オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし   作:ArAnEl

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アルドゥイン様が人間と馴れ合いしないか心配?安心してください彼の脳内はこんな感じなので。

アルドゥイン(自分)>ドヴァ(パーサナックスなど)>部下のドラゴン(ヨルイナール、アンヘル)>その他のドラゴン(ラオ、ティガ、ワイバーンなど)>>……>>下僕(ドラゴンプリースト、加藤、ジゼル、玩具)>その他全ての生けるもの=エサ

あと最近災害が多いですが、皆様もご注意くださいませ。スゥームがあれば豪雨など打ち消せるのですが。


だが断る

美国(アメリカ)は日本と共に特地を占領するつもりだろうな」

 

「ああ、例の日本の事件と、日米安保条約を理由にな」

 

「日本が国際社会に潔白を証明できないことをいいことに、アメリカが同盟国を支援するという名目だな」

 

「なら我々は別の方法を取るまで。我々は小日本を罰する」

 

「うむ、今こそ魚釣島を実効支配すべきだな」

 

 

***

 

 

「加藤、待たせたな」

 

「草加さん、お疲れ様です」

 

「そして、彼がお前の言うこの国を世界最強にする要素か」

 

「はい」

 

「おい下僕(加藤)。そいつはなんだ?新しい下僕(玩具)候補か?」

 

 

アルドゥインはかつてモルト皇帝やゾルザルが座していた王座をつぶしてそこに鎮座していた。それでも少々窮屈そうだが。

 

 

「それにしても、ジョールの王とやらは窮屈な場所が好きなのか?」

 

 

そんな独り言をつぶやく。

 

ちなみに、テューレは恐怖を通り越して人形のように隅で固まっていて、ピニャも顔には出さないものの、小刻みに震えながら椅子に座っていた。デリラも落ち着きのない子犬のようにウロウロしている。

 

 

「漆黒龍アルドゥイン殿、お初にお目にかかる」

 

 

草加は帽子を脱いで頭を下げる。

 

 

「ほう、貴様我を見て怖気ぬとは、なかなか肝が据わってるな」

 

「確かに、普通の人間なら貴方の姿を見れば恐怖に陥るだろう。しかしそれは、得体の知れない未知のものであるための恐怖か、それが明確に危害を加えるものと知っているかのいずれかだろう」

 

「ふむ、続けろ」

 

「そして私は貴方のが何かを知っている。龍の王またはそれ以上の存在であり、不死の存在。そして知能に関しては人間以上と見る」

 

「ほう、ではなぜそれで恐れぬ?貴様の言う後者ではないか?」

 

「なぜなら、貴方は私に危害を加える理由がない」

 

「貴様、面白いことをほざくな。何故我が貴様を殺したりしないと断言できる?」

 

「なぜなら、貴方は自らに有用な存在を排除しないからだ。現に私はここで貴方と問題なく会話している」

 

「ほう、ではこの会話が終わり次第我が貴様を屠らんように自らの価値を証明してみろ」

 

 

アルドゥインは心の中でニヤリと嗤う。

 

 

「では、私が貴方にお会いした理由を話そう。貴方に我が国ジパングの象徴になって頂きたい」

 

 

加藤を除く、そこにいる誰もがキョトンとする。

 

 

「はっ!何を言いだすかと思えば象徴とな。王ならまだしも、象徴とはな」

 

 

アルドゥインは相手を小馬鹿にしたように言う。

 

 

「貴方に王は相応しくない」

 

 

興味を失いかけたアルドゥインが振り向いた。

 

 

「何だと?」

 

 

雰囲気からしてかなり気を悪くしたようだ。

周り(主に女性陣)がソワソワし始めた。

しかし草加は相変わらずポーカーフェイスで続ける。

 

 

「王とは、人間が作った存在だ。つまり王は人間にしかなれない」

 

「おい貴様、我を愚弄するのにもいい加減に……」

 

「だから私は貴方にお願いする。人間の支配者、いや……万物の管理者になって頂きたい」

 

 

その瞬間、時が止まったように静寂さに包まれた。

 

 

「ククク……貴様、面白い。面白いなぁ!もう少し説明をしてもらおうか?」

 

 

アルドゥインは草加に顔を近づける。

 

 

「当初我々は貴方の存在無しでこの計画を行うつもりだった。しかし、貴方のことを知れば知るほど、この計画に必要不可欠の存在と判断した。

アルドゥインよ、なぜ私が貴方を管理者になって頂きたいか、お分りいただけるか?」

 

「さあな。下々のことなどどうでも良いからな」

 

「人間は有史以来、戦争を止めたことなどない。それは何故か。それは個々の欲だと私は考えている。

王などの民の代表になるのに、様々な理由があるだろう。富、名誉、欲、または善意。しかしその善意も時と共に変わることもあり、第三者によって潰されることもある。

王とて例外ではない。民の不満を解消するために戦争を始めたこの帝国然り、個人的な恨みで戦争を起こしたりすることもあるだろう」

 

 

草加はふと一息する。

 

 

「だが、貴方にはそれがない。不死であるが故に、他者にその存在や地位を脅かされることもない。人間のように狙われることを恐れて疑心暗鬼になる必要もない。

そして貴方は、人間のような欲は無い」

 

「ほう、何故断言できる?」

 

「貴方が人間を殺しているのは、我々が家畜を殺しているのと変わり無いだろう。あくまでも貴方は龍としての使命、本能に従っている、違うか?」

 

「フフフ……さあて、どうかな」

 

「だから私は貴方に提案する。人間を含めた、世界のシステムの管理者になって貰いたい。そのためにも、まずは我々の国の象徴となって頂きたい」

 

 

そしてまたも静寂に包まれる。

 

 

(狂ってる……狂ってる!)

 

 

ピニャは横目で彼らのやり取りを見て恐怖に陥った。

 

アルドゥインのことは勿論だが、そのやり取りをニヤニヤ見てる加藤にもなんとも言えない闇を感じた。

しかし、それよりも恐ろしく見えたのは、あの漆黒龍を眉ひとつ変えずに説得する草加は得体の知れない怪物に感じた。

 

 

「カトウ少佐、話が違うよ!」

 

 

デリラが小声で加藤の耳元に怒鳴る。

 

 

「別に新しい国家はお前たちヴォーリアバニーだけの国家と約束したわけじゃないんだけど。それにヴォーリアバニーだけじゃまたあそこにいる女王様と同じ末路になると思うけどな」

 

「う……」

 

 

デリラは返す言葉が無かった。ヴォーリアバニーだけじゃ近代的な国家を維持することは難しいことは彼女も理解しているようだ。

 

 

「それに、人間が支配するよりはましだと思うけどな」

 

「……しゃあない。しばらくは様子見させてもらうよ」

 

 

デリラは渋々戻った。

 

 

「クサカと言ったな、貴様。相当面白い計画だ。まだ概要だけだが、それだけでも緻密な計画が我の脳裏には次々と浮かんでくるぞ」

 

「さすがはヒトより優れた生物だな」

 

「だが貴様は2つ勘違いをしている。1つ、我は生物(ジョール)などという下等な存在ではないぞ。むしろ概念に近いがな」

 

「それは大変失礼した。お詫び申し上げる」

 

「それともう一つ。その話、どこまで信用できるかな?」

 

「そうか?私はてっきり貴方は私の心を読めるものと思っていたので、その上で理解して頂いたとおもったのだが」

 

「読心術など例えあったとしても役には立たん。スゥームに相手の心を屈服させ、真実を吐かせることもできるがな。

しかしこの場で真実であっても、後に、極端に言えば数時間後にはそれが嘘になる可能性など否定できぬからな。

ヒトの心ほど変わりやすく、信用などできぬものはない」

 

 

アルドゥインの脳裏には竜戦争時代、一部のドラゴンプリーストの裏切りや民衆の蜂起などが浮かび上がる。

 

 

「……もし信用できないなら、貴方は私を生かして帰さない。しかし私がまだ生きているということは貴方は私の次の言葉を期待している」

 

 

アルドゥインは心の奥で癪だがこの人間の言葉は事実であると黙認する。

 

 

「貴方が首を縦に振らなくても私の計画に参加して頂きたい……」

 

 

そして草加は懐から回転式(リバルバー)拳銃を取り出し、薬室を開く。

 

 

「神はサイコロを振らない。これは私の生まれた世界のある人物(アインシュタイン)の言葉でですね」

 

 

拳銃の弾を一つだけ残して取り除く。

 

 

「元々は量子力学の議論で批判する際に使ったものだが、ここでは敢えて別の方向で考えたい。

彼の言葉を借りるなら、宇宙を含む世界の仕組みは、完璧なる神の設計図に基づくはずである。これはこの世界にも適用されるだろう」

 

 

リボルバーの薬室を回転させた。

 

 

「それとも、この世界とあちらの世界が繋がったのは単なる偶然なのか」

 

 

そして拳銃の銃口を自らのコメカミに向ける。

 

 

「どちらなのか、この目で見て見ませんか?」

 

 

***

 

 

「うわー、本当に来やがった……」

 

 

ここ数日色々とあった。

 

特使が騎士団に護衛されてアルヌスに帰還したが、その際騎士団も保護を求めてきたのだ。一応緊急処置として一時的に保護することになったが。

 

そんな混乱で半ば何もすることのない伊丹はぽけーと外を見ていると日本とは異なる迷彩を施した部隊が続々と門をくぐってきた。

 

米海兵隊である。

 

アメリカはまず基礎を知るために海兵隊を投入することになったようだ。

 

そしてその全面的バックアップは自衛隊が担うことになった。

 

 

「さぞ上は悔しいだろうなー。俺としては仕事が楽になるならいいかなー」

 

 

伊丹はそんなこと思いつつ窓の外を見る。

 

 

「ヨウジ、終わった」

 

 

検査着姿のレレイが後ろから声をかけた。

 

 

「あ、お疲れさん。どうだった?」

 

「別に何も」

 

「そうか。ならよかった」

 

 

そう思っている矢先、レレイの後ろで医者官が何か言いたそうな表情を浮かべていた。

 

レレイがロゥリィたちと話している間、こっそり医官に話を聞く。

 

 

「何かあったんです?」

 

「その、大変申しにくいのですが……彼女、白血病に近い状態です」

 

 

伊丹は一瞬鈍器で頭を殴られたような気がした。

 

 

「あ、ただ不思議なことに、健康体なのです。一応今のところ生命の危機はないでしょう」

 

 

それを聞いて伊丹は安堵した。

 

 

「なんと言いますか……制御された白血病?みたいな症状です。普通の人間ではありえないようなことですが。さすが特地と言わざるをえないですね」

 

 

違う、おそらくセラーナのおかげだろう。

 

伊丹は口にはしなかったがそう思った。

 

半吸血鬼を今は治せないが、一応現状維持がベストなのかもしれない。

 

 

(レレイ、必ず治してやるから頑張ってくれ)

 

 

伊丹はそう固く誓うのだった。

 

 

そんな感じの中、滑走路は忙しい様子なのか窓からチラッと見えた。

 

 

「そんな!まだ飛行禁止は解かれていません!」

 

「シャラップ!そんなんで戦争ができるか!」

 

 

自衛隊と米軍が揉めていた。

 

 

「レーダー照射がどこから来てるか、どんなことが起きるか分からないのですよ!」

 

「はっ!この特地でレーダー照射?そんなクレージーなことが起きてるのか。きっと魔法じゃないのか?それにジャップは証明したじゃないか。魔法なんぞ銃さえあれば怖くないと。それに仮にレーダー照射として、何が飛んでくる?どうせ石っころ程度だろう。HAHAHA!」

 

「しかし……」

 

「しかしも何も、君たちは我々をサポートするように言われてるのだろう?ならば我々に従え!」

 

「どうなっても知りませんよ……」

 

 

米軍は既に戦闘機、攻撃機、輸送機、戦闘機ヘリなど多数飛行準備を終えていた。

 

 

「ジャップのテロリストなんざ一網打尽にしてやら」

 

「HAHAHA、特地のかわいこちゃんをテロリスト共から救ってやるぜ」

 

「でもテロリストに協力するメス共はたっぷりとお仕置きだ!」

 

 

米軍たちは汚い言葉を発しながら離陸準備する。

 

離陸しようと機器を作動するとなるほど、自衛隊が言うようにレーダー照射を受けたことを示すアラートが鳴る。

 

 

「確かに、これが我々の世界なら大問題だ。だがここでは問題ない。第一、実際ミサイルは飛んで来てないだろう?」

 

 

そう言って取る意味があるか分からない制空権のために戦闘機が発進する。

 

続いて戦闘ヘリもローターを回す。

 

そして戦闘機が離陸する。

 

 

「そら見ろ、問題なく飛んだ」

 

『こちら管制塔。パイロット、問題はないか?』

 

「こちらパイロット。ああ、見ての通りハッタリのようだ。これなら難なく飛べるはず……」

 

 

その時、彼の表情から余裕の笑みが消えた。

 

同時に、管制官も一瞬だが声を発することができなかった。

 

それは恐怖か?驚きか?それとも理解不能なためか?

 

彼は後に分からない、とだけ思うことになる。

 

 

Shit(くそっ)!?ミサイル警報装置が作動した!」

 

 

ミサイル警報装置、それはレーダー照射を探知する物と違い、ミサイルが()()()()向かって来ていることを意味していた。それが悪魔の声のように鳴り響く。

 

 

『落ち着け!お着いて対処せよ!最悪ベイルアウトしても……』

 

「ヒッ、ファァァァッッック!!」

 

 

そして管制塔からいくら連絡しても応答が来ることはなかった。管制塔から目視で何が起きたのか理解しつつも、頭ではそれを理解したがらない。

 

目の前で明らかに応答は来ないとわかりつつも、無意味な応答コールを繰り返す。

 

そしてそれは他の航空機でも複数同様なことが起きた。

 

 

 

「野郎、マジでやりやがった……」

 

 

自衛官たちが驚きの表情を見せる。

 

まさかと思った。

 

心の奥でハッタリだと思っていた。

 

もし、これが自分たちだと思うと背筋が凍った。

 

 

モニター越しに見ていた狭間陸将たちも難色を見せる。

 

 

「このままでは日米関係も不味いな……」

 

「下手すればアメリカが本気を出す」

 

 

この時、もちろん伊丹も病院のまどから一部終始見ていた。

 

 

「バカヤロウ、マジでやりやがったな……加藤、てめえは何がしたいんだ」

 

 

伊丹は歯をくいしばる。

 

テュカやヤオは今まで見たことのない伊丹の怒りの表情にオロオロと困惑する。

 

そして、落ち着けと言わんばかりにロゥリィが伊丹の肩に手を優しく置く。

 

 

「ヨウジ、もしかしてまた掟を破ってでも行こうとしてるでしょぉ?」

 

「ギクッ……」

 

「やっぱりぃ、バレバレよぉ?」

 

「でもお父さんの性格だもんね」

 

 

テュカが笑う。

 

 

「ただ、どうして行くのぉ?」

 

「そんなの、当たり前だろう?あの野郎をぶん殴りに行くんだよ」

 

「それを聞いて安心したわぁ」

 

 

ロゥリィは微笑む。

 

 

「やっぱりまだ仲間と思っているのねぇ。もし敵と見たらそもそも気にかけない。仲間だからこそ、誤ちを正そうと叱る」

 

「いや、別にそこまで深く考えてないよ?ムカついたからぶん殴りに行こうと」

 

「そ、それだけなのか……」

 

 

ヤオは唖然とする。しかしロゥリィはそれを聞いても微笑む。

 

 

「まあ、そういうことにしておいてあげるわぁ」

 

「?」

 

 

ロゥリィはなせが嬉しそうだった。

 

 

「まずは、どうやってこの軟禁状態を突破して、必要なものを調達するか」

 

 

レレイが言う。

 

 

「それが、一応いい案があるんだ」

 

 

伊丹は苦笑いする。

 

 

***

 

 

銃声が広場に響く。

 

この時ばかりは加藤も椅子を蹴飛ばして立ち上がる。

 

しかし、草加はなんともない。

 

空胞か?

 

しかし即座に否定する。

 

音で空胞ではないことなど分かりきっている。

 

それに空胞でもこめかみにあの至近距離で撃てば無傷では済まない。

 

しかし草加はなんともない。

 

 

(な、何が起きた?)

 

 

加藤は何が起きたか理解できなかった。

 

もちろん、銃が何かを知っているピニャ、デリラも同じだった。

 

草加は特に何事もなかったかのように拳銃を下ろす。銃口からは煙が微かに出ていた。

 

「お見事……」

 

 

草加は静かに呟いた。

 

そして真後ろを向いて加藤の隣に歩く。

 

 

「?」

 

 

そして草加は壁から何かをほじくり出した。

 

ありえない向きで壁にめり込んだ弾丸だった。

 

 

「加藤、当たらなくて良かったな」

 

 

そしてその弾を加藤に渡す。

 

掌に置かれた弾丸を見て絶句する。

 

弾丸が()()潰れていた。

 

 

そして草加はアルドゥインの目の前に戻る。

 

 

「貴方は想像以上に強大な存在だ」

 

「ふん、命拾いしたな。我は今日は気分が良い、久々に面白いものを見せてもらったからな

(まあ今の我ならSu Grah Dun(攻撃高速化)Tiid Klo Ul(時止め)とピンポイントのFus Ro Dah(揺るぎなき力)を組み合わせれば造作もないことよ)」

 

 

アルドゥインはほくそ笑む。

 

 

「だがしかし、貴様らはなぜそこまでする?今のは我でなければ貴様は確実に死んでいたぞ?」

 

「時として人は、自分の命など顧みず行動することがある。その理由は私にもわからない。ただ、私が成し遂げようとしていることは私の命よりも、遥かに価値のあるものだと信じている」

 

「ふん、虫けらの命の価値観など知ったことではないがな。まあ貴様の誠意だけは認めてやろう」

 

「では……」

 

「勘違いするなジョールよ。貴様の提案は断る」

 

「……」

 

「我は誰が配下になろうが知ったことではない。来る者も去る者も興味はない。

だがひとつだけ忠告してやろう。我に刃向かう者は始末する、それだけだ」

 

 

アルドゥインは草加の吐息が感じるほど近づいて威圧する。しかし草加は眉ひとつ動かさない。

 

 

「話はそれだけか?ならばこれで終わりにしようか。しかしジョールよ、なかなか有意義な話し合いだったぞ。できるものなら貴様と本気の話し合い(スゥームのぶつけ合い)をしてみたいものだ」

 

 

そしてアルドゥインは飛び立とうと崩壊した壁まで歩く。

 

 

「75億……」

 

 

草加の一言にアルドゥインは足を止める。

 

 

「この数がお分かりか?」

 

「……」

 

「我々の世界の、おおよその把握できている全人口。75億の、魂だ」

 

 

アルドゥインは振り向くと草加は窓の方を向いていた。

 

 

「無論、これは我々の元祖国日本人、そして我々の分を含む」

 

 

草加はどこを見ているのだろう、と加藤は思った。

 

そして気づいた。

 

門の方向、自分たちの元故郷。

 

 

「そしてこの世界の分と、未確認の分を合わせれば、100億は下らないだろう。

私にはそれらを扱う資格も権利もない」

 

 

そしてまたアルドゥインを見る。

 

 

「だが貴方には、それがある」

 

 

しばらくの沈黙が流れた。

 

 

「……ククク……ガハハハ、アーハッハッハッ!良いだろう、貴様の口車に乗ってやろうではないか。だが我の条件ならばな」

 

「条件などでなくていい。命令さえしてくれれば」

 

「いちいち面倒なやつだ。そもそも我は貴様らを配下になどしておらん。

とにかく、我は好きなようにやらせてもらう。そして貴様らも好きなように動け」

 

 

それだけ言い残すとアルドゥインはさっさと飛び立った。

 

一同はそれを見送ると、皆疲れ切った顔をして座り込む。

 

 

「一応最善の結果だが……今回ばかりは緊張したな」

 

 

草加はそっと呟いた。

 

 

***

 

 

「現在、米軍と日本は合同で俺たちを潰しにくる計画を立てている。幸い、ジャミングしたお陰で一時航空戦力は使えないがな」

 

「隊長、それはどれくらい持ちますか?」

 

「長くて3日だろう。奴らはすぐに原因を解明して復旧するだろう」

 

「3日……」

 

 

隊員たちは唾を飲み込む。

 

 

「早ければ明日の朝にも復帰するかもな」

 

「で、何か策はあるんですか?」

 

「一応あるにはある」

 

「まさか逃げるとか言いませんよね?」

 

「……」

 

「「……」」

 

 

やっぱし。と隊員たちが思った。

 

 

「あくまでも最終手段としてだが。しかし、今回は厳しい戦いになるぞ」

 

「ええ、覚悟はできてます。5年前から」

 

「それを聞いて安心した。明日は早い、みんな休めよ。これ以降は自由行動とする」

 

 

解散後、加藤は1人一人でベランダに出ると葉巻を蒸し始めた。

 

 

「気配を消して俺の背後に立つなんざいい度胸してんな、デリラ少尉」

 

「まさかあたいの気配を感じとるなんてね」

 

 

後ろからデリラが現れた。

 

 

「一本いるか?キューバ産だ」

 

「キューバ?どこ?」

 

「俺たちの世界にある島国でな。この国みたいにかつては世界を壊しかけた事情もあるんだ」

 

「よくわからないけど一本もらおうか。ゲホッ!ゴホッ?」

 

「あ、葉巻はタバコと違って口の中で蒸すの言うの忘れてた」

 

「酷いよ、ゴホッ、ゲホッ」

 

「すまんね」

 

「あんたたちの世界はやはり変わってるね。このタバコとか葉巻とか。初めてやると苦いし辛いし煙たいし。何が楽しいんだと思ったけどいつのまにかクセになる」

 

「さあねえ。どうしてかねえ」

 

 

加藤は先っぽの灰が落ちるの感じた。

 

 

「一つ言えるのは、味は変わらないことだね」

 

「?」

 

「世界は変わる。国、政治、情勢、人、そして敵味方も変わる。自分も、信条や真実も、変わる時は変わる。だけどこいつらの味は、変わらないんだな」

 

「言ってることよくわかんないや」

 

「明日は早い。ゆっくり休んでくれ」

 

「それでさ、相談なんだけど……」

 

 

急に恥ずかしそうな表情をする。

 

 

「今夜あたり、あたいの部屋で……どうかな?」

 

 

まさかの夜のお誘いである。

 

 

「……すまんね。申し訳ないが明日のために余計な体力は使いたくないんだ」

 

 

そう言って葉巻を消すと屋内に戻った。

 

 

「あの目……バレたかな。でもイタリカの安全の確保のためにも、あんたはあたいと一夜を過ごしてもらわないと困るんだけどね」

 

 

デリラは少し悔しそうな表情をした。

 

 

そんな中、別の場所ではピニャが夜空を見上げていた。

 

 

「不吉だな」

 

「ええ、不吉ですね」

 

「赤い彗星など、妾は文献でも見たことも聞いたこともないぞ」

 

「きっとこれが最初ですね。もしかしたら最後かもしれません」

 

「うむ……帝国も滅び、妾たちはどうなるのだろう。騎士団たちは日本で保護されたと聞いたからひとまず安心だが」

 

 

ハミルトンはピニャが静かに泣いているのを、ただ見守るしかなかった。

 

 

***

 

 

「さてさて、主様はうまく行ったかしら」

 

 

ヨルイナールは低空飛行しながら呟く。

 

 

「まあ、彼奴なら問題ないじゃろ」

 

 

アンヘルは正直あまり興味無かった。さっさとこのパトロールを終えたいと思うだけだ。

 

 

「しかし最近平和よの。我々にとっては。食事も満足に食えるし、人間にいたずらに攻撃されんし。これもアルドゥイン殿のお陰かの?」

 

「そりゃもちろん……何あれ?」

 

 

少し遠くに変な飛行物体があった。

 

 

「む?あれはドラゴンね。スカウトして見ましょう」

 

「なんだが妙な龍だな。我々やアルドゥイン殿とかなり異なる骨格をしておるが」

 

「おーい、そこのお前。太い二本の角を生やした龍よ!」

 

 

ヨルイナールの呼びかけに気づいたらしく、ゆっくり近づいてくる。

 

と思っていた。

 

突如そいつは上へ飛び上がったと思えば急降下してきた。

 

そして気づけば隣にいたはずのヨルイナールが消えていた。

 

油断していたとはいえ、一瞬過ぎる出来事であった。

 

 

「なっ!?」

 

 

ヨルイナールはその謎の龍の太い腕によって地面に叩きつけられていた。

 

 

「お前ら、美味そうだな。この世界に古龍がいなくてちょうど腹減ってんだ。食わせろや」

 

 

古龍種でありながら古龍種を喰らう者がこの世界にいたと誰が予想できただろうか。

 

滅尽龍(ネルギガンテ)




実はネルギガンテを眠らせてヘソ天した時、キュンとしちゃった駄作者がいる……
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