オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし 作:ArAnEl
でも一応結果的に増えたからもう一人なんかじゃない!
アルドゥインは困っていた。
前回の戦闘で使用した霊体化が未だ解けないのだ。おおよそ3日程度だと思っていたが、甘かった。調子にのって一番強力な霊体化なんか使うのではなかったと今更ながら後悔している。
周りには翼竜が未だコバンザメのように追従している。
時々食欲を満たすために降りるがまたすぐついてくるのだ。
なにもしてこないあたりが気味が悪い。しかし霊体化してるのでこちらからのアプローチも無理。
だからすこし困っているのだ。
まあ本音は霊体化だと何もできないからつまらないからなのだが。
(うーむ、次からは3フレーズではなく1フレーズにするか。しかし本当に退屈だな)
霊体化のおかげで余計な魔力の消費と破壊衝動が抑えられている分は良しとしなければならない、と自分に言い聞かせていた。
そんなところで、遠方から微かに戦場の匂いがした。匂いというよりは気配に近いが。
(まあ、暇だから見物にでも行くか)
本当は参加したいが今回はお預けか、と落胆するのであった。
***
これは夢だ。
伊丹ははっきりとそれは理解していた。しかし、それは夢にしては嫌にはっきりしている。そう、これは夢でも過去の記憶。
忘れたくても忘れられない、嫌な記憶ほどこうして忘れかけた時に夢に出てくる。
(くそ、こんなこと聞いてないぞ……他の部隊は陸海空全て非常事態で出動しているなか、まさか俺たちは裏で
伊丹は揺れる地面に対しバランスを崩さないように低い姿勢になり、側の木に身を隠しつつ歩みを止める。
そして揺れが収まるとまた行動を開始した。
「しかし、まさかこんなことになるとはな」
伊丹の前を行っていた紺色の服に黒い防弾ベストを着ていた隊員が呟いた。ヘルメットも灰色で迷彩を施されていなかった。
陸自ではないのは明らかである。そして覆面をしていて、悪い足場にも関わらず機敏な動きから、伊丹と同じ
「合同訓練中からのいきなり本物の実戦への移行。映画だけじゃないんだな、まあよくあることなのかな」
「俺は知らんよ。海上ではよくあるんでしょ?」
俺だってこんなの初めてだよ、と伊丹は思った。
「かもな。しかし今回は予想外だ。まさか
こんなこと。そう、普通日本では起きないと思われていたこと。
敵性工作員の
普通なら、工作員が活動する前に警察が逮捕等による阻止などが行われるが、現在日本は発令はしていないものの、国家非常事態であるのは誰が見てもあきらかである。
そう、現在日本は
陸海空全てが全力で対処している異例の出来事である。しかし、有事ではない。
「まだ結構揺れるな。他の部隊は東北に全速力で向かっているだろうなあ」
「そんな呑気に言ってられねぇよ」
伊丹はだるそうに答える。本当ならこんな命を捨てるようなことをやるのはゴメンである。しかし事態が事態なので渋々従うしかないのだ。
そしたらいつのまにかこんなことに。
「しっかし、2人で勝てんのかね。仮にも、ウチらとおたくらの精鋭部隊を1人でやっつけちゃう工作員とかどこの007?」
伊丹ともう一人の隊員を除いて他は全て無力化されてしまったらしい。ホントに007かゴルゴ13かもしれない。まあ、一応誰もまだ命を落としてないことだけは言っておこう。(あら不思議)
「伊丹は本当に面白いことを言うな。そう言うの嫌いじゃな……」
ちらっと振り向いた際の彼の目が全てを語っていた。
よく聞こえなかったが彼の隠された口の動きからはっきりと見えた、と思う。
伏せろ
伊丹は反射的に伏せると前方と後方から同時に何かが空気を切るような音がした。それとほんの数百分の1秒の差で炸裂音がした。
そして伊丹も伏せるとすぐに転がって背を地につけた状態で89式小銃を構える。
構えた方向には既に誰もいない。
後ろは……
さっきの隊員が壁にもたれかかって血を流していた。
「なあ、伊丹3尉……これが、自衛官の……本来の仕事なんだな……」
「おい!しっかりしろ!フラグ立てるなよ。いいな、絶対にフラグ立てるなよ!」
伊丹は応急処置及び無線連絡を行う。
「もう……ひと、つ……」
彼は何か言おうと口をパクパクさせるとそのまま糸の切れた人形のようになった。
「だからフラグ立てるなって言ったてるだろー!!」
***
気がつくと顔がびっしょり濡れていた。そして目の前には視界いっぱいに広がるゴスロリ少女の妖艶な笑みが逆さまに写っていた。
どうやら気絶していたらしい、と伊丹は察した。
それにしてもなかなかいい枕と思ったらまさかのロゥリィの膝枕だった。気持ちはいいが、もしかしたらさっきの夢は
なんか騒がしいと思ってよく見るとテュカが一人の女性に向かって怒鳴っている。何となく言ってることが理解できそうである。
ロゥリィ、テュカにレレイが大丈夫かと聞いてくる。
あら不思議。頭打った衝撃でなぜか脳内の言語の回路が色々と整理されたみたいで、今まで片言だった特地語が少し分かりやすくなってる。
これで受験生も頭打ったら英語楽勝だね(良い子も悪い子も真似しないでください)。
伊丹は服装を整えると無線で桑原曹長たちに無事を伝え、現在イタリカにおける指揮官の代表のピニャに色々事情を伺うことにした。
「え、妾が?」
***
アルヌス駐屯地作戦室
狭間陸将以下佐官級幹部が作戦室にて何やら喧騒な雰囲気で会議していた。
理由は伊丹からの援軍支援要請である。内容は以下の通り……
①イタリカという街が敵武装勢力(以下盗賊とする)から攻撃を受け、被害が甚大。代表のピニャ・コ・ラーダ氏より協力依頼のため支援要請。
②敵は元正規兵を主体とした盗賊であり、各種兵科の存在及び高度な戦術が確認された模様。規模も1000人は下らない。
③帝国側でも援軍を要請しているが、到着に最低でも3日を要するため、間に合わない可能性が高い。
つまり街がならず者に落とされそうなので助けてください、ということである。
この結果、各部隊の長が是非自分に、いや自分こそ、とちの積極的に具申しているのだ。
結局、狭間陸将は機動力の最も高いヘリコプター部隊である健軍1佐の率いる第4戦闘団にこの任務を任せることにした。
なぜか健軍たちは大音量スピーカーとワーグナーのCDを用意していくようだが、狭間陸将はあまり突っ込まなかった。いや、気にしてはいけないと自分に言い聞かせているのかもしれない。
特地にマスコミいたら絶対に不謹慎とか言いそうなものだが。
ということで、第4戦闘団はAH-1攻撃ヘリ『コブラ』、UH-1J多用途ヘリによる編隊の準備をすぐさま終えて出撃した。そしてロータ音を辺りに撒き散らしながらイタリカへと向かっていく。
「いやー、速いなあ」
そんな様子を森の茂みから見上げている者たちがいた。
「俺たちがほぼ半日かけて移動したあっと言う間だな。俺たちもヘリ申請するか」
「隊長、目的が違いますから。馬鹿なこと言ってないで行きますよ」
「あ、すまんね。でもやっぱり羨ましいわ〜」
顔に入念に迷彩のドーラン(塗料)を塗り、戦闘服のあちこちに特地特有の植物を身につけている隊員は森の奥へと姿を消して行った。
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