オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし 作:ArAnEl
あんまり活躍ないのと後半からだけど……
アルドゥイン「さて、ソブンガルデの支度でも……」
「巨龍、進路変わらず。このままではもうそろそろ無人の村に突入します」
作戦室のオペレーターが報告する。巨龍の予想ルート上の人などは既に避難させてるので人的損害は心配しなくてよい。
「新情報です。ただいま村が更地になったようです」
現地で監視任務に当たってる部隊からの報告を狭間陸将に伝える。
(こいつは厄介だな……)
狭間はスクリーンに映し出される巨龍を見つめる。
敵意は無いと見える。それどころか周囲に気を向けず、とにかく道にあるものを粉砕してるのだ。
まだ炎龍のように捕食などの目的が分かれば良い。そうさせないように撃退すれば良いのだから。しかしこの巨龍はまるで台風のような自然災害の如く、周囲を蹂躙してゆく。つまり人間がどーのこーのではない。ただ歩いてるだけ、それだけ。だからタチが悪いのだ。
「仮設バリケードはどうなっている?」
「第1仮設バリケードは完成してますが、他がまだです」
「急がせろ。こいつがもしアルヌスに突入した場合を考えてな」
***
伊丹は考えていた。昨晩は色々な出来事があった。
臨時で来た心理衛生士にテュカのことを相談したり、その帰りに病院の患者らしき謎のおっさんに悩みを聞いてもらったら励まされたり。
そんなことを考えながら歩い、第3偵察隊としての本日の任務に出発しようとしていた。
前回同様、お役人さんたちのための物資の運搬などなど。
振り返るとテュカが遠くから涙目で手を振っている。自分にではない。いや、自分ではあるが、正確には伊丹耀司という自分ではなくテュカ亡き父親である。
どうも複雑な気分である。
本当の家族というわけでもなく、永遠の別れでもない。しかし嫌に後味が悪い。
「伊丹2尉、もう出発しますよ!」
チヌークから声がかかる。
「……くそっ!すまん、俺は降りるわ」
乗員が「えっ?」と思ったが伊丹はチヌークから降りてしまった。それと同時にチヌークは飛び立つ。
「あー、やっちまった」
伊丹はそう呟きながらテュカのところに行く。
「いいの?」
「お前が笑顔で居られる方が大事だからな」
「な、何よ、それ!実のムスメを口説いてるの!?」
テュカは少し顔を赤らめて動揺する。
「そう聞こえたか?」
そんなつもりないが、テュカからしたらそうなのかもしれない。
「旅に出ようと思う。一緒来るか?」
「どこへ?」
「南の方だ」
我ながら旅だとよくんそつけたもんだ。この偽りの笑顔に自分も反吐がでる。しかしこれしかないと心を鬼にする。
「私、お父さんとならどこへでも行くわ。支度してくるね!」
そう言って名残惜しそうに伊丹から離れて宿舎へ戻る。
「いやー、お熱いね」
柳田2尉がにやにやしながら近づいてきた。
「柳田さん、後の裏合わせよろしくな」
「簡単に言ってくれるな。後はやっておくと言ったからにはやるが、どうするか……まあ、くびにはならんよう根回ししてるが、それ以下は覚悟してくれ」
「準備するから武器、弾薬、車両、食料の準備を頼む」
「人員は?」
「言ったろ、他の者を巻き込みたくない。俺とテュカの2人だけだ」
「おいおい、マジかよ。あのヤオとかいうダークエルフは?」
「あんなの知らん」
「そうかい、本当に2人分でいいんだな?」
「ああ、もちろ……どわっ!?」
いきなり足を払われて、視界に青空と雲が広がる。そして自分を覗き込むように
「ちょっとぉ!こんな楽しそうなこと私たちを誘わないとかどういうことぉ!?」
「生存率を上げるなら魔術師は必須」
「この身は御身の所有物。囮でも何でも致す」
伊丹は起き上がりと、彼らに向かって言う。
「危ないぞ。それでも来たいのか?」
「ちょっとぉ、女心わかってないわよぉ。こういう時の女はねぇ、来たくても行きたいと言わせるもんじゃないわよぉ」
「…………」
「「…………」」
「さっさと言いなさいよぉ!」
「みんな、一瞬に来てくれるか?」
「「もちろん!」」
そしてみんなで伊丹を囲む。
「あとはこうしてぇ……」
どさくさに紛れてロゥリィは伊丹の上着の袖をまくると、思い切り噛んだ。
「いてっ!いやマジで痛いから!もしかして怒ってらっしゃっる?ロゥリィ怒ってる!?」
「契約完了……」
ロゥリィは伊丹の血を舐めると妖艶にそう呟く。
「これは貸しよ。これで耀司は私の眷属」
「契約って何!?眷属って!?」
伊丹は某アニメの白いかわいい地球外生命体的なものを思い出す。
こんな感じで和気あいあいとしているところ、柳田がせきばらいをする。
「んで、結局5人分だな。一つ質問だが、このLAM(110ミリ個人携帯対戦車弾)最低10発はいるとのことだが……」
「そりゃね、ダークエルフの里の緑の野蛮人だが何だか倒した後はそのまま炎龍狩りに行くからな。多ければ多いほどいい」
「いや、それは分かるんだが、これでいいのか?」
「……?それしかないんだろ?ジャベリンとかあったら話は別だけどさ。あっても別部隊に優先されそうだし」
伊丹の言葉に対し、柳田ニヤリと笑みを浮かべる。
「もし、融通できると言ったら、いるか?」
「え……まじで?」
「出所を詮索しないと約束できるならな」
***
しばらくして、伊丹たちが基地を車両で出て行くところを基地内のブラインドの隙間から伺う者がいた。
「行ったか?」
「ええ、無事例のブツも持って行ったようです。後輩の柳田にまかせたので問題ありません」
「お前は自分の友人一人で行かせてもよかったのか?」
「草加さんも人が悪い。私にも行けと?」
「行きたくないのか?」
「行きたくないといえば嘘になりますが、今は行く気分ではないので。正直有益なことは無いですね、私的にも公的にも」
「そうか。どちらにせよ、そこは任せるつもりだ。我々の目的は1つ、国益だ」
「もちろんです。そのためなら自己の命、友人の命など安いもんですよ」
「君の愛国者はどこからくるものか不思議だな。普通の日本人よりもあるんじゃないのか?」
「それは褒め言葉として受けましょう。そろそろ私は行きますので、失礼します」
「ああ、ご苦労。ところで、彼には何を託したんだ?」
「84mm無反動砲と01式軽対戦車誘導弾(LMAT)です」
「流石だな。1尉で
「ありがとうございます。では失礼します」
加藤は部屋を出るとそこには柳田が立っていた。
「よう柳田。ありがとよ、助か……」
「すみません。先に謝ります」
柳田らしくもなく、かなり焦ったような顔をしていた。
「間違えた物を渡してしまいました」
「……箱ごと渡せとは言ったが、確認し忘れたな?どこにあった箱を渡した?」
「格納庫の隅に置いてあった物です」
「……見慣れない文字とか書いてあったやつか?」
「……簡体字のようなものがあった気がします『◯◯的』と」
「……分かった。これからの任務を終えたら、すぐに伊丹を追えるよう準備をしておけ。ヘリに俺の部下の分の弾薬食料と、本来渡すやつを積んでスタンバっとけ」
「分かりました」
そう言って柳田は去る。
(まじでやべぇ……対巨龍決戦兵器持って行かれた。使われたら……山が吹き飛ぶ)
柳田よりも、さらに青ざめていたのであった。
***
「ふん、愚かな人間よ。せいぜい足掻くが良い。
最小限の霊体化をしているおかげで空自の戦闘機のレーダーにも捕捉されることなく、悠々と下界を見下ろして優越感に浸るアルドゥインであった。
今回は霊体化を調整してあるので、ちょうど戦いが始まる前には参戦できるようになっている。
正直、長たる自分が戦うことは少々面倒くさいところもあるが、殺戮、蹂躙、破壊を愉しめるのなら多少は仕方がないと考えている。
(それに飽きれば我は山頂で悠々と
うむ、想像しただけでも笑いがおさえられぬ)
そんなことを想像しながら今後のことを楽しみにして飛んでいると、新たな龍の気配を感じた。
「ム、あれは例のヨルイナールを屠ったレッドドラゴンではないか。おのれ、お礼参りしたいところだが生憎霊体化中。しばしこの状態にて尾行してみるか」
巨龍のことは一旦放置して赤い龍のところへ突入する。スピードからして尾行もクソもない。
「なんなのだあれはァァアア!?」
突如、半透明の龍がこちらに突入してきたのに気づき、驚愕するレッドドラゴン、アンヘル。
(うむ、なぜだ。ヨルイナールといいこのレッドドラゴンといい、初対面相手にこれほど怖がるとは。失礼極まりない。巨龍に至っては我を無視するとは。いずれ全員教育せねばならぬ)
突如現れた半透明な龍の突進をアンヘルは巧みに避けた。別に当たっても今は問題ないがそんなことも知らないのでそりゃ避けるだろう、とアルドゥインは思った。
「ほう……我の攻撃を避けるとは。貴様、なかなか良いドヴァだな」
もう自分でも尾行することを忘れているようである。
「なんだおぬしは!?ブラックドラゴンか!?」
「……うぬ?霊体化が解けている……」
それもそのはず。霊体化は時間経過か自分から攻撃すれば解けるのだ。それをアルドゥインは知らなかったようである。もっとも、前回緑の人たちとの交戦で初めて使用したこともあり、彼が元の世界ではそもそも霊体化するような状況は最後を除いてありえなかったのだ。
「ふむ、新しい発見だな……」
「なんだ、我を無視か?」
アンヘルは少し苛立った様子である。
「ぬ?気の短いレッドドラゴンだな。どうした、我に恐れて余裕が無いのか?」
「何を!貴様この我を愚弄するか!」
「この我を?それがどうした。我は貴様なぞ知らん。それに我のことを知りたくば貴様が先に名乗るべきであろう?」
お互い上から目線だが、アルドゥインにはアンヘルと比べると余裕があるようだ。
「ふん、ブラックドラゴンに名乗る名などないわ。我はこう見えても最強のドラゴンぞ」
「憐れよのう、貴様は我がブラックドラゴンにしか見えんのか。貴様の最強などたかが知れてるな。まあ、ヨルイナールを倒せるだけの実力は認めよう」
「なん……だと?貴様は……カオスドラゴンか?」
「カオスドラゴン?気いたことがあるかないかの種類だな。本物を見てみたいものだ」
「何なのだ、貴様は……」
アンヘルから余裕がどんどんなくなってゆく。
「貴様のような礼儀知らずに名乗るなどないが、せめて通名だけでも教えてやろう。我はジョールどもには『
「ワールド……イーター……」
「ヨルイナールを害したことは解せぬが、些細なことよ。単刀直入に言おう。我の配下になれ。これは命令だ、拒否すれば、貴様ならわかるな?」
「それは、契約ということか?」
「契約?なんのことだ。これは契約のように対価を求めるものではない。我に従うか、否かだ」
アンヘルは驚愕する。この余裕は一体どこから来るのか。
目の前のワールド・イーターと名乗るドラゴンは、強い。
アンヘルの歴戦の経験と勘がそう伝える。しかしアンヘルも最強のドラゴンとその経験によって示してきた。目の前のドラゴンが自分より弱い保証はないが、強いという確信もない。もしかしたら自分の方が強いかもしれない。
それは相手も同じのはず。相手もこちらの実力が上か下かなどわかるはずもない。
(なのに、なぜだ……?この余裕は……あたかも自分が最強である、ということが当たり前というオーラーが漂っている……なんなのだ……我とは異なるドラゴンなのか……?)
ワールド・イーターを観察、考察するアンヘルに対し、アルドゥインは声をかける。
「我は構わんぞ。貴様が望むならこの場で雌雄を決して、どちらが王としてふさわしいかを決めることもな。それもドヴァなら当たり前のことだ。自分よりも下等の者へはついていくことは躊躇うものだ」
ドヴァなど、聞きなれない言葉はあるがなぜか自然と意味が理解できた。それにこのドラゴンはドラゴンの性質を理解している。ドラゴンは自分よりも下等な物には絶対に屈しない。
「我は……」
返答をしようとしたところ、突如轟音によって会話が途切れる。
その音源を見ると2つの無機質の大きな鳥のようなものがかなりのスピード近づいてきた。空自の戦闘機である。
「こちらパイロット2、ドラゴン2頭を発見。航空優勢のため排除を進言する」
「こちらパイロット1、了解。炎龍か?」
「これは……赤いドラゴンと……っ!?例の漆黒龍だ!」
「やばいな。赤いやつは恐らく炎龍として、漆黒龍は第3偵察隊が手も足も出なかったという乙種だ。気をつけろ」
「待て……赤い方も微妙に特徴と異なる。腕がないのと、少し小柄だ。別種かもしれない」
「なら攻撃は待て。情報収集に徹しろ」
「了解」
そして戦闘機は2手に分かれ、すこし距離を開けて牽制するように龍たちの回るを飛行する。
(ふん、とんだうるさいハエのような奴らが来たな。いっそ『
「う……うう……うぐ……うあ……」
アルドゥインがチート級念力を使おうとしたところ、アンヘルが苦しみような声で唸り始めた。
「どうした?そんなうるさいか?安心しろ、すぐ落としてやる」
「違う……ちが…ちが……う……」
アンヘルはあの鉄の鳥のようなものを見た瞬間、強烈な頭痛が襲った。
(なんだ……どこかで……見たこと……ある、のか?)
そして記憶のような、走馬灯のような、幻惑のようなものが脳裏に浮かぶ。
ーやったぞ、ついに……ー
あの忌々しい、黄金の龍に見せられた映像。否、ありえたかもしれない事実。
全ての戦いが終えてから襲った驚異。
ー何かとてつもなく速いものが煙のようなものを吐き出しながらこちらに向かってきたー
思い出したくもないことが思い出される。
ーそしてそれは自身に当たり、爆発したー
自身が本当に経験したことではない。あったとしてもそれは、
ー爆発は自身と、最愛のパートナーの命をことごとく奪ったー
分かっている、なのに、なぜ……
ーそして薄れる意識の中、黒焦げになったパートナーの背後を飛んで行くものを確かに見たー
F-15J
航空自衛隊の主力戦闘機。
彼は名前こそしらぬが、それと、今目の前に現れたものが酷似していたのはたしかであった。
「……カァァァイム!!!!」
アンヘルは最愛のパートナーの名を魂の奥から叫ぶ。
それと同時にアンヘルの全身に黒い炎のようなオーラーに包まれる。
「む!?これは!?」
アルドゥインは驚きと歓喜の気持ちが同時にやってきた。
「こちらパイロット2!赤いドラゴンの様子がおかしい!」
戦闘機のパイロットたちは驚愕していた。
「うぐぁぁああ!!」
黒いオーラーが消えると、そこにはかつてのレッドドラゴンはいなかった。
赤い体表はほぼ黒に近い濃い紫になった。頭部は頭蓋骨を思わせるような形と色、そして上向きの角は下向きになった。
「……これはとんだ掘り出し物だ」
アルドゥインはニヤリと笑みをうかべた。つもりだ。
「おい、赤いドラゴンが変身したぞ!」
「んなバカな!」
パイロットたちは動揺を隠せなかった。
ここにいる誰もがこんなことは予想できなかった。
アンヘルも知る由はない。
これは彼女の
アンヘル・カオス形態
アンヘルの記憶について知りたい方は、「DOD Eエンド」で調べてみましょう。
分かりづらくてすみません。