オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし   作:ArAnEl

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駄作者の懺悔
告白します。今まで時たま思いつき、気分でキャラクター登場させて来ました(アンヘルとかオストガロアとかネルギガンテとか)。確かに増えすぎて大変なことになっております。
今後とも私の暴走を暖かく見て貰えば幸いです。(やめるとは言ってない)

あと大変お待たせしました。


縄張り争い

「伊丹のやつ、こんな時に一体何考えてんだ?」

 

 

上司の1人が呟く。

 

 

「こんな時に休暇が欲しいとか……こっちの身にもなれってんだ。まあ、逆に何もない今休ませた方がいいかもな」

 

 

そう言って申請書にハンコをトントン拍子で押す。

 

 

***

 

 

「よし、作戦成功!」

 

 

私服姿の伊丹がガッツポーズをする。

 

 

「これが……作戦?」

 

 

ロゥリィが首を傾げる。

 

 

「そう、今日から俺は有給休暇!だから自由の身だ!

だが本土に帰るとは言ってない!」

 

 

伊丹はドヤ顔するが、他は呆れていた。

 

 

「でもぉ、それだったらぁ武器とかもないじゃない?」

 

「……と思うだろう?」

 

 

伊丹は背中のリュックの中を見せる。

 

M4A1カービン銃が分解されて入っていた。弾倉と弾は少ないが。某お友達から貸されたものだ。

 

 

「これだけぇ?」

 

「こ、これでも十分過ぎるぐらいだからな!」

 

「お嬢さん、ご安心あそばせ。殿方が戦わなくても我々で戦えば良いだけのこと」

 

 

セラーナが呟く。

 

 

「「「……そうだね」」」

 

「ねえ、俺って一体何のために行くのかわかんなくなったんだけど……」

 

 

心の中で泣く伊丹であった。

 

 

***

 

 

「隊長、新しい情報です。米軍はもう航空機運用能力を復帰させた模様」

 

「やっべ、早いな。早すぎる。まだ1日しか経ってないぞ」

 

「すぐに特定されたみたいですよ。簡易イージス・アショアが原因だってこと」

 

「本気のアメリカやべーな……手強いわ」

 

 

加藤は頭を抱える。

 

 

「そうでなければ困るのだ……」

 

 

草加の言葉に皆が黙る。

 

 

「我々が本気だということを世界に示すためには、アメリカと同等の能力を有することを示す必要がある。勝てなくとも、せめて負けない必要がある。加藤、勝算は?」

 

「勝つ、の定義によりますが、負けはしません、絶対に。戦いに負けても、この戦争には負けません」

 

「それは論理的な思考の上でか?」

 

「ええ、理論的な理由で」

 

「よろしい、ならば戦争だ」

 

 

***

 

 

 

「イヤァァァァァァァァアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 

「バリッ、ボリッ、クチャ」

 

 

ヨルイナールは背中の翼の激痛と、背筋の凍るような咀嚼(そしゃく)音に恐怖した。

 

逃げようにも小さな前足で這いずり廻るしかなかった。

 

既に翼と後ろ足の感覚は無くなっていた。

 

 

「古龍ほどではないが、悪くねーな」

 

「いやぁぁあ!脚が、脚があ!」

 

 

ネルギガンテは手についた血を舐める。

 

 

「こ、こんな龍知らぬ!」

 

 

上空でアンヘルも恐怖で震えていた。

 

 

「これではまるで……うっ!?」

 

 

アンヘルは頭に強い痛みを感じた。

 

屠られる

 

そのトラウマ的な幻を。

 

脳裏に浮かぶのは過去の残像、または過去に起きたかもしれない複数の結末。

 

どれも苦痛に満ちた結末で、良い終わり方(ハッピーエンド)など一つもない。

 

自身が体験したわけではない。しかし、体験したかのように鮮明に浮かぶ。

 

 

そしてそのトラウマが彼女の力をフラッシュバックさせた。

 

 

「ウガァァァァァ!」

 

 

アンヘルの赤い表皮は黒く染まった。後ろ向きの角も前にねじ曲がる。

 

カオスモード

 

アルドゥインと初めて会った時どの同様、彼女は真の力を解放する。

 

 

「……ほう、黒龍は食ったことねえが、似たような味なのか?」

 

 

ネルギガンテは屠り途中のヨルイナールを放り投げて新たな獲物にアンヘルを定める。

 

一瞬で空中に舞い、突進する。

 

 

「若僧、これでも喰らえ!」

 

 

アンヘルは複数の火球を放つ。

 

 

「はっ!そんな遅いものでこの俺を倒そうなど片腹痛いわ!」

 

 

ネルギガンテは下級をかわした。つもりだった。

 

 

「おっふう!?」

 

 

火球が直角に曲がり、ネルギガンテの片腹を物理的に痛くしたようだ。そして怯んだ隙に残りの火球も命中してゆく。

 

 

「おんのれぇ!」

 

 

ネルギガンテはハリネズミのごとく棘を生やすともう一度突進する。

 

 

「小賢しいわ、滅びるがいい」

 

 

アンヘルは世界を滅ぼすことが可能な波動さえも相殺できる衝撃波を放つ。

 

 

「これこそ食べ甲斐があるというものよ!」

 

 

ネルギガンテは臆さず突っ込んできた。

 

 

「愚か者」

 

 

アンヘルは静かに呟いた。

 

そして衝撃波によってネルギガンテがバラバラになることを予想した。

 

 

「ふぐっ!?」

 

 

ネルギガンテは重く、鋭い衝撃を受ける。

 

しかし致命傷にはならなかった。

 

 

「なにぃ!?」

 

 

アンヘル驚く。

 

ネルギガンテは全身血だらけになりながらも突進してきた。

 

 

「おのれ、表皮の棘が衝撃を弱めたか。ならばまだ同じことを繰り返せば良いだけのこと!」

 

 

アンヘルは連続で衝撃波を放つ。

 

 

ネルギガンテは相変わらずバカなのか勇猛なのか、衝撃波を避けることなく突進してきた。

 

 

「ふぐぅっ!?」

 

「これで奴は確実に……」

 

「おいてめえ、流石に痛かったぞ?」

 

「!?」

 

 

アンヘルはやっと理解した。

 

驚いている間にもネルギガンテの棘が生え変わっていることを。

 

 

「な、何という再生速度……」

 

「次は俺の番だ」

 

「しまっ……」

 

 

既にネルギガンテの射程距離内だった。

 

アンヘルが攻撃魔法を唱えようとしたところ、体の棘を飛ばしていくつかぎアンヘルの体に突き刺さる。

 

 

「がは!?」

 

 

一本は喉に刺さり、攻撃魔法が放てなくなった。

 

さらに痛がる暇もなく、そのまま急接近されると同時に首を掴まれるとそのまま地面に頭から叩きつけられた。

 

 

「おや?気絶してんのか?防御力は意外と低いようだな。だが、眠る暇はないぜ」

 

 

そしてアンヘルは激痛とともに目覚める。

 

 

「うがあぁぁあ!?」

 

 

肩から下が千切られていた。右翼が無くなっていた。

 

 

「あぁぁぁぁあああ!?」

 

「グフフ……やはり獲物が絶望し、なく叫びながら食う肉は美味いな。おら、もっと泣け」

 

 

今度は左翼が千切られる。

 

 

「わあぁぁぁあああ!」

 

 

今度は激痛で泡を吹いて気絶した。

 

 

「うん、うまい。異世界の龍もそこそこ食えるじゃねえか、あらゃ、また寝ちまったか?」

 

 

ネルギガンテはつまらなさそうな表情をする。

 

 

「まあいい、あとは腹を満たすだけだ」

 

 

そしてアンヘルの頸動脈を食いちぎろうとした。

 

 

Fus Ro Dah(ゆるぎなき力)!」

 

 

遠くからのスゥームでネルギガンテは吹き飛ばされた。しかし空中で態勢を整える。

 

 

「はは……何だあの化け物みたいな龍気(オーラ)は……」

 

 

そこにはアルドゥインがゆっくりと翼をはためかせて宙に浮いていた。

 

 

「昨日逃しためちゃくちゃ速え古龍よりやべえじゃねえか」

 

 

ネルギガンテは唾を飲み込む。

 

大抵この場合、緊張などで行う場合がおおいだろう。

 

 

「……うまそう」

 

 

だがネルギガンテは違ったようだ。

 

 

***

 

 

「隊長、一つ聞いていいか?」

 

「なんだ?」

 

 

加藤は装備の手入れをしながら耳を傾ける。

 

 

「あの漆黒龍いなくても大丈夫なんですか?」

 

「なぜ?」

 

「彼の支援を前提にした戦略ではなかったのかなと思いまして」

 

「逆だよ、逆。元々彼の存在無しで決行するつもりだったんだよ。しかし彼の存在により、状況が変わった」

 

「できれば彼の支援を得たかった、と?」

 

「いいや」

 

 

加藤は笑みを浮かべた。

 

 

「あれで不戦条約を得たようなものだ。こちらのやることに手出しは基本的にしない、と言うことだ」

 

「なるほど、しかし約束守ってくれますかね?」

 

「ああ、知能の高い者こそな。知能が高くなればなるほど、余興を求める。彼が求めている余興(戦争)を提供さえすればな」

 

 

加藤はカラシニコフ銃を組み立てる。

 

 

「しかし噂は本当だな。防衛省がカラシニコフ銃を所有していたとは」

 

 

そのカラシニコフ銃には64式、89式同様に桜の押印がされていた。

 

 

「純正品だ。中東やアフリカで出回ってる粗悪な中華品じゃあない」

 

「隊長それ、盗……」

 

「拾っただけだよ、防衛研究所で。何だその目は?」

 

 

皆呆れた顔だけだった。本当にどうしたらこんなもの手に入れてくるんだろうと。

 

 

「少佐、これをお聞きください!」

 

 

 

1人のヴォーリアバニーの兵士が部屋に入ってきた。

 

そしてスマートフォンを取り出す。

 

映像はないが、鉄が軋むような音、機械音と航空機のエンジンのような音がした。

 

 

「……元潜水艦の音響員いるか?」

 

「いましたけど死にました」

 

「じゃあ元陸自の機甲科か特戦群」

 

 

2人ほど手を上げる。

 

 

「特定のできるか?」

 

 

元機甲科の隊員がイヤホンをつけて耳を澄ます。

 

 

「この独特のガスタービンの音……M1エイブラムですね。型は判明できません」

 

「いや、十分だ。やはりアメリカ様様だな。いきなり主力戦車とはね」

 

「隊長ならアルヌスに置いてある試験用一〇式を盗……じゃなくて拾ってこれるんじゃない?」

 

「そんなのできたら既にやってるわ」

 

「ですよね」

 

 

皆難しい顔をする。

 

 

「まあいいや。、このための準備はしてある。Dを中心に、米軍を撃退しろ。あるもの使えるものは好きに持っていけ」

 

「隊長は?」

 

「今日は体調が悪い。すまんが、お前らに任せる」

 

「了解、お大事に」

 

 

そう言って隊員は退室する。

 

誰もいなくなったのを確認し、加藤はポケットを探った。

 

 

「……そういえば、薬切らしていたんだっけ」

 

 

加藤大きなため息を吐く。

 

 

「まずいなあ……」

 

 

***

 

 

「なんだこのバカは?」

 

 

アルドゥインは思った。

 

ネルギガンテはスゥームの雷に打たれようが火にあぶられようが、凍てつく風に晒されようが、向かってきた。

 

しかも目がおかしい。怒りでも悲しみでもなく、どちらかといえば歓喜。しかしこの手によくある狂気染みた表情ではない。

 

どちらかといえば、何かの欲に駆られたような表情である。

 

 

「ちょっとでいい、ちょっとだけ!かじらせろぉぉお!」

 

 

(あ、理解……するわけないだろぉぉお!)

 

 

アルドゥインは困惑した。今までにこんな感じの龍に会ったことなどない。

 

何度もボロボロになりつつも向かってくる根性は認めても良い。その欲に忠実であることも良い。仲間に迎えたいほどである。

 

ただ一つ、非常に気に入らないてんがある。

 

 

「我をエサと見るとは不届き者がっ!」

 

 

スゥームで叫ぶと同時に揺るぎなき力で地面に叩きつけた。

 

ピンポイントで圧縮したので地面にクレーターができるほどだった。

 

ネルギガンテはあまりの威力に沈黙してしまう。

 

 

「どれ、我を食いたがっていたが、逆に食われる立場になった気分はどうだ?」

 

 

アルドゥインは魂を奪うために近づいた。

 

 

だがアルドゥインが油断していたこともあり、ネルギガンテの脅威の身体能力を過小評価していたこともあり、一瞬の隙を見せてしまう。

 

結果、ネルギガンテはその強靭な牙と強力な顎でアルドゥインの鱗を数枚剥がすことに成功した。

 

 

「……ちっ、鱗だけか。まあ味はなかなか美味だ」

 

 

そしてバリバリ鱗を噛み砕く。

 

 

「…………は?」

 

 

アルドゥインはその様子を少し観察していたが頭が追いつかない。

 

そして自らの尻尾を見る。鱗が数枚剥がれて皮膚が露わになっていた。黒い煙のようなものもほんのり出ている

 

 

「…………はぁぁぁぁあっ!?」

 

 

痛みもないが、アルドゥインは驚愕した。

 

マッハの速度で地面に突入しようが、炎龍の業火で焼かれようが、ジエイタイとかいう輩から砲弾を食らおうが、蟹やらイカやらに攻撃されようが無傷だったこの身体が、たった一噛みで傷が付いた。

 

 

(なぜだ、なぜだ!?こんな馬の骨なのかも分からぬ相手に傷つけられただとう!?)

 

 

アルドゥインの知らない世界では、ドラゴンは珍しくないこともある。

 

モンスターをボールで拉致するゲーム(ポケ●ン)のようにドラゴンの弱点がドラゴンであるように、ネルギガンテの元の世界でも龍の弱点が龍であることが多かったり、と龍の天敵が龍であることなどザラにある。

 

そしてネルギガンテが持つ特有の能力も関係していた。

 

 

『封龍力』

 

 

彼がお伽話で出ることなく、伝説も皆無である無名の存在である。

それでもなお、国を滅ぼした、天災と呼ばれる他の古龍を圧倒できるのも、この特有の能力が大きい。

 

そしてこの能力は、異世界の龍の王(アルドゥイン)にも少なからず効果はあった。

 

 

Slen Tiid Vo(肉体よ時に逆らえ)!」

 

 

アルドゥインは自身に復活スゥームを放ち、鱗を元に戻す。

 

 

「最高にハイってやつだぁ!」

 

 

ネルギガンテはアルドゥインの鱗を食べて様子がおかしくなった。

 

そしてまた襲いかかる。

 

しかしネルギガンテが対龍措置を持っているのに対し、アルドゥインも対龍スゥームを持っていないわけがない。

 

 

Joor Zah Frul(ドラゴンレンド)!」

 

 

元々は人間が彼を倒すための技である。

 

本来なら不死の存在に絶大な効力を発揮するが、普通の龍に使っても地面に縫い付けるだけの効力はあった。

 

 

「ふごぉ!?」

 

 

ネルギガンテは予想外の力に驚く。しかしティがレックス同様、物理的パワーがあるため立ち上がる事は出来た。

 

 

「うぬぅ、やはり貴様もその手のタイプか。ならば早く決着をつけるだけよ!」

 

 

アルドゥインはロックオンするために集中する。

 

 

「死ねい!メテ……」

 

Joor Zah Frul(ドラゴンレンド)!」

 

 

メテオの集中砲火を浴びせようとしたその瞬間、聞こえてはいけないスゥームが後ろから聞こえた。

 

 

「ぐはっ!?」

「ぶふぉお!?」

 

 

アルドゥインは勢いよく地面に叩きつけられ、ネルギガンテが潰される形となった。

 

 

そして、最強、最恐、最凶、最悪の敵に出会ってしまった。

 

 

「やあワールドイーター!やっと見つけたよ!」

 

「ド、ドヴァキィィィン!?」

 

 

アルドゥインは最も会いたくない天敵に会ってしまった。

 

 

そして位置的にも圧倒的に不利であった。

 

 

前にいるのは白目向いて潰されているネルギガンテ。

 

そして太陽を背にアルドゥインに斬りかかろうとするドヴァキン。

 

絶体絶命のピンチである。

 

だが彼にも作画無い訳ではなかった。

 

 

「おのれ、こんな時に使いたく無かったが、喰らえ!」

 

 

アルドゥインは口から赤い気のようなものを溜め、それを放つ。

 

炎ではなく、光の収束のような攻撃であった。ぶっちゃけビームだが。巨大イカ(オストガロア)戦にて相手の記憶を引き継いだ結果得られた技である。

体内のエネルギーを一点に集中し、制御する。そして十分な威力と目標を定めたなら、あとは解き放つだけ。

 

 

「おっと!」

 

 

しかしTiid Klo Ul(時間減速)Wuld Nah Kest(旋風の疾走)により容易くかわされる。

 

 

「ちっ!」

 

「遅いね、ソブンガルデにいた時みたいに遅いね!」

 

 

彼は稲妻の走る日本刀のような物(ドラゴンベイン)を振りかざす。

 

そして一気に斬りかかった。

 

 

「うぐっ!?」

 

「む、手応えが……」

 

 

ドラゴンレンドを浴びたアルドゥインは脆弱である。さらに龍殺しとのとの異名を持つドラゴンベインで斬られたのだから尚更である。

 

しかし、彼は無傷であった。

 

彼の身体の周りを何か透明な物が覆っていた。

 

 

「それはMul Kah Diiv(ドラゴンアスペクト)……ドラゴンレンドが使えるからまさかと思ったけどね。すこしは楽しめそうだね」

 

 

彼は不敵な笑みを浮かべた。

 

そしてアルドゥインのドラゴンアスペクトは解けるころに、ドラゴンレンドも解けた。

 

 

「……貴様、何者だ?」

 

 

アルドゥインはゆっくりと問いかけた。

 

 

「えー?もう忘れたのかい?僕だよ、僕。あ、顔が違ったかな?」

 

 

と言うと美少年の顔から老人の顔となる。

 

 

「それともこれかのう?」

 

 

次はキャットピープルに似ているが、人間の顔立ちの一切ない、猫を二足歩行させたような顔立ちになる。

 

 

「カジートか……オークを殲滅させたときその顔だったな」

 

「えー、前の世界でも会ったじゃん」

 

「いいや、我は貴様とは会ったことはない。確かに、貴様はドヴァキンだ。だが、我の知るドヴァキンではない」

 

 

アルドゥインの脳裏には、かつて生死をかけたノルドの青年の姿が映る。

 

 

「それに貴様の魂、一体何者だ?」

 

 

彼の知るドヴァキンは龍の魂であった。偽りの龍の姿ではあったが、魂は龍であった。

 

だがこいつは違う。

 

龍なんて微塵も感じない。

 

それよりももっと恐ろしく、おぞましく、邪悪であった。

 

 

「うーん、何でだろう」

 

 

彼(?)は首をかしげる。

 

そして何か思いついたような表情になる。同時に、アルドゥインも察した。

 

 

「貴様、我の世界線とは異なる者だな?」

「君、僕の世界線とは違う存在だね?」

 

 

***

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

 

栗林は全身で呼吸していた。全身汗で濡れており、タンクトップは絞るとかなりの量の汗が出そうなほどである。

 

 

「そんなもんか?」

 

 

対して加藤は呼吸も乱さず、顔色一つ変えない。

 

 

「まだまだ!」

 

 

栗林は本物のナイフで斬りかかる。それも素人のような動作ではなく、プロの殺し屋並みの捌きである。

 

しかしかわされると同時に投げられる。

 

元々体操をしていたことが幸いして、地面に叩きつけられる前に体勢を整え猫のように着地する。

 

しかし手にあったはずのナイフは加藤が持っていた。

 

そして加藤は胸元を見ろと言わんばかりに自分の胸に指を指す。

 

 

「くっ!?」

 

 

栗林は自分の複合装甲(豊満な胸)の隙間に安全ピンを抜かれた模擬手榴弾が入っていた。

 

それを抜くと思いっきり加藤に投げつける。

 

しかしあっさりキャッチされる。

 

 

「3秒……お前はもう死んでいる」

 

「ちくしょう!こんなので対等にできるわけないでしょう!」

 

 

栗林は目につけている眼帯を叩きつける。

 

左目はもう眼球が無かった。

 

 

「何言ってんの。リハビリしたいって言ったの栗林さんの方でしょう?まあ目潰したのは悪かったけど。まあ、俺の玉潰しかけたのでおあいこで」

 

「なに、セクハラですか!?恋人にはセクハラしていいんですか!?」

 

「ちょっと待て。誰が恋び……」

 

「しかも元特殊部隊の戦闘教官だったとかなに!?私みたいな格技徽章じゃ勝てるわけないよ!」

 

「当たり前よ。俺は戦い方じゃなくて殺し方を教えるんだから」

 

「なに、その上から目線!なにその映画みたいな設定!めちゃくちゃ惚れるんですけど!」

 

(ん?)

 

「本気で殺すつもりで抵抗するから、私をねじ伏せてめちゃくちゃにして!」

 

(んん?)

 

 

加藤は理解できなかった。目の前の女の子の皮を被った野獣の目がやばいことになっていた。言っていることと目つきが噛み合わない。

 

 

(いわゆる、肉食系ってやつか?)

 

 

加藤はしばらく考える。

 

 

「いいの?俺がしたいことやっちゃうよ?」

 

「あんたが勝ったらその欲望私に全部ぶつけて!私が勝ったら結婚ね!」

 

「え、ちょっと待……」

 

加藤は昔やってた某成人(エロ)ゲームの理不尽な状況を思い出す。

 

 

(はい、かよろこんで、の選択肢しかないのかよ。まあ負ける気しないけど)

 

 

そう思っていた時期が彼にも有りました。

 

 

窮鼠猫を噛むと言う諺があるように、人間が欲望に忠実であるように。栗林は狂戦士(バーサーカ)と化した。

 

結果、栗林はかなりいいところまで持ってい たが、惜しいところで負けてしまった。

 

栗林は力尽きて大の字で倒れていた。

 

どこぞの格闘ゲームですか、と言いたくなるほど衣服もボロボロになる。

 

 

「ハアハア……私を好きにしろ……」

 

 

だがしかし、栗林はくっころというよりもどこか期待しているような気がしないでもないが。

 

 

「ではお言葉に甘えて……」

 

(ああ、これで私もやっと女に……ぐえぇ!?ちょ、首!なんで締めてるの!?)

 

 

栗林は困惑する。ここまで強引なのか?それとも最近のはやりなのか、個人の嗜好なのか!?

 

 

「ちょ、何するつもり!?」

 

「動くなよ、ちょっと痛いよ」

 

「ムリムリムリ!なにそれ!絶対そんなのは入らないから!」

 

「入らないとかじゃなくて、入れるの!」

 

「ぎゃーー!」

 

 

栗林はジタバタもがく。しかし上半身を馬乗りされて固められる。

 

 

「もう少し、我慢しろ!」

 

「ムリ〜〜!」

 

「入った!」

 

「いったーい!」

 

 

栗林は猛烈な頭痛を抑えて目を開ける。

 

 

「気分はどうだ?」

 

「最悪……え?」

 

 

痛みの元である左目があった場所に、別の何かが入っていた。

 

そして目の前の加藤の左目があったであろうところは、空洞になっていた。

 

 

「義眼だよ。お前にやる」

 

「どういうこと?」

 

「捉え方は好きにするといい。俺の大事なものをお前に預けるんだ。またいつか返してもらう日まで」

 

「……え、え……?」

 

 

栗林は顔が赤くなる。

 

 

「それは……指輪と捉えても?」

 

「ご自由に」

 

 

アブノーマルではあるが、栗林は嬉しかった。

 

 

「わかった。日本に帰れたら、本物の指輪プレゼントしてね!」

 

「ああ。まあとりあえず落ち着いて着替えなよ。今日はこれくらいにしよう。これから俺の技術全部叩き込んでやるから」

 

「もちろん!望むところよ!」

 

 

そして加藤は栗林が捨てた眼帯を拾い、装着して部屋を出る。

 

 

角には草加が立っていた。

 

 

「お前もやるな。せいぜい大事にしてやれよ」

 

「ご冗談を。私は日本に帰るつもりはありません。貴方と同様に」

 

「……もし辞めたくなったら、私止めんよ」

 

「その時は、その時ですよ。でも草加さん、貴方はお分かりでしょう。私の身体の状態を?」

 

「……さあな。自分の身体は自分が一番知っているだろう?」

 

「そうですね、失礼しました。それでは、次の計画に移ります」

 

 

***

 

 

Sturn Bah Yol(メテオ)!」

 

 

アルドゥインは必殺シャウトを繰り出す。もちろんロックオンつき。

 

 

Lok Vah Koor(晴天の空)!」

 

 

対して異形のドラゴンボーンもシャウトで対処する。メテオは降る前に消滅する。

 

 

Yol Toor Shul(ファイアブレス)!」

Fo Krah Diin(フロストブレス)!」

 

 

次はドラゴンボーンが先に動いたが、アルドゥインも負けじとうまく反応する。

 

だがそれだけで終わるわけではなく、ドラゴンボーンは追撃する。

 

 

Fus Rob Dah(揺るぎなき力)!」

 

 

アルドゥインは広範囲型揺るぎなき力により、大地もろとも吹き飛ばす。

 

しかしドラゴンボーンはなんともなかった。

 

 

「くっ、デイドラの神器(スペルブレイカー)!?」

 

 

シャウトすら防いでしまう盾を構え、突進してくる。シャウトにより時間を遅め、自身を速め、外から見たらおかしな速度で動いていた。

 

しかしアルドゥインも負けじと同様のことをしてるので、互いの速度は通常時と変わらない。

 

周りから見たら戦士とドラゴンがドラゴン●ール並みの戦闘を繰り広げて見えないかもしれない。

 

 

「オラオラオラオラオラオラ!」

 

 

ドラゴンボーンは双剣を使い恐ろしいスピードで切り刻んでくる。

 

 

「無駄だ。無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」

 

 

その間アルドゥインは霊体化したので一切攻撃が入らない。

 

 

「やるね!かなり強くなってるね」

 

「貴様もな。しかしここまでの能力、一体何頭の(ドヴァ)を殺してきた?」

 

「そう言う君は今まで喰ったジョール(生物)の魂の数を覚えているかい?」

 

「……くくく、そうだな愚問だな。確かに、ここでは関係ないな。あるのはどちらかが死に、どちらかが生き残るかだな」

 

「……ぷっ……アッーハッハッハッ!」

 

 

ドラゴンボーンは嗤う。

 

 

「なんだ貴様。何がおかしい……?」

 

「おかしいのは君だよ、アルドゥイン。君が僕に勝つ?正気かい?」

 

「なんだと?」

 

「僕が本気出していると?」

 

 

その時垣間見せた邪悪な表情に一瞬背筋が寒くなったのをアルドゥインは感じた。

 

 

 

 




あと遅くなりました理由としては、最近時間もないので、大幅にストーリー縮小のためにどうすれば良いか再構築していました。

そろそろ終わればいいな。
結果はどうであれ、必ず完結させます(すでにグタグタしてますが……)

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