オブリビオンゲート 異世界龍 彼の地にて 斯く集えし   作:ArAnEl

77 / 85
非常に長らくお待たせしました。大変申し訳ありません。

アルドゥイン様同様に時の狭間に封印されてました(嘘)。

タイトルの元ネタはGame of Thrones のWinter Comesより。安心してください、そちらからは誰も参戦しません。


冬来たる

 

馬大校(マーたいさ)、説明したまえ」

 

「……」

 

 

薄暗い部屋の中、中華人民共和国人民解放軍将校の一人が、詰問されていた。

 

 

「あれほど情報の優位があったのにも関わらず、君は我々党員を失望させた」

 

 

そう、馬大校は内通者によって既に知らされていたのだ。敵が生物化学(BC)兵器を持っていることを。

 

 

「だから我々君に防護服と火炎放射器など、そしてこちらも報復できるよう化学兵器を渡した。それにも関わらずこの結果は何かね。君のせいで戦車、装甲車を始め様々な兵器を失った。我が軍としては雀の涙ほどだが」

 

「……」

 

 

馬大校は相変わらず沈黙を続ける。

 

 

「それに、我々の目標が何か理解してるかね?目的の前にその障壁で手こずるとは」

 

「……漆黒龍、ですか」

 

「そうだ!我々何としてもあの漆黒龍を手に入れる。核に変わる新しい兵器としてな!」

 

「……フッ」

 

「何かね?何がおかしいかね?」

 

「いえ、貴方は未だ事の重大さを理解していないようだ。私のこの身体を見ても分からないとは」

 

 

そして馬大校は自らの両脚左腕欠損の身体を自嘲するように笑う。

 

 

「……馬大校、どうやら君は疲れているようだ。長い休暇を取ってもらおう。ただし、今回の件は責任も取ってもらう。今回の不祥事は君の責任だ、分かるね?」

 

「……」

 

「君の責任だな?」

 

 

念を押す政治将校に対し、馬大校はごにょごにょと小さく呟く。

 

 

「今なんと?」

 

「責任なんてクソくらえだ」

 

 

そして馬大校は政治将校の目に唾を吐きかける。

 

 

「き、貴様!?これは党への侮辱だ!処刑だ、極刑だ!」

 

「党だのメンツだの、もう私にとってどうでもよい。所詮我々は彼にとって餌でしかないのだ」

 

「彼?」

 

「漆黒龍を、人間が従えるなど愚の骨頂」

 

「つ、連れて行け!」

 

「むしろ、我々は服従させられる方だ」

 

 

そして馬大校はどこかへと消えていった。

 

 

***

 

 

(こいつら予想以上にやべえ……)

 

 

伊丹は開いた口が閉まらなかった。

 

スペツナズ達は伊丹達を二つのグループに分け、人質組(伊丹、レレイ、テュカ、ヤオ)と待機組(その他)に分けると、突入班は人質を連れて乗り込んでいった。

 

まずRPGで門をこじ開けると同時にサーモバリック弾頭を叩き込んだ。中にいた人たちはどうなったか知らない方がよい。

 

無論、相手は急いで対応に来るが、全身バトルスーツに重火器を装備したおそロシア人達が敵を薙ぎ払ってゆく。

 

相手も弓や即席銃で応戦するが、イワンの考えた最強の戦闘服(ライオットスーツと防爆スーツを足して二乗した感じ)に身を包み、Kord重機関銃(12.7mm)を撃ちながら前進する姿はもはやターミー●ータのようだった。

 

もはや言葉で説明するのが難しくバカらしくなるくらいカオスな状況である。

 

 

「こいつら無茶苦茶だー!!」

 

 

伊丹の悲痛の叫びも機関銃の轟音でかき消されてゆく。

 

 

「「ぎゃぁぁあ!」」

 

 

叫びを上げてた者は運が悪い。なぜなら急所を外して痛む暇があるから。声を上げずに死んだものは逆に運が良かったかもしれない。

 

 

「痛えぇ!ちょ、本当にいてぇんだけどぉ!?」

 

 

応戦していたジゼルは不死であったことが災いとなった模様。

 

 

「ピニャ殿下!まずいです、非常にまずいですよ!」

 

「ハミルトン、そんなことは妾も承知だ!だが一体どうしろと言うのだ!加藤殿も別の対応しているそうじゃないか!」

 

 

撤退した者たちは急いで扉越しにバリケードを作るが、12.7mmの鋼鉄の暴風が作業をこの上なく困難にする。

 

極めつけはまたロケットランチャーを叩き込まれてせっかく築いたバリケードが粉々に砕け散る。

 

その爆風でピニャたちも吹き飛ばされてしまう。

 

 

「くっ……あ……!?」

 

 

ピニャが顔を上げた頃には既に囲まれてしまった。

 

 

重要人物(ターゲット)の一人を確保した」

 

 

スペツナズの一人が無線で報告する。

 

 

「ピニャ殿下!」

 

「い、伊丹殿!?貴方も捕まったのか!?」

 

「すみません、力及ばずで」

 

「ううむ、仕方がない。なるほど、彼らはニホンとは違う国の者か」

 

「ええ……」

 

 

などとやりとりしてると、スペツナズたちがロシア語で何やら話し始めた。

 

 

大尉(カピターン)残りの女(ハミルトン)はどうしますか?」

 

「これ以上捕虜は取れない。殺せ」

 

 

それを聞いた隊員は冷徹にも銃口を気絶しているハミルトンの後頭部に向ける。

 

 

「な、やめろぉぉぉぉおお!」

 

 

ピニャは腹と心の奥から悲痛の叫びを上げた。

 

しかし、次の瞬間聞こえたのは銃声ではなく、断末魔だった。

 

 

「ぎゃぁぁああああああ!?腕が!」

 

 

拳銃を構えていた隊員は失った右手を押さえてうずくまってしまった。

 

 

 

一同は怪奇現象や魔法を疑った。

しかし、次の瞬間別の隊員が宙に浮いた刀で胸を貫かれたこと、そしてその近くから声が聞こえたことで原因を理解した。、

 

 

「ここまでよく来たなと褒めてやる」

 

 

「やつだ!やつ(加藤)が近くにいる!抹殺しろ!」

 

 

刺されたスペツナズ隊員諸共抹殺する勢いで機関銃の総火力を浴びせる。

 

しかし透明状態の相手は刀で刺した相手をそのまま盾のように使う。

 

 

「ちっ、重装甲なのが仇となったか。手榴弾 (グラナーダ)!」

 

 

それを聞いたスペツナズ隊員の一人がピンを抜いて投げようとする。

 

しかし、投げる直前で固まってしまう。

 

 

「どうした?早くそれを投げろ!」

 

大尉(カピターン)、腕が……何者かによって腕を掴まています!」

 

「なにぃ!?」

 

 

そして盾にされた隊員を見ると、刀が刺さったまま立っている。

 

(刀を刺したままで目を欺いたのか。それとも複数人いるのか!?)

 

 

「た、大尉!」

 

 

目を離した隙に手榴弾を握っていた手から、手榴弾をもぎ取られ懐に入れられる。

 

間髪入れず手榴弾が破裂し、そこにいた者全員が衝撃で吹き飛ばされる。

 

不幸中の幸い、懐に手榴弾を入れられた隊員の装甲が頑丈であったおかげで人的被害はその隊員だけだった。

 

 

「あう……」

 

 

伊丹が急いで顔上げると、数名が立っていた。しかし、スペツナズではなかった。

 

前進が紫色で、生物の外皮で作ったような戦闘服で身を包んでいた。というか戦闘服というのが怪しいぐらい継ぎ接ぎだらけの即席ものだが。

 

 

「伊丹2尉、こちらへ」

 

 

後ろから見えない透明人間(?)に声をかけられ、捕虜の身だった彼らは誘導されるがまま着いていく。

 

後ろを見ると気絶したピニャたちも透明人間に担がれてついてくる。伊丹から見たらお姫様抱っこの状態で空中浮遊にしか見えないのだが。

 

そして伊丹たちはそのままその場を離れた。

 

 

一方、例の姿を現した全身紫の謎の集団は無力化されているスペツナズたちを拘束していた。

 

 

「あーあ、バッテリー切れか今の衝撃で壊れたかな?」

 

「マスター、しかし良く近くの森で仕留めたカメレオンみたいな怪物の皮が透明になる仕組み知ってましたね。まさか電気を流して透明化するとは」

 

「たまたまよ。偶然の発見だ。しかし、こいつらスペツナズも俺らが怪物退治したときみたいに熱源探知(サーマル)ゴーグルを使わなかったのが幸いしたな」

 

 

などと加藤たちが雑談しながら拘束していると、スペツナズ隊員の一人が力を振り絞って怪しい金属管を投げた。

 

 

「「……」」

 

「ククク、我々は全滅するが貴様らも終わりだ……」

 

 

金属管から怪しい水蒸気が吹き出ていた。

 

 

「……この程度で?」

 

 

加藤はその金属管を持ち上げると匂いを嗅ぐ。

 

 

「はっ?ノビチョクの数倍はあると言う猛毒を!?」

 

「君たちが毒薬を使うことは想定内だ。だから我々は既に解毒剤を打ってある」

 

「ありえない、今回初めて使用したものだ、解毒剤など存在するはずがない」

 

「それが、あるんだな何故か」

 

「は、ハッタリに決まっている!」

 

「ほーう、そう来たか。なら証明してやろう。J(ジュリエット)、やれ」

 

 

そういうとスペツナズの大尉を拘束していたALT(オルタ)の隊員が彼女の首筋に注射器を刺す。

 

 

「ぐっ!?」

 

そして加藤は彼女(敵将校)の髪を掴んで後ろを向かせた。

 

 

「よく見るんだな。お前の部下たちが死んでゆくのを」

 

 

スペツナズの隊員たちは一瞬ピクリと動くと、そのまま痙攣して次から次へと動かなくなった。

 

「カ、カピターン(大尉)……」

 

 

最後の兵士は声を振り絞って力尽きた。

 

 

「……」

 

「どうだ?君に打った解毒剤は本物だということは証明された」

 

「なぜ……何故貴様のようなテロリスト風情が私も知らない我が国の国家機密を知っている。一体、何者だ?」

 

「……テロリスト風情?君はどこまで加藤蒼也と言う人間を知っているつもりだ?元日本国海上自衛隊情報及び補給幹部。ついでに特別警備隊勤務経験ありでちょっとあちこちの機関に知り合いがいる程度の者さ」

 

「嘘だ。そんな程度でここまでのコネ、資金など調達できるわけない……」

 

「嘘じゃない。本当に俺の経歴だ、表向きは、だがな。そういう設定なのだ」

 

「私がSAWやWASの存在を知らないとでも?」

 

「なら話が早い。俺が中東にいる間、とある人物に出会ったことで『だった者(WAS)』及び『見た者(SAW)』というある機関の部隊にいてな、そこでALTのメンバーとコネを作ったわけだ。しかしな、そんな些細なこと、どうでも良い」

 

 

加藤は胸のナイフを抜くとスペツナズ将校の首元に当てる。

 

 

「ここから先の話は、こちら側の人間になるか、人生最後の話としてしか聞かすつもりはなくてね。お前に選ばせてやるよ」

 

「……我々ロシア人を、舐めるな。貴様の思い通りにはいかんぞ!」

 

そう言うと首元に当ててあったナイフに自らの首を押し込む。

 

「くかぁ、ぐっ……」

 

「あーあ、血だらけだ。まあいい、君の行動に敬意を表して教えてあげよう」

 

 

加藤は血溜まりで横たわるロシア人の耳元に誰にも聞こえないように囁いた。

 

薄れる意識の中、かろうじて聞き取れた彼女は驚きのあまり意識が一瞬強くなったが、流れ出る血液と共にまた意識が遠のいていった。

 

 

加藤は立ち上がって去ろうとしたところ、最後にこう言い放った。

 

 

「そうそう、死んだからって逃げ切れると思うなよ」

 

 

後に、彼女はその言葉を理解し、ひどく、とてもひどく後悔した。

 

 

***

 

 

アルドゥインは世界の矛盾(歪み)を探すために西方砂漠へと向かった。

 

もちろん、それは彼がこの世界に来たきっかけとなるものがあるからだ。

 

 

(だが奇妙だ。我が異世界に行った程度で世界に矛盾が生じることはないはずだが)

 

 

人間の感覚だと世界滅亡級の龍(アルドゥイン)が来たらそりゃあ世界は歪む気もするが、どうやらアルドゥインのような神格同等であればどの程度で世界がおかしくなるか分かるらしい。決してアルドゥインのせいではない、はず。

 

彼がこの世界を訪れる原因となったオブリビオンゲート付近まで来て彼は目を疑った。

 

ありとあらゆる怪異が群れを成して大移動していたのだった。

 

ゴブリン、オーク、オーガー、巨人、ファルメル、リークリング、スケルトンに生ける屍(ゾンビ)。他にも挙げるとキリがないどころか、かつていた世界(スカイリム)では見たことのない怪物も長列を為して行軍していた。

 

そう、単に歩いているのではなく、隊列を為して行軍していた。それはまさに規律統制された軍隊であった。

 

 

(なんだコイツらは……)

 

 

アルドゥインは遥か上空から観察していたが、何かがおかしい。数が天文学的数字であることも異常だが、それよりも何か、こう、違和感を感じていた。

 

 

(……そうだな、わからなければ身体に聞くまでよ。いつだって肉体は正直だ)

 

 

この龍(アルドゥイン)は本当に全知全能なのか実はただの脳筋なのか甚だ疑問に思える発言である。

 

アルドゥインは取り敢えず身体の周りに爆発する火球を複数身に纏って突撃した。もちろん全速力の半分で。

 

結果はもちろん、相手はたくさん死んだ。直径1キロのクレーターができるほどなので当たり前と言えば当たり前だが。

 

 

「……我の違和感はこれか」

 

 

推定100万の魂を一瞬で刈り取ったつもりだが、一つもアルドゥインに吸収されることはなかった。

 

さらに、生き延びた怪異どもも逃げ惑うどころか絶えず行軍を続けた。それはまるで、そのクレーターが元々あったかのように迂回して進む。その姿はアリの行列に似ていた。

 

試しに傍を行軍しているオークに喰らい付いてみた。

 

やはり、違和感しかない。咀嚼したが、物理的に感触はあるものの手応えがない。

 

 

「なるほど、デイドラとドレモラか、それともデイドラロードたちの仕業か……」

 

『ご名答、魂はまた再生し、肉体を経て戻ってくる』

 

「誰かと思ったら、貴様、ドヴァキンだな?」

 

 

テレパシーで直接語りかけてきた相手を瞬時に察知する。

そしてレーダの逆探知の如く()が立っている方向を見る。そこにはバカ皇帝であったゾルザルの姿をした()がいた。

 

 

『気配も肉体も変えてるのに、すぐにバレるとはさすがは世界を喰らい尽くそうとした龍だけはあるな』

 

「減らず口を叩きおって。貴様一体何をするつもりだ」

 

「何って、見て分からないか?」

 

「……あらかた、世界を破壊して侵略の限りを尽くすのだろう?」

 

「破壊?侵略?……ククク、アーハッハッハッ!!」

 

 

ドヴァキンの高笑いは狂気で満ちていたを

 

 

「そんな生温いものじゃないよ」

 

 

ドヴァキンは満面の笑みを浮かべる。

 

 

「世界を破壊し、蹂躙し、凌辱し、汚し、絶望のどん底に落とし込んで破壊の限りを尽くす。そう、私は絶望という最高のスパイスを世界に練り込んで食す、新たなワールドイーターとなる」

 

 

これを聞いたアルドゥインの第一印象はというと、日本語的にはコイツヤベエ、である。

 

 

「君のようなワールドイーターですら全世界の人間を絶望のどん底に陥らせることは出来ず、希望を捨てなかったものによって敗北を味わっている。だから僕は君を超える。そしてそのまま(ゲート)の向こうの世界も諸共喰らい尽くしてやる!」

 

「さて、貴様にそれが出来るかな?」

 

 

アルドゥインは冷笑する。だが心の奥では、全く油断のできない相手だと理解していた。

 

 

「例え貴様が我より遥かに強くても、世界を何周しようと、得られていないものがあるのに気づいていないようだ」

 

「なんだと?」

 

 

ドヴァキンの表情から笑みが消えた。

 

 

「貴様は、その何周もして我の魂を吸収できていないだろう」

 

「……クク、そうだ。そうだった!」

 

 

ドヴァキンは悪魔のような高笑いをする。

 

 

「そうだよ、僕はまだ君を一度たりとも吸収できたいない。そして君を吸収すれば、俺は『Dov Naak Joor(龍を喰らいし定命者)(ドヴナクジョール)』として完成する」

 

「果たして、貴様にそれができるかな?」

 

 

アルドゥインは敢えて挑発する。正直勝てる気がしないが、世界の歪を測るためにも敢えて挑発する。

 

 

「できなければ、世界を壊してもう一度作り替えて君を見つけるまでだ」

 

 

アルドゥインがまばたきを一瞬した時にはすでにドヴァキンの姿は消えていた。

 

隠密スキルが伝説級のドヴァキンの気配を感じるのは至難の技だが、アルドゥインもスゥームを駆使して僅かな気配を感じ取り間一髪で攻撃をかわす。

 

先程アルドゥインがいた場所には、最強エンチャント済みのドラゴン重装備に大剣、さらにスゥーム(ドラゴンアスペクト)による防御力追加の化け物が立っていた。

 

 

「僕はデザートは最後に食べる派なんだが……」

 

 

ドヴァキンが指を鳴らすとアルドゥインの想像を超える出来事が起きた。

 

 

「気が変わった、メインディッシュ(世界の滅亡)の前にデザート(アルドゥイン)をいただくとしよう」

 

 

ドヴァキンの後ろにアルドゥインとほぼ同等、むしろクローンと言っても違和感のないドラゴンが三体現れた。

 

 

「君の魂を吸収することはできなかったが、君の魂を直感で、見様見真似で作ってみたよ」

 

 

***

 

 

「加藤、助かった」

 

「礼は言うな。単に敵を排除しただけだ」

 

 

ロゥリィたちも別動隊に解放されており、皆無事に合流していた。

 

 

「もう一つ、お願いしたいことがある」

 

「敵の俺に貸しを作って良いのか?」

 

「ああ、そんなゆうちょなことを言ってられないからな」

 

 

伊丹は真剣な目で加藤の目を見る。

 

 

「できれば、ワクチンをくれ、と言いたいがそれは了承しないだろう。だからせめて、ここにいる健軍1佐だけでも救ってくれ!」

 

 

伊丹は額を冷たい地面に擦り付け、土下座する。

 

 

「ヨウジィ!何やってるのよ、あんたがお願いすることじゃないわよぉ!」

「そうよ、お父さんは悪くないじゃない、元と言えばコイツらのせいじゃない!」

「……」

 

 

ロゥリィやテュカは抗議するが伊丹は無言で頭を下げ続ける。

 

 

「……」

 

 

加藤は無言のままシガリロに火をつける。そして一息吸って吐く。

 

 

「ここに元を含める日本人を残して一旦出てくれ」

 

 

一同は抗議するが、伊丹のお願いもあり、伊丹、剣崎を始めとするSたち、そしてALTから少数の元日本人と加藤が部屋に残る。そして一呼吸置いて加藤が口を開いた。

 

 

「伊丹、それなら既に解決済みだ」

 

「へ?」

 

「既に、殆どの自衛官はワクチンを投薬済みだ」

 

「え、どうやって?」

 

「アルヌスの協力者にお願いして飯に混ぜてもらった。経口摂取ワクチンとしてな」

 

「はあ!?いつの間に?」

 

「つい最近だな」

 

 

つい最近……伊丹はつい最近の出来事を思い出す。飯関係で変わったことといえば……

 

剣崎の方を見る。そして食堂で珍しくエプロン姿だったのを思い出す。

 

 

「……」

 

 

剣崎は黙秘をする。

 

 

「まあ、彼の名誉のために言っておくが、彼は俺の駒ではなく互いに情報交換としての協力者だ。あまり攻めるな。なので、健軍1佐は大丈夫だ。起きたらそう説明してくれ」

 

 

加藤は陽気に話す。

 

 

「な、なんだ。良かった……」

 

 

拍子抜けした伊丹はヘナヘナと座り込む。

 

 

「しかしだ、道中で少数だが自衛官のゾンビを見たぞ、あれは?」

 

「……今のところ、ワクチンによる効果は100%だ。そこから考えられるのは、自衛官のフリをした工作員か、その協力者だな。自衛隊の飯をここ3日は食ってないことになる。お陰でネズミを炙り出せたな。まあ気の毒だが」

 

「しかし、たまたま食ってないだけとか……」

 

「それはほぼないな。レーション、水、菓子類と自衛隊が提供するものに仕組んである。まあ、漏れがゼロとは言えないがな。逆に自衛隊の食べ物を口にした外国人で生き残りがいるから、こちらで保護してる自衛官数名と一緒に連れて帰っていいぞ」

 

 

なるほど、最近自衛官がハニートラップ引っかかったと注意喚起されていたな、と伊丹は思い出す。

 

 

「なあ加藤……」

 

「うん?」

 

「お前は、一体何がしたいんだ?」

 

「……」

 

「日本を、いや世界を潰そうとしてるのか、それとも救おうとしてるのか?俺にはお前の考えがわからない」

 

「わからない方がいい、理解も同情も同調もしなくてもいい。そのうち知ることになるさ」

 

 

などと考えているといきなり扉が開いた。

 

 

「カトー少佐殿!たたたた大変です、帝都にいる間諜(スパイ)たちが、逃げました!」

 

 

護衛についていたヴォーリアバニーが慌てて入ってきた。

 

 

「スパイって、例の偽大統領たちのことか?」

 

「ああ、邪魔だから置いてきたけど、やはり逃げられたかだ」

 

「やはり?」

 

 

伊丹がどゆこと、と尋ねる。

 

 

「CIAの職員だ。多分俺たちが捕虜として持っていることに相当都合が悪いんだろ……」

 

「しかしお前らしくもない。この程度のこと予想していたんじゃ……」

 

 

言いかけて伊丹は気づく。

加藤が笑みを浮かべた瞬間、伊丹の勘が働いたが、それ以上に生存本能的な何かが口にしてはいけないと警告した。

 

 

「言ったはずだ、そのうち知ることになると」

 

 

***

 

 

「そうか、ご苦労」

 

 

政治将校は馬大校が粛清されたと報告を受ける。

 

 

「何か言い残していたか?」

 

「ハッ、このように言っておりました。『ワクチンは早めに手に入れるんだな』と」

 

「負け犬の遠吠えか。そんなこと言われんでもワクチンはすぐ入手する。ゴホッ」

 

「いかがなさいましたか?」

 

「いや、咽せただけだ。水を一杯頼む。まだ首都に着くまでは時間があるな。私は休ませてもらう」

 

 

***

 

 

「さて、今後の君達への処遇を決めないとな」

 

 

加藤は皆と昼食をとりながら話す。

 

 

「一、君たちをそのまま解放すりる。

二、君たちを捕虜として捕える」

 

「後者は後悔することになるわよぉ」

 

 

ロゥリィが売られた喧嘩は買うぞ、と言わんばかりの圧をかけてくる。

 

 

「我々としては君達を捕虜にするのは得策ではないので、できればそのまま解放したいところだ。ただ、解放したところでこの周辺はゾンビだらけ。さて、どうしたものか。ジゼル、翼竜は何体呼べる?」

 

「既に待機しているのが3頭、少し時間をくれたらもう5頭用意できるぜ」

 

「10頭、いや予備を含めて人数分用意しろ」

 

「少し時間が……」

 

「なら今から用意し始めろ」

 

「……わかったよ」

 

 

ジゼルはとぼとぼと部屋を去った。

 

 

「しかし加藤、なぜ翼竜なんて……」

 

「陸路では現状厳しいので空路で君たちを運ぶ。それに、帰る前に見てほしいものもあってね。まあ、雪が降り始めてるからちょっと寒いかもしれないが」

 

「え?雪?」

 

「あれ、気づいてない?ほら、外を見ろよ、雪だ」

 

「ホントだな。どうりで肌寒いと思ったら」

 

「雪、だと……?」

 

 

ピニャが顔色を悪くする。

 

 

「ピニャ殿、どうしましたか?」

 

「この地域は、雪は降らない筈だ……」

 

「ということは、異常気象?」

 

 

伊丹もそれを聞いて困惑する。

 

 

「恐らく、そういうことだろう」

 

 

加藤はタバコの火をテーブルに擦り付けて消す。

 

 

***

 

「小癪な!」

 

 

紛い物の自身の魂を持つ龍のような何か、にアルドゥインは正直圧倒されていた。

 

 

(くっ、こやつらは強い……!)

 

 

腐っても鯛、と言うように偽物でもアルドゥインと言ったところか。

 

同じでなくとも劣らずとも勝る魂を持つ龍のような何かに追撃からの追撃に圧倒されていた。

 

 

(レベルとしては、我の肉体が滅びる直前の頃と同等か。ならば今の我の方に僅かに分があるが、数が多い……)

 

 

単純計算すると自身より僅差で格下の者に3人相手されているのでなかなか厳しい状況と言える。

 

 

「「「Joor Zah Frul(ドラゴンレンド)」」」

 

 

三体から同時に対不死シャウトが放たれる。

 

 

(……だが、所詮は作り物よ)

 

 

アルドゥインは確信した。勝てると。

此奴らに対して圧倒的に優位なものがあった。

 

 

Fiik(跳ね返す) Pah(全て) Thuum(龍語)!」

 

 

即席で編み出したが効果的面であった。

スゥームを打ち出した相手にそのまま返した。

さらに間髪入れず追い討ちとして鉄をも気化する焔を撒き散らす。

 

不死から解放された異物(偽物)は文字通りチリも残さず消えた。

 

 

「経験値からなる想像力と柔軟性か。なるほど、参考になる」

 

 

ドヴァキンは感心したように微笑む。

 

 

「だが、これならどうかな?」

 

 

すると無の空間から同様の偽物が108体出現する。

 

 

「小癪な、数を揃えれば良いというものではないぞ!」

 

 

アルドゥインは戦闘を再開した。

 

 

「くくく、君を喰らう以外にも、いい使い道を思いついたよ」

 

 

ドヴァキンはアルドゥインに聞こえない声で呟く。

 

彼の足元の雪にはスゥーム(龍語)が刻まれていた。

 

 

Fiik(跳ね返す) Pah(全て) Thuum(龍語)

 

 




ぶっちゃけ流行もとうの昔に過ぎてると思いますが、駄作者のわがままで続けます。

皆様もコロナにはお気をつけて。

あ、あとモンハンアイスボーンにミラボレアス追加されたけど、あれを元にアルドゥイン様をコラボで追加してくれないかな。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。