これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「……なるほど」
どこかあか抜けた、比較的明るめな声が、店内に響く。
カウンターに向かって、並んで座る二人の少年。
彼らの前に、カウンターの長机を挟んで椅子に座る、中年の男。
GGOではなかなか珍しい光景が、そこにはあった。
「……だめ……か?」
そう言って、二人のうち、まるで少女のような方の少年、キリトは、隣に座るもう一方の少年、タスクの顔をのぞき込む。
「……まあ、さっきも言った通り、僕は一向に構いません」
するとタスクは、案外快く承諾した。
だが……
「ただ、その……」
「?」
タスクが、言葉を続けようとして、何故か口ごもる。
「店主さんの言うとおり、心配なのも事実です」
「……!」
「事件後である現状、この世界から一旦いなくなるのは……まあはっきり言えば、
「そう……か。そうだよな」
そしてタスクが、口ごもりつつなんとなそう言いきって、キリトを見返した。
その瞳を見て、キリトは「答えは出た」と言わんばかりに目線を落とす。
店主は、タスクが直接、自分の口から言ってくれたことに、少し安堵を覚えつつ、彼ら二人を見ていた。
申し訳ないし、キリトの気持ちは痛いほどわかるが、こればっかりはどうしようもないのだ。
店主が、俯いたまま動かないキリトを見つめ、申し訳なさに身を浸す。
……するとその時、今度は店主に、タスクが話しかけてきた。
「でもね、店主さん」
「……!」
その語りかけに、店主はすぐに、どこか違和感を覚える。
そしてその違和感の正体は、すぐ現れてきた。
「僕は、正直、キリトくんの気持ちに答えたい。彼と剣を交えてみたいです」
「……!」
「ほら……わかるでしょう。武者震いのような……ね?」
「でも……!」
キリトが、驚いた顔をして、タスクを見る。
そして店主が、少し焦り気味にタスクに食いつく。
するとタスクは、そんな彼らの動きを頷きで諫めつつ、店主をまっすぐ見上げた。
「ええ、分かってます。これ僕のわがままです」
「!」
「だから……いえ、だからこそ」
そう言って、タスクが言葉を区切ったその時。
「僕は、「
「……!」
「僕のわがままを……受け止めてくれますか」
タスクは、体ごと回転椅子で180度回転させ、語りかけた。
後ろの席に並んで座る、ウォッカとフォートレスに。
いつの間にか射撃演習場への廊下付近の壁に寄りかかっていたラクスと、
その奥で仁王立ちしているカチューシャに。
そして……シノンに。
「……!」
ぴん……と、その場に緊張が張り詰める。
語りかけられた皆が皆、真剣な顔をしてタスクを見ていたし、
キリトや店主に関しては、驚きの目をしてタスクを見ていた。
そんな中でも、タスクだけは笑顔を保ち、押し黙って答えを待っている。
「……」
そしてついに、永遠にも思える長さの沈黙を経て、タスクの語りかけに答えたのは、カチューシャだった。
「タスク。……いや、
「はい?」
「……行ってこい。
「……!」
「ふふ……ありがとうございます。よろしく頼みます」
カチューシャの言葉に、微笑んで答えたタスクの言葉の後。
いつの間にか微笑んでいた彼らの間には、もう既に、張り詰めていた緊張などなかった。
自信に満ちた彼らの笑みと、それを呆然と眺めるキリト。
そして……
「はぁ……わかったよ。そうすることにしよう」
仕方ない……というより、だろうな。と、言わんばかりに、頭を掻きつつ微笑む店主が、そこにいた。
「……!」
その時、キリトは理解した。
彼らが何故、こんなにも強いのか。
何故、あれほど強者たりえる雰囲気を、全員が醸し出すことが出来るのか。
「ということで、よろしくお願いします!キリト君」
キリトは、初めて、そんなことを言いつつこちらを見るタスクのその変わらない無邪気な笑顔に、
「あっ……!ああ……。よ、よろしく」
いつもありがとうございます!
駆巡 艤宗です!
いやー最近、繋ぎ回が多めですね(笑)
もう少ししたら、ド派手に話を進めていく所存です。
お楽しみに!
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