レギオン世界で生きぬくために   作:八角竹刀
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戦力強化のために

秋ヶ瀬と友達になってからというもの、何故か色々と絡まれることが増えた。
いや、普通に考えたら絡んでくるのは本人だけだろう。友達になったのは秋ヶ瀬だけだし。

普通ならその筈なのに、である。
何の因果か、まったく関わったことない男の子たちに囲まれることが増えた。
ちなみに、絶賛現在進行形である。
しかも、取り囲んでいる子達の目が心なしか冷えている。
と、友達たくさんだよ、やったねたえちゃん!
…いやホントなんでこうなった??

そうこう考えてたら、リーダー格と思われる子が、何か話しかけてきた。
なんだろう、金出せとかかな。さすがに小学生で言う台詞じゃないか。

「おい、てめぇなに最近調子こいてんだぁ!?」

あぁ、普通に定番だった。
ちょっと期待したのを返して欲しい。

「いや、何のこと?」

「とぼけんなよ!居眠りヤローのくせに!」

「え、マジで何したかわからん。」

「俺らの秋ヶ瀬さんと何イチャついてくれてんだって訊いてんだよぉ!!」

へ?
イチャつく?俺が秋ヶ瀬と?
…んなことあったっけ。

すると突然取り巻き君たちが、猛ラッシュでのまくし立ててきた。

「休み時間の度に仲良くおしゃべりしてんじゃねぇか!!」

「いや、あれはずっと寝てる俺を叱りにきてるだけだろ。」

「下校のときも二人だし!!」

「それも、途中まで帰る方向が同じだっただけなんだよなぁ…」

「飼育小屋で二人きり!」

「あそこに行かないとウサギがモフモフできねぇだろうが。あと、あいつは俺を見張りについてくるだけだ。」

なんだか知らないが、要するに俺が秋ヶ瀬と仲良くしてるのが気に入らないみたいだ。

秋ヶ瀬は基本的に誰に対しても丁寧に接していて、元来のカリスマからか、美人だからか、とにかく人から好かれる。初恋を捧げた男子も多いことだろう。
そんな訳だからか、あいつの唯一の男友達の俺は妬まれているらしい。

…別にそーゆう恋愛的な関係じゃないんだよなぁ。なんなら自分の身の安全のために、あいつと意識して良好な関係気づいてるとこもあるし。

いやでも、振り返ってみれば結構あいつと絡んでますね、俺。
あいつの反応が面白いってのはあるが、やはりこの世界でのはじめての友達(人間)だからだろうか。
少しはめ外しすぎたかなぁ…

少し遠い目をした俺を、バカにしてるとでも受け取ったのか、また周りのヒートアップに拍車がかかる。

「何から何まで言い訳しやがって、じゃあ先週末のあれはどうなんだ!!」

「先週末…あー、あれか、ちょっと一緒に川で遊んでたやつか。」

「ちょっとだぁ!?
とぼけんなよ、二人揃って水着まで着てただろうが!
現場見たヤツがいるんだぞ!!」

「だって毎回魚釣りにいくだけじゃ飽きるだろ。潜るのだってたまにはやりたいだろ。」

「そういう問題じゃねぇぇぇぇぇぇ!!」

なんだよ事実しか言ってないのに。
てゆーかまだ小学生だぞ。お前らの思ってるようなラブコメ展開なんかねぇよ、この早熟ボーイズが。

その後テンプレのごとく皆で暴行に及んできたので、最小限の動きで体を捻ってかわしまくった。はた目から見たらめっちゃクネクネフラフラしてただろうと思う。
なにそれキモい。

で、その休み時間いっぱいまでフラフラと攻撃を避けまくってたら、そのうちみんな疲れてきたのか諦めてどっか行ってしまった。
いやぁ、速さや威力を壬生狼基準で見てるから、あの子達の攻撃なんて、遅くって遅くって。

俺がこの世界で普段、普通に遊び相手にしてる壬生狼は、そもそもが戦闘もこなせる式神なので、その体のスペックはかなり高い。
母の近くに侍らせてる一際体の大きい壬生狼なんて、飛んでる燕を欠伸しながら叩き落とせるほどである。

これ原作読んでた頃じゃわかんなかったんだが、壬生狼って小型の馬くらいのサイズ感なんだぜ、知ってた?
土方歳三がこれに跨がって幕府軍と戦ってたなんて逸話がこの世界にはあるが、さもありなんという感じだ。

そんな馬鹿げた軍事用アニマルたちとキャッキャキャッキャと毎日のように鬼ごっことかするわけである。
そりゃ身体能力つくわな…


そんなこんなで男子に囲まれるのももはや日課じみてきて、周囲も「あ、またか」みたいな雰囲気になってきた頃。

「うーん、だいぶ形になってきたわね。」

「おー!」

母からとりあえずの精霊術の免許皆伝を頂いた。
索敵系に始まり、式神に陰陽術まで。めっちゃ幅広かったし、半分くらいはなんで覚えたのか謎な呪術もあったけども、数年がかりでやっと覚えることができた。

教えることがなくなって母はちょっと寂しそうにしながらも、数年でこれだけ会得できるのは凄いと誉めてくれた。
後はひたすら反復練習あるのみ、だそうなので、コツコツ頑張っていこうと思う。
そう言う割に母さんが練習なんてしてるの、ほぼほぼみたこと無いんだが、そこは気にしてはいけない。師匠っぽく雰囲気作って、それっぽいモードで現在本人ノリノリだからこそ突っ込んではいけない。

さて、精霊術に関してはひとまずこれでいいとして、他に何をすべきだろうか。
体力方面に関しては今でも毎日壬生狼と鬼ごっこしてるし、最近は戦闘訓練もしている。本気を出した壬生狼はめっちゃ怖い。
少し避け損ねたのをくらっただけで、いとも容易くアバラとか折れる。
ぶっちゃけ、戦闘面に関しての修行は、今のところほぼ問題ないのだ。

…となると知識の方面だが、レギオン使って戦うための戦術なんて教えてくれるところがある筈もない。それこそ国に雇われて騎士侯にでもなるしかないだろう。
他に何かいいのあったかな、と前世の記憶を掘り起こす。

この世界に来てから十年以上も経つと、さすがに原作知識も少しずつ薄れてきてしまっているなぁ…
やれることはできるだけ早くからやっておいた方がいいだろうし、次の目標を早く定めなければ。



次の日、そんなことを漠然と考えながら、いつもの如くぼーっと授業をすごしていると。

「ねぇ、空太、今朝のテレビみた?」

最近は学校だろうがガンガン絡んでくる秋ヶ瀬は、のんびり給食を貪っていた俺に開口一番そう言った。

あれ、君づけ止めたの?
とか聞かれそうだが、君つけると長いし、俺自信が何かむずがゆかったので、
「もっと仲良くなりたいから」と理由づけて君づけは止めて名前を呼び捨てにしてくれと頼んだ。
その時の秋ヶ瀬の顔が何故か朱色に染まっていたが、あいつ熱でもあったんだろうか。
あとその時に、
「ならやっぱり私も名前で呼んで!」
と凄い剣幕で言われたので、二人きりの時のみ立夏呼びしている。
まぁそれはともかく。

「みてねぇけど、なんで?」

「ふふん、驚かないでよ…あのユリウス・カエサルが名古屋にくるんだって!」

「へぇ。そんで?」

「そんでって…相変わらず空太はその辺興味薄いよね。
古代ギリシャの大英雄だよ、甦った現世でも世界の中心にいるような大人物だよ?一回くらい会ってみたくない?」

「死んでも会いたくない。」

いや、だってそんな原作最強クラスの仮想敵国の王とか、何があっても絶対会いたくない。
一人でレギオン1000騎?は?勝てるかバカ。

会ったら確実に厄介事になるだろうし、なんならその場で捕らえられて政治の駒に。
まぁ身バレしなきゃ大丈夫だとは思うが。
いやカエサルどころか軍関係の人間に少しでもバレた瞬間に人生詰むけどな(白目)

この通りバレたら終わりというところが第一だが、カエサルに会いたくない理由は他にもある。

即ち、他の王族と遭遇してしまう可能性である。

カエサルの日本に対してのスタンスは保護者、古代ギリシャ風に言えばパトロヌスだ。
これはその土地を統轄する王を従える者ということで、ある程度は任せるが、基本は俺が間接統治するぞ。という宣言に他ならない。

いや現代世界においてこんなことすれば、全くもって他国をバカにしているとしか言いようがないのだが、なんせあいつは紀元前を生きていた男である。常識だってそりゃ異なるだろうよ。

で、そんな保護者なあいつは、かつてのクレオパトラよろしく、日本の女王陛下やら親王殿下を侍らしていることが多い。
特に際立って見目麗しい富士宮殿下はお気に入りらしく、まだ小学生であらせられる殿下を散々に口説いている。光源氏でもしたいのかこの男。
あ、いや待ておい、お前確かハゲ散らかしたおっさんじゃねぇか。絵面考えろ。

話がそれた。

カエサルが紛れもない脅威なのは事実だが、俺が怯えてるのは別の存在だ。


富士宮殿下である。


あれは、あれだけにはバレてはいけない。


原作におけるメインヒロイン。
これから起こるであろう、大英帝国と東方ローマ、日本による三つ巴のバトルロワイヤルの渦中における超重要人物。
本人自身も当世きっての切れ者であり、精霊術のエキスパートである。

このように本人の能力だけでも厄介だというのに、出自も純粋な皇家の血を引く姫様だというから始末に負えない。

彼女がもし次の女皇でも狙おうとするならば、確実に俺の存在は邪魔になるのが目に見えている。
自分以上に天竜の血が濃く、尚且つ男性。
庶子とはいえ十分以上に皇位継承の権利が出てくるだろう。そして、それを知った諸将家が彼女を支持しなくなった日には。

…下手をすれば、皇国日本の支配体制すら揺るがしかねない内乱が起きる。

そうなればあとはもう最悪だ。
あっという間に利権にありつきたい周辺諸国が介入して、格好の草刈り場となるだろう。
日本を世界の国々の代理戦争の場所にすることだけはなんとしてでも避けねばならない。

幸い今の女皇には一人娘がいるらしいし、順当に行けばその子が女皇になるだろうから考え過ぎかもしれないが。

とにかく、厄介事に自分から首を突っ込むのはごめんだ。

「俺は自分の周りの奴らが笑っていられればそれでいいの。あんな化け物に絡みにいって俺の人生を棒に振るなんざ真っ平だね。」

「でも、生で復活者を見られるなんてそうそうない機会だよ?」

「なら、立夏は行くのか?」

「私はほら、お父さんの都合で強制参加だし…」

小学生とはいえ、東海道総督の娘である。
やはりその地位相応に求められるものがあるのだろう。

「大変だなぁ…まだ小学生なのに。」

「そう思うなら付いてきて喋り相手にでもなってよ。」

「嫌だお前のお父さんに会いたくない。」

「お、お義父さん!?」

立夏とは非常に仲良くしているが、未だあいつのお父さんとは直接あったことはない。
というのも頑なに俺があいつの家に行くのを拒否しているからなのだが。
立夏には、俺との関係は親には言わないで、二人だけの秘密にしてって言い含めてある。まぁいずれ父親の耳に入ったとしても、「娘の良い友達」程度の認識になるだろう。
つーか立夏よ、なぜそこで狼狽える…俺はそんなニュアンスでお父さんと言ってねぇ…。

「まぁ大変だろうがお前だけで行ってくれ。俺は復活者とか特に興味な…」

そう言えば復活者って甦らすのに神獣の力を借りなければいけなかった気がする。
しかも神獣に連なる系譜の者が、寿命を対価に呼び出すとかいう死神染みた条件も必須だったはずだ。
ユリウス・カエサルなんて呼び出すのにはそれこそ一生分近くの寿命が要るんだろうなぁ…

ん?もしかして、そこまでの英傑じゃなければ、俺でも呼べる?
幸い庶子とは言え神獣の息子だし、精霊術が使えることから神秘力との親和性もあるだろう。

あ、これ意外と名案な気がしてきた。

そうだよ、復活者を呼べばいいんだよ。
そうしたら戦力の問題も大幅に解決できる。
なんせ実戦経験を積みに積んだ英傑たちが、最盛期と同じスペックで甦えるのだ。
そして呼び出された復活者はほぼ例外なく、とてつもない数のレギオンを操ることができる。

勿論俺の寿命は多少削れるだろうが、神獣の血を引く人間の寿命は一般人より長いらしいし、そうでなくても、そこまでのレベルの英雄を呼ばなければいいだけの話だ。
素晴らしい!完璧じゃないか!
なんで思い付かなかったんだ!

「お、おい空太?急に静かになったけど、何かあったのか?大丈夫か??」

心配したのか立夏が声を掛けてきた。おっと、そういえば話しの途中だったな。失礼なことをしてしまった。

「いや、ちょっと考え事をな。」

「そうか…ならいいけど。
それで、さっきは何を言おうとしてたの?」

「ああ、あれだよ。立夏のおかげでやるべきことがわかったってことだよ。」

「やるべきこと??
…まぁいいや、何にせよ、空太の役にたてたなら嬉しいよ!」

そういって立夏は相貌を崩してニカッと笑った。
きっと、こういう笑みが似合うから色んな人に好かれるんだろうなぁ。

「あ、でもカエサルは見に行かないからな。」

「…空太のケチ。」

なんとでも言えばいいが、鍛えられた握力で頬をつねるのはやめて下さい。






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