オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし 作:ArAnEl
ということで前話でヒロインが覚醒しました。
炎龍、その他女性陣「えっ?」
ラオシャンロンの周りが騒がしくなる。さすがの巨龍もこんなに周りが五月蝿いと気になるようで、時々唸ったりして威嚇する。しかし大きな動きはない。歩いてるだけ、本人はそつもりだが、人間から見たら破壊しながら動いてるようにしか見えない。
周りを轟音をたてながら飛んでいるのが陸自のヘリ部隊。そしてそのさらに上に空自の戦闘機が数機飛んでいた。
加茂1佐の率いる
施設科は予想されるルートに防衛陣地を築く。そこに戦車を中心とした部隊が設置される予定である。空自は爆撃、機銃掃射による支援及び航空優勢の維持。
ヘリ部隊は対戦者ミサイルなどによる攻撃を行う準備、及びラペリンク降下の支援である。
そして海自が……
「隊長、なんで俺たちなんですかね?空挺団や特戦だっているのに」
陸自のヘリ内で全身黒系の迷彩と覆面をした男が何人か待機していた。
「動いてる物体に乗り移る経験が一番多いのは俺たちだからだそうだ。あと恐らく捨て駒かもね(笑)」
「んなむちゃくちゃな。動くって言っても俺たちは船にならできますけど。あれは背中がゴツゴツした動く山みたいなもんじゃないですか」
「滑ったら死ぬと思え。命令が出たら死ぬか生きるかだ」
「こんな組織もうやだあ」
急遽駆り出された特殊部隊たちである。
すると突如監視に充たっていた戦闘機二機がその場を離脱し、別の方向へ飛んでいった。
「ん?どうしたんだ」
加藤は単眼鏡でその方向を見る。
黒い点が空中で浮いているのが見えた。
「スクランブルかねえ、まさかここにパンダやクマの戦闘機は来ないと思うけど」
「来たらどうします?」
「先制攻撃、
「誰だこんな人を自衛隊の幹部にしたのは……」
そんなジョークを飛ばしながらヘリ内で談笑するのであった。
「あ……」
「どうしたんです、隊長」
加藤は単眼鏡を下ろすとニコッと笑う。
「何でもない」
((絶対なんかあったな……))
しかし誰も口にしなかった。
(今、黒い点の一つが落ちた気がしたけど……まさか空自じゃないよな)
その思いを胸に止めるのであった。
***
「グフフ、こいつは面白いことになったわい」
目の前のかつてのレッドドラゴンというものは、黒い龍に変化した。これが、俗に言うカオスドラゴンというものだろうか、と思った。
このうるさいハエどもを攻撃するなら非常に良し。正気を失って我を攻撃するも、力量を測るという意味では良しだ。
「どれ、貴様の実力見せてもらおうか……」
アルドゥインの声はアンヘルに届かない。
視界に捉えてるのは2機の戦闘機。彼女の記憶あるものとは微妙に異なるが、そんなことは些細な問題だった。
そして彼女の目に『捉えられている』ということは、自衛隊にとって非常にまずいことになっている。
彼女にしか見えないもの、それは捉えたものに取り付く魔法陣のようなもの。
シューティングゲームが好きな人ならこれが、何か予想できるだろう。
ロックオン
アンヘルがやっていたことはそれと同義であった。しかもレーダーなどと異なり、魔法なのでロックオンされたことにも気づかない。
そして『
「変異種が攻撃してきた!?」
戦闘機のパイロットが叫ぶ。
「冷静になれ!今の所ドラゴンの攻撃でさほど驚異のものは確認されてな……」
今までは炎龍、漆黒龍、翼竜などのデータから、航空機における大きな驚異は、さほど近づかなければ問題はないと判断されていた。
しかし今回は違った。
炎龍のような火炎放射器のようなものでもなく、アルドゥインの収束された炎でもない。実戦経験のある戦闘機乗りなら口を揃えて言うだろう。もし生き残れたらの話だが。
『あれは、ホーミングミサイルと同じだ』と
十を超える火球が戦闘機を襲う。神子田たちを先導していた戦闘機が不運にもその対象となった。
「これは……
撃たれて初めて警告音がなる。
元の世界ではレーダー照射などを受けてロックオンされて、撃たれる前からも警告音が鳴る。
しかしこれは撃たれてから鳴った。
そのため、パイロットほんの少し、本当に少しだけ対応が遅れた。
しかし秒速数百メートルの世界の戦闘機にとってはそのコンマ何秒で勝敗を決することがある。
「ちくしょう!」
この炎が熱源探知なのか、電波探知なのか、それともまた別の何かは知らなかったが、パイロットはチャフとフレアを放つ。
戦闘機から小さな火球のようなもの複数と、金属箔が煙のように後方に撒かれる。
そして万一のために振り切るために急降下を始める。
さすがは練度の高いと噂される航空自衛隊パイロットである。ここまでは完璧であった。相手が戦闘機ならばの話だが。
「「っ!!?」」
その場にいた誰もが目を疑った。アルドゥインさえも。
一瞬、戦闘機を外して後方のフレア、チャフに向かった火球であった。
パイロットたちは回避できたと確信していた。火球の速度はそう速くはないからだ。
しかし、その火球は戦闘機をちょうど通り過ぎようとした直前、軌道を、否方向を変えたのだ。
ミサイルのように弧を描いて追尾ではない。
例えるなら、壁に当たったスーパーボールのように、火球は
「「!?」」
その死の宣告を受けたパイロットとコパイは時間の流れが遅くなるのを感じた。
辛うじて、戦闘機が前に出て火球に追いかけられる形となる。
しかし、現代科学では実現できない究極の『
それを悟ったのか、それとも諦めたのか、2人は
安全速度、高度や周囲の状況を鑑みずに行ったこの行為は、本能的に行われたかと思われる。
勝ち目はないと。
パイロットとコパイがパラシュートで降下する中、戦闘機はその数秒後に火球に蹂躙されるよう破壊された。幸い、アンヘルの目標は戦闘機だけだった。
「ちくしょう!僚機がやられた!」
『パイロット1、直ちに帰投せよ。繰り返す、直ちに帰投せよ。これは最高司令からの命令だ』
管制塔から指示がパイロット1の神子田の無線に届く。
「と言われてもな……このままじゃトカゲ野郎どもに負けたことになるぜ」
「ここは従うべきだ。悔しいが、ドラゴン2体相手に部が悪い」
「くそっ!僚機を見捨てて逃げるなんて……」
神子田はようやく諦めて進路をアルヌスへ向けた。
「グフフ、愉快愉快、実に気分が良い」
アルドゥインはたいそう気に入ったようだ。
「これは是が非でも配下に入れねば……」
しかし振り返ると同時にアンヘルは襲いかかってきた。
「ぐあぁぁぁああ!」
「む!?」
体当たりと嚙みつき、組み付きでアルドゥインを地に落とそうとした。
残念ながら、アルドゥインの自分自身の意志以外で彼を地に着ける方法はほとんどないので徒労に終わったが。
「やはり正気を失っておるか。よかろう、ならば戦いだ」
アルドゥインはほくそ笑む。そう、愉しんでいるのだ。
絡みついてくるアンヘルの首元を噛んで引き離し、地面に叩きつける。
アンヘルは叩きつける前に体勢を整えて再度空中に舞い上がる。
「大したものだ。飛行能力は我を格段に凌駕しておる」
戦いながらもどこか楽しんでいるアルドゥイン。元の世界では彼が最強だった。それは誰も疑う余地もない。故に、競争相手などいなかった。
常に上か下か。同列などありえぬ、認めぬ。
その結果が長年のドラゴンによる支配であり、逆転の結果がアルドゥインの敗北である。
今回は少し異なる。
実際の実力は自身の方が上だとアルドゥインは思う。しかし今まで出会った中でも最強クラス。
それが彼の闘争心に火をつけた。
「いいぞ、もっとだ。もっとだ!」
あえてアンヘルの大魔法を喰らう。決して自傷趣味があるわけではない。
無数の火球が彼を捉え、爆音とともに突っ込んで行く。
しかし彼にはもちろん効かない。
例えどんなに高火力の攻撃魔法をどれだけ叩き込もうと、アルドゥインには効かなかった。傷一つがさえつけられない。
だがアルドゥインにはこれがどれほど高火力なのかは理解していた。
この威力ならパーサナックスも倒せると確信していた。紛れもなく、目の前の龍は『最強』であると感じた。
しかしそれはあくまでもこの龍のいた世界での話。
アルドゥインはかつて彼の世界では最強だったかもしれない。少なくとも龍の中では。
しかし彼は龍や
だから、彼は『
「その程度か。ならばこれを食らうが良い。
説明不要だとは思うが、人間が編み出した対龍シャウトを放つ。龍を地面に束縛する、不死の能力を奪うなどチート級のシャウトなのは言うまでもない。
ヨルイナール同様地面に押さえつけられる。
はずだった。
「◉◎○▲△▶︎▷▼▽◀︎◁■□◆◇!!!」
アンヘルはなんとも言えない叫び声を上げると、彼女を中心に波状に黒い波と白い波のようなものが放たれる。
「む!?まだやるか」
まず黒い波のようなものがアルドゥインのシャウトを相殺した。
否、跳ね返した。
黒い波は消えたが、跳ね返されたシャウトは消えなかった。
「なんとだと!?」
予期せぬ事態にアルドゥインは驚く。
更に悪いことに、アルドゥインのシャウトは他の者と異なり、指向性ではなく範囲攻撃が可能なのだ。
そしてその広範囲シャウトが自分に返ってきたため避けることも叶わない。
「
これが精一杯だった。全て唱えれば間に合わない。
その努力も虚しく、アルドゥインは自らが放ったドラゴンレンドを受けてしまう。
(なんとか弱化には成功したが、地面から離れられぬ!)
そして今度は白い波が襲ってきた。
アルドゥインは束縛されて動けない。
「うぐぅぅぅぅう!?」
久しぶりの『痛み』であった。
ドラゴンレンドの弱化に成功しているので、損傷は避けられた。しかしダメージは避けられなかった。
(何なのだ……我の知る魔法ではない……)
損傷が無いのにダメージとは変な話だが、これはアルドゥインだからこの程度で済んだのを彼は気付かない。
アンヘルの世界における平行世界にいる彼女は、これと同威力の攻撃を相殺するために今回アルドゥインに使った技を使用している。
その無数のパラレルワールドの中には無論、敗退した結末もあるだろう。その世界の彼女は、たった一発。ほんの一発で滅ぼされている。
「うぐぐ……ぐぐ………ふふ……グフフ……」
それでもなおアルドゥインは楽しんでいた。
「よかろう。
アルドゥインは空に向かって生みの親打倒宣言の咆哮をする。
「ドラゴンレンドの効果が切れる前に決着をつけてやろう」
別にドラゴンレンドの効果が切れたからといって死ぬわけでは無い。むしろ枷が外れて有利になる。
しかしあえてこのような縛りを設けたのは、彼のドラゴンとしての意地なのか、それとも他の何かか。
だが圧倒的に不利なことに変わりはない。
飛べない、動けない、半不死にまで劣化中。
対してアンヘルは空中でチート級破滅攻撃が行える。いくらアルドゥインと言えど今の状況でいくつも喰らえば本当に消滅するかもしれない。
(この状況ならやはり遠距離攻撃か。ならばシャウトしかあるまい)
大見栄を張ったは良いものの、正直打開策はない。考えずに言っちゃったのだ。
思考している間もカオスドラゴンは波状攻撃を仕掛けてくる。
幸い、白い方も黒い方も『
しかしながら数が多すぎる。そして少しづつ押され気味になる。
そしてドラゴンレンドの効果が薄くなり始めてるのも分かる。
(うーむ、どうしたものか……ん?)
ふと視界に先ほどの
(そういえば、相手を追尾する魔法など初めて見たな……)
カオスドラゴンと戦闘機との戦闘を思い出す。
(もしかして、我にもできるのではないか?)
異世界のドラゴンにできて自分にできないことなどない。いや、できないといかないのだ、というのが彼の持論らしい。
しかし魔法とは複雑であり、構造を最初っから作り上げようとすればかなりの困難なはずである。はずなのである。
(なんだ、考えてみれば当たり前のことではないか。こんなことも思いつかぬとは……)
かつて世界を統べた龍は例外らしい。
それとも言葉それぞれに力のあるスゥームが特殊なのか。
「
どうやら成功したらしい。アルドゥインの視界にカオスドラゴンが鮮明に映る。今ならどんな攻撃を当ててもあたるだろう。
しかし生半可な技ではあの波状攻撃にことごとく粉砕されるだろうし、そもそも届いても効かない可能性が高い。
波状攻撃に邪魔されず、かつ確実に倒せるほどの攻撃が必要だ。しかも瞬間的に。
そんな夢のようなシャウトがあるわけ……
あった。
普通にあった。
ある時はジョールの
ある時は
ある時は
それは……
「
そう、『
ストーム・コールなら嵐とともに稲妻が落ちて周囲を蹂躙する。
彼にしかできないこの技の場合はと言うと……
「ギィィィイヤァァァアアアッ!!?」
ご覧の通り炎と隕石が落ちてくる。
しかもロックオンしてるので百発百中全ての隕石がカオスドラゴンに命中してゆく。
アルドゥインは完全なる勝利を収めた。
「ふむ、大収穫だ。新しい技を編み出し、カオスドラゴンの力量も知ることができた。さて、あの龍を配下に……」
ドラゴンレンドの効果が切れたので相手がいた場所に飛んで行く。
「あ……」
アルドゥインはしまったと言わんばかりの顔をする。
「や、やり過ぎたか……?」
木っ端微塵になった残骸を見て慌ててしまう。
どうやら主人様にロックオン機能が実装された模様です。
それはそうと、今年最後の投稿です。皆様、来年もどうぞよろしくお願いします。
Lok, Thu'um、ごきげんよう。