オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし 作:ArAnEl
恒例の新章スタートのおふざけ回です(伏線はあり)。
こんな駄作者のわがままをお許しください。
日本語は難しい
何もかもが一気に起こりすぎた。
巨龍の出現、迎撃、消滅。伊丹たちによる炎龍討伐、復活、龍の軍団の発生、そして謎の人物(国際テロリスト、『
これは全て10日以内に起きた物であった。他にも、これに伴ってアルヌスの施設の一部損傷、海自のヘリの墜落に伴う行方不明者の発生など、日本政府にとって悩ましいどころではない爆弾的な事案が立て続けに起きていた。
この事実が公表されれば大変なことになるのは目に見えている。メディアに晒され、偏向報道も追加、世論の変化、国際的避難などなど。
「どうしましょうかね、ほんと」
会議室で総理がポツリと呟く。しかし誰も返答しない。
「外部に漏れるのも時間の問題ですな。何か、いい案はないもんかね、統幕長?」
防衛大臣は統合幕僚長に意見を求める。
「わしが統合幕僚長、江田島平八である!」
いや、知ってるよと周りは思ったが誰もそんなことを言わなかった。
どうもこのハゲ髪の薄い厳つい男性は、『エタジマが10人ほど先の大戦にいたならばアメリカは負けていた』などととんでもない噂が付いているのだとか。
「わしならば、部下を信じてやること、それが一番のことだと信じておる!何かあればワシが自らの腹を掻っ捌いて責任とってやるわ!」
なんだか一人だけ先の大戦から来たような雰囲気だった。
「エフッ、エフッ、エフッ」
そして変な独特な笑い声が聞こえる
「俺があと10年若くて、こんな
と陸自代表の範馬陸幕長が言い放つ。色黒で身体どころか顔にも筋肉がつきすぎて、いかにも陸自っぽい……を超えてすでに人外であった。
というか恐い。誰しもがそう思った。
どうもこの人もいろいろとやばい噂があるが、ありすぎてやばいらしい。
「ここでの痛みは一瞬。だがここで後退した時の痛みは一生残る」
と航空幕僚長が資料から目を離して言う。この人は至って普通……な訳なかった。
名を霞拳四郎といい、すごい筋肉質でこの人も黒い噂が絶たない。そのため、スマートなイメージの空自の制服が胸筋によってパッツンパッツンという誰得状態だった。
「奴らに明日を生きる資格は無い!」
「エフッ、エフッ!」
「わしが江田島平八である!」
日本お得意の進まない議論は今日も行われる。
ただ、この場にいたほとんどの者が決して口にはしなかったが、同じ認識であったものがある。
(((ひょっとして、この3人特地に送ったら万事解決すんじゃね?)))
そんなこと誰も言えるはずもなく、今日も日本政府の苦悩は続く。
そしてそんな状況を見ていた海幕長は一言こうつぶやいた。
「……やれやれだぜ」
***
一方、特地もいろいろと大変だった。特に伊丹が。
あの救出から到着するととんでもないでかさの龍の骸骨が広場に集められていたのをまず目撃した。
そして事情を聴くと
その他、勝手に単独行動を取ったということで規律違反を起こしたため、定職2週間と減給1カ月。加えて第3偵察隊の隊長を解任されるという処分が下される。
妥当だな、と伊丹が思っていた矢先、なぜか日本人拉致被害者救出に貢献したとして防衛大臣から一級賞詞が届くという状態に。加えてどう勘違いされたのか、龍たちを追い払ったということで特地の各地域の代表からお礼の品々を頂戴することになっていた。
(……俺が追い払ったというか逃げたと言った方が正しいけど……)
そんなことを思いつつ。数々の品を受け取るのだ。そりゃ豪華な財宝やらどでかいダイヤモンドやら羊皮紙には貴族に認定されるや挙句にはヤオの持ち主証みたいなものも渡される。
そして最後に狭間陸将より特地資源状況調査担当に任命されてしまった。
どうやら単独で現地民と共に地域の調査に当たることのできるんだとか。
というわけで、停職が解けたあかつきにはそちらの任務がメインになるそうだ。
仕方がないのでこの2週間は本土に戻って色々とやるべきことをやろうと思った。疎遠だった実の母親に会いに行くことをテュカたちに約束もされてしまったので。
というわけでなんやかんや2週間が過ぎ、何とか穏便に特地に戻る伊丹たち。
特に何も問題なく勤務が始まる、そう思っていた時期が伊丹にもあった。
「何が起きてんだ?」
門をくぐるとなんだかすごい数の人がいた。陸海空自、背広の皆さん、特地の人々。ピニャたちの騎士団もいてちょっとしたお祭り状態である。
というかお祭りだ。縁日ぽいものがある。こう見るとうさ耳や猫耳、狼頭の店員が縁日やってるのを見ると意外と面白い。
「どうせ今日は早めに帰って来て、仕事ないし、見て行くか」
「「「さんせー」」」
見た目は日本の祭の縁日みたいだが、これはこれでなかなか興味深い。日本では絶対売ってないようなものも売ってるからだ。
「魔術師とお見受け致しました。こちらはどうです?」
「何でも売るぞ、友よ。何でもだ!姉妹がいたならばそれも売るぞ。なんなら君の身内も買うぞ!」
あちこちの屋台で物売りが客を集めたり、交渉していた。
さらっと人身売買みたいな発言が聞こえたが、きっと冗談だろう、伊丹は聞こえてない振りした。
どのみち、警務隊がしっかりしてるのでまさか本当にそんなことはないと思うが。
少し行くと騎士団の中に身分を隠し(きれてないが)て訪問しに来ていたピニャたちに出会った。
「伊丹殿、猊下、お久しゅう」
「ピニャ殿下、お久しぶりですね。それにしてもすごい人数だな。何かあるのですかね?」
「伊丹殿は聞いておらんのか?妾は本日ここで祭などが行われているので招待を受けたのだが」
「そうでしたか。本部からですかね?」
「いや、カトーとかいう者から招待の手紙を受けたのだが」
「カトー先生?」
「多分違う。伊丹の友人のカトウのことだと思う」
レレイが伊丹に言う。
それを聞いた伊丹は早速嫌な予感がした。
「あの、殿下……その手紙、何か他に書いてありませんでしたかね?」
「うむ、色々と行事があるので是非騎士団の皆様をご招待したいと。女性大歓迎とな」
「あちゃー」
絶対
「そろそろ妾も行事に参加しなければなるまい。伊丹殿、失礼する」
そう言ってピニャ一同と別れる。
「……」
「どうしたのお父さん?」
難しい顔をしている伊丹にテュカが心配そうに尋ねる。
「姫さんたちが心配だ。よし、俺たちも行こう!」
そして跡をついて行くと、広場に行くつく。多くの自衛官と現地人が入り混じっていた。
ただ、妙なことに自衛官はほとんど男性で、現地人は逆に女性(女性獣人含む)ばかりであった。
『えー皆様こんにちは。私、司会の加藤と申します。本日は日本及び特地との親睦を深めるため、合コ……ゲフンゲフン、失礼しました。交流会を行いたいと思います』
そして会場から拍手が湧き上がる。
その様子を遠くから伊丹たちが伺う。
「あいつさらっと合コンとか言いそうになってやがった。これが目的かよ……」
「伊丹、合コンって何?」
「レレイ、後で教えるから……」
そんなわけで、伊丹はジト目で静観していたが、妙なことに気づいた。
自衛官サイドはスーツや礼服であるが、特地サイドで、特にピニャたちの騎士団は、皆甲冑ないし戦闘服装であった。
『ええ、ではまず最初のイベント、舞踏会を始めようと思います』
いわゆるダンスパーティーでも始めるつもりだったのだろう。しかし特地人からの声は予想外のものだった。
「よし、武闘会とな!妾騎士団の日々の成果を男どもに見せてやろう!」
「そうですわね姫さま。彼らはいつもと違う服装ですが、あれも一種の戦闘服でしょうね」
「あら、体つきの良い戦士がいましてよ。さて実力はいかがです?」
それらを聞いた伊丹と加藤は察した。
ここにいる自衛官たちは、やられると。
(うう……どうしてこうなった。おいちょっと待て、何人か本物の剣抜いてねえか?ひょっとして、あのときかなあ……)
***
数日前
「ああー暇だー、上司と部下が消えて暇だー」
加藤がポツンと勤務部屋で一人寂しくソファに座っていた。
「そういや近々交流行事でもあったなあ。帝国側のVIPのピニャ殿下も招待しとくかな。まあ舞踏会やればいいだろ。男性隊員を引き連れて合コンすればよいのだ」
そうしてよからぬことを企てながら簡単に手紙の内容を日本語で下書きする。
「こちらの作法とかまだわからねえから殿下の部下の日本語研修生に渡せばいいだろう。そして清書して貰えばいいや」
そして部屋を出て研修生の隊舎に行く。
「これは教官殿、何か御用ですか?」
「あ、ボーゼスさん。ちょうど良かった。近々交流会があるのでピニャ殿下もお呼びしようと思いましてね。この日本語の手紙をそちらの礼法に従って書きたいのですがよく分からなくて。お願いしてよろしいですか?」
「もちろんですわ。今日中に仕上げて送り致しますわ」
「ありがたい。よろしくお願いします」
そしてボーゼスは正式な手紙として清書し始めたが、やはり日本語から訳するにあたりまだ慣れていないようである。
「困りましたわ。この『ブトウカイ』の意味がよくわかりません……図書館で調べてみましょう」
そして図書館に行くとたまたま亜神栗林がいた。
「あ、ボーゼスさん」
「これは栗林さん。ご機嫌麗しゅう」
「どうして図書館に?」
「ちょっと日本語で分からないことがあったので調べ物に……この『ブトウカイ』という言葉が」
「ああ、それならきっと『武闘会』ですよ」
「武闘会?」
「武芸、格闘技、戦闘技を披露したり競い合う会ですね。ほら、あの漫画読んでもらったら大体どんなのか分かりますよ」
そして栗林は某、龍の玉を7つ集める漫画を見せる。
「なるほど、参考になりましたわ。このご恩はいずれお返し致しますわ」
そして後ほど完成した手紙がピニャの手に届くのはほんの数日後であった。
***
(うう……この状況をどう打開すればいい……落ち着くんだ、素数を数えて落ち着くんだ……2、3、5……)
そのように内心汗ダラダラ状態の
「あ、隊長。違った、元隊長!」
「栗林じゃないか、久しぶりだな。でも元隊長って何か傷つくなあ……」
伊丹は第3偵察隊隊長の任を解かれたことを痛感する。
「そんなこといいじゃないですか。ところで、何してるんですか?」
「いや、中どうなってるかなと思って」
「武闘会やるみたいですよ。私も参加しようと思って。なんだか私ワクワクしてきました!」
「そだねー」
伊丹は棒読み返事した。
ここで伊丹はふと思った。
今
「栗林、あそこの司会いるだろう?あいつこの前言った加藤3佐なんだけど、特殊部隊の隊長やってたらか、強いよ。多分」
それを聞いた栗林の目が変わる。
先ほど散歩に行ける犬のようなルンルンとした目から獲物を狙う狼のような目つきに。
「あの人ですね!?最近特戦の皆さん倒して物足りないのでちょうどいいと思っていたんですよ。ありがとうございます!」
そして突入する。
「たのもー!加藤3佐、手合わせ願います!」
「103、107、109……へ!?」
どっかで見たような童顔巨乳が空手道着(黒帯)に右手に木銃(銃剣道用の銃)を携えて門を蹴り破って来た。
そして有無を言わさず突っ込んで来た。
木銃の矛先が加藤の頰を掠る。
そして頰の刃物で切られたかのように浅い切り傷から血が滲み出す。
(躱せた?いや、それとも外したの!?)
ゆっくりと視線を上に向けるとそこには
(やっべ、まじでやっべえ……)
しかし顔には一切出さなかった。そして軽く微笑むとマイクを握りなおした。
『ここで予定の変更を行います。男性の皆様は速やかに礼服から
その後は、見るに耐えないカオスな状態となった。
***
しばらくして、無事(?)に行事が終了した。怪我人が出なかったのが奇跡であった。
そして加藤の思惑通り(?)、特地人たちとの濃厚な交流ができ、親睦を深めることができた。
「これが欲しいのね?欲しいと言いなさい卑しい犬ども!」
「「はい、愛のムチをくださいませ、お嬢様ぁっ!!」」
「ふっ、おめーやるじゃねーか。俺はケンジってんだ。おめーは?」
「ふっ、俺はユウトだ。いい拳してんぜ」
「ほら立てるか?俺の手に捕まりな」
「お姉様、これが漢の友情ってものですわね。ハァ、ハァ」
「ええ、これも素晴らしい芸術ですわ。ハァ、ハァ」
「羨ましいですわ。ハァ、ハァ」
「な、何ですのその光る黒い小箱は?」
「いやぁ、すまない。僕はカメラが趣味でね、野鳥専門なので断ったためしがないんだよ!」
「そんなに……僕の力が見たいのか……そんなに見せつけてくる……君たちが悪いんだ!」
「キャァーー!?どこ触ってますのー!?」
「おい誰かこのバカを会場から叩き出せ!」
(どうしてこうなった……)
加藤はその結果を見て顔を覆いたくなった。
「ドンマイドンマイ」
伊丹がニヤニヤしながら加藤の背中を叩く。
「お前見ていたのか。助けてくれても良かったんじゃないの?」
「まあ、俺も来たばかりだし(嘘)」
「……そうかい。あ、ピニャ殿下。大変恥ずかしいところをお見せしました」
「ん?いや、妾は中々良かったと思うぞ。久々にいい武闘交流もできたし、何より芸術も官能できたからな」
「はい?」
「あのジュードやらレスリングという格技は非常に良かった。特に地面における攻防が。そして屈強なな漢どもが絡み合い……しかしリサどのの芸術には及ばんが」
「「……」」
ピニャの鼻息が少し荒くなる。
ひょっとしたら日本の格技たる柔道や、世界の格技の代表のレスリングにとんでもない誤解を与えてしまったのかめしれないと思う伊丹と加藤。
「む?どうしたのだ。それはそうと、まだイベントが残っていると聞いていたが」
「ああ、そうでしたね。夜には花火大会もありますが、時間があるのでしばらくあちこちの展示物でも見に行きますか」
「花火?よくわからんが楽しみだな。うむ、では展示物で時間を潰すとしよう」
「では、伊丹エスコートよろしく。俺はここの片付けと花火の準備あるから」
「わかった。暇だしやっとく」
そして加藤は去って行く。
「では殿下、行きますか」
「うむ、よろしく頼むぞ」
「元隊長〜!」
「あれ?栗林、どうした」
「加藤さんはどこです?」
「仕事に戻ったけど」
「うーん、残念。あの人すごいですね、私の攻撃を全て躱して、しかも見失わせるなんて、初めてですよ!」
「あ……」
そのとき伊丹は思った。恐らく加藤はその場を凌げば何とかなるだろうと思ってやったのだろうと。しかしそれが逆効果みたいだった。
今になって自分が栗林をけしかけたことに罪悪感を感じていた。
「へえ、しらなかったわぁ。私も試してみようかしらぁ?」
「いいですね、ぜひぜひ」
「友よ、安らかに眠れ……」
***
「な、なんということだ……」
ピニャは広場に展示されている
「こ、これはそなたたちジエイタイがやったのか!?」
「ちょっと俺はいなかったらので答えかねますが、恐らくそうなのかもしれない」
正直、謎の巨龍の残骸を見たのは伊丹も初めてである。ヘリから見たこいつが骨になったのをみると、本当にゴジラみたいだなあと思うのであった。
(うむむ……ジエイタイの力がここまでだったとは。想像以上だ……)
そんなことを思っていたところ、お知らせのアナウンスが入る。
『本日は、起こしいただきありがとうございます。この後の最終イベントの花火大会ですが、天候が荒れる予定のため、中止となりました。誠に申し訳ありません』
そして周りからブーイングが起こる。
「あらま、残念」
伊丹たちも皆残念そうにしていたが、雨が降ると聞いて速やかに屋内に避難することにした。
先ほどの会場が大分片付いたのでそこに決め、ついてしばらくして大雨となった。
「ふう、間一髪だな」
「よぉ伊丹、また来たか」
「よお加藤、お疲れ」
「それにしても残念だねえ。自然現象だから仕方ないか」
「加藤殿ではないか。今日は改め、楽しめたぞ。妾を招待してくれたことに感謝する」
「お褒めの言葉ありがたく頂戴致します。今回、最後のイベントを催すことができなかったお詫びとして、こちらの展示物を贈呈致したいと思います」
そして加藤は展示ケース日本の武者風の甲冑を見せる。
「こ、これは?」
「例の巨龍の鱗などの残骸を用いて、こちらで働いているドワーフに日本式の甲冑をモチーフに作らせたものです」
よく見てみると、日本の甲冑に非常にに似ているが所々鉄の代わりに鱗などが使われていて、異なるものであることが分かる。
「良いのか、こんな高価なものを?」
「これも友好の証としてお受け取りください」
「……感謝する!」
***
「姫さん喜んでたなー」
「そうだなー」
一通り行事を終えて休憩所でくつろぐ二人。
「お前、あの甲冑タダ同然で作ったろ?」
「バレた?」
加藤はニヤリと笑う。
「お前が高価なもんそう売るわけもないし、お偉いさんが許可もするわけないし」
「まあ、研究用の余りをドワーフのオッチャンに持って行ったら『こりゃ腕がなるわい』とか言ってタダで作ってくれたんだわ。一応展示していたけど、終わったら使い所なかったから有効利用したわけ」
「ずる賢いなあ」
「はは、褒めても何も出ねーよ」
そしてしばらくの沈黙。
「それにしても、お前は強いな」
「ん?なんで?」
「お前の部下と上司、消えちまったんだろ?行方不明になって、もしかしたら死んじまったんじゃねえのかとか、思わないのかな、って」
「……」
「悪い、変なことを聞いた」
「いや、別に気にしてない。この階級になるとな、そんなことも受け入れないといけないんだろうなともう覚悟は、できてるよ。それに、まだ死んだと断定されてないしな」
そして薄笑いを浮かべる。
しばらくするとドアがノックされる。
「俺が出よう」
加藤は重い腰を上げてドアを開けるとギョッとした。目の前に先ほど自分に宣戦布告した
「あ、もしかして伊丹2尉に用件かな?今呼んで……」
加藤は振り向いて呼ぼうとすると上衣の裾を軽く引っ張られる感じがした。
「違うんです」
そしてモジモジして下を向く。
「加藤さん……今晩……つ、
栗林は普段絶対見せないような上目遣いで声を振り絞った。
(え、どなた!?何この可愛い生き物!?)
それを後ろから見ていた伊丹は合掌する。
そして加藤は後にこう語った。あれは子猫の皮を履いたヒグマだったと。
***
実は特地広域で降っている雷雨は、自然現象ではなかった。
「うぬぅ……おのれ!」
アルドゥインが怒りのあまり発してしまったシャウトが原因だったりする。
あまりにも能力が高すぎるため、範囲は広域で、その雷雨も嵐のレベルに達していた。
ヨルイナールとアンヘルもあまりにも威力が高すぎるため、誤爆を恐れて岩陰でじっとしていた。
そして雷がアルドゥインの目の前に落ちる。
「プギャァァアアーー!!?……うぐぅ……」
真っ黒に炭化したそれはしばらくすると元の姿に戻った。ハーディの使徒、ジゼルである。
ジゼルは
ある時はとにかく肉体的に苦しめられた。刻まれたり、焼かれたり、凍らされたり。
ある時は精神的に。ひたすら槍(※普通の武器の槍ですが何か?)を磨かされたり。その槍で的にされたり。
魂の一部を魂縛されてその一部の魂を散々拷問して返された時には肉体的にも精神的にも激痛が走った。
そして何よりも一番ジゼルにとって恐ろしかったのは『不死を奪われる』ことであった。
数百年不死を疑わなかったがまさか神以外で『死』を操れる者がいたとは思う訳もなく、奪われて半殺しにされたときは本当に発狂するかと思ったほどである。
そして今、半分運任せのように落雷で拷問されていた。
強力な魔法で腕を拘束され、座ることも直立することもできない姿勢で散々痛めつけられた結果、既に衣服は無くなり、身体の全てが露わになっていた。
これがもし人間相手ならこのような楽しみ方もあるので早々に殺すことはない。
しかし相手が得体の知れないドラゴンであるため、そんなジゼルの身体になど興味があるはずもない。機嫌一つで本当に殺してしまうだろう。
(おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ!こいつからも大した情報は無かった!分かったのはこの世界の神々の事情だけだ!)
アルドゥインはかなりイライラしていた。それは彼が焦っていたことも原因であった。
「アルドゥインよ、少しお主も落ち着いたらどう……」
「
あまりにも苛立っていたためシャウトが素で出てしまう。
そしてアンヘルは喉を絞められた感覚に襲われて咳き込む。
(くそっ!やつは一体なんなんだ……本当になんなんだ!)
やつ
それは彼が先日遭遇したある人物と非常によく似た、猫風の人物。
そいつは、シャウトを
そう、
だが非常に似ているだけであって、アルドゥインが知っているドヴァキンではない。
正確には、ドヴァキンはたくさん知っている。龍に忠誠を誓ったドラゴンプリーストにもいたし、龍を裏切ったイカみたいなドヴァキンもいた。
しかし、アルドゥインの知っている
唯一その強さを認めたドヴァキンである。
それなのに……
(あの化け物は……一体何なんだ!)
そう、奴も同じドヴァキンなのは疑いようがない。しかし魂の性質が違う。
そしてなによりも
そしてしばらくすると嵐も止むと、ヨルイナールたちもそろそろと出てきた。
「主人様、一つよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
アルドゥインの睨みに一瞬ビビるが、ヨルイナールは続けた。
「このような不届き者に時間を費やすのは勿体ないと思います。ここはまず、我々の戦力を高めるためにも主人様は各地のドラゴンたちを呼びかけるのはどうでしょうか?」
「……ふむ、最もだ。よろしい、我はこれより戦力補充のために各地を回る。アンヘル、お前は各地のジョールを監視しておけ。そしてヨルイナール、お前はその不届き者を教育しておけ」
そう言い残すとアルドゥインは空高く舞って行った。
「……ふん、お主は随分と奴のお気に入りのようだな」
アンヘルは吐き捨てるように言う。
「お前の方こそ、早く素直に主人様を受け入れたらどうだ」
ヨルイナールが鼻で笑って言い返す。
「す、素直だと!?我はこれが素だ!」
「どうかね?早くお前も仕事に行け」
アンヘルは何か恨めしそうにヨルイナールを見ると飛び立つ。
「さて、あんたには色々とお礼がしたくてね……先ずは私の子供たちの礼でもしようか?」
「うう……」
ジゼルは力なく答えるだけだった。
***
迂闊だった。それとも有頂天になって油断したと言うべきか。
そりゃあんなパフパフできそうな胸をした童顔巨乳の女子がね、上目遣いでおつきあいを願いされたら、誰だって落ちるよ。
下心が無かったって言えば嘘になる。
そりゃお互い立派な成人ですからね、僕だってそりゃ少しは期待しちゃいますよ、男の子(?)ですから。
でもこれはひどいですよ。天罰ですか?僕何か悪いことしましたか?
そんな風に考えていた時期が僕にもありました。
「さて、加藤さん。今晩はよろしくお願いします!」
「……」
「あれ、どうしましたか?もしかして緊張してます?」
「……」
「大丈夫ですよ。気楽にやればいいんですから。今晩は寝かせませんよ!」
「……」
加藤は思った。女の子と二人きり。これからいろいろと楽しいことが起こるんだろうな、と。
「ではよろしくお願いします!ではお
場所が道場でなければ。そして道着でなければ。
(神道の神様、仏教の神様、キリスト教の神様、イスラム教の神様、ユダヤ教の神様、ヒンドゥー教の神様、とにかく神様お助けえ!)
これが彼のその夜の最後の心の叫びとなった。
え、やばい人達が混ざってるって?
気にすんな、同姓同名だよ、きっと。それかパラレルワールド。
……やりたかっただけです、作者の妄想シリーズ。
(基本出すのは名前だけです。本編に出したら、ストーリー速攻で終わるからね)
あと、ジゼルがどんな姿勢になってるか気になる方は『F●te 、セイバー、くっころ』で画像検索すれば一番最初に出るよ!(駄作者はこれをイメージしております)