オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし   作:ArAnEl

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某鍛冶屋の迷言ですな。ちなみに、ここでいう神は色々な意味を含めています。


神は喜んでいる

 

「どうするか」

 

 

場所は悪所の陸自の秘密中継地。

 

アルヌスが現在監視状態ではあるが、秘匿にされていたこの場所はうまく公安の目をごまかすことができた。

 

しかし、逆を言えば現在孤立無援ということで、上からの指示を仰ぐこともできない。

 

 

「いかに特戦といえど、この人数じゃ流石に翡翠宮であの数相手はできんな」

 

 

出雲2佐は悩む。

 

 

彼らは、現状唯一自由に動くことのできる部隊である。

 

草加の独立宣言も把握しているが、それ以上のことがアルヌスから伝わってないのだ。

 

そもそもアルヌスが封鎖中なのも自衛隊が嫌疑をかけられている、ことしかわからない。

 

 

「みんなー、エサだよー」

 

「おお、ありがてえ」

 

 

食糧調達から帰ってきた自衛隊協力者の獣人たちが帰ってきた。硬いパンと干し肉という質素なもんだが。

 

 

「嫌なら食わないでいいよ?」

 

 

栗林がポキポキと拳を鳴らしながら言うのでもちろんみんな文句は言わない。

 

 

「ん?おお、今回は握り飯もあるのか!」

「ありがてえ!米だ!」

 

 

一緒に持ってきた食料の中におにぎりが人数分以上に箱に詰めてあった。

 

 

(あれ?コメなんて食料積んでいたかな?)

 

 

一緒に調達していた翼人のミザリィがふと思った。

 

 

***

 

 

時間的には昼食後の眠気は過ぎたころ。

 

 

「なんか、すごくだるい……」

 

 

悪所の隊員の1人が座り込む。

 

 

「おい、どうした?」

 

「いえ、気分が……大丈夫です……」

 

 

と言ってまた倒れそうになるのを支えられる。

 

 

「うーん、俺もだ……」

 

「え、皆さんどうしたのですか?」

 

 

黒川が異常を察知する。

 

精強な特戦の隊員数名も顔色が悪く、なんとか立っているという状態だ。

 

 

「まさか……」

 

 

黒川陸曹が隊員たちの様子を看て何かに気づいた。

 

同時に、扉が爆音と共に吹き飛ばされた。

 

 

特戦の隊員たちは反射的に拳銃を構える。

 

しかしそれが出来たのは半分もいなかった。

多くは拳銃を落としたりうまく掴めなかったり、構えがおぼつかない状態だった。

 

それでも数名、拳銃をしっかりと構えることができた。

 

ここまででまだ1秒すら経っていない。

 

吹き飛ばされた扉がまだ地を着く前に()()は突入して来た。

 

 

「敵襲っ!?」

 

 

数名はテーザーガンで、残りは銃床で殴られたり投げ技や関節技であっという間に制圧されてしまった。

 

 

「危ねえ、やはり非正規(ズル)でギリギリか」

 

「加藤……3佐?」

 

 

抑え込まれている黒川が横目で見ながら驚く。

 

 

「おや?黒川さん。こんな美人に覚えてもらって嬉しいね。まあ、今は少佐だけど」

 

 

加藤は鼻で笑う。

 

 

「一体何をなさったのですか?」

 

「なに、いつも俺が服用している薬を相当量混ぜたおにぎりを混入させただけさ。看護師の貴方ならわかるだろうね。フェノバルビタール(向精神薬)

 

「なんてことを……」

 

「と言うわけで、ここは占拠させてもら……」

 

「加藤さぁんさぁぁぁあああ!会いたかったよぉぉお!」

 

「グエエエ!?」

 

 

栗林は物陰から出ると加藤を背負い投げると裸絞めで首を絞める。

 

首から聞こえてはいけない軋みの音と、鶏を締めたような声がしたが。

 

 

「動くな!お前らの隊長の首をへし折るぞ!」

 

 

しかし加藤の部下らしき3人は動揺すらしない。それどころか銃口は依然倒れている者たちに向けられている。

 

 

「何をしている、早く黒川たちを解放しろ!」

 

「殺すならどうぞご勝手に。我々は隊長に何かあれば見捨てるよう徹底されていますんで」

 

 

栗林は驚く。自衛隊じゃほぼありえない教育方法である。やってみてダメなら諦めることはあっても、始めから諦めるなど。

 

 

「それに……」

 

 

襲撃者がマスク越しに笑った気がした。

 

 

「隊長はその程度でやられるわけがない」

 

 

それを聞くと同時に栗林は右目に激痛が走った。

 

 

「アァァァァァアア!?」

 

 

目を押さえようとしたの一瞬の隙だった。

 

その手を取られ、背後に回されると同時に首を強力な紐で締められた。

 

 

「くっ……!?かっ……!?」

 

 

紐を解こうにも皮膚に食い込んで指では緩めることすら出来ない。目から血を流していることすら反射的に忘れる。

 

栗林は足をバタつかせ、体をくねらせ、空気を求めて胸が懸命に動く。

 

顔は徐々に赤黒くなり、目からは涙が浮かび白目を剥きはじめた。そして指先に力が入らなくなり、徐々に抵抗もなくなり、脱力状態になる。

 

 

「やっと静かになっ……」

 

 

と加藤が呟いた瞬間、栗林の拳が反射的に飛んできた。

 

それを見た男性陣はギョッとした。

 

 

「わ……たしも、この程度で……死にませんよ……」

 

 

とだけ言い残すと気絶した。

 

 

「……なかなかやるじゃないの。黒川さん、彼女の目の応急処置と、気道の確認をするようにお願いします。手加減はしたんですけどね、一応」

 

「あの、加藤3佐……いえ少佐。貴方は大丈夫なのですか?」

 

「大丈夫って何が?」

 

「淑女に言わせるのですか?とんだ変態でございますね」

 

「ああ、キン●袋のこと?こんなこともあろうかとファウルカップ(股間ガード)つけてるからね」

 

「……そうですか。我々はこれからどうなりますか?」

 

「黒川さん、貴方は負傷隊員の看病を願います。貴方たちは、まだ我々の捕虜ではありません。あくまでも違法活動中の国外工作員という認識です」

 

「まだ日本国は貴方たちのジパング?という国家の承認はしておりません。よって、我々は貴方たちの法律で裁かれる理由はありません」

 

「それは日本国がそのようなスタンスだけなんでしょう?どの道、貴方たちは我々に従わなければならないのはよくわかるはずだ。本来ならそれ相応の罰則をつけますが、今回は特別です。全員強制送還させて頂きます。もちろん武器などは没収しますが」

 

「少佐!医薬品、武器弾薬に通信機器の確認おわりました!」

 

「ごくろう。あとはしばらくここを任せる。少し手洗いに行ってくる」

 

 

そういうと手洗い場にいく。

 

 

「……ファウルカップ糞の役にも立たんかったわ……」

 

 

加藤は股間を抑えると静かに悶絶した。

 

 

***

 

 

「なんじゃこりゃぁぁああ!?」

 

 

翡翠宮を侵攻中のオプリーチニナと帝国兵は恐怖に駆られた。もはや恐怖を超えて狂気かもしれない。

 

空を切る音がしたと思えば一面視界を覆う煙、激痛の走る煙が襲った。

 

そして次の空を切る音の嵐で真の恐怖を味わった。

 

空中で破裂する何かがひたすら降り注ぎ、無数の鉄片が彼らを襲う。

 

 

視覚を奪われ、激痛でまともに歩くこともままならず、彼らは蹂躙された。何も知らずに肉片にされたものはまだいい。

 

肉をミンチにされてなおかつ生き残ってしまったものは地獄を見ることとなった。

 

 

「痛いぃ、痛いぃ……」

「お母さーん!死にたくないよー!」

「アッー!」

「アァァァァァアア!」

 

 

幸い、煙幕で翡翠宮からは見えなかった。

 

 

「班長、特殊迫撃砲弾撃ち尽くしました!」

 

「了解。しかし隊長も恐ろしいもの準備するねえ。よりによってナチスドイツ使ってた跳躍型対人迫撃砲弾(8cm WG39)とほぼ同じもの使うんだから」

 

「さすがサイコですな。次どうします?」

 

「あとはデリラたちと、彼らに任せよう。次の準備に移る」

 

「了解」

 

 

遠くから双眼鏡で様子を見ていたSAW部隊は速やかに撤収した。

 

 

「よし!やっと援軍が来たか!この煙が消えたら突撃するよ!」

 

 

デリラたちは白兵戦の用意を始める。白兵戦こそ彼女らの十八番であり、完全に野獣の目になる。もはや兎なのか怪しくなるほどに。

 

 

「突撃ィィイ!」

 

 

獣人たちは旧日本軍よろしく雄叫びをあげて突撃する。

 

しかし煙が消えて残っていたのはほとんど戦えない、戦意を失った者たちだけだった。もちろん蹂躙された。

 

歩けるものは全員既に退避していた。

 

 

「くそっ!どうしてこうなった!?畜生、畜生が!」

 

 

オプリーチニナの1人が罵る。

 

逃げ足だけは早いらしく、彼ら敗残兵たちは既におそらく追いつかれない場所にいた。

 

 

ヒト種や獣人種には。

 

 

「な、なんだあれぇ!?」

 

 

大きな影に気づき、空を見上げた1人が叫ぶ。

 

 

「腹の足しにもならないわね」

 

 

ヨルイナールが空を舞いながら呟く。

 

 

「まあ、アルドゥインの命令なら従うだけだ」

 

 

アンヘルも乗り気ではないがヨルイナールと共に急降下した。

 

 

この日、オプリーチニナはごくわずかの幹部を残し、壊滅した。

 

 

***

 

 

「我々に退去しろ、と」

 

「そうよ」

 

 

ボーゼスの問いにデリラが答える。

 

 

「ここは帝国領よ!」

 

「今はあたいらが占領してるんだよ!」

 

 

騎士団とSAW部隊のムードが険悪になる。

 

指揮官が命令すれば、あるいはしなくても一滴の血さえ流れれば、また地獄化とする。双方はそれをよく理解していた。

 

 

「ボーゼスさん、大丈夫ですよ」

 

 

間に割って入ったのは白百合議員だった。

 

 

「これ以上、騎士団の方々にご迷惑をおかけする必要もありません。それに、あなた方も犠牲を払いつつも私たちを守ってくださりました。ここは我々日本の使節団はアルヌスの帰還します」

 

「白百合議員殿……かたじけありません……」

 

 

ボーゼスが頭を下げる。

 

 

「あたいらも恩のある日本人相手に強気に出たくはないんだけどね、これも我々の独立のためと思って勘弁してくれ」

 

 

デリラも遠回しに謝罪する。

 

 

「でもあんたたち、騎士団はどうするんだい?帝国に戻ると言うなら今回は見逃してやる。次会ったら敵だ」

 

「……それを決めかねているの。本来なら、新皇帝に忠を尽くすべきでしょう。しかし、我々は本当は、今は囚われの身のピニャ殿下に忠を尽くしている……」

 

「では、ひとまず我々と行動を共にするというのはどうでしょう?我々の護衛という名目で」

 

「確かに、それが最適かもしれません。ではそういうことで、我々は日本の特使たちをアルヌスまで護衛いたします」

 

「まあせいぜい帰って来るでに帝国が滅んでいないことを祈るんだね」

 

 

デリラは皮肉めいた言い方だったが、どこか寂しそうな表情が一瞬見えた気がした。

 

 

「せいぜい国を失う、ということの悔しさを少しでも味わってくれ。帝国人……」

 

 

そう言ってデリラはタバコに火をつける。

 

 

「デリラ隊長、少佐より宮殿に来るようにとのことです」

 

 

竜人種の魔道士が伝える。

 

 

「りょうかーい。これが吸い終わったらすぐに行くよ」

 

 

***

 

 

「ええい、どうなってるのだ!」

 

 

皇帝ゾルザルは苛立ちを隠せなかった。

 

 

「オプリーチニナたちは何をやってる?まだ制圧できないのか!?それどころか定時報告もきてないぞ!」

 

「陛下、お気を確かに。皇帝たるもの、気を短くしてはいけません」

 

「そ、そうだな。テューレ、お前のいう通りだ」

 

「報告します!オプリーチニナの生き残りが帰還しました!」

 

 

近衛兵の1人が報告する。

 

 

「は?生き残り?」

 

 

その数たった6人。

 

しかも彼らも満身創痍であった。目をやられていたり、手首が無い者、足が無い者と散々であった。

 

そして彼らは報告した。

 

 

独立国家樹立を宣言したヴォーリアバニーを始めとする異種族混成軍との死闘。

それを支援する緑の人たちとはべつの謎の者たち。

そして2頭の龍に追い打ちをかけられたことを。

 

 

「……ご、ご苦労。お前らは傷を癒せ」

 

 

ゾルザルは怒りを通り越して呆れたというか、衝撃を受けたというか、言葉がみつからなかった。

 

しかしテューレはそれ以上にショックだった。

 

 

「ボウロ、どういうこと?説明して」

 

 

テューレは小声で視界にいない下僕に尋ねる。

 

 

「こればかりは予想外ですな。あのお人好しすぎる緑の人たちとは別の過激組織がいるとしか考えられませぬ。まさかこのどさくさに紛れて国を樹立させるとは……」

 

「そんなことどうでもいいの。早く次の手を打ちなさい」

 

「わかりました」

 

 

そんな感じで密かにやり取りが行われた。

 

 

「またあれだ、聞こえたか?」

 

 

城壁の窓から見張りしていた兵が呟いた。

 

 

「いーや、何も。気のせいだろう?」

 

「だといいんだが……ん?一体あれは何だ!?」

 

「見張り兵、何が見える?」

 

 

隊長格の兵士が尋ねた。

 

 

「雲の中だ!」

 

「なっ!?ドラゴンだ!」

 

 

しかしそれが彼らの最期の言葉となった。

 

 

漆黒龍アルドゥインは盛大に城壁に突っ込んで来た。もちろん城壁は木っ端微塵である。

 

 

Yol(ファイア)……」

 

 

アルドゥインは果敢というべきか、無謀にも襲いかかろうとする近衛兵を嘲笑うかのようにスゥームを唱える。

 

 

Toor Shul(ブレス)!」

 

 

あっと言う間に人の形をした炭人形となった。

 

 

「ヒィィィイイ!?」

 

 

ゾルザルは情けない声を出すと腰を抜かす。

 

それでも必死に這いつくばって逃げようとする。

 

 

「へ、へへへへへ陛下……!!お、おおおおおおおおまちを……!!」

 

 

あのテューレですら恐怖でうまくろれつが回らず、尻餅ついて立てなくなってしまった。

 

 

(なんだつまらん。ここに皇帝などと名乗るのだからさぞかし英雄がいるのだと思ったがヘタレジョールしかおらんな。どうやら皇帝は留守のようだ)

 

 

ヘタレ魂しか持たないジョールに興味が失せたのか、アルドゥインは城壁外で抵抗を続ける兵士と(龍にとっての)言葉(スゥーム)遊びをすることにした。ただし相手は死ぬ。

 

 

「隊長ー、何だか漆黒龍が先制攻撃してるみたいですが」

 

「あらー、一足遅かったか。俺たちの分なくなっちゃうかもね。早く行きてー」

 

「タイチョサン、アンタもゲスね」

 

 

まだ日本語覚えたてのアクアス族(水中人間)の兵士が言った。

 

 

「誰だこんな言葉教えた奴は……」

 

 

そう言って加藤たちは水中工作員(フロッグマン)装備を身につけると城壁外の池に入った。

 

 

***

 

 

「何やら外が騒がしいな……」

 

 

やつれたピニャが呟いた。

 

 

「どうもなんらかのトラブル見たいです。ここが奥深くの個室ですからわかりづらいですが」

 

 

ハミルトンが答える。

 

 

「とうとう民衆が蜂起でもしたのか?もうこんな帝国どうでも良い。妾がどんだけ頑張ってもあのバカ兄上が潰し、頭の固い元老院は妾を侮辱し、もうこんな帝国亡くなれば良いのだ」

 

「殿下、それは流石に言い過ぎですよ!」

 

「ハミルトン、妾の子となんぞほっといて貴女も逃げた方がよいぞ。これがもし本当に蜂起なら我々貴族や皇族の女は何されるかわからないからな。特に妾と一緒にいるところを目撃されてみろ。婚約者に純潔を捧げる前に……いや、お前は違ったのだったな」

 

「ちちちちちちち、違いません!と言うわけでもないのですが……」

 

 

ハミルトンの顔が真っ赤になる。

 

 

「まあどの道、妾たちを敵視している野獣のような男どもに夜な夜な、いや日中夜●●●(ピー)されたり◇◇◇(ピー)をされ続け、挙句には▲▲▲(ピー)となるだろうな」

 

 

とこのようにハミルトンは壊れたピニャのエロ同人的妄想に延々と付き合わされてしまった。

 

 

その頃、外はひたすらアルドゥインと防衛兵同士の生死かけた熱い議論(スゥーム祭り)がなされていた。一方的にアルドゥインがスゥームをぶっ放すだけだが。

 

そんな中、井戸から男が数人這い上がってきた。

 

 

「ツナ、もう戻っていいぞ」

 

 

加藤はマスクを外すと井戸内に残ったアクアス族の青年に言った。

 

 

「よし、奴が案内した通り皇帝直属の料理人御用達の井戸なのは確かだ。まさか連中亡霊(サ●コ)みたいに井戸から来ると思ってなか……」

 

 

運悪く鉢合わせになってしまった。皇帝直属の料理人と。

 

 

「無力化します」

 

 

隊員の1人が銃を構えだが向こうも拳銃を構えた。

 

 

「待て、古田士長か?」

 

 

加藤は銃を下ろさせる。

 

 

「……自衛隊?でも見慣れな……うぐぅ!?」

 

 

しかし古田は加藤が咄嗟に撃ったテーザーガンで気絶させられる。

 

 

「ああ、そういや料理人として潜伏していた奴のこと忘れてたわ。まあ荷物増えるけど、こいつも救出対象に加える」

 

 

そして部下の1人に運ばせる。

 

 

「しかし、どうやって救出した人たちを連れて帰るんすかね。井戸はもう厳しいですし」

 

「何言ってんの。帰らねえよ」

 

「え?」

 

 

そんな会話をしつつついでに見張りを仕留めつつ、ピニャがいるところまでたどりついた。

 

 

「フフフフ腐腐腐腐腐……どうせ獣人種や醜男どもにあーんなことやこーんなこといっぱいされてしまうだろうなあ」

 

「殿下、お気を確かに!こんな時に芸術の薄い書物があれば……」

 

「もうどうにでもなれ、いっそ妾から行くか?おーい誰か!この帝国で最も価値の高い高潔な純潔を欲しいものはおらぬか!今なら誰でもよいぞ、妾を女にしてくれー!」

 

「はわわわ、殿下が壊れた!そんな姿でどこへ行かれるのですか!?」

 

 

そして下着姿で部屋を出る。

 

そして鉢合わせになる。

 

 

「ピニャ殿下、あんた面白いな」

 

「ぎゃー!ナマズ人間!」

 

「ひでえ。ウエットスーツってそんな風に見えるの!?」

 

 

そう言ってマスクを外した。

 

 

「あ……もしや、カトー殿?」

 

「はい」

 

「……どこまで聞いてた?」

 

「変な笑い声から」

 

「…………」

 

 

見る見るピニャの顔が真っ赤になってゆく。

 

 

「姫殿下がこんな処女ビ●チだったとは」

 

「うわあぁぁぁぁぁあ!お前を殺して妾も死ぬ!」

 

「姫様、お気を確かに〜!」

 

 

ハミルトンがなんとか羽交い締めでピニャを制する。ナイフを持ってるピニャを制するとはなかなかである。

 

 

「もう嫁に行けぬ!こんな姿を見られたからには、貴様責任取って妾の婿にでもなれ〜!」

 

「やべーよ、これヤンデレルート突入だよ」

 

「隊長、応援してますぜ」

 

「何をだー!?なぜ俺の周りの女はこんなのばっかりだー!?」

 

 

***

 

 

なんとかピニャを落ち着かせた。そして救出に来たことを伝える。しかし先の件より、加藤の顔を見られなかった。

 

 

「殿下、先のことは一時のご乱心とお見受け致しますので、安心してください。本気にしてませんので」

 

「そ、そうか。ありがたい、うん、本当に……(やはり妾には魅力がないのだろうか……)」

 

 

ピニャはすごく複雑な気分だった。

 

 

「それにしても自衛隊が救出に来るとは、帝国との交渉は決裂したのだろうか。帝国は大丈夫なのか?」

 

「滅びました」

 

「「へ?」」

 

 

ピニャとハミルトンは耳を疑った。

 

ピニャに至っては卒倒しそうになるのを辛うじて座り込むだけに抑えた。

 

滅びた?

 

どういうこと?

 

意味がわかんない。

 

 

ピニャの脳内をいろんな思考が回る。

 

 

「滅びたって……なぜ……」

 

「我々が滅ぼした」

 

「そんな……自衛隊は我々と和平交渉していたのは嘘だったのか!?」

 

「ピニャさん、一つ勘違いされては困る。我々は自衛隊ではない」

 

「え?」

 

「我々は新たに独立した国家、ジパング。今貴方が立っている地面は、今日から首都ヤマトだ」

 

「……」

 

「そして我々はジパング国防軍(ZDF)特別抗戦(Special Anti War)部隊だ」

 

「そんな……そんな……」

 

 

 

そして涙が溢れる。

 

 

「ピニャさん。だから俺はこれから殿下とは呼ばない」

 

 

それはピニャが皇族でなくなったことを意味していた。

 

 

「そして一つ質問がある」

 

 

そして目の前にしゃがみこむ。

 

 

「貴女が帝国を維持したい理由は何だ?」

 

 

ピニャはこの問いが、今後の自分の運命を決定するものと感じた。

 

 

「言っている意味がよくわからない……」

 

「もし貴女が、帝国という国そのものを残したいのなら、貴女が統治しなければならないという理由はない。貴方たち皇族より優秀な者を統治者にすればいい。

それとも、皇族の血を維持したいだけなのか。それならこの場で貴女を犯して孕ませればよいだけのこと。俺じゃなくても、そこら辺の男でもいい」

 

 

加藤は冷酷に問いかける。だが、その眼は真剣だった。

 

 

「考えるな。俺は貴方の心の声が聞きたい」

 

「…………わからない」

 

 

ピニャは静かに口を開いた。

 

 

「わからない。しかし、妾はこの帝国を愛している。帝国そのもの、民、今は亡き父、あのバカだが純粋な兄上たち。何を守りたい、と言われてもわからないが、私は帝国をより良いものにしたかった」

 

「……それを聞きたかった」

 

「え?」

 

「今の日本人もそんなものだよ。右翼だの左翼だの愛国心だの自己主義だの……言葉には出さんが、ほとんどの人の心の奥では日本が好きなんだよ。ただそれに気づいてないだけだ」

 

 

加藤はゆっくりと立ち上がる。

 

 

「貴女の命はこの俺が保証する。それではついて来てくれ」

 

 

そして通されたのは皇帝の間。

 

しかしゾルザルの姿はなく、壁には大きな穴や人型の炭やら死体やらなかなかのカオスと化していた。

 

 

「少佐、ゾルザルは一足早く逃げたみたいです」

 

「なんでヘタレなトップほど逃げ足は早いんだろう、ホント」

 

「そして重武装のオーガ数体いましたが、撃破しました。ここでRPG消費は痛いですが」

 

「ご苦労。人的損害は?」

 

「ありません」

 

「それでいい」

 

「あと1人重要人物を確保しました」

 

 

どこぞの海外の男性向け雑誌のようなバニーが部屋の隅で小さく座っていた。

 

 

「コスプレ、じゃないよな?確かゾルザルの奴隷の1人だな」

 

「ヴォーリアバニーのテューレです」

 

「あの元ヴォーリアバニーの女王?このタイミングで見つかるのはパーフェクトだ。ウサギはストレスに弱いからちゃんと見張っとけ」

 

 

どうやらかなり怯えた様子であった。口を聞こうとしない。

 

 

「よお、カトー少佐。お呼びに来てやったよ」

 

「デリラ少尉、どうだ?」

 

「まあ翡翠宮の件は、一件落着だな。大使の護衛は部下と騎士団に任せた」

 

「ご苦労」

 

「なあ、あそこにいるのってもしかして……」

 

 

デリラがテューレを見たとき目つきが変わった。

 

 

「ああ、お前らの元女王だ」

 

 

それを聞くや否や、デリラは短刀を抜いてテューレに襲いかかった。

 

が、あと一歩のところで世界が反転したように地面に叩きつけられた。加藤が何故か隣にいた。

 

 

「勝手なことするな。命令だ。それでもやるというならお前の両耳の根元から落として人間みたいにしてやるぞ?」

 

 

デリラは悔しそうに唇を噛みしめると、短刀を納めた。

 

そしてテューレに唾を吐いて椅子に座る。

 

 

「んで、あたいに何の要件?」

 

 

デリラがイライラしながら尋ねる。

 

 

「面子は揃ったか。草加さんは少し遅れると言ったがまあいいか。紹介したい者がいてね」

 

「さっさとしてくれよ」

 

「では紹介しよう……」

 

 

と言った瞬間、漆黒の龍が壁の穴から入ってきた。

 

 

「「「「!?」」」」

 

「ジパング最高統率者。漆黒龍アルドゥイン様だ」

 

「下僕よ、我に紹介したい者とはこいつらか?」

 

 

このとき、ピニャは全てを悟った。

 

 

Zu'u Alduin(我はアルドゥイン)

Zu'u lost daal(我は帰ってきた)

Daar Lein los dii(この世界は我の者だ)

 

 

かなり前に聞いたデュランの言葉の意味が分かった気がした。

 

 

***

 

 

『速報です。本日未明、内閣総理大臣は米大統領と会談した結果、日米合同による特地におけるテロリスト掃討作戦を実施する旨を発表しました』

 

 

「ちくしょう、とうとう米国の言いなりになりやがったか」

 

 

嘉納が机に拳をたたきつけた。




これから終盤へと話は向かって行く、はずです。まだまだ問題は山積みですが。
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