オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし 作:ArAnEl
(意訳:ハッピーニューイヤー、あけましておめでとう)
SAWとWASのモデルは『ひぐらしのなく頃に』をやったことある人ならわかるかも。
山狗と番犬……的な
あと質問がありましたので、人物がどこからが原作なのかを以下に記載します。
オリジナル
・加藤 (SAW、WASもオリジナル組織)
でも実はモデルはとあるゲームの主人公。そのうちわかるはず。
スカイリムより
・アルドゥィン(本作の主人公、のはず)
・ドヴァキン (別名マオ)
・セラーナ
・デイドラロードたち
・デイドラ装備の女
ドラッグ・オン・ドラグーン
・アンヘル
モンハン
・今のところアルドゥィン、アンヘル、とヨルイナール以外の龍全員
ジパング
・草加拓海 (こちらの設定ではジパングの方の草加の孫という設定。しかし真相は……)
その他補足
・ヨルイナールは原作、ゲートの炎龍。アルドゥィンによってネームドドラゴンになった
他、ゲートのキャラのはず。漏れてたらすみません。
あまりの展開に、皆反応は一瞬遅れた。
加藤を除いて。
ちゃぶ台返しの要領で、長テーブルを力一杯吹き飛ばしたおかげで、手榴弾は間一髪窓の外へ飛び出して人的被害は防げた。
「ぎゃあ!」
「キャー!服が!」
「妾の髪が!」
「しょっぱい」
スープやら肉やらを女性陣の衣服や顔にぶちまけた人的被害は避けられなかったが。
しかしメイドたちはこれを待っていた、と言わんばかりに短機関銃を構えると、加藤に向けて引き金を引いた。
「伏せろ!」
伊丹の叫びで全員伏せたが、加藤だけはテーブルを吹き飛ばした反動で反応が遅れた。
結果、至近距離で四方八方から弾丸の嵐を受けることになった。
「加藤!」
伊丹が叫ぶも虚しく、加藤の身体は蜂の巣どころか所々薄皮一枚で繋がってるのが精一杯の状態だった。早い話、ミンチである。
しかし加藤は笑っていた。
「残念だったな、機関砲が多段グレネードランチャーなら倒せたかもしれないが……貴様らの先輩は特別仕様だったのを忘れてたか?」
骨むき出しの右手で腰の刀を抜くと同時にメイドの一人を胴体から両断した。
そして振り向きざまにもう一人。
さらにもう一人。
そしてもう一人。
またもう一人。
最後の一人は
この一連の動作は時間にして1秒ちょっとだった。
しかし切り落とされた方のメイドも普通の人間なら痛みで上げるはずの悲鳴もない。
まるでロボットのように。
「さてと……」
加藤は最後のまだ生きている手足の無いメイドの胸ぐらを掴んで持ち上げる。
「そうだな、洗いざらい全て吐いてもらおうか。俺の本気の尋問は訓練の時と比較にならんぞ?薬で無痛なのが無意味なくらいな」
しかし言い終わる頃にはメイドの前身に力は無く、生気も無かった。
「……さすがだな、昔教えた通りに毒で自決しやがった」
加藤は物を捨てるかのごとく遺体を投げ捨てる。
「加藤、お前……」
「おお、すまんな。とんだ邪魔が入った。そうこいつらがWASで……」
「そうじゃなくて、お前の身体よ……」
「ん?」
「さっきまで蜂の巣状態だったじゃねえか……」
「……」
そう、先ほどまであった傷は嘘のように無くなっている。僅かな血痕とボロボロの戦闘服だけが残った。
「それに……お前の骨、何でできてるんだ?」
伊丹の問いに加藤は諦めたように笑う。
「ばれたか。強化プラスチック、カーボンナノファイバーとチタンで作った骨だよ」
「全身?」
「いや、流石にそれは厳しかったからできる箇所は全てしてある」
「それに、傷がもう治ってるのも、それが原因か?」
「いや、違うと思うのだがね。この草加さんから頂いた刀で敵を斬ると、傷が塞がるんだわ」
「え?」
「なんか異世界の空気吸ったからか知らんけど、刀身が黒くなるし、変な模様が浮かび上がるけど……これで斬れば斬るほど傷が癒えていくんだよ。俗にいうアーティファクトってやつになったのかも」
「ええー……」
そんな会話の中、怖い目つきで睨んでいた者がいた。
「セラーナ、見えたぁ?」
「ええ……一瞬ですがしっかりと」
「一瞬、半蜘蛛の女みたいなのが幽鬼のように見えたけど……」
「メファーラ……ですわね」
「そして刀との関係性は?」
「ええ、噂程度に心当たりは……」
「ふーん……」
ロゥリィは加藤に近寄った。
「ねぇ、カトオゥ……」
そして有無を言わさずハルバードの峰で加藤の両膝を叩き潰した。
ロゥリィの力の前にカーボンナノファイバーとチタンで作られた骨など小枝を折るように加藤の両膝は潰れた。
……が、同時に加藤は反射的に
ハルバードのリーチが長かったのが幸いしたようだ。
「ロゥリィ!加藤!お前ら何やってんだ!?」
「痛いねー、すまんねロゥリィさん。反射的に斬っちまった」
「ふふふ……いーえ、こちらこそぉいきなりごめんねぇ。でも思ったより痛くなさそうねぇ」
「そちらは逆に余裕そうに見えて痛みを堪えてるように見えるね」
「あらぁ、言ってくれちゃってぇ。でもこれでぇ、はっきりしたわぁ」
驚くことに、ロゥリィより加藤の方が再生が早かった。壊れにくくても、再生しないはずの改造骨もみるみる元の形になった。
逆にロゥリィの再生はいつもより遅くなっていた。
「その刀の能力、対象の生命力を奪って自己の生命力に変換するみたいね……」
確かに、それなら辻褄が合う。
ロゥリィの不死の生命力を吸収したとならば加藤の異常な再生能力も説明がつく。
「その刀、どこで手に入れたのぉ?」
「草加さんから頂いた」
「うそぉ」
「本当だ。まあ、数日後に何故か銀色から黒色になったがね」
「その刀を渡す気はあるぅ?」
「ご冗談を」
「力づくで奪うと言ったら?」
「できるかな?あんたの弱点は
それとも、もう一度四肢爆散されたいのかな?」
「人の神経を逆撫でするのお上手ねぇ」
普段クールなロゥリィのおでこに血管が浮いている。
「それでもやると言うなら、今この場にいる者は全員俺の射程範囲内とだけ言っておこう。賢い貴女なら、理解できますな?」
「ぐぬぬ……卑怯者ぉ」
ロゥリィが悔しそうに噛みしめる。
(うそぉ、俺と加藤の間でも5メートルあるのに……もしかしてこの城ごと爆破させるとか言わないよな……)
伊丹は少し不安になる。
「まあ、この刀がある以上タイマンでも負けはしないことは先ほどの斬り合いで証明できた訳だし。なおさら手放すわけにはいかない」
そう言って黒い刀を鞘に納める。
「カトウさん」
突如、セラーナが呼びかけた。
「どうしました、吸血鬼のお姉さん」
加藤は反射的に柄に手を置く。相当警戒しているようだ。
「断言致します。貴方は、デイドラに操られてないと言ってましだが、少なくとも利用されております。彼らのいる世界から来た私が断言します」
「ほう、そうか……問題ない」
「問題ないって、お前正気か!?」
伊丹が机を叩いて叫ぶ。
「俺たちの計画に問題なければ、デイドラとやらが俺を利用しようが問題はない。共栄だよ、共栄」
「くっ……」
加藤の言葉がどこまで本心なのか、伊丹でも分からなくなってきた。
彼自身の意思なのか。
デイドラに操られたのか。
それとも……
「加藤、さっきの話の続きだが……」
「そうだな、襲撃されたこともあるし急いだ方がいいな。次またいつ襲撃を受けるかわからんし、お前たちを帰した方がいいな」
「そうだな。休暇返上だな……」
「休暇利用して俺に会いにきたのか。お前らしくもない。いや、お前らしいかもな……」
「で、早く説明しなさいよぉ!」
ロゥリィが早くしろと言わんばかりに声を上げる。
「そうだったな。SAWもWASも日本と米国のかなり昔の協定でできたものだ」
「どれくらい?」
「1946年。日本の敗戦からすぐだ。理由は簡単、今後日本のように強大な国力、或いは強固な意志を持った敵勢力を内部崩壊させるための組織だ」
「あれ、日本は軍隊もってないじゃないか。自衛隊もまだ発足してない……」
「軍隊じゃない。工作員という位置付けだな、当時は」
(あ、察し……)
「まあ当時は北朝鮮、中華人民共和国に投入されたのだが大敗を喫してな。あれは酷い戦いだった」
「お前さも参加したみたいな口調だけど……」
「さあね、少なくとも追体験はしてる。これが薬物なのか幻覚なのか催眠なのかは知らんけど。それとも本当に体験してたりしてな」
加藤は軽く笑った。
「もしかしたら、実年齢も俺自身の過去も実は幻覚だったらどうしよう」
加藤は笑えない冗談なのかもわからないことを話して勝手に笑い始める。もはや狂気的だ。
「伊丹殿、妾は彼の言ってることが9割理解できないのだが……」
ピニャが申し訳なさそうに聞く。
「簡単にまとめると、こいつはバケモンだ。人間離れしている。ただの狂人であってほしいとぐらいにな……」
「あら、今お気づきですの?」
「「「え!?」」」
セラーナが唐突に発言した。
「彼にナイフを投げた際、吸血病になるよう私の血を塗布していましたが、彼からは吸血鬼の気配が一切感じません。彼は人間と言ってますが、さしずめ
(セラーナさんの世界にもサイボーグみたいなのいたのかな?すげえな……)
伊丹が感心してると、加藤の目が一瞬殺意に満ちた気がした。
「聞き捨てならんな。俺は人間だ。以前の俺なら、自分が何か悩むところだが
「彼?」
「我が主、アルドゥィン」
「そうだ!あのアルドゥィンとやらの漆黒龍のこと忘れてた!お前との関係を説明してもらおうか!」
「時間がない。それにそれはできない」
「できないって、どうして?全てを話してくれる約束」
レレイが唐突に尋ねる。
「……話したくても話せんのだよ。なぜか……多分、そんな呪いをかけられたのだろうね。それに、彼の話は今したところで何の意味もない」
「
ロゥリィがにんまりと笑う。
「え!?ロゥリィそれホントか!?」
「バレていたか……確信はないがそんな気がしただけなんだけどな」
加藤はまいったと言わんばかりに頭をぽりぽりとかく。
「まあ、ホントちょっと前にあいつの気配が消えたのを感じただけなんだけどぉ。おかげで下腹部が久しぶりに疼くわぁ」
「ロゥリィ、そんな大きいお友達が喜びそうな表情するんじゃあない!」
ロゥリィの表情は今にも伊丹に(いやらしい意味で)襲いかかりそうな勢いだ。
「だが、俺たちの行動に変更はない」
加藤は伊丹が次の言葉を発する前に断言した。
「どうせお前のことだ。あの不滅の龍がいなくなり、俺の計画は失敗やら自衛隊が巻き返すなど言うつもりだろうが……この計画元々彼無しで行うものだ。成功率が100%から99%に落ちたに過ぎん」
あまりの気迫に皆が黙ってしまった。
「……わかったよ」
「ちょっと、ヨウジぃ!?」
伊丹が諦めたような、少し怒ったような雰囲気で立ち上がる。
「たが、お前たちの計画がうまく行くとは思うなよ。世界を乱そうというなら、俺たちが止めてやる」
それを聞き、加藤は少し安心したような表情をする。
「……ぜひ、お願いしたいね。ただ、俺的には元々混沌としている世界に
「御託はいいからさっさとお前が見せなきゃいけないもの見せてもらおうか!」
ということで、だいぶ計画を前倒しにかつ急ピッチで進めることになった。
一同は地下施設へと連れて行かれる。
城の地下に最近新設した鉄筋コンクリートで覆われた部屋のようだ。
「ここから先は伊丹だけだ」
厳重なロックのかかった扉を前に加藤が言った。
「えー、そんなー」
とテュカ。
「約束は守ってもらうぞ。2人きりで話し合いたい」
「2人きり……」
ゴクリと唾をのみこんだのはピニャ殿下たちとテュカだった。
というか鼻血出して目がキラキラしている人いない?
「いや、ちょっと待てよ、そんなんじゃないからね!」
「そうだ!俺たちはそんな関係じゃない!」
伊丹たちが弁明する。
「いいのよ、お父さん……私、そういうのすごく理解ある方だから……ハァハァ……」
「うむ、大丈夫だ。妾は音だけで我慢しよう。そして内容は脳内再生とやらで頑張るとしよう(そしてその記憶をリサ殿に……)……ハァハァ……」
「だから違うって!」
「いいから伊丹、入ってこい!」
ラチがあかないと判断した加藤によって伊丹は厳重な部屋内に連れて行かれる。
「「つ、連れて行かれた……ハァハァ……」」
一部の女性陣の期待を裏切り、中では至極健全な会話が行われた。
「いいのかい、武器も無しにほいほいついてきちゃって。俺は男だろう女だろうか、子供だろうか老人だろうが、殺っちまう男なんだぜ」
「そりゃこまるなー。でも俺を殺すメリットないだろう?」
「まあな」
そして部屋の明かりがつく。
「ところでこいつを見てどう思う?」
「すごく……大きいな」
「でかいのはいいからさ、触ってみろよ」
言われた通り触ってみる。
「……なんだこれは。硬くて熱い。振動もしている」
「振動か?もっとよく感じてみろよ」
伊丹は渋々言われた通り集中する。
それは機械的な振動ではなかった。
(脈を……打っている?)
その一定のリズムは何か生物的な感じがした。
(違う、脈じゃない……鼓動を感じる……)
心臓に似た、強弱のある振動。
「おい、まさかこいつ……生きてるのか?」
「さあな。ただ一つ言えるのは、核と同等のエネルギーをもってさえダメージは入らなかったことだけは言っておこう」
「こんなものがこの世界で……」
「いや、この世界で見つかった物じゃない」
「え?」
「北緯38度、東経142度……」
加藤は静かにつぶやく。
「約5年前の大震災震源地の海中で見つけた」
加藤の目は今まで見た中で一番真剣であった。
伊丹は目の前の、1メートル大の人工物と思っていた白い球体物を前に言葉を失った。
そして直感的に理解した。
加藤の目的を。
そして、この白い球体はやばい、と。
***
(ここはどこだ?)
とある空間で目覚める。
しかし、自身の実体を感じない。
それでも、この場所はどこか懐かし感じがする。
(私は何者だ?)
『お前は、お前だ』
何者かが我に語りかけた。
(その声、知っているぞ……)
『そうであろう。私もお前のことを良く知っている』
(アカトシュ……!)
『アルドゥイン』
(アカトシュ!貴様どこにいる!?)
『出会い早々に貴様とは、なかなかの出会いではないか。私はすぐそばにいるぞ』
(なに?どこにも見えんぞ!隠れていないで出てこい!)
『それはお前が盲目なだけだ。気を鎮め、集中するがよい』
(ちっ……)
アルドゥィンは荒れた気を鎮め、瞑想をする。
何も見えない中、目を瞑るつもりでいると、不思議なことに逆に光が見えてきた。
そしてその光が視界全体を照らす。
そして、自身の姿を認識できた。
ドラゴンの形ではなく、黒い煙のような形。
オブリビオンの領域でデイドラと対峙した時のように。
(どこだ!?アカトシュ、どこにいる!?)
『せっかちだな。よく見よ。よく見るがいい』
癪だが言われた通りにすると、光だと思っていたもの、そう彼の視界いっぱいに広がっていたものが、
(アカトシュ……)
『ようやく見えたか、アルドゥィンよ』
(ここであったが100年目、貴様を滅ぼしてくれる!)
『今のお前に、それができるかな?』
(……)
『それに、たとえお前は私と同等の力を持っていたとしても、それは不可能なことだ』
(なんだと?)
『なぜなら、我々はそのようにできているからだ。私がお前を消せないように、お前も私を消すことはできない』
(何故だ……なぜだーー!?)
『お前は太陽によって生じた自身の影を消すことはできるのか?』
(……?)
『できるとするならば、光か、それを映す全ての物か、または自分を消すことしかあるまい』
(つまり、我々は光と影の存在だと?)
『そんな単純なものではない。もっと複雑で、説明のできぬ関係だ』
人間より遥かに知能の高いアルドゥィンを待ってしてもアカトシュが述べていることを理解することはできなかった。
『人間たちは、我々の存在を親と子、又は一心同体、もしくは一部を共有する者、実は同じ者などと考えは多種多様に渡る。
しかし、そんな単純なものではない。
私とお前は、親子でもあり、兄弟でもあり、友人でもあり、一心同体でも、一部を共有する者でもある。お前は私であり、私はお前でもある。人間たちの考えの遥か先に、存在するかどうかもわからない次元の存在なのだ』
アカトシュは言葉でアルドゥィンに語りかけているように見えるが、それ以上に言葉では表せない感覚が直接アルドゥィンの脳、精神と心に流れてくる。
決して不快な感覚ではないが、あまりにも高次元かつ途方も無い量の感覚であるため、もし人間が同じことをされたら発狂死することは確定である。
(ならば答えてくれ……)
アルドゥィンは少し興奮気味に尋ねる。
(ならば我は何故存在している。何故貴様は我を生み出した)
『……私がお前を生み出したのではない』
(なに?)
『お前が、自ら生まれて来たのだ』
(どういうことだ……?)
『だから、私にはお前が生まれた理由は知らない。お前自身が、生まれる前の高次元の意識のお前しか知らないはずだ』
(バカな……そんなバカなことが……)
アルドゥィンは狼狽える。全能神であるアカトシュなら分かると思っていたことが、わからないとは。
アルドゥィンは自身のアイデンティティを失いつつある。
(我自身しか、わからぬというのか……)
『そうだ。お前は生まれると同時に
(破壊と支配の限りを尽くした……)
『そうだ。だがそれがお前の生まれた理由なのか、それともその先に別の理由があるのかは、まだわからない。その上、決めるのにも時期早々と思える』
(我は今まで破壊と支配を証に生きていた者だ……他な何があるというのだ……)
『お前がデイドラの領域へ連れ去られ、利用され、別世界でも同じことを繰り返していたことは私も知っている。しかし、それも何かあると私は思っている』
(……?)
『そして、ここに来たことにも理由があると思う。事実、ここに来たことによってお前のデイドラによる拘束は解けた』
(なに、我はそんな拘束など……)
『デイドラによって強化されていたように思えるが、同時にあれは手綱でもある。地獄の番犬にされていたのだ』
(おのれデイドラどもめ……)
『あの者に感謝するのだな』
(あの者?)
気がつくと、隣に真っ白の煙の塊のようなものがいた。
(アルドゥィン殿、先ほどは失礼した……)
(もしや、貴様はあの白き龍か!?)
(左様……)
『この者は祖なる龍、ミラルーツと言われて私の知り合いだ」
(まて、祖なる龍だと?なら我はなんだ!我こそが祖ではないのか!?)
『アルドゥィン、落ち着け。お前はこの世界の祖なる龍だが、この者は別次元の世界の祖なる龍だ』
(何、そんなことがあって良いのか!?)
『良し悪しの問題じゃない。人間界に星や世界があるように、所謂我々神々の世界にも様々なものがある。事実、私がこの者を知ったのもかなりの偶然と奇跡の一致だが』
(妾はデイドラの囚われの身となっていたところをアカトシュによって救われたのだよ)
とミラルーツの魂が補足する。
『しかし、お前たちがここにいるのもただの偶然ではない。ミラルーツがいなければアルドゥィン、お主をここへ呼び戻すことはできなかったかもしれん。
一ついえるのは、お前たちは一度先の世界に戻るべきだというこどだ』
(ならばさっさと帰してもらおうか。あの小癪なドヴァキンも滅ぼさないといけないからな)
『だがデイドラの強化を失い、魂も多く失ったお前に何ができる』
(ぐぬぬ……)
(だから妾がここにお前を連れて来たのじゃ)
(え?)
(お主を強くするために!)
そして地獄の特訓が始まった。
***
「ぶ、無礼者!貴様一体何を……ギャァァァアアアッ……」
男の断末魔が深い森の中へと消えていった。
「ゾルザル陛下!ご無事で!?」
近衛兵たちが木々の間を通り抜けてやってきた。
「問題ない、俺はこの通り無傷だ。賊に襲われたが、この通り成敗してくれてやったわ」
そう言ってゾルザルは足元に転がっていた死体を蹴飛ばす。
「ご無事で何より……え?」
近衛兵長はギョッとした。
蹴飛ばされて自らの足元に転がっていたのは……
ゾルザルだった。
そして目の前で立っていたのも、ゾルザルだった。
「取り敢えず、お前ら全員極刑だ」
生きている方のゾルザルがそう宣言すると、男数名の断末魔がまた森の奥に消えていった。
「んんー、馴染むぞ、この顔、この体。久しぶりにヒト種の男になったがやはり馴染む。これが最高にハイってやつだぁぁあ!!」
ゾルザルは眉間に指を突っ込みこねくり回すが、指を抜くと何も無かったように傷がふさがる。
「さて、この世界も飽きたし、面白いことをしてこの世界を滅ぼすか♪」
後にこの森で調査が行われた際、大量の遺体が発見されることとなるのはまた別のお話。
途中からミラルーツの一人称「妾」にしてますけど許してください。
まるでピニャ殿下みたい。