オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし 作:ArAnEl
カメレオン・大猿「解せぬ」
「……」
「加藤3佐、辛いか?」
「狭間陸将、お気遣いありがとうございます。しかし、今ここに横たわっている彼らの方がきっと辛いはずです」
「そうか、すまんな」
「陸将、もしよろしければ、少し一人にさせていただけませんか?」
「そうだな、気の済むまでいてくれ」
そして狭間陸将は簡易霊安室を去る。
そして加藤は台の上に置かれている遺体袋を覗き込む。
損傷のないものはいなかった。五体満足の方が珍しく、原型を留めていないものもある。
そしてそれぞれのドッグタグを確認すると、遺体袋のジッパーを閉める。
「すまんな、お前たち。これを線香代わりだと思ってくれ」
そしてタバコを蒸す。
「お前たちの二度目の死は無駄にしない、絶対に」
***
「「グォォォオオオ!!」」
「「「うわぁぁぁあああ!?」」」
鼓膜どころか頭が割れるような咆哮が辺り一帯を支配する。ちがう性質の音が重なるので余計に気持ち悪くなる。
先に動いたのは後方にいたギギネブラ。
「しまっ……!?」
咆哮で耳を防いでいたため対応が遅れた。
もう回避することもできず、3人は咄嗟に伏せた。もしこれで覆いかぶさったら終わりだ、と全員の頭のをよぎった。
そのとき、伊丹は聞き慣れた音が聞こえた。
例えるなら、打ち上げ花火が打ち上げられるような音。
ただ、遠ざかる音ではなく、甲高い音が近づいてるような音だが。
(は、迫撃砲!?)
訓練で嫌っと言うほど聞いた音であり、体に刷り込まれた音に一瞬ビクッとなる。
音からしてかなり至近距離に落ちると伊丹は頭の中で計算した。
(あ、終わったな……短い人生だったな……こんなことならもっとコミケとか同人即売会にもっと足を運んどきゃ良かった……)
そんな感じで頭の中をあーんな美少女やこーんな美女が走馬灯のように流れてゆく。
しかし運命の女神は伊丹たちを見捨てなかった。
迫撃砲の弾は地上から数メートルの高さ、ギギネブラの後方で炸裂した。
そのため、角度的にちょうど空中にいたギギネブラの陰に伊丹たちはいたため、爆風と破片の洗礼は受けず、その代わりにギギネブラはダメージと爆風で勢いよくさらに前に突っ込んでしまった。
そう、フルフルの方に。
フルフルは予想外の出来事に戸惑ったが、怒りの矛先をギギネブラに向けることとなった。
「クォォォオオオオ!!」
フルフルが咆哮を上げギギネブラにボディプレスを仕掛ける。
下敷きになりつつもギギネブラは毒霧を散布してすり抜ける。
それを追撃しようとフルフルは突進するがギギネブラがその頭をすっぽりと飲み込む。
「な、なんと卑猥な……!?あれはまるで逸物が肉壺の中に……」
「そ、そんなこと言ったらこっちも恥ずかしくなっちゃうじゃない!」
ヤオとアルペジオを顔を赤らめる。
「いいからお前らさっさと逃げるぞ!戦術的撤退!」
伊丹は二人を連れて元来た穴に入ってゆく。
(でも、なんだかさっきの迫撃砲、
そんなことを思いつつ、フルフルが青白く光出すのを見て伊丹も撤退する。
その様子を迷宮外から周囲の景色に溶け込んだ何者かが観察していた。
「対象A、B、C、全員無事離脱しました」
「よし、戦闘配置用具収め。あの化け物と保護対象を監視しておけ」
「「了解」」
「嫌だにゃ」
それを聞いて一斉に全員が振り向く。
「貴様は!?
「遅いにゃ」
***
「危なかった……あとちょっとでこの身はあの得体の知れない化け物に潰されるか、卑猥な生き物に辱めを受けるところだった……」
「ねえ、ダークエルフっていつもそんなことを考えてるの?」
「ち、違うぞ!いつもではない!たまたまだ!伊丹殿もそんな目で見てないで何か言ってくれ!」
アルペジオの質問と伊丹の痛い視線からヤオは弁解しようとする。
しかし伊丹は今はそんなことどうでもよかった。
(まずいな……迫撃砲をまともに食らってまだ生きているなんて中々手強いぞ。もう一体も違う種類だが同程度だろう……どうやったらロゥリィとバルバスを救えば……)
考えれば考えるほど疑問が募る。
(そう言えば、あの迫撃砲は誰が撃ったんだ?今普通科や野戦特科がこの辺りで活動していると聞いてないし……)
「伊丹さん!聞いてますか!?」
気がつくとアルペジオがこちらを覗き込んでいた。
「あ、すまん。考え事していた」
「もう、男なんだからしっかりしてください。ここにはか弱き乙女が2人もいるんですから」
妹と殺し合いレベルの喧嘩をする姉や下ネタ発言をたくさんするダークエルフをか弱き乙女と呼んでも良いのだろうかと思ったが、決して口にはしなかった。
「しかし伊丹殿、このままでは猊下を助け出すことは不可能なのは事実だ。何か策はないのだろうか?」
伊丹は考えた。現時点で携行しているのは残りわずかのC4プラスチック爆弾、小銃擲弾数発、念のために持ってきた
「こんなことになるならあともう一つLAM持ってきたらなあ……それとあいつからもらったM4カービン(グレネードランチャー付き)」
炎龍との戦闘で、おそらくあのクラスの化け物は一体あたり2、3発は欲しいところである。頭部に直撃できれば一撃かもしれないが。
(さっきの迫撃砲部隊は支援してくれるのか?いや、実はたまたまなのかもしれない。期待はできないな……)
いっそのこと航空支援でも呼ぼうかと思ったがそんなことしたらここ一帯が破壊されるかもしれないし、そんなことで要請するなと怒られるかもしれない。
「はぁ〜仕方がない。まずは作戦を練るか。まずは奴らを分離する。一対一ならまだ勝てるかもしれない」
「「ふむふむ」」
「そして俺が囮になる」
「伊丹殿!それならこの身が……」
「まあ聞け。アルペジオも援護射撃して気をそらせる」
「え、私が!?」
「そう、大丈夫、いけるいける。そしてその間にヤオが奴らのどれかの頭にLAMを撃ち込む」
「単純だが、一番理にかなってるな」
「それしかないようね」
「よし、では早速……」
「クォォォオオオ!」
行動に移ろうとした瞬間、天井が崩れ落ちて
「やべ!早く横の穴に隠れろ!」
3人は人がやっと入れる程度の穴に入って逃れる。
「この穴なら入って来られないだろ……」
しかし予想に反したことが起きた。フルフルの首が3倍程度伸びて狭い穴に襲いかかった。
「「「うわぁぁぁああ!?」」」
それはそれは魂の底から驚いた様子である。
目の前にキモい口だけのっぺらぼうが至近距離にいるだから。
「あ!こいつ、やめろ!」
伊丹の64式小銃を咥えて奪い取ろうとした。
伊丹はとっさに腰の拳銃を構えてフルフルの頭部に弾丸を数発叩き込む。
化け物は怯んで小銃を放すが、致命傷にはならなかったようだ。
そしてバランスを崩した伊丹はドミノのように3人は倒れ、ヤオは手に持っていたLAMを落としてしまう。そしてそれは穴の奥に吸い込まれてしまった。
「ああ、鉄の逸物が!」
幸い、フルフルの伸びた首でも届かない場所に行き着いたので一先ず安心……そんなわけなかった。
フルフルはチャージすると口から青い光を出そうとし、伊丹は直感的にやばいと感じた。
「奥に逃げろォォ!」
3人は薄暗い穴の奥へと吸い込まれていった。
***
「チクショウ……」
うさ耳ウェイトレス兼フォルマル家の工作員こと、デリラは唇を噛み締めた。
だいぶ良くなっていたはずの傷口が痛み出す。ストレスか、思い込みか、普段とは異なる痛みであった。
「みんな、あたいを許してくれよ……」
そして病室の枕に顔を埋める。自分は仲間を売った。いくら脅されたといえ、到底自分を許すことはできない。
「なんであいつは……潜伏中の仲間のこと全員知ってるだ……!」
デリラが自己嫌悪に陥ってる中、アルヌス駐屯地正門付近で妙な光景が広がっていた。
「皆さんこんにちは、加藤3佐というものです。今日のお仕事の責任者です」
見ると彼の前には作業ヘルメットを被ったヴォーリアバニーが隊列を組んでいた。ただ、表情は皆不安そうであった。
「えー、皆さんはデリラさんの関係者ということでちょっとお仕事をお願いしたいと思います。なに、簡単なお仕事です。各地方に物資を届けるのでそれの護衛について欲しいだけです。3つのトラックに10人ずつ乗ってもらって、作業してもらいます。詳しいことはドライバーに聞いてね」
そして詳しい作業要領を説明したあと、無事正門を通過するのを見送る。
「やっとこれでこの前使えなかったものを処分できたわ。報告書書いて終わり」
***
「どうしたものか……」
ヤオは倒れた伊丹を覗き込む。どうやら強く頭を打って気を失ってるようだ。
「どうしよう、このままじゃまずいよ」
アルペジオも不安な表情を見せる。
「この場合は……ジンコーコキューというものをする必要があるかもしれない」
「ジンコーコキュー?」
「うむ、日本行われているいわゆる『王子のキス』のようなものだ」
「キ、キス!?そんなものお伽話じゃない、バカなの!?」
「この身も最初はそう思っていた。しかし緑の人が達は緊急時に行うそうだ。そして実際に効果があると」
「なんと……次の発表内容、それもいいかもしれないわね」
「やり方は、まず腹部に両手を当てて押す」
「なんで?」
「わからぬ。そのように教本に書いてあったのだ」
「それでそれで?」
「そして深い
二人はゴクリと唾を飲み込むと頰を赤らめる。
「アルペジオ殿は伊丹の腹部を押してくれ。この身は伊丹殿に口づけを……」
「わ、わかったわ」
(これで、ようやくこの身も伊丹殿と結ばれ……)
「えい!」
「ぐえぇ!?」
「へ!?」
「ヤオ、お前なにしてんの?」
伊丹とヤオの顔はヤバイぐらいに近づいていた。お互いの吐息が混じり合うほどに。
「な、何でもないぞ!決してジンコーコキューしようなど……」
「はあ〜、人工呼吸は気絶程度には使わないんだよ」
「そ、そうなのか……」
「まあ、俺を助けようとしてくれたことは感謝するよ」
「伊丹殿……」
ヤオは少し嬉しくなった。
「ところで、ここどこよ?」
伊丹は辺りを見渡す。
かなり下の層というのはわかったが、明らかにおかしい。なぜなら、今までの迷宮の雰囲気とは全く異なるからだ。
構造物が、何というか、気持ち悪いのだ。
理由は簡単。明らかに別の構造物が活断層の如く入り混じってるから。
例えるなら、洋式であるはずのベルサイユ宮殿の中を見たらなぜか和式の金閣寺になってるといった感じ。
今までと違い、黄金色の構造物が増えてる。というか割り込んでいる。
「な、なんだこりゃあ?」
よく見ると単なる構造物ではなく、どことなくこの世界観に合っていない。
試しに黄金の金属を軽く叩いて見る。
音がしばらく響いた。
「間違いない……空洞になっている。ということは、これ全部パイプなのか?」
あちこちに似たようなものがある。特地に来てしばらく経つが、このようなものは見たことも聞いたこともない。それに、色こそ金色だが、金なのか真鍮なのか銅なのかさっぱりわからない。
「こんなの、初めて」
アルペジオも感心して見入ってしまう。
「少なくとも、元の穴に戻るのは不可能だな。進むしかないか……」
3人は周囲に気をつけながら進んで行く。
不思議なことに、かなり下の階層にも関わらず周りはそれほど暗くなかった。
「ロストテクノロジーってやつなのかな?」
伊丹は周囲に仄かに光る青白い光源を見る。
ランプのようなものもある。
「こんなの私も見たことも聞いたこともないわよ。文献にすら載ってないわ」
アルペジオは隙あらばスケッチしたり、落ちているものを拾っていた。なのであっという間に持ち物が多くなってしまう。
「ま、待って……」
どうやら身動き出来ないようだ。
「アルペジオさん、ここでくたばっちゃったら元も子もないよ?最低限だけ持って他置いて行きなよ」
「そんなあ……鉱物はわたしの専門分野なのに……」
渋々整理して金色のガラクタをいくつか捨ててまた歩き出す。
「ちょっと待って……」
少し遅れたアルペジオが小走りに近寄った。
しかしその時足元に注意を払わなかったのがいけなかった。
変な圧力盤を踏んでしまう。
「ひっ!?」
「伏せろー!」
アルペジオの真後ろから某青いタヌキネコ型ロボットよろしく、空を自由に飛びたい時に使う
ただ、サイズと回転速度からして明らかに飛ぶためではなく、殺戮ようだが。
伊丹がアルペジオを押したことでことなきを得た。しかし、伊丹の首元にその刃が襲いかかった。
「キャァーーァァア……?」
ヤオは悲鳴を上げたが、伊丹は無事であった。たしかに、巨大タケ●プターのブレードが当たった気がしたのだが。
「俺、死んでない……」
伊丹が首元をペタペタと触って確認する。
そしてタケ●プターはまた元の場所に収納される。
「一体何が起きてるの……?」
***
「ええい、だめだ。もう一度だ!」
「フゥス!」
「違う!
「ギャァァァア!?」
的にされていたジゼルが吹っ飛ばされた。
アルドゥインはヨルイナールとアンヘルに
「アルドゥイン殿、我からしたら違いがわからないのだが……」
「ええい、音の違いなどではない!喉から出す汚い音ではないのだ!」
スゥームを知らぬ龍に教えるのは日本人に英語のRとLの発音の違いを教えることよりも難しいようだ。
因みにヨルイナールは叫びすぎが原因で火炎器官が暴発して目を回していた。
「アンヘル、もう一度だ!」
「フゥス!」
「だからFusだ!」
「もう止めてくれ!死んじまうー!」
アルドゥインがお手本を見せる度にジゼルは吹っ飛ばされる。よろめかないで吹っ飛ばされるのもアルドゥインのシャウトが強力過ぎるからだろう。
(とんだ期待外れだ。ヨルイナールはともかく、アンヘルもダメだったか……)
アルドゥインは苛立ちでいつもより険悪な表情をする。あまり大差はないが。
「興がさめた。ちょっとそこらへんの村を焼き払ってくれよう。アンヘル、ヨルイナールついてこい」
外のことも気になるしな、と言いながら飛び立とうとする。
「主人様、俺は?」
ジゼルがボロボロになってやってくる。
「貴様が我らの飛行についてこれるか?まあ無理だろうから貴様はあと槍を千本ほど磨いておけ。知ってると思うが、逃げてもすぐ分かるからな?」
「……」
ジゼルは目が虚ろになりながら龍たちの後ろ姿を見送る。
「チキショー!事あれば俺に槍を磨かせやがって、何するつもりだよ!?槍を何に使うんだよ!?Fusって何だ……」
その時ジゼルは体からエネルギーが一瞬減ったように感じると共に目の前の槍が何本かが動いた。
「え?」
***
「ひ、酷い目にあった……」
伊丹一同はボロボロであった。
進めど進めど一向に出口に辿り着く気配はなかった。というか時間もかなりかかってしまった。弾薬も残りわずかとなった。
「何だあいつらは……」
途中で出会った金色の敵。しかもそれは伊丹の元の世界でも再現の難しい完全自律型ロボットに似た物。
一種類は小型でクモのような形をしており、近接戦を仕掛けてきたり、倒したと思ったら自爆して電撃放ったりとどっかのテロリストが喉から欲しがるようなものだ。
もう一種は人型に足回りを球体にしたやつだった。こちらも接近戦を仕掛けてくる。
伊丹たちが手を焼いていたのには複数の理由がある。
・生物ではないため、機能停止までに攻撃しなければならない
・金属製なので、頑丈だった
・魔法耐性を有していた
このため、アルペジオの魔法攻撃が効きづらく、伊丹の攻撃が主力となったためだ。
「マズイな……弾倉3つ、手榴弾2つ、拳銃用弾倉3つ、LAM一発とC4少々か」
「この身の矢も残ります僅か……」
「鉱物魔法の触媒もほとんどないわ……」
ピンチである。
このまま進んでもいずれは力尽きて全面。止まっても飢えて全滅することになるだろう。
アルペジオとヤオは不安そうに伊丹の顔を覗き込む。
「……ま、なんとかなるようになるさ」
伊丹はのほほんとした笑顔を見せる。
これを見た二人はホッとする。
伊丹は知ってる。
こういう時に指揮官が嫌な顔をすれば、士気が落ちるということを。オタクでも彼は立派な自衛官だ。
「さてと……」
伊丹がそう立ち上がった途端、暗闇の奥からピンクに光る模様のようなものが見えた。
「危ない!」
今度は伊丹がアルペジオに押されて倒れこむ。
それと同時に病みに潜んでいたギギネブラが襲いかかってきた。
「グォォォオ!」
「「「ひっ!?」」」
ヤモリのように壁に貼り付きながら跳びまわったりしながら近づいてきた。
「伊丹殿、鉄の逸物を打ち込めばよいのか!?」
「だめだ、あいつは動きが早すぎる上に動きが読めない!とにかく逃げろ!」
ギギネブラは猛毒駅を吐きながら徐々に距離を詰めて来た。そして狙いをヤオに定める。
「畜生、こっちだ!」
伊丹は小銃弾を何発か叩き込む。
相手は一瞬怯んだが、今度は狙いを伊丹に定めた。
伊丹はすぐに回避行動をして逃げる。しかしギギネブラはそれを逃すまいと追撃を放つ。
しかしそんことで敵は諦めてくれなかった。
獲物を逃がさんと追従する。
伊丹は何かにつまづいてこけてしまった。
そして敵はしめたとばかりに突撃する。
「今だ!その圧力盤を踏め!」
「え!?あ、うん!」
アルペジオは一瞬分からなかったが近くにあった圧力盤を踏み込む。
そして例の
「!?」
「くたばれバイオのクリーチャーもどき!」
地面に伏してる伊丹の真上にブレードが高速で回転する。
ギギネブラはもう勢を止めることもできず突っ込む。
そして肉が何回も切れる音と共に伊丹は返り血を浴びる。
「やったか!?」
殺人タケ●プターが収納され、伊丹は立ち上がって確認する。
「流石に頭部をこんなに切られて生きているはずは……」
しかし予想に反して血みどろの物体は動き出した。
頭部を破壊されて生きている動物は稀である。それこそ
少なくとも、
そして、ギギネブラはゆっくりと頭部を伊丹に向ける。
「しまっ……!?」
そう、頭部と思っていたところは、擬態していた尻尾であった。
そしてそのヤツメウナギのように牙がびっしりと口腔内を覆う口を大きく広げる。
「ロゥリィ、レレイ……すまん」
伊丹は覚悟を決めて目をつぶった。
「グルォォオ!?」
しかし変な断末魔が耳を通り抜け、恐る恐る目を開けると予想外のものが見えた。
それがギギネブラをハンマーと斧で倒してしまった。
「俺たちを、助けたのか?」
「シーッ!!」
ドワーフ・センチュリオンは次のターゲットを見つけて蒸気を発した。
「んな訳ないか……みんな逃げろー!!」
***
「フハハ、
「アルドゥイン殿はいつになくご機嫌だな」
「そうね、久しぶりに暴れてるもの」
アルドゥインたちは道中で見つけた帝国軍たちを蹂躙していた。主に暴れてるのはアルドゥインで、ヨルイナールとアンヘルはそのおこぼれをもらってる感じだ。
理由など特にない。
そこにいたから屠っただけ。ぶっちゃけ暇潰しである。
彼らは最初こそ戦ったが、彼らの弓矢や魔法程度ではヨルイナールの鱗すら貫通できない。増してやアルドゥインなど論外で、彼らは早々に士気は地の底まで落ち、指揮も乱れ、錯乱、人格崩壊するものまでいる始末。
頭が逝かれて同士討ちしてるのかそれとも魔法やスゥームのせいで激昂状態なのかどうかも分からないほどなカオスっぷりを発揮している。
ものの3分で一個師団が全滅した。しかもたかが遊び程度で。
幸い、彼らの犠牲によって当初の予定であった村は焼かれずに済んだ。その代償は大きすぎたが。
「ンッン〜〜♪実に!スガスガしい気分だッ!
「主人様!それだけはやめてください、死んでしまいます!」
「んん?
「ふぇ!?」
幸い、本当にそんなことはしなかったのでアンヘル、ヨルイナールともまた骨にされて復活させられることはなかったが。よほど
隠れ家に戻るまでは。
(い、一体何が起きてるのだ……)
目の前には
「主人様、もう一度言うぜ。俺も主人様が使っている魔法を少し使えるようになったぜ」
(一体コイツは何を言ってるんだ?こんなヤツが
「信じてねーな?見てくれよ、
すると力は弱いものの、彼女の目の前の小石や砂が舞い上がった。
「あ、うむ……すごいな……」
「へへーん、俺も少しは役立てるかな?」
ジゼルはもっと褒めてもいいんだぜ?的なオーラを出す。
対してアルドゥインは……
(なんてこった、大失態だぁぁああ!)
心の奥で悲痛の叫びを唱える。
(なんたることだ。
表情には出さないが、アルドゥインは動揺していた。
(それとも我なのか?自分で自分の首をしめているのか?確か前回もドヴァキンはパーザナックスに教えを乞いでいたな?これは由々しきじたいだ!)
そしてジゼルの方をじっと見る。
この場で消すか?
しかしそうすればかれの計画に大きな変更を余儀なくされる。
それにまだこの世界の未知なる神々に対する切り札として
だがしかし、今までの慢心で幾度も痛い目に遭ってる。
やはりここで消すべきか?
そうだ、絶対的な忠誠を持つドヴァキンにすればよいのだ。
幸い、彼女はスゥームの才能がある。
つまり、スゥームで絶対的な忠誠を誓わせれば良い。
「ジゼルよ、上出来だ。貴様には才能があるようだな」
これを聞いてジゼルは少し嬉しくなる。
「もし、我に永遠の忠誠を誓うのであれば、貴様を我の同胞として認めてやっても良い。そうすれば、ドヴァとしての悦びと快楽も教えてやろう」
「悦びと……快楽……」
ジゼルは武者震いをする。
「誓い……ます」
ジゼルは初めて自然と敬語が出た。
「ならば我の言葉を復唱せよ」
そして誓いの言葉をスゥームで教える。
「|Zu’u Ofan Dii Vaat Ahrk Ov Wah Alduin Thuri《私は我が主人、アルドゥイン様に忠誠を誓います》」
ジゼルは教えられた通りに誓いの言葉を口にする。
それを見てアルドゥインはほくそ笑む。
「よかろう。貴様はこれより我の忠実なる僕だ。我を失望させるなよ、
***
「もう無理〜」
そしてとうとうアルペジオの心が折れてしまった。
「泣くなよ、美人が台無しだぞ」
「私はこのまま惨めな人生終わっちゃうんだ〜」
そして、泣き止んだと思ったらいきなり伊丹に襲いかかった。
「うひひ、どうせ死ぬんだったら男の味を知ってから死んでやる!」
「やめろー!」
目が完全イッてた。伊丹は直感的にこれはやばいヤツだと感じた。例えるならエロゲやギャルゲーで選択肢ミスってヒロインの精神が崩壊してバッドエンドになっちゃうヤツ。
(こういう時どうするんだっけ!?やば、これ死亡フラグじゃねーか!?)
過去にプレイしたことあるゲームで攻略法を探すがとても使えるようなものはなかった。もうこのままじゃナイスボートよろしく、クズ主人公同様の結末になりかねない。
「ヤオ、ちょっとどうにか……」
「この身も、もう我慢できない。最後は自分の欲に従い……」
(ダメだこいつら、早くなんとかしないと!)
二人の目はもはや正気の沙汰ではなかった。
「やめろー!」
『うるさいな、俺の安眠を妨げるのは誰だ?』
奥から聞こえた不思議な声で3人は驚く。
『ん?なんだ、あの
「せ、石像が喋った!?」
そこにいたのは変なお面片手に掲げている少年のような石像であった。
もっとテンポよく書かなくては……