そのドラゴンは不可侵領域である空を飛び、バーストリンカー達を恐怖のどん底に陥れるのだった。それに相対するは唯一の飛行アビリティを持つバーストリンカー、シルバー・クロウ。今、その激闘の真実が明かされる。
嘘です。ネタです。毒電波を受信しました。コメディの練習作です。無双とかではありません。チートっぽいのに微妙に使えねぇスキル構成です。少しでも面白いと思って頂けると幸いです。
ハルユキは黒雪姫とタッグマッチに挑んでいた。領土戦以外では滅多に出陣することのないブラック・ロータス。それが中野に現れたとあって加速世界ではちょっとした祭りになっていた。
「先輩と一緒ならどんな相手でも安心ですね」
「ハルユキ君、相手を侮るなよ。……それに私にだって勝てない相手がいることを忘れちゃいけない」
何戦か行い、休憩のためにカフェでコーヒーを飲んでいた時の話だった。その日は調子がよく勝ち越しが既に確定している。
「そんな……先輩でも勝てないなんて、もしかして他の王ですか?」
「王ではないぞ、レベルも6だった筈だ。ふむ……ちょうどいい、彼等もこの祭りに参加しているようだ。次の対戦相手は彼等にしよう」
そう言うと黒雪姫は次の対戦相手としてその「誰か」を選択する。
「え!?ちょっと待ってくだ……」
そして視界が変遷する。普段の視線よりも遥かに高くなる。この変化にもだいぶ慣れた。シルバー・クロウの姿だ。隣にはブラック・ロータスが立っていた。
「ここは……砂漠ステージですね」
シルバー・クロウの言う通り一面を砂で覆われた何もない大地、砂漠だった。
「ふむ、ステージもお誂え向きだな」
「先輩?……相手はマーキュリー・ドラゴニアン?にフレイム・トーチ、ですか。これが先輩も勝てない強者の名前……」
両者とも黒雪姫が言った通りレベル6、レベル上げが非常に難しいこのゲームにおいてレベル6とはかなりの強者を意味する。強敵の予感が全身を高揚させる。
「強者、強者か……間違いではないんだが、な。まぁ、シルバー・クロウ、君にとっても意義深い相手である事は保証しよう」
その時、砂漠の丘陵を越えて二つの影が現れる。そう遠くはない。一人は頭の上から炎を噴き上げている赤銅色の女性型。そして何より目を引くのは銀に輝くボディを持つ異形。その造形はドラゴンを人の形に押し込めたような強大な雰囲気を漂わせている。
「お前が今話題の飛行アビリティ持ちか?」
重厚感すら伴った声でマーキュリー・ドラゴニアンが問う。
「そうだ!久しいなドラゴニアン」
「――黒の王か、いずれ挨拶に向かおうと思っていたが、ちょうど良い。勝ち逃げは許さん」
「フッ、勝率ならお前の方が遥かに高いだろうに」
「撃ち落とされた屈辱、今でもはっきり覚えている。だが、あの時のままだと思うなよ、黒の王」
「おおっ、怖いな。……だが、今日のメインは私じゃないこっちだ」
そう言ってブラック・ロータスがその刃となった腕をシルバー・クロウに向ける。突然話に挙げられたシルバー・クロウは動揺する。
「シ、シルバー・クロウです。よろしくお願いします!」
「うむ、礼儀正しいな。マーキュリー・ドラゴニアンである」
「フレイム・トーチよ、よろしくね」
「よし。提案なのだが、まずはシルバー・クロウと一対一で戦ってくれないか?制限時間は15分だ」
ブラック・ロータスがそう提案する。タッグマッチなのに一対一を希望するのは珍しい事だ。それも一対一を二組行うのではなく、ドラゴニアンとシルバー・クロウのみ戦うらしい。
「ほう。よかろう。若者に胸を貸すのも古参の役目よ。……期待されているな若人」
「は、はい……」
そういう事になった。ブラック・ロータスとフレイム・トーチがちょっと離れた位置から観戦している。相対して判る。この人は本当に強い。泰然自若としていて何をしても無駄そうな雰囲気が漂っている。だが、こんな所で立ち止まっていても仕方がない。そう腹を決め。ドラゴニアンに突撃する。
羽はまだ使わない。まずは通常の格闘戦から入る。そう思った時だった。頭を過る物がある。羽、そう羽だ!ドラゴニアンには羽があるのだ!まさか飛行能力!?黒雪姫先輩は唯一の純粋飛行アビリティと言っていたが、まさか他にも居たのか?
そんな迷いを抱えたまま、右ストレートをドラゴニアンに叩き込む。ドラゴニアンは動かない。まるで何の反応もせずシルバー・クロウの自由にさせる。
ズボッ!
そんな音とともに想定した感触もなく拳が
「な!?」
その気持ち悪い感触につい跳び下がる。ドラゴニアンの身体に大穴が空いていた。だが、動画を巻き戻しているかのように傷が埋まっていく。
「ハッハッハ、どうだ?俺の身体は不思議だろ?」
「これは……水銀っ!」
「ご名答」
マーキュリー・ドラゴニアンの体力ゲージを確認する。僅かに減っている。だが、パンチが直撃したような減りではない。パンチはあまり有効ではないようだ。……黒雪姫先輩の言葉が思い出される。
「
「そんな……こんなのどうやって攻略したら……いや、諦めてたまるか!」
「その意気や良し!」
一撃のダメージが稼げないのなら、量で稼ぐ!
「これでも、ダメなのか……」
飛び散った水銀が意思を持って動き回り一塊になる。そしてグネグネと動き元の何のダメージも負っていなさそうなドラゴニアンが現れる。
「おおっ!やるのう。さて、ではこちらからも行くとしようかの」
その宣言に恐怖を覚える。そう、今までドラゴニアンは打たれる一方で何もしてこなかったのだ。そして、渾身の連撃もゲージの6分の1も削れていない。
ゆっくりとドラゴニアンが近づいてくる。恐怖にすくんだ足に喝を入れ、構える。どんな攻撃をしてくるのだ?羽をいつでも動かせるように準備して待ち構える。
ドラゴニアンの大振りの一撃、風切り音を立てながらパンチが迫る。ダックするように避け、カウンター気味の一撃を放り込む。直撃。だが意に介さない。即座に左、右、右とパンチが飛んでくる。辛うじて躱す。
ここまでの攻防で分かった。ドラゴニアンは決して動きが早いわけじゃない。むしろ鈍重だ。この速度であれば躱しながら打つことは難しくない。だが、
そして再び大振りの右。またカウンターを加えられるチャンスだ!そう思い右の拳を叩きつける。そして衝撃、身体の均衡が失われる。
一拍遅れて理解する。視界の外から飛んできた尻尾に強かに打ち据えられ、地面に叩きつけられ背中を強打したのだ。相手は人外、人の常識で考えたらダメなのだ。
今の一撃で一体どれだけダメージを受けたのか、即座に立ち上がり跳び下がるながらチラリと自分の体力ゲージを確認する。
「……え?」
あまり減っていなかった。
「クックック、相変わらず非力だな」
それまで黙って観戦していたブラック・ロータスがつい、というような感じで感想を漏らす。
「シルバー・クロウ、
ヒントをくれるようにブラック・ロータスが言う。
「つまり、攻撃にも
「……よく分かったのう」
「そいつはマーキュリー・ドラゴニアン。通称、泥仕合請負人、残念ドラゴンだ」
そこからの試合はまさしく泥仕合だった。お互いに交換するダメージが微量なのだ。そうなってくるとこちらはどうしても連撃を意識した物になる。その連撃の隙間を縫うように思いもかけない場所からドラゴニアンが一撃を加えてくる。ドラゴニアンは何かに叩きつける事で追加ダメージを狙う事でダメージを稼いでいく。
そして15分、お互いゲージを半分程度残したまま時間切れとなる。
「ゼェゼェ、先輩、どうにか引き分けに持ち込みました……」
「うん、よく頑張ったシルバー・クロウ。彼は緑のレギオンでも屈指の壁役だからな。こういうのも居ると知っていて欲しかった」
「なるほど、壁に打ってつけですね……、」
実際、どれだけ打たれてもほとんど削れない盾役というのはとてつもないアドバンテージだろう。
「それで、先輩、ここからは普通にタッグマッチですか?」
「……いや、ここからが彼等の真骨頂であり、君に見せたい物だ。……いいだろう?フレイム・トーチ?」
「もちろんよ!行くわよ、ドラゴニアン」
どうやらまだ彼等には彼等にしかできない奥の手があるらしい。
「ふっふっふ、お前だけが飛行できると思うなよ!」
「やっぱりあの羽は飛べるのか!?」
結局、15分の戦いの中では羽を使って飛ぶことはなかった。だが、羽を使わなかった訳ではない。むしろ巧妙に使っていたと言えるだろう。時に第三、第四の腕として、時にその面積を活かして視界を遮って、尻尾と羽、それを十全に活用しきってドラゴニアンは戦うのだ。
「いや、あれは攻撃の要であっても飛行のためじゃない。そう言えばあれを動かせるようになるまでは彼は弱いバーストリンカーの一人だったな」
ブラック・ロータスが過去を懐かしむように言う。
「じゃあ?飛ぶんじゃないんですか?」
「まぁ、見ていろ。おもしろい物が見れる」
「見よ!俺達の必殺のフォーメーションを!」
そう言うとドラゴニアンの姿が崩れ始める。そして丸い籠のような形状に変化する。
「え?」
そして出来上がった籠の中にフレイム・トーチが乗り込むと、今度は天井ができる。そしてフレイム・トーチが気合を入れる。すると頭にある炎が勢い良く噴き上がる。天井が膨れるように変形していく。
「飛んだ……」
唖然と呟く。球形の形まで膨れ上がる天井。その姿を今なら何なのかはっきり分かる。気球だ。そしてドラゴニアン達は空高く飛び立っていく。
「どうだ、シルバー・クロウ、凄いだろう?」
「はい……あんな、あんな飛び方もあったんですね」
「どうだ、シルバー・クロウ、これがお前が現れるまで空を制した必殺のフォーメーションだ!」
空中に座すドラゴニアン達が言う。
……だが、ここからどうするのだろうか?フレイム・トーチが遠距離攻撃を行うのだろうか?
「さて、シルバー・クロウ、
ブラック・ロータスが意味ありげに言う。そう言われて周りを確認する。空を飛んでいるドラゴニアン達以外におかしな点は……
あった。
「気化した水銀による毒と腐食の複合攻撃ですか……」
「その通りだ。シルバー・クロウ」
このままではマズイ、ダメージの量がこちらの方が多いのだ。おそらく重い水銀が下に流れていくからだろう。特にシルバー・クロウのダメージ増加速度は他の人間の比じゃない。
「飛びます!」
「私も連れて行ってくれ」
「はい!先輩」
ブラック・ロータスを抱えて空へと飛び上がる。幸い水銀によるスリップダメージで必殺技ゲージはかなり溜まっている。ドラゴニアン達をすり抜けてさらに上空に陣取る。
「やっぱり」
その高度まで上昇すると自分たちのダメージがなくなる。
「……このまま待っていても良いんですが……」
「ああ、そうだとも。そんなのネガ・ネビュラスの戦いじゃない!」
ブラック・ロータスを指示通りにドラゴニアン達の上空から落とす。一条の弓矢となったブラック・ロータスがドラゴニアンの気球を貫く。そのままフレイム・トーチを巻き込んで、勢いもほとんどそのまま地上へとダイブする。
「トーーーーチ!!!」
ドラゴニアンの絶叫が響く。が、無情にも高空から地面に叩きつけられたフレイム・トーチの体力は跡形もなく吹き飛ぶ。フレイム・トーチを緩衝材にしたブラック・ロータスが、自身もボロボロになりながらも右手を上げ勝鬨を上げる。が、そこで水銀のスリップダメージにより、ブラック・ロータスも倒れる。
(黒雪姫先輩ッ!)
口の中で呟く、そしてブラック・ロータスの後を追うようにドラゴニアンに突撃する。大穴を空けられ、火元も失ったドラゴニアンはゆっくりと下降していた。それに追いつく。
だが、どうする
否、シルバー・クロウにはまだ一つ試していない技があった。
「必殺!《ヘッド・バット》」
両腕をクロスさせる。みょんみょんみょんという冴えない効果音とともに頭が光り輝く。そして光が最高潮に達した時、大きく腕を左右に開きながら頭を突き出す。
「何ィ!」
降下中という回避も取れない状況で放たれた《ヘッド・バット》をもろに受けるマーキュリー・ドラゴニアン。そこには
だが、《ヘッド・バット》は、通常の物理/打撃属性だけの技ではないのだ。装甲透過、非指向性の衝撃ダメージを与えるエネルギー/光属性をも兼ね備えている非常に強力な一撃を相手に与えることができる。
致命的な大ダメージを負い、落下していくマーキュリー・ドラゴニアン。そして激突音、粉々になったマーキュリー・ドラゴニアンは復活する事はなかった。
視界一杯に広がるWIN!の文字列
それを確認してシルバー・クロウは勝利の雄叫びを上げるのだった。
こんなデュエルアバターがいてもおもしろいんじゃないかなーと
原作を途中までしか読んでいない上に大分前に読んだっきりなので何かおかしな点があるかも知れません。