ゲーティアを倒して、平和が訪れたカルデアは、暇をもてあそばしていた。


警告タグは念のためです。今回が初めての投稿になるので試作の意味もあります。

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カルデア逃走劇

※弊カルデアに所属しているマスターは特殊な訓練を受けています。決して真似しないでください。

 

「そろそろ夏ですね、マスター。夏といえば海!というわけで水着を買いに行きましょう!」

「うるせえ、黙れ脳内お花畑」

 

救国の聖女であるジャンヌ・ダルクは読んでいた本を閉じ、期待を込めた目でマスターと呼ばれる人物を見るが、マスターはどうでもいいと言いたげにジャンヌの言葉を一蹴した。

 

「何故駄目なのですか?邪ンヌには新宿で服をあげていたのに」

「あれは必要に駆られていたからであって、オシャレするためとかじゃないから。それにお金だってかかってないし」

「ちょっとくらいいいじゃないですか。それでも世界を救った英雄ですか。もっと懐を広く持ってください」

「あぁ、世界を救った英雄ね……」

 

世界を救った英雄、その言葉を聞いたマスターは瞳から光が消え、低かったテンションはさらに低くなった。

 

「その世界を救った英雄は、死にそうになりながら連日連夜時計塔やら魔術教会やらからの嫌味つらみを聞きながら接待して、なんで給金ゼロなんでしょうね?生活は保障されていても、命は保障されてませんよ?時々飯の保障すらねえし、こっちのマイルームなんてセコムしてないと男女ともに魔力供給とかぬかして貞操奪ってくるし。そもそも英雄なんて頭のネジ全部宇宙の彼方にぶっ飛ばした連中ばっかりだし。確かにみんなと過ごす日々は楽しかったよ?でもさ、世界救っても報酬が一般人には意味のない称号と、胃痛だけっておかしいよね?むしろ胃痛って報酬ですらないよね?それよりお金くれよお金を!あー、苛々してきた。ちょっとスパルタクス(圧政)とスパーリングしてくる」

 

そうマスターが言って出ていった扉が完全に閉まりきった後、ジャンヌは読んでいた本をテーブルに丁寧に置き、マスターの背を追うのであった。テーブルに置かれた本の題名は『聖女(バカ)でもわかるフランス語講座 読み書き編 アンデルセン・シェイクスピア著』

 

「誤魔化されませんよ、マスター!」

「途中まで気付かなかった阿呆な聖女(笑)はそのままお利口にお勉強しとけ!」

「先程からの暴言の数々。もう我慢の限界です!今日という今日は観念してもらいますからね!そもそもスパルタクスとスパーリングなんてしたことないでしょう!私が捕まえたら本当にスパーリングしてもらいますからね!」

「だれがやるか!」

 

マスターがガント、と小さく呟くと共に指をジャンヌに向け、それがジャンヌに当たると途端にジャンヌは動けなくなっていた。

 

「ラスボスすらスタンをかけるガント!その身でとくと味わいやがれ」

 

フゥーハハハ!(゚∀゚)と高笑いをあげながら去って行くマスターに、その端正な顔立ちを憤怒に染め拳を握るジャンヌダルク。もうそこには救国の聖女としての顔はない。あるのはその怒りをどの様にして己がマスターにぶつけるか、その一点のみである。

 

「この憎悪、生半可なものでは収まらぬ!」

「ちょっと待ちなさいよ!それ私のセリフよ!勝手に盗らないでもらえないかしら。それとも聖女様は他人のセリフを盗らないと、アイデンティティすら守れな—————」

「令呪を以って命じます。ジャンヌ・ダルク・オルタよ、マスターを捕まえるまで手を貸しなさい」

 

偶然通りかかったジャンヌダルクとは外見が同一でありながら性質は正反対の女性、ジャンヌ・ダルク・オルタ。いつもジャンヌ・ダルクにくってかかる彼女は、今日も今日とてジャンヌ・ダルクに収まらない復讐の炎の矛先を向けるが如く、揶揄い貶し詰ろうとしたが、それより一歩早くジャンヌ・ダルクが神明裁決によって丁度良い人材として、ジャンヌ・オルタを仲間に引き入れたのだ。

 

「クソッ、貴女の言うことをきくのはかなり癪に触りますが、それを使われてはどうしようもありません。いいでしょう。ですが、契約が完遂された暁にはその命、紅蓮の炎で焼かせてもらいましょうか!」

「はいはいわかりました。さっさと行きますよー」

 

にべもない、を体現したジャンヌ・ダルクの行動にジャンヌ・オルタは神経を逆撫でされるが、令呪による強制力が働いているのか、その怒りを後回しにした。

 

しかし、それでも怒りが収まらないのがアヴェンジャークラスというもの、ギャンギャンと騒ぎながらスタンが解けたジャンヌ・ダルクとカルデアの廊下を並走するのだった。

 

「これぞ、神の思し召し!」

「キャッ!」「「うわっ」」

 

唐突に振られたジャンヌ・ダルクの旗の矛先が、ジャンヌ・オルタの鼻を掠め、立ち止まる。

 

「ちょっと!何するのよ!痛いじゃない!」

「そこにいるのはわかっています。今すぐ出てきなさい。でないと次は怪我しますよ」

 

 

ジャンヌ・ダルクが持つ旗の数センチ横に何もいなかったはずの場所から茶髪たれ目で緑色の外套を羽織った男がマスターと一緒に現れた。

 

「先に行きな、マスター!ここは俺が食い止めといてやりますよ!」

「助かる、ロビン!コレが終わったら一服付き合うよ!」

「マスター、そりゃ死亡フラグってもんですぜ?」

 

軽口をたたきながらもジャンヌから目を離さないロビンとそれを背を向け走り去るマスター。この2人、信頼し合っているようである、やっていることは仲間からの逃走ではあるが。

 

「邪魔よ!どきなさい、このちょろイン!」

「ちょろイン言うな!こちとらろくすっぽモテないのに、こんなポジションになっちまってんですよ。むしろ俺が泣きたいくらいですわ」

「とりあえず死ねえ!」

「聖女にあるまじき発gン゛ン゛ッ!!」

 

憐れロビンフッド、その出番はカップ麺もできない内に光となり消えていった。食糧確保の他にも寝床確保、ゲリラ兵としても本人はカップ麺以上に役に立つのに……。

 

「さて次に行きましょう!」

 

いい笑顔で言っているが、やったことは仲間の殺害、もはや狂化の域である。これにはジャンヌ・オルタもドン引きだ。開いた口を誰にも見られないようにゆっくり閉じた。

 

 

 

ところ変わってマスター側、こちらはロビンフッドが足止めしているうちにある一室に連れ込まれ沸々と気泡が弾ける液体を飲まされていた。

 

「どうだ?今回の実験の結果は?」

「是非感想を聞かせ給え」

「………」

 

「「……ゴクリッ!」」

 

「( ・`д・´)bゲプッ」

「よっしゃあぁ!自動炭酸水生成装置の完成だ!」

「いや待て!まだ改修の余地はある!」

 

がっしりと握手して喜んだニコラ・テスラとエジソン。

 

「じゃあ次は炭酸水ができたんだから、コーラとラムネ頼むぞ」

「うむ、任されよ!」

「だから待てと言っているだろう。この凡骨が!」

「なんだとぅ!このすっとんきょう!」

 

意見が合わずにいつものようになぐり合う二人に飽きれるエレナ。しかし悲しきかな、後方支援であるアーチャーとキャスターであること、比較的近代のの英霊のために筋力値はほぼ最低ランクのEとD。どれだけ殴り合おうとも大怪我には発展せずに軽い打撲と擦り傷で収まり、それによって喧嘩が長引く負の連鎖。それを無視して炭酸水を飲むマスター。

 

「ちょっと!お止めなさいな、天才児二人!」

 

彼女の所有している本、ドジアンの書で天才(馬鹿)二人を殴る。

 

「「痛っ!」」

「まったく、天下の発明家が情くってよ!争うのなら、発明で競いなさい!」

 

見た目幼女が成人男性とライオン頭の人間(?)を叱る光景は些か以上にシュールな光景であった。まあ、中身は全員成人しているが。見た目が幼女と中身が子供二人、中身の事も知っていたとしてもやはりシュールなことには変わりはなかった。

 

「じゃあエレナママ、二人のお子さんの面倒よろしく!じゃ!」

「ママではないし、こんな子供産んだ覚えはなくってよ。ってもういないし……」

 

手を振って去っていくマスターに飽きれ、溜め息を零すエレナ。そしてその後すぐに、かの童話作家であるアンデルセンと殺生院キアラが歩いてマスターに話しかけてきた。

 

「ここにいたかマスター。肉体労働は断固反対だというのに、このオレの貴重な時間を削ってまで探させるとはさすがだなマスター?しかも、よりにもよってその内の半分以上をこのエロ尼と一緒とは。これならまだあのトカゲ娘の騒音以上に醜い歌声を聴いていた方がまだマシだ。ま、どちらも苦痛であることに変わりはないがな」

「そうですよマスタ―?私申しましたわよね?ミスタアンデルセンと同じパーティーに入れないでくれと。後生ですからと。それなのにこうも一緒にさせるとは、酷いマスターだこと」

「あー、はいはい。申し訳ない、アンデルセン。コストの都合上お前を入れるしかないんだよ。こいつの絆レベルが5になるまで、辛抱して。そしたらパーティーも一緒にしないし、何日かは休ませてあげるから」

「おお、そいつはありがたい」

「ちょっと待ってくださいマスター。私には何もないのですか?」

「ごめんなさい、キアラさん。以下同文」

「雑すぎませんか?もう少しこう、心の篭った言葉を頂きたいのですが?」

「どんなことも快楽に変えられるのならこんなもんでいいかなという一定の信頼を向けてるのですが、それじゃあ駄目ですか?」

「もう、マスターったら」

 

キアラに言い訳をしているとアンデルセンが小声で話しかけてくる。

 

「おいマスター」

「なに?」

「あまりこいつを信頼するなよ?喰われるぞ?」

 

喰われる。キアラは鬼ではないがそれ以上の化け物だ。快楽に溺れ溺れさせ、最後に飲み込まれる。それは肉体も精神も感情もそしておそらく魂までも喰われる、そういった意味で言っているのだろう。でも大丈夫だ。なんたって—――

 

「アンデルセンを見て、対応の仕方勉強するから大丈夫。だから、それが分かるまでお願い」

「チッ、仕方のない奴め。貴様も精々、己が役割を熟すがいい。行くぞキアラ!これでオレ達の仕事は終わりだ。まったくこのオレをこき使うとはあの小娘も立派なものだな。そういえばお前の国の兵士はその昔決死の覚悟で戦場に赴くときこう言ったらしいな、『靖国で会おう』と。オレが行くのはまだ先になるがな」

 

そう言って立ち去るアンデルセンと小走りで追いかけるキアラを見つめて問い返そうとする。

 

「ちょっと、それってどうい—―」

「見つけましたよマスター!」

 

疑問を口にしようとしたマスターをジャンヌ・ダルクの声によって制止する。その追いかけて来る姿を見てすぐに逃げ出すマスター。しかしジャンヌ達の姿は所々が燃えたり破けたり濡れたりと、ここまで来る間に何かあったのだろうことが窺い知れるひどい有様であった。

 

「ははっ!呪腕・百貌・静謐のハサン達によるトラップコンボ!とっくりと堪能したようだな!」

「ええ、楽しませていただきました。なので次はマスターが憎悪の地獄に焼かれてください」

「争いなんてやめなさいよ……。もう帰らせてよ……」

 

憎悪に燃える白い聖女と涙を流す黒い魔女。もうどちらが聖女か分からないが、マテリアル上は現在白い方が聖女である、当たり前ではあるが。

 

いまは遥か理想の城(ロードキャメロット)!」

 

突如聞こえた聞き慣れたその声。しかしその聞き慣れた声はいつもの優しく凛としたもではなく、多分に怒りを含んだものだった。マシュによって展開された宝具は廊下で展開されたため、本来の守るという用途ではなく、その大量質量による圧殺。そこに慈悲はなく、あるのはただ敵を止めるという決意のみである。

 

「ぐへぇ」「「きゃあ」」

 

そこからは一方的な展開であった。

動きを止められたマスターとジャンヌ達はマシュとカルデア職員によって拘束され、そのまま正座で粛々とマシュからのありがたい説教を食らうのだった。

 

ちなみにマシュに「買え」という一言により、マスターはジャンヌ・ダルクとジャンヌ・オルタ両名に水着を買うことになりました。

 

やっぱりマシュには勝てなかったよ………。


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