簡単には受け入れられません。
彼を応援してくださいね。
「フッ。
いーっぱいお嫁さんか」
高雄は失笑する。
「提督、あんたも他の連中と同じだな。
はいはい、やさしいやさしい」
「うるせーよ、俺は優しくなんかねえって、言ってんだろ」
高雄の言葉にイラっとする。
(俺がいつ、お前らにやさしくしたってんだよ)
「えっ!
いや、今、お嬢ちゃんがあんたは優しいから艦娘に慕われてるって」
高雄は戸惑った。
自分の目の前にいる提督は、自分を肯定する評価を否定してくる。
「だから、そいつらは慕ってんじゃねえよ。
俺に仕返しするために虎視眈々狙ってんだよ。
立場を利用して、セクハラや嫌がらせを重ねるヤツが好かれるわけがねえだろ」
「いや、だって」
「だってもクソもねえよ。
ちょっと用事があるから、お前ら、ここで子供の相手しとけ」
提督は、寮母さんと一緒に庁舎へ向かった。
中尉は提督の右腕に抱きついていた。
「どうした、納得いかないようだな」
高雄たちに武蔵が話し掛ける。
女の子を抱き上げ肩に乗せた。
「この程度で人間を信じられるわけないだろ。
お前たちは、抱かれていいように使われているだけなんだよ」
高雄は不機嫌を隠さなかった。
「やっぱり、そう考えるのが普通だな」
武蔵は否定しなかった。
「で、どれだけ可愛がられ、どれだけ甘い言葉を囁いてもらったんだ。
しかしな、それは全部嘘だ。
あいつらは、オレたちのことなんか、ただのモノとしか見ていねえよ」
高雄は、どこかわかった風な態度の武蔵に突っかかる。
「貴艦、どうしてそこまで毛嫌いするか聞かせてくれんか」
武蔵は、高雄の態度の根底にある何かを確かめておきたかった。
「ああ、いいぜ」
高雄は思い出したくないのか訥々と話し始めた。
昔は普通に鎮守府に配属されていた。
提督は優しく頼りになり、人柄も良かった。
この提督のためなら、全力で深海棲艦と戦える。
轟沈することも厭わなかった。
しかし知ってしまった。
ある作戦で駆逐艦が轟沈された。
鎮守府は悲しみに包まれた。
艦娘の犠牲を悼み、涙を流す提督。
ちょうど秘書艦の当番だったその日、執務室の前で書類が風で飛ばされた。
拾おうとしゃがんだとき、窓からの風音が止んで代わりに執務室の話し声が聞こえた。
≪今回は、貴官の勝ちだ。
・・・・わかってる、2万だったな。
替えの利く駆逐艦は、大した性能じゃないからな。
煽てておくと戦果を挙げるか轟沈だから
次は、勝たせてもらうぞ、アハハハ≫
「あいつらは駆逐艦の成果で賭けをしていた。
艦娘はだたのモノだったんだ。
悔しいのは、態度に騙され、嘘の涙を信じていたことだった。
その次の出撃で、鎮守府に帰らなかった。
そうこうして、この8隻になったわけさ」
高雄は思い出した悲しみに唇を噛んでいた。
「そうか、酷い提督もいるものだな。
では貴艦の目で確かめるといい。
あの方は、ブラックな提督だからな」
どこか愉しげ話す武蔵だった。
「どういう意味?」
高雄の混乱は続く。
「あの方は、物資の横流しはしているし、ブラックさを隠そうとはしない。
あの通り態度もよくないし、罵り、殴る蹴るも躊躇しないな。
そういうことだ」
ますます信頼に値しない人物像が出来上がってくる。
「何が言いたいの?」
高雄は混乱する。
「貴艦は、肩に妖精と深海棲艦の艦載機を乗せた提督を知っているか?
深海棲艦が出入りする鎮守府は?
・・・・もう一つ言っておこう。
我らは、誰一人まだ一度も抱いてもらったことはない。
そういうことだ」
そういうと女の子を肩に乗せたまま、立ち去っていった。
残された8隻。
= = = = =
「おいおい、どうした、何突っ立てんだ?
中尉、貴官は嫁入り前なんだぞ。
おっさん相手にじゃれつくんじゃない」
提督が戻ってきた。
相変わらず右側に中尉。
「提督、あんたこの鎮守府の艦娘に手を出していないって本当か?」
高雄はことの真相を確かめようとした。
「何言ってんだ、俺がそんな道徳的な人間に見えるのかよ、キヒヒ」
提督の言葉に高雄の表情が柔らかくなった。
提督から見えない角度で中尉が手を振って否定するゼスチャーが見えたからだ。
実は高雄たちは元、いや今でも美鳳会の会員だった。
「おう、お前らの艦隊名を決めたぜ。
よく聞けよ」
「艦隊名?」
「おうよ、俺の直属艦隊にふさわしい名前」
ペットに名前を付けて楽しげにする子供という喩えが合いそうな表情だった。
「艦隊名は【独立愚連艦隊】だ」
独立愚連艦隊、高雄たちを登場させた時から決まっていました。