オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし   作:ArAnEl

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個人的にはゾルザルは漫画版がいいと思ってます。次に小説版。アニメは……チャラ男ですな。


怪獣映画?いいえ本物です

 

「ふむ、おかしい。ヨルイナールにはここで待っておくよう伝えたはずだが……」

 

 

アルドゥインは集合場所の周辺を見渡すが、ヨルイナールの姿はおろか、気配もしない。何かあったのだろうか?

 

 

「まあよい、残骸と魂の繋がりさえあれば何度も蘇らすこともできるしな。それに……」

 

 

アルドゥインは空中から地面に食い込まれた巨大な足跡を目で追って行く。

 

 

「こやつがいれば十分だ」

 

 

そして一気に空高く舞う。

 

 

「さて、奇妙な緑のジョール(人間)どもをソブンガルデに送ってやるとしよう」

 

 

***

 

 

「でかかったな」

 

「そうですね」

 

 

伊丹の言葉に栗林が答える。

 

自衛官たちの足元にはピニャを始めとする騎士団員や、その他メイドなどの特地の人間がしがみついていた。

 

初めての体験に対して、地震慣れしている日本人たちがとても頼もしく思えたらしい。というか、怯えた子供のようではあったが。

 

伊丹たちは怯えている人たちを一旦落ち着かせる。

 

落ち着いたピニャは、父である皇帝の身の安全を確認しなければならないので、伊丹に同行をお願いした。

 

しかし、伊丹と菅原はあまりいい顔をしていなかった。

 

 

「どうする?俺たちは戦争中の相手国の兵士だってバレたら?」

 

「確かに、しかも皇帝だからな……」

 

 

と色々話していると、ピニャが上目遣いの涙目で言う。

 

 

「伊丹どの、お願いだ。傍にいてほしい」

 

 

こんな頼み方されたらそりゃ断れない。仕方がなく、重要人物の護衛ということで同伴することとなった。

 

 

そして皇宮に着く頃にはピニャも大分落ち着いて、皇宮で恐怖でなにもできなくなっていた兵士などを奮いたたせ、持ち場へ戻るよう指示する。

 

そして皇帝の寝室まで来てしまった。

 

 

「ほう、最初に来るのはディアボかゾルザルあたりだと思ったがまさかお前が最初だとはな」

 

 

皇帝はピニャの姿を見てそう呟いた。

 

 

「陛下、身支度をなさってください」

 

 

そしてメイドや兵士などに的確に指示する。

 

 

「ピニャよ、そなた一皮むけたな」

 

「皮など剥けてません。怪我はありません」

 

 

ピニャの生真面目な応答に一瞬戸惑いつつ、皇帝はは伊丹たちの存在に気付き、その紹介をピニャに促し、ピニャは菅原と伊丹たちを紹介する。

 

 

「紹介します。ニホン国使節のスガワラ殿です」

 

「ニホン国?確か、我が帝国と戦争中の国であったな。使節殿、歓迎申し上げる。だが生憎、ご覧の通り非常事態でな。いずれ時と場所を改めて宴などで歓待したいと思う。今宵は勘弁していただきたい」

 

「はい、陛下。是非とも我が国と帝国の将来についてお話しをする機会を頂きたく存じます」

 

 

菅原は一礼して下がる。

 

 

「そういえば、ニホンという国にも王がいるのであったな?」

 

 

おそらく天皇陛下のことを言ってるのだろう。しかしなぜ知ってるのだ?と菅原は疑問に思う。

 

 

「いいえ、我が国たる象徴たるお方は王ではなく、天皇という位に就いておいでです」

 

「国権を国民に奪われた国など他愛もないと思っていたが、そちらの世界にはそちらの世界のやり方があるのであろうな。対等な相手がいないだけに、どのように遇するべきかわからぬ。無礼があればご容赦いただきたい」

 

 

会話が終わると廊下からゾルザルとその部下たちが大急ぎで入ってきた。

 

 

「父上!ご無事か!?」

 

 

よく見るとゾルザルのさが握っているチェーンの先には様々な容姿、種族の女性が犬のように首輪をされて引きずられていた。目から光全く感じられない。

 

 

「父上、ご無事でしたか?さあ早くここを離れましょう。また一度や二度、同じような地揺れが来るかもしれないということです」

 

「兄上、よくぞまた地揺れが来るかもしれないことをご存知ですな。妾も先ほど知人から教えてもらったばかりだというのに」

 

 

ピニャは兄がそのことを知っていたことに驚く。

 

 

「このノリコという門の向こうからさらってきた黒髪の女が教えてくれたのだ」

 

 

ゾルザルが鎖を引っ張って一人を前に出す。

 

 

その門の向こうからさらったという黒髪の女は、日本人だった。

 

 

「馬鹿野郎!ぶっ殺してやる!」

 

「ふごぉ!?」

 

 

伊丹のパンチがゾルザルの頬にクリーンヒットする。

 

 

「私たちは陸上自衛隊よ。日本人ね、大丈夫?」

 

 

栗林はノリコという女性にかけより、首輪を外す。

 

 

「助けに来てくれたの?」

 

「ええ、必ず連れて帰るわ」

 

 

そしてその女性は堪えきれずに大粒の涙を流して泣き始める。

 

 

「皇子殿下が我が国からさらったと言っていますが、これはどういうことですか、陛下。ピニャ殿もご存知ではなかったのですか?」

 

「スガワラ殿?」

 

 

ピニャには理解できなかった。確かに、彼らからすれば相当悪いことをしたのだろう。しかしここで事を起こせば双方にとって今までの講和への努力が水の泡になってしまう。にも関わらず彼らは明確な敵意を抱いていた。

 

 

「栗林、富田。相手が敵対行動を取るなら自分の判断で撃っていいぞ」

 

 

伊丹は部下に命令する。栗林は待ってました、とばかりに微笑んで戦闘準備を行う。

 

案の定、ゾルザルの取り巻きが剣を手に襲ってきたので栗林と富田は銃剣格闘や射撃などによってあっという間に制圧してしまう。

 

 

「死にたくないものは武器を捨ててここから出て行きなさい」

 

 

栗林の死神のような宣告に戦闘を行っていたものは武器を捨てて、その場を後にする。

 

 

「さて、皇子殿下。あなたは先ほど門の向こう側からこの女性をさらってきたといいましたが、それは他にもいるということですね?」

 

「ふ、ふん!無礼者に答えることなどないわ!」

 

「栗林君、喋りたくなるようにしてあげなさい」

 

「了解♬」

 

「な、何をするつもりだ。ちょ、やめ……」

 

 

それ以降は言葉ではなく、音となった。何か肉が硬いもので殴られるような音。時々悲鳴にならない声のようなものも聞こえた。そして時には何かが折れたり砕けた音もしたという。

 

 

「殿下、そろそろ答えてくれませんかねぇ?」

 

 

伊丹は銃口でゾルザルらしきものをつついて再度尋問する。

 

しかしそこでテューレがゾルザルを庇うように間に入る。

 

 

「殿下を、殺さないで」

 

 

伊丹たちは理解できなかった。これほど酷い仕打ちをされてもなおこの男に情があるのだろうか、と思った。

 

 

「男は奴隷市場に流した……後は知らん……」

 

 

ゾルザルはそれだけ言い残すと意識を失う。

 

 

「皇帝陛下、この問題が解決するまではしばし宴会などは出来そうにありませんな。そしてピニャ殿、その攫われた者たちの消息などの情報速やかに提供して頂けるものと期待しています」

 

 

そう言って菅原と伊丹たちはその場を去ろうとする。もちろん、帝国兵がそれを阻害しようと攻撃しようとしたが、皇帝の一喝で断念する。

 

 

「スガワラ殿。認めよう、確かにニホンは強い。しかし、そなたの国には致命的な弱点がある。それは民を愛しすぎることだ。いずれ、身を滅ぼすこととなるぞ」

 

「陛下、お言葉ですが我が国はそれを国是としております。その言葉どおり、我々より先に帝国が滅ばないことを祈るのがよいでしょう」

 

 

そして日本側の一同はその場を去る。

 

 

そして宮廷を出てしばらく、周りに帝国の人間がいないことを確認する。

 

 

「「……やっちまったぁぁあ!!」」

 

 

伊丹とスガワラは頭を抱え、いくら一時の感情とはいえ取り返しのつかないことをやってしまったと後悔する。

 

 

「と、取り敢えずアルヌスに帰るか……」

 

 

***

 

 

「ああ、どうしよう……」

 

 

伊丹たちが帰って数時間後、ピニャは自室で頭を抱えていた。

 

 

(このままでは非常にマズイ……何が、何がいけなかったのだ?このままでは本当に滅ぼされてしまう。そしてゆくゆくは……)

 

 

頭をよぎったのはゾルザルの奴隷となっていたノリコというニホン人であった。

 

 

(妾の末路もああなってしまうのか……?)

 

 

継続的な地揺れに怯えながらもピニャは今後のことを考えなければならない。しかし何も思い浮かばない。

 

 

「姫殿下!失礼します!」

 

 

近衛兵の一人が慌ただしく部屋に入ってきた。

 

 

「貴様!妾の部屋に入る前ぐらい声をかけよ!」

 

「申し訳ございません。しかし、緊急事態です!城壁へ来てください!」

 

 

ピニャはただ事ではないと察し、戦闘準備を整えてすぐに出る。

 

 

(まさか、もうジエイタイが来たのか?速すぎる、いや、ありうる……)

 

 

しかし、彼女が見たものはさら予想外なものだった。

 

 

「な、なんなのだあれは!?」

 

 

帝都の城壁の外を()()()ゆっくりと歩いていた。

 

 

「でかい!でかすぎる!」

 

 

それは小山のように巨大な龍だった。

 

炎龍や漆黒龍など比較にならない大きさ。頭部だけで小さな龍ぐらいの大きさはある。

 

その巨大な龍の一歩一歩が地響きとなって足元を不安定にさせる。

 

 

「姫様!いかがなさいますか!?」

 

(そんなこと妾に聞くな!)

 

 

正直ピニャもどうしたら良いのかわからなかった。

 

もし攻撃命令したら?

 

もし反撃を食らえば帝都は復帰できなくなるほど破壊の限りを尽くされるだろう。

 

ただ、そんな命令下してもほとんどの兵士が震えてるので攻撃できるかどうかも定かではないが、とピニャは判断する。

 

幸い、この巨大な龍の進行方向に帝都はない。刺激しないほうが良いかもしれない。

 

 

「このまま、やり過ごす……」

 

 

兵士たちもそれを聞いて本心でほっとする。

 

 

(頼む、何もしないで進んでくれ!)

 

 

そう願っていると、ピニャはギョッとした。

 

4足歩行していた龍が突如ゆっくりと頭を上げると、二本足で立ったのだ。

 

その巨体さはもう恐怖であった。70〜100メートルはあるか。

 

そしてその龍は周りをゆっくりと見渡すと、今まで聞いたこともないような爆音の咆哮で周囲の物体と生物の魂を震わせる。

 

あまりの爆音で脆い建物は崩れてしまった。

 

そして龍はそのまま、ゆっくり()()()()、重力に任せて前足を地に降ろす。無論、周囲の地面、岩、木々はこっぱ微塵になる。

 

そして凄まじい地響きが帝都を襲う。

 

 

「まさか……今までの地揺れは……こやつが原因なのか?」

 

 

ピニャは腰を抜かして立ち上がれなくなってしまった。

 

 

さてこの龍、既に勘の良い人はお気づきであろう。漆黒龍同様、特地でも日本側でも、ましてや漆黒龍の生まれの地から来たわけでもない。

 

この龍が生息している世界でこの山のような龍はこう呼ばれている。

 

 

老山龍(ラオシャンロン)

 

 




本当はアイツ出したかったけど、主様並みにオーバーキルしそうだったので代替がきました。

「アンギャーーオーーン!」

だから来るなって。

でも似たシーンありそうだよね、最近の東映の映画で。

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