続きをどうぞ
「ハク!こい!」
草原に立つ二つの影、その場所は人が立ち寄らない森の奥深くを抜けた先にある場所、秘境と言っていいほどの綺麗な場所だ。透明度が高い澄み切った川、そして綺麗な草原。
「………」
姿勢を低くするハク。その構えは獲物を狙う獣そのもの。一点に集中し他の事は考えない、ただ目の前の獲物を仕留める事だけを考える。
その刹那、白い獣の姿は消えた
その周りにそよ風が吹く———
「………」
さて何処からくるかな———
人と獣の体力は圧倒的に獣の方が格段に上だ。しかもハクなら尚更だ。ハクも明らかに成長しているんだよな、ハクの母犬との出会いは忘れもしない。何せあんな傷だらけの状態でもあのスピードだもんな。もし怪我なんてしてないと考えると....はは....おっかねぇや。
「ふぅ....」
全意識を集中させろ、五感の神経を研ぎ澄ます。
「左!」
咄嗟の判断で飛びついた
だが感覚がない!
外した!
覇気で動きを読んでいても速さで負けている、これでは覇気の意味がない。
なら自身もそのスピードまで身体を強化する。
「獣招来」
氣を脚に纏わせ快速性を極限に高める術技。
「追いかけっこ開始だぞ、ハク!」
龍樹もその場から姿を消した、はたから見れば一人と一匹は消えたと思うだろう。
「………」
ッッッッたく、涼しい顔してくれるよなぁ、あいつ全然本気出してねぇよな。
まっ、それは俺もだけどな!
ここで一気にギアを上げる龍樹。
それに気づいたハクは更にスピードを上げ始めた。
「ここだ!」
俺は一気に飛びついた、そして身体全体に伝わってくるフカフカな感触。
「へへへ、つーかまーえた♪」
「バウ」
「油断したんだろう?」
「………」コクリ
俺の言葉に頷くハク。
相手を油断させるのも戦術の一つ。これが勝敗の結果。もしハクがもう少し判断が速ければ結果はわからなかっただろうな。
「今回は俺の勝ちだな、さっ、そろそろ戻ろうか」
「バウ!」
○○
「偶にはゆっくりと散歩するのもいいなぁ」
俺は今多摩川の土手をゆっくりと歩いていた。
親父に「何時も修行ばかりしてると、身体壊れちまうぞ、偶には散歩でもしてこい」と言われ散歩している最中。
「かなり歩いてきたな」
普段からよくランニングをしてるけど、かなり距離があるんだな。
「ふあぁ〜〜」
なんか眠たくなってきたな....
ちょっと昼寝でもしてこうかな...時間は2時ぐらいか...時間はあるしゆっくりしてこう。
俺はゆっくりと河原の近くの草に身体を預ける
「おお!中々気持ちいいなこれ」
草だから痛いと思っていたが別にそんな事はなく、逆にいいクッションになっていた。
「ああ〜いい気持ちだn...zzzz」
そのまま龍樹は眠りについた。
○○
「………ん?」
あっ....いつの間にか寝ちゃってたか。疲れてたのかなぁ、まあ良いや気持ちよかったし、さて、そろそろ起きようかな。
ふとある事に気づいた
「(あれ?...身体がうごかねぇや)」
ふと視線を向けると青髪の女の人が抱きついて寝ていた。
「ZZZZ〜」
この人誰だ?
なんで俺に抱きついてんの?
「zzz〜〜...ん?」
青髪の女性は目を上け身体を起こす。
「ふあ〜〜、君が気持ち良さそうに寝てたから私も一緒に寝ちゃったよー」
「は、はあ……」
「ここってお昼寝にピッタリだね〜」
少しおっとりした喋り方をする女性。その女性は長めの青髪、そして整ったスタイルをしている女性だった。身長的に言うと高校生くらいかかな?
「そう...だな」
「君可愛いねぇ〜」
「わぷ!」
いきなり抱き寄せられてしまった。真正面から抱き締められてしまい顔が女性の胸に埋まる形になってしまった。
「ギュ〜〜♡」
「うぐっ!うぐっ!もがっ!」
全然離れられない、相当力強いぞこの人!
ヤバい!息が出来ない!
俺は女の人の腕をパンパンと叩いた。
「……ん?ああ〜ごめんね〜」
抱擁から解放された俺は勢いよく息を吸い込み整える。はあー危なかった、軽く死にかけた...
「いや大丈夫だ」
「そう?よかった」
頭を撫でられた、初対面の相手の人に。
「あっ...そろそろ帰らないと怒られちゃう」
「あ...そうだ、君の名前はなんていうの?」
「神道龍樹」
「龍樹君か〜、良い名前だね、私は板垣辰子だよ〜また会ったら一緒にお昼寝しようね〜」
辰子と言う女性はそう言い残し去っていった。
「……なんか凄い人だったな」
俺は腰を上げゆっくりと立ち上がる。
「さて、俺も帰ろ」
一つ気になってたがあの場所にもう一人いたな。
龍樹はわかっていたあの場所にもう一人の存在がいたことを。その影は龍樹を見ていたということを。
「………」
龍樹の背後姿を見る謎の影。
この出会いは必然なものである。
○○
翌朝———
「親父おはよー」
「おはようさん」
「ハクおはよー」
「ワォン!」
何時もの日常を迎える朝。この何事もないこのほのぼのとした朝が1番好きな瞬間だ。
「龍樹、お前そろそろ誕生日だな」
「ん?...ああ、そうだね」
あまり気にしてなかったな。
今の日付は5月の20日、そして俺の誕生日は6月の3日だ。別になんかのお偉いさんが偉業を成し遂げた記念日だとかそんなんじゃない。ただ、普通の子供の誕生日。
「なんか欲しいもんあるか?」
「べつに特にないよ」
「おいおい、遠慮しなくていいんだぞ、少しくらい我儘言っても、まあ島が欲しいなんてのは流石に無理だがな」
「無理に決まってんだろ!?どんな我儘だよ!」
島なんて財閥ぐらいだろ買えるのって。
「うーんだったら、親父のそのマントがいいな」
「ん?こんな古いマントをか?」
親父が普段使っているマントは学ランの様な赤と黒のデザイン仕様だ。
「それなら新しいのを買ってやるけどな」
「同じやつがいいな」
「マジか、これ結構高かったんだけどよ」
「いくらしたの?」
「2000千円」
「格安じゃねーかよ!」
「冗談、200万くらいだ」
「うわ?!なんとも言えない値段!なら安いやつでいいよ」
「遠慮すんな、いいの買ってやるから楽しみにしとけ」
「うん、親父ぐらいの大きさの買っといて、俺が大きくなったらそのマント羽織るから」
「わかった、楽しみにしとけ」
「うん」
○○
「ふあ〜やっぱ気持ちいいなぁ〜ここ」
また俺は昨日きた河原の近くの草原に身体を預けている。
「………」
また誰か見てるな、それもすぐ近くにいる。
俺は身体を起こし視線が感じる方へと身体を傾ける。
「何見てんだ?」
○○
少女side
あっ...あの子...昨日もここで寝てた子だ。話しかけてみようかな...昨日頑張って声掛けようと思ったけど、僕なんかが声かけたら迷惑だよね...
悲観的になる少女は何時もそうだった何時も一人ぼっちだった。彼女は仲間が欲しかった...友達が...安らぎがほしかった...
そんな時にある少年に目がいった。いや、離せなかった。もしかすると彼なら...と少しくらい希望を持った。昨日は声を掛けようとしてかけられなかったけど。
今度こそ————
「何見てんだ?」
思わずその声に震えてしまった。
少女side end
○○
その声に一人の少女が姿を現した。その少女は雪の様に真っ白い髪に赤い瞳の色の少女。
「あっ...あの!!...こんにちは」
少しぎこちそうに話してくる女の子。俺は脅かすことなく笑顔で———
「こんにちは」
優しく返した。
「あっ...その...マシュマロいる?」
女の子袋からマシュマロを取り出し差し出してくる。
「お?くれるの?ありがと!!」
俺は口の中にマシュマロを放り込み味わった。
「美味いよ!これ」
「本当!?僕も好きなんだ!もっと食べる?」
「おう!くれくれ、隣座れよ」
「……っうん!」
俺の隣に腰掛ける少女。
少しぎこちない動きだったけど気にしないでおこう
「お前名前なんて言うんだ?」
「僕の名前は小雪」
「そっか、いい名前だな、俺は龍樹だ」
俺たちは色々話し合った。好きな食べ物や好きなこと、そしてお互いを知っていった。
「あっ、そうだ小雪、コレ知ってるか?」
「なに?」
俺は川の近くに降りて適当に石を探す。
「なるべく平べったい石がいいんだよな〜...お!あったあった!」
石を拾い川の近くまで行き、そして石を川に向かって勢いよく投げた。すると石は川の上を跳ねながら遠くへ飛んで行った。
「すごーい!」
「水切りっていうんだよ、ホラ!小雪もやってみな」
「うん!」
俺たちはそのまま日が暮れるまで遊んだ————–——
「もう、夕方か...そろそろ帰らないとな」
「えっ...もう帰っちゃうの?...」
「早く帰らねぇと親父に怒られちゃうしな、小雪も早く帰らないと親に叱られるんじゃないか?」
「...うん...そうだね...」
その時の小雪の表情に龍樹は目が止まった。その表情は何かに怯える表情だった。
「ねぇ...明日もあそべないかな?」
「ああ、かまわねぇよ」
「ほんと!?それじゃあ、また明日ねー!」
そう言いながら走り去っていく小雪の姿。
「(やっぱり...何か変だな...)」
親の話をした途端に顔が引きつってた...もしかすると...
いや...まだわからん...決め付けはよくない...
間違いであってほしいと願いながら龍樹は家路へと向かった———
獣招来 テイルズ