ブラック鎮守府で我が世の春を   作:破図弄

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高雄たちは過去と折り合いをつけられるでしょうか?

まだ鎮守府の仲間入りをしていません。

彼を応援してくださいね。


第3話 わだかまり(拒み)

「ほーしょー、熱燗ヒトツー」

「はーい、ちょっと待ってくださいね」

中尉は食堂に戻ってきた。

 

機嫌がいい。

武蔵はその様子を見て、何があったかすぐに判った。

 

しばらくすると直属艦隊8隻が戻ってきた。

武蔵はその様子を見て、何を見たのかすぐに判った。

 

「おやー、どうしたのかなぁー。

 なんかしんみりしちゃってー」

その声は食堂に通った。

中尉が直属艦隊を茶化すように顔を覗き込む。

 

食堂にいた艦娘や深海棲艦たちが一斉に中尉の声に振り返る。

そして、一塊の艦娘集団を注視する。

 

 = = = = =

 

高雄は、自分に突き刺さる視線に腹を射抜かれる錯覚に襲われていた。

軽い痛みに留まらず震えが始まってしまった。

それ以上に一つの恐怖がゆっくりとその口を開いていく気がした。

自分には向けられないが、確実に近寄ってくる。

今、【恐怖】が開いた口は、駆逐艦を敵と認識して捉え、喰み摺り削っていく。

舎妹の駆逐艦の心の芯はゴリゴリと削れ細っていく。

 

これほど心細い思いは、初めてだった。

ある人を信じようと思った矢先、その先に道がなかったことを思い知らされた。

 

このまま荒潮が抵抗しても、その船体を引きちぎられ、肉を剥がされる轟沈するかもしれない。

砲撃や雷撃の情けは期待できない。

食堂の誰もが艤装を展開する素振りも見せない。

もし荒潮が轟沈したら、私たち、少なくとも私は冷静でいられないだろう。

一人でも多く道連れにして、この命を終わらせよう。

「最後に信じようと思ったところで終わりか・・・・」

 

 = = = = =

 

「あーあ、言っちゃった」

残念そうな中尉。

 

「・・・・なぁんてね。

 高雄たちも判ったら、明日、中佐に謝ったらそれでいいよ」

ニシシと笑う中尉だった。

 

「え、でも、私たちは提督の、その、償えない・・」

高雄は言い淀んでしまった。

罪を認めると荒潮が償わないといけない。

 

「姉・・高雄さん、荒潮が償います。

 けじめをつければ、きっとわかってくれますよ」

≪≪荒潮・・・・≫≫

高雄と6艦は、言葉が出なかった。

 

<お前らに選択権はねえ、俺が死ねといえば、死ぬまで戦う艦隊になるんだよ、キヒヒ、イーヒヒ>

提督の言葉がよみがえる。

他の艦娘たちに向けられる感情が私たちも同じになるだろうか?

(もしかして、本当にこのまま決死艦隊として扱われ・・・・)

さっきまでの昂っていた気持ちが氷水を浴びせられたように醒めて冷えていく。

 

「だいじょぶ、だいじょぶ。

 中佐はね・・・・、アハハ。

 自分のことは、どうなってもね・・・・ひとの気持ちも知らないで」

中尉は明るかった表情を徐々に萎れさせ俯いてしまった。

 

 = = = = =

 

「カンムスハ イロイロアルノダナ」

「ソウ ナカナカ リカイデキナイ」

「・・モグモグ」

≪≪レキュウ、サッキカラ ニクバッカリ!≫≫

レ級は、飛行場姫、戦艦棲姫の作ったわずかな隙を突き奇襲を成功させていた。

 

「ヤサイクエ!」

「モウ ニクハ ワタサン!」

この日、飛行場姫と戦艦棲姫の波状攻撃がレ級を瞬殺した。

「モウ、オナカイッパイ、レ」

 

「みなさん、まだ、お肉有りますよ」

≪≪≪ホーショー、ナカマニ ナレ≫≫≫

 

鳳翔が深海棲艦になる日も近いかも。

 

 = = = = =

 

「どう思う?」

「どうとは?」

戦艦は問い、眼鏡戦艦は問いの意図を確かめる。

「高雄たちを受け入れるのか?」

戦艦は、素直に受け入れられなかった。

謹慎という拘束しただけでは、気が収まらなかった。

「同意を求めるなら、筋違いだ。

 この武蔵もここの艦娘ではない。

 クスッ、提督について行くことになりそうだ」

「なっ!」

武蔵は不敵な微笑みを長門に向けた。

 

ふと、武蔵の顔から微笑みが消えた。

「どうかした?」

「軽巡たちがいない」

長門の問いに武蔵が答えると長門も食堂を見回した。

 

「しまった!

 空母たちは釘付けだが、軽巡や駆逐艦は、食欲の次に移行してもおかしくない!」

武蔵は、酒で判断を誤ったと思い込もうとしたが、後悔しながらお酒が美味しかった。

 

「お腹減ったねぇ。

 すき焼きって、どんなだろう」

パトロール艦隊とカ級が食堂に入ろうとしたその時、数隻の全力出撃に吹き飛ばされた。

 

提督のいるであろう私室で夜戦が始まろうとしていた。

鎮守府に風雲急を告げる。




後半戦へ続く。
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