とある山の街で育った少年は良く山を降りて、山のふもとで遊んでいた。
とある里の街で育った少年は幾度も遠出をして、遊んでいた。
二人はやがて親友になるが、やがて国の命によりお互いが母国一番の剣の使い手とされ、戦うことになる。
親友として戦うこと。国の命。母国からの目線。
二人は本気で戦ったが、決着は付かなかった。

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地の天秤

その日。

 

親友二人は約束した。

 

 

「この刀を返すその日まで。」

 

「この短剣を返すその日まで。」

 

「「元気でな。」」

 

二人はお互いの愛用していた武器を交換した。

二人は拳を突きだし、合わせた。

二人はお互い背を向け、歩きだした。

 

 

 

 

 

【story ROOM】

 

「よぉルーム!久しぶりだな!」

 

ある峠を越えた先には大きな街があった。

街の中心にある広場の横には

果物屋が開いており、太った店主が

通りかかった青年に声をかける。

 

「ああおっさん、あんたまた太ったか?」

 

「リガオンがこの時期、旨くてなぁ!ハッハァ!」

 

店主は盛大に笑っていた。

この街ではこれが普通だ。

 

「なるほどねぇ、じゃあそのリガオン、貰おう」

 

「やぁれねぇよ!ハッハ!だけど5個で20ニィだ!やるに等しいわな!」

 

「そんなに旨いのかよ...」

 

「ハッハッハ!食や分かる!旬だからな!」

 

そんなやり取りをしながら、

店主は青年に赤い実の食べ物を渡し、

青年は店主に2枚の硬貨を渡した。

 

早速、青年は渡された実の1つを手に取り、

皮を向いて、実を割って食べる。

 

「こりゃあ甘いな、おっさんも太るはずだ」

 

「ルームも太ってみるか!」

 

「俺はな...太れないんだ...」

 

「知ってるさ!それより聞いたかよ!ルームが戻ってくる少し前からな、元々敵対国だった街と戦ってるんだ。」

 

「あぁ?それでこの雰囲気かよ?」

 

「そりゃぁそうさ!なんたってここぐらいは騒がないと気分が下がり続ける!耳貸せやなぁルーム...」

 

青年は言われた通りに耳を近づける。

先程の声とは大違いの小さな声で店主は話しかける。

 

「みーんな。家の中じゃ落ち込んでるぜ。夫 息子 が戦いに行って、そして死んでるかもしれない不安に潰されそうになってんだ。そんな不安を払うために騒いでるのさ。」

 

「通りで男性が少ないんだな。」

 

耳を貸したまま青年は、辺りを見回す。

 

「ああ、戦ってる国は、お前も知ってるだろう?ここより小さな街だ。」

 

「この街から西に離れた山の下だな。この街より小さいのに戦力は十分ある街だ。」

 

「そうだ。ルーム、お前は」

 

「俺は」

 

店主の言葉を青年が遮った。

 

「俺はその街に行くさ。」

 

「なに...?」

 

「昔あの街に寄ったときに忘れ物をしたのさ。それを取りに行くだけさ。」

 

「...そうか。戦いに巻き込まれるからな、遠回りをしていった方がいい。」

 

「ありがとなおっさん。リガオン、旨かった。」

 

青年が立ち去ろうとすると

 

「だろうな!旨いだろ!」

 

と店主が、まあ宣伝目的なのだが、大きな声で。

 

青年は手のひらを小さく振って街を出るために、この街の西の峠に向かう。

 

「あの約束...あいつ覚えてるかよ...」

 

青年は歩きながら背中側の腰に留めてあった鞘に入っている短剣に触れた。

 

「今まで色んな化け物を斬ったが...次は本物の化け物だ...」

 

 

 

 

【story BAM】

 

ある街は、東を向けば山が背景になり、秋には素晴らしい紅葉の景色が街のどこでも見える

 

青年が鍛冶屋に訪れる。

 

「いらっしゃいな♪あら?バンじゃない。」

 

可愛らしい女の子が、燃える釜の前に座って片手でやっと持てるくらいの金づちを持っている。

彼女の前には冷めきった棒状の鉄が置いてあった。

 

「この刀を、研いでくれ。」

 

鞘から抜いた刀を、柄を彼女に向けて差し出す。

 

「えぇ~...他のとこで研いでもらってよ...。」

 

彼女がそばに金づちを置いた。

まるで重そうになくゆっくりと。

 

「ダメだ。他の店は『剣』の研ぎ方しか知らない。刀も造り、『刀』を研げるのはお前しか居ない。」

 

「はいはい、分かったよ...」

 

彼女は差し出された刀を手にとって、

刀をじっと見つめる。

 

「これ...研がなくても十分だよ?刀専用の手入れと掃除だけで...」

 

「ダメだ。わりぃな。研いでくれ。金は払う。」

 

自分の言葉を遮られた彼女はびっくりして青年を見る。

 

「値段は研いでから決めるよ。じゃあ、しばらく待っててね。」

 

「ありがとうな。」

 

「この刀は...細いのに、とても重いね...。刃こぼれさえ無い...。」

 

淡々と呟きながら、彼女は刀を研ぐ部屋に行く。

 

「古い親友から借りたんだ。近いうちに返さなければならない。」

 

「なるほどね。それで。」

 

ゆっくりと研いでいく。

研ぎすぎないように、慎重に研ぎ、たまに刃を高性能レンズで見る。

 

「今はそれこそ刃こぼれは無いが...その時が来れば...最悪折れるだろうな...」

 

窓をみながら、青年は、小さな声で呟いた。

 

 

 

 

 

しばらくして研ぎ終わった研師の彼女は、

自分で研いだ刀をしっかりと構える。

 

「...?」

 

不思議に思った青年が彼女の手元に目を向けたとき、その刀を握った手は一瞬で消えていた。

 

「!!」

 

目を見開く青年。

 

彼女は、下に向けていた刃を、真横に振り抜いていた。刀身には窓から漏れた光がほんの少し反射する。

 

「はい、かんせ。」

 

なにくわぬ顔で柄を青年に向け、差し出す。

 

「お前は...。」

 

「値段は要らない。その一振りしかない名刀を研げた事がもう幸せなの。」

 

漢字で刀身に彫られた場所を指差して、

にっこりと笑った。

 

「元気でね。」

 

「ありがとうな。」

 

刀を鞘に戻し、店を出る。

 

「あいつはここに来る...。この扱いにくい刀も...やっと慣れてきたんだがなぁ...。」

 

左側の腰に差した刀を見つめる。

 

「今まで多くの怪物をこの刀で斬ったもんだが、次の怪物はきっと今までの怪物の中で一番強いだろうな。」

 

そう呟いたとき、

バンと呼ばれた青年の前に

一人の青年が現れる。

 

 

 

 

 

【Final story.】

 

「待ってたぜ、ルーム。」

 

「俺が来てやったんだよ、バン」

 

「はいはい、ここで会ったのは偶然さ」

 

「アホか、一番会いたくなかったわ」

 

二人は笑い合う。

 

「約束、覚えてっかよ?」

 

「俺を馬鹿にすんじゃねぇ。って言いたいとこだが、もう12年も前の事だしなぁ...」

 

「っはは!しっかり覚えてるじゃねえかよ!」

 

バンという青年の前に現れた青年は楽しそうに笑った。

 

「ルームこそ覚えてないかと思ったぜ?」

 

「俺は覚えてるさ。なあバン。俺の育った街と、お前の育ったこの街が争ってるのは知ってるよな。」

 

「ああ。知ってるともさ。」

 

「ま、そんなの俺らには関係ないか。」

 

「ないな。」

 

「この短剣、もう要らねえから返すわ。バン。」

 

「この刀はなかなか扱いづらかった。もう返すぞルーム。」

 

お互いがお互い持っていた武器の柄を相手に差し出し、お互いが受け取った。

 

「くたばれ短剣使いの化け物。」

 

「地獄に落ちろよ刀武術の怪物。」

 

その言葉をきっかけに、両者は受け取った武器を本気で交えた。

 

バンと呼ばれた青年は、右手で短剣を逆手に持ち。

ルームと呼ばれた青年は、両手で刀を舞わせた。

 

刃物のぶつかる音が聞こえたときには両者は一時的に退いていた。

その音が鳴り終わる時にはまたもう一度同じような音が鳴った。

 

バンが体を翻すように下がり、

ルームは一歩下がって刀を鞘に納めた。

 

バンは突っ込むように左手で武器をルームに指しかかった。

ルームが刀を抜く。居合い切りを仕掛けた。振り抜いた刀を見たときには、バンの武器は真っ二つになっていたが、バンは少しニヤついて、その武器を捨て、右手の短剣を逆手に、体を回してルームに切りつける。

 

「チッ。」

 

軽く舌打ちをしてルームは体を仰け反らせ避ける。バンの左手に持っていた武器はフェイクだ。自分の鞘をルームに斬らせた。バンの回転は止まらず左手で裏拳を当てにいく。

 

体を戻し、すぐさましゃがんで裏拳を避けたルームはその体勢から刀の刃を下に向け、構えた。

 

バンは回る体を止めるために両足を地につけて力を入れる。

 

その足をめがけてルームは斬りつける。

短刀で刀を受け止め、足をすぐさま退くが、短刀は負け、刀によって、その短刀は折れた。

 

「おらぁ!」

 

折れた瞬間バンは片足でルームの横に飛ぶ。振り抜いた刀を、踏みつける。

 

刀は少ししなってから折れた。

 

しばらくして両者は武器を捨てた。

 

「参ったな...本気で命を奪いに行ったのに...。」

 

「困ったもんだ...命を取りに行くのがこんなに大変かよ...。」

 

「「お前は誰よりも強い。」」

 

両者はその場に座り、笑った。

 

「疲れた。」

 

「疲れたな。」

 

「今までの戦いで、一番戦った時間が短かったのに、今までの戦いで、一番疲れた。」

 

「そうだな。俺は二度目だ。こんな経験。」

 

「俺も二度目だよ。」

 

お互いがお互い、過去に一度戦った思い出にふける。

 

「共に冒険してみないか?なあ...バンブー...シュート...。

 

ルームがバンの本名を言った。

 

「なかなか良い案だな...マッシュ...ルーム...。」

 

バンがルームの本名を言った。

 

「きっと正確には、お互い育った街から逃げる。が正しいんだろうな...。」

 

「まあでもお互い育った場所は同じだろ...。」

 

「そうだな!ははは!」

 

お互い笑いあって、やがてその場を去った。

 

その場には。真っ二つになった短剣の鞘と、割れた短剣と、折れた刀が一振りに、きれいな刀の鞘があった。

 

 

 

きのこの山の刀使い マッシュ・ルーム

 

たけのこの里の短剣使い バンブー・シュート




楽しんでいただけたでしょうか...
そうです...きのこの山とたけのこの里のお話です...
ちなみにリガオンはregaonと表記し、orangeを文字ってます。
この世界の通貨のニィはNeyと表記し、日本通貨のYenを文字ってます。
楽しんでいただけたらなによりです...

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