、あきれ顔で眺めていた。

 

「おーおー、お涙頂戴だな。

 お前らに選ばせてやる。

 一つ、荒潮だけ解体する。

 二つ、全艦解体する、キヒヒ。

 最後のご奉公だ」

「チキショー、お前ら人間に命を弄ばれて、轟沈していく艦娘の恨みがお前らを許さねえからな」

高雄はその整った顔を酷く歪め罵ってくる。

 

「おもしれー、やってみろ。

 だがな、お前らはそんな生温いことで終わらせねえよ、クヒヒ」

湯船の縁に拡げた腕を掛けどっかり座るブラックな提督。

その顔は、艦娘たちに異質な不快感を与える。

 

「ど、どうしようってんだよ」

虚勢を張って言い返す高雄。

 

「三つ、お前ら俺の直属艦隊に身を(やつ)す。

 お前らに選択権はねえ、俺が死ねといえば、死ぬまで戦う艦隊になるんだよ、キヒヒ、イーヒヒ」

提督の下卑た笑いが風呂場に響く。

 

≪バギョッ≫

艦娘たちが手に持ったデッキブラシを握りつぶす音がした。




デスボランティア(特攻)艦隊の誕生です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。