賢者な英霊(仮)はとにかくヤりたい(真顔)   作:おき太さんかわゆい

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次回は後編と言ったな……アレは嘘だ(またかよ)
案の定の中編! 長いんだよバーカ!(逆ギレ)

おかげで前回より内容が酷いという保証が無くなったよ
それは普通なら良いことなのでは……? というツッコミはNG
つまり今回は比較的綺麗だよ(汚くないとも言ってない)
ちなみに次回がオチです(こっちは汚い)

では中編、即ち第5特異点『イ・プルーリバス・ウナム』編第6話始まります


アレと同類扱いは勘弁して欲しい(切実)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うっ! ………………ふぅ。

 

 

 

 

 その場にいないで俯瞰しながら、立香ちゃん達でオナニーってのもなかなかに乙なもんだな。

 

 っと。のんびりオナってる場合でもなかったぜ。

 何とか俺の下半身が暴かれる事態は避けたみたいだから、安堵したのもあって股間の元栓を緩めたりしちゃったよ、失敗失敗。

 肉体の俺が未だ気絶したままな訳だが、なんかエミヤ側でまずい事態になったらしいんだよな。

 

 話を聞くに、ケルト側にもアメリカ側にも属していなかったはぐれサーヴァント達を概ね仲間として引き入れることには成功したようだった。

 しかし、アレクサンドリアにて合流を果たしたネロちゃまとエミヤ一行に立ちはだかったのが、ケルトの叔父貴もといフェルグス・マックロイ。

 どうやらカルデアにいるフェルグスとは比べ物にならない程の強さらしい。

 その証拠に、エミヤとの会話の途中もけたたましい戦闘音が鳴り響いていたのだが、唐突な激しい破砕音と共に通信が切断されたのだ。

 

 うん……これアカンやつや。

 エミヤ側には今、最低でもネロちゃまとエリちゃんがいる。

 どちらも美少女だ。

 カルデアにいるフェルグスの感じだと、彼はロリコンではないが……彼女達が生粋のロリかと問われれば答えは否。

 二人とも充分に魅力的な女性だ。

 そんな二人がいる場に、なんか異常な戦闘力を保有しているらしい色欲の化身、好色さ極振り英雄、性欲旺盛なマッチョマンなフェルグスがケルト側として現れた。

 しかも、エミヤ側は彼を含めて六騎のサーヴァントがいるにもかかわらず、いくらケルト兵を率いているとはいえたった一騎で戦況が互角どころか、圧倒しかけているらしい。

 

 つまり彼らが負けた場合、ネロちゃまとエリちゃんがフェルグスによって下のお口にカラドボルグ(意味深)される可能性がある。

 

 あの性豪ならヤりかねん!

 

 マスター達も俺の卒業候補達が犯される心配があったのか、急遽応援に向かう方針にしたみたいだしな(※違います)

 さすマスですわー、マジ有能!

 

 

 

 あ、でも気絶してる俺のことをどうするのかって話になったぞ? 誰か一人気絶中の俺を守る係として置いていくことになったっぽい……あれ? 今の俺ってもしかしなくてもお荷物?(そうだよ)

 えっ、じゃあ何? こっから悲しい押し付け合いが始まるんです? ……やだー! そんなの見たくないンゴ!

 そんなくらいなら最初から一人置いてってクレメンス!

 

 そんな俺の声は当然ながら届かない。

 しかし、謀ったかのようなタイミングでドクターロマンから声がかかった。

 

 

『……立香ちゃん、マシュ。こんな状況で悪いけど、こちらからもとても残念なお知らせがあるんだ』

 

 

 ここに来てとても残念なお知らせ、だと?

 エミヤ達が大変なことになっているこの状況でか?

 いったい何が……。

 

 

『一難去ったらまた一難どころか、非常に残念なことにアルカトラズ島にも、最初に出会った敵サーヴァント達が接近してきている反応がある! 直ぐにでもあちらの応援に向かいたいところだけど、ここに来てまたもや波乱だねっ!』

 

 

 孕んだね!?(酷い誤認) 誰が!?

 ここにいる女性陣の誰かが!?

 誰に孕まされた!? ……まさか! ドクター、テメェ!!

 

 …………って、冷静になれ。ここにドクターいないのにどうヤるんだよ。

 でもそうなると誰なんだ?

 

 俺は大前提に今股間死んでるから孕ませるとかまず無理だし、ラーマきゅんはそもそも逆に孕まされる側だから関係ない(頭ハッピーセットかな?)

 

 じゃあ、いったい誰が?

 

 ……まさか、今向かってきている敵サーヴァント、ヤリサー二人組に、俺の卒業候補の誰かが……いや人数までは述べてないってことは最悪ラーマきゅん含めて全員孕まされるという予言!?

 

 ロマン、お前いつの間に未来予知を使えるようになったんだ……!

 

 いや、それよりもエミヤ達側の女性サーヴァントが孕まされる可能性の方が高くないか!?

 何せあちらの敵はあの色情狂(ニンフォマニア)フェルグス・マック・ロイ。姓の通り真っ黒い(マックロイ)極太なドリル(意味深)で下から突き上げ一晩で七人の一般女性を骨抜きにする性豪だ。

 一度ハメられたら孕まされるのは確定に等しい。

 それどころか奴は女だけではなく男も守備範囲な為抱けてしまう。

 エミヤ側は男女合わせて六騎。

 

 それ即ち一晩で七人抱くフェルグスが相手では、全員メスにされるのは必定(偏見)

 

 

 

 つまりどちらにしても孕まされる可能性がある。

 ……なんてこった、大ピンチじゃねーか。

 

 

 

 ハッ! だがありがてぇ。

 事前に知っておけば対処もしやすい。

 奴らを必ずぶち殺す動機も生まれた。

 

 

 …………って、肉体に戻らねぇと話にならねぇぞこれ。

 対処する手段を持っててもこのままじゃ意味ねぇ!

 完全に戦わずして負けの不戦敗じゃねーか!

 

 さぁ我が魂、我が身に戻るんだよあくしろよ。

 

 

 

 

 

 

 ………………………………。

 

 

 

 

 

 

 えっ、これどうやるん?

 

 ……どうすんのこれ? ちょっとー! 俺の『中』の連中は……無理か。『外』の連中に訊きたいんだがこれどうやって戻れば良いの?

 あん? さっぱりわからん? ……いやいやここに来て冗談かましてくるのはどうよ。真面目に切羽詰まってんだって。マジ困ってんの。お分かり?

 

 

「やあ、マシュ殿。前回の約束は覚えているかな?」

 

「……あれですか……」

 

 

 とか何とか脳内で揉めてる間にヤリサー二人組来ちゃってるじゃねーか!

 揉めてる場合じゃない、つーか揉めるならおっぱい揉みたい! 雄っぱいとかいらないから、ヤリサー二人組は仲良く二人でヤっててくれ。

 あとマシュは、立ったまま失神状態の俺を咄嗟に背に庇う体勢になってくれてありがとさん。お兄さん感激やで。

 

 

「ああ、此度は本気だ。しかし戦った結果、君が敗北してなお生き残ったならば! 君を私のものにしたい。つまり、キミを私の嫁にしたい」

 

「……いえ、お断りしますというか、現状を考慮するに論外な提案な上、わたし達は仲間の応援に向かわなければならないので、正直あなたにかまっている暇はありません」

 

 

 フィンの野郎……その場の俺が気絶してることを良いことに、マシュに再度プロポーズをかましやがって!!

 

 ゆ る さ ん!!!!

 

 直接俺の手でぶっ殺す!!

 だからもったいぶってねーでさっさと戻る方法教えろや!

 

 

 

 …………えっ、マジで知らないのん?

 

 

 

 ちょっ、使えねぇってレベルじゃねーんだが!?

 なんなの馬鹿なの死ぬの?

 お前らなんのために俺と繋がってんのよ!?

 

 

「む?」

 

「どうされたのです? 王よ」

 

「暫し待て…………。なるほどなるほど。我が宝具『親指かむかむ智慧もりもり(フィンタン・フィネガス)』で、状況が読めたぞ」

 

 

 別に好きで繋がってる訳じゃない? なんか勝手に脳内回線みたいなのが繋がってたから視聴してただけ?

 

 うわ、いらねぇ! まだ『中』の奴らのが有効利用できた部類だよ! お前らただ俺を視姦しに来てるだけじゃんか!(それはない)

 

 

「ベオウルフはやられてしまっているが、どうやらあの苦戦を強いてきたサーヴァント、確か賢者のアヴェンジャーだったかな? 彼もまた今は戦えない状態にあるようだ。原因まではわからんがね」

 

「それはまことですか、王よ! だとしたら些か拍子抜けが否めませんね。私としても雪辱を果たすため、再戦を期待していたのですが」

 

 

 っ!? やべぇ、甘く見てた。

 そうだよ、あのマシュ口説きヤリサー騎士団長、フィン・マックールと言えば、叡智を与える鮭の逸話がある。

 その効果が宝具と化してたっておかしくない。

 ……にしても、親指に付いた鮭の脂をペロペロするだけで、叡智を獲得できるとか、これもうわかんねぇな。

 1回ペロリとするだけで、この場の状況を読み解くとか、どんだけDHAが豊富なんですかねぇ。

 

 

「いやこれはチャンスだ。マシュ殿を嫁にするチャンスでもあり、おまえの望みが叶うチャンスでもある」

 

「と、言うと?」

 

「なに、簡単なことだディルムッド。それはな────」

 

 

 まあ、俺は自分の親指ペロペロより、女の子の親指……というよりも耳の裏とか、耳の中とか、耳たぶとか、首筋とか、うなじとか、脇の下とか、胸の谷間とか、北半球とか、南半球とか、持ち上げた胸の裏側とか、横乳とか、B地区とか、B地区の輪部分とか、お腹とか、脇腹とか、おへそとか、鼠蹊部とか、背中とか、腰のくびれとか、膝の裏(ひかがみ)とか、お尻とか、もも肉とか、足の裏とか、指と指の間とか、肩甲骨付近とか、ペロペロしたい! ペロペロしたい!(強調せんでよし)

 なんだよ? お前らはしたくないのかよ?

 

 ん? ペロペロ箇所が一部マニアックじゃないかって?

 直球でええんか? ええのんか?

 

 

 

 

 

 

 

 んもう! 好きものなんだからぁーん(唐突なオネェ)

 

 

 

 

 

 

 

 うわ、キッツ!?

 ……グハッ! だ、だが前回の茶化しオネェの経験のおかげで精神ダメージは最小限で済んだぜ(震え声)

 んじゃ、まあ期待にお答えしてド直球ド真ん中のペロペロしたい箇所を順番に言っていくとしようか!

 

 まずはやっぱりおまん────あ? 脱線し過ぎじゃないかって? 特異点の自分の心配しなくて大丈夫かって……いやお前らが一般的なペロペロ箇所を述べろって言ったんじゃねーか(誰もそうは言ってない)

 

 なんだよー、今から色んな一般的ペロペロ箇所を改めて指南してやろうと思ってたのに……例えば肛門括約筋とか(えっ)

 

 えっ? 肛門括約筋とか菊門のペロペロは普通の範疇やろ?()

 

 

 

 何故にみんな無言……?(うわぁ)

 

 

 

 ちょちょちょ!?

 えっドン引きされてんの俺? いったいどこら辺にドン引く要素が……?(これは末期ですわ)

 …………なんか自ら墓穴掘ってる感否めない上、繋がってる連中のことなんざ正直どうでもいいんだけど、だからって俺の印象が変態一択になるのは、なんか納得いかん!(大丈夫だよ覆らないから)

 

 俺だって普通に真面目なとこあるんだぜ?

 何せこんな脳内会話……今は魂の俺だから精神会話かもしんないけど、それやってる傍らであろうと、特異点にいる俺周辺の会話もちゃんとキャッチして、話全部聞いて把握完了してるしな(無駄に有能)

 これくらいできなきゃ神は名乗れねぇよ。

 

 どうやらフィンは親指ペロペロのおかげで、俺が一時的な戦闘不可だと気付いたため、俺不在の間に開幕全力による速攻で倒す戦法で来るらしい。

 一番厄介な()がいない間にケルト兵による数の暴力含むごり押しで攻め勝ち、マシュを嫁にした後、俺が目覚めたらディルムッドが望む俺との一騎討ちをさせてあげるって寸法なようだ。

 

 …………えっ?

 

 

 

 ちょいタンマ。

 

 

 

 俺が目覚めたらディルムッドが望む俺との一騎討ちをさせてあげるって寸法?

 

 

 

 待て待て待てい。

 

 

 

 ディルムッドが望む俺との一騎討ち?

 

 

 

 えっ?

 

 

 

 

 

 

 

 あの黒子イケメンの狙いってリリィじゃなくて俺なん!?

 まさか、いやまさかとは思うが……()()じゃないよね!? ね!?

 

 

 

 

 

 

 ヤらなければヤられる、イッキうち。

 

 

 

 ()らなければ()られる、一騎討ち。

 

 

 

 ()らなければ()られる、一気射ち。←これ

 

 

 

 

 

 

 

 いやいやいやいや……そんな、そんなことがある訳ないって、アハハハハハハハハハ(滝汗)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 って、相手が『ゲイ』を司る槍を2本持ってるヤリサーの筆頭騎士って時点で可能性アリアリじゃねーかァ!!!!(ねーよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チクショウ!! 油断した! リリィ狙いに切り替えたのかと思いきや俺狙いだったとは(狙い違い)

 

 童貞捨てる前に後ろの処女散らされるのは流石に勘弁して欲しいぞマジで!

 俺が童貞捨てた後なら、別に後ろの処女くれてやっても良いけど(えっ)

 先はアカンそれはアカンよ。

 

 それに、だ。

 ヤリサーのディルムッドの奴は両手に2本と股下に1本、合計3本の槍(意味深)を持ってやがる。

 男には穴が2つしかないってのに、どんな無茶ぶりをされるかたまったもんじゃねぇ(戦慄)

 

 これは真面目に一刻も早く目覚めなければ! 俺の初体験がBL展開かつその中でもかなりアブノーマルなチンコ3本による串刺しプレイになってしまう!!(被害妄想)

 

 それ以前に、ヤリサー金ロン毛騎士団長にマシュが娶られる展開も我慢ならん!

 

 

 

 由々しき事態だ、どうにかして即刻我が肉体に戻らねば……!

 

 

 

 あっ……そういや別枠の『耳元で一人ずつ囁く連中』もいんじゃん。

 お前らは戻る手段知らないか?(……知ってはいる)

 

 なら頼む、教えてくれ。卒業候補達を守る為に!(でも面倒臭い)

 

 そこを何とか!(お前ら()()()()のお願いだぞ教えてやれよ)

 

 

「唐突だがマシュ殿。我が血脈の神祖たる戦神ヌアザが司るものが何か知っているかだろうか?」

 

「ッ戦闘の最中に何を……」

 

「ここは島だ。だからこの島の周りにはたくさんあるんだよ()()が。無論、ヌアザの血を引く私も使える。ましてや生前の私はそのヌアザを打ち負かす程だ。聖杯の力を用いて呼び出された私が()()を支配下に置くことなど造作もない」

 

 

 ん? さらっと脳内も現実もなんだって?(ならお前がやれよ)

 

 

『ま、まずいぞ立香ちゃん! マシュ! 島の周りってことは確定だ。間違いなく「水」の力を使ってくるぞ!』

 

「水……ってことは島の周囲の海水を支配下に……!?」

 

「如何にも。さて、カルデアのマスター。零落せし神霊アレーンさえ屠る我が一撃。……それをほぼ無限に撃ち出せる準備をしてきたのだが、君はどう凌ぐ?」

 

「ッ!! マシュ、宝具を展開して!!」

 

「は、はい! 真名、偽装登録」

 

 

 ゲッ……オイ待て、それってまさか(こちとら日課で忙しいんだ)

 

 

「堕ちたる神霊をも屠る魔の一撃……その身で味わえ! 『無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)』!!」

 

仮想宝具疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!!」

 

「はっはっは、流石に防ぐか! だがもう一発! 無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)!!」

 

「ぐっ……!」

 

 

 ちょっ、フィン。島の海水を利用してバカスカ宝具ぶっ放してんじゃねーよ!(どうせ日課っていつものオナニーだろ)

 

 

無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)! またまた無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)! それもう一つ無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)!」

 

 

 海水を補充して宝具を連射とか反則じゃねーのか!? これだからアーツ勢は……! 早漏かこんにゃろう! 射精の如く乱発しやがって!(おまいう)

 頼りのラーマはディルムッドとケルト兵の相手してて、それどころじゃなさそうだし!(これはアイツに任せよう)

 

 

「くっ! このままじゃ……突破されます!」

 

「マシュ……! お願い耐えて! リリィ、婦長。どうにか回り込んでフィンを止められないかな!?」

 

「やりたいです、けど!」

 

「ケルトの戦士の数が多すぎますね」

 

 

 やべぇよやべぇよ……急がないと二重の意味でみんながヤられちまう! クソォォおおおお! 戻れよ俺! さっさと肉体に戻るんだよォ!(……新参者出番だぜ)

 

 ちくしょう! なんで脱魂した際と同じような方法で戻れねーんだ!?(先輩方ここでパス!?)

 

 あん? この声……辛辣な意見ばっか述べる奴じゃねーか(こっちはマジで忙しいんだが)

 

 だけどこの際誰でも良い、俺の記憶は抜け穴だらけだから、マシュやリリィの貞操を守る為に力を貸してくれ!!(……はぁ)

 

 

 《まずないと思うが、万が一ってこともあるから今回は助言をくれてやる》

 

 

 これはいつぞやの、というかアルカトラズ島に来る前にもあったバイノーラル式。てか助けてくれんのか! 恩に着るぜ!

 

 

 《恩を仇で返されそうなんだよなぁ……。まあ、マシュお……マシュさんが傷物にされるのは私も望むところではないし、仕方ない》

 

 

 早く教えてくれ! はよはよ! もたもたしてるんじゃないぞ!

 

 

 《喚くな。今回は脱魂した状態から戻ってきた時と、決定的に違うことがある。自分の意思で抜け出たか抜け出てないかの違いだ。だから脱魂時と同じ方法じゃ戻れない》

 

 

 そういうことだったのか。そりゃ何度やっても無駄な訳だぜ。

 

 

 《それに本来なら時間経過で痛みが退けば強制的に戻されるはずなんだ。今回アンタがやろうとしてるのは、それを無視する行為だ。つまり正規の手段じゃない。……それでもやる気か?》

 

 

 それでも俺は肉体に戻らなきゃならない。

 何となくわかるんだ。ただ童貞を捨てれば良いって訳じゃないって。ここでマシュ達を見捨てて、もしこの先の未来で童貞を捨てられたとしても、俺は後悔する。

 記憶はまだ抜け落ちたままだが、そこら辺は俺の魂に刻まれてるのかもしれねぇな。

 それに俺が勝手に卒業候補って思ってるだけだけど、俺が卒業候補って決めた以上、勝手ながら守り抜く責任が生じるもんだと思ってもいるんだ。

 俺のエゴなのは百も承知。けどな、好きな奴らは守りたいってのは人のさがだろ?

 

 

 《……なんというかただの変態って訳じゃないのが逆に腹立つ》

 

 

 なんでだよっ!? 今回別にそこまで変なこと言ってないでしょ!?

 

 

 《わかったわかった。教えるよアンタなら造作もないことだろうしな》

 

 

 本当か!? よし早速頼む! もうマシュ達も限界だろうしな!

 

 

 《まず根本的に戻るって考え方自体が間違ってるんだ。何せ今回はアンタの意思ではないにしろ、緊急時の避難に近い。つまりただ戻るというよりは、自ら飛び込むイメージが必要なんだ。アンタがわかりやすい例としてあげるなら……そうだな。魂であるアンタがパイロットで、肉体のアンタは暴走の可能性があるロボットって感じか。あとはコックピットに乗り込むイメージ。それで戻れるはずだ》

 

 

 おう、理屈は何となくわかったが……それだと俺にはイメージし辛いな。実際、肉体に飛び込んで一つになるイメージなら何でも良いんだよな?

 

 

 《ああ、戻るってイメージじゃなくて自ら危険を承知で飛び込むイメージであれば何でも────》

 

 

 オーケー! イメージイメージ……ならば俺は精子だ(なんでやねん)

 肉体は卵子。飛び込みは受精をイメージすることにする!(うわぁ)

 

 

『────…………もうそれで良いよ……回線早く切りたいんですけど先輩方ぁ。今裏工作中でして、脳内だけとはいえこんな奴に付き合ってるのは嫌です』

 

 

 イメージしろ!(よくやったよ最年少)

 イメージするものは常に最強の精子だ(ゆっくり休めろ頭を)

 俺は精子、俺は精子、俺は精子っ!!(にしてもコイツ酷いな)

 体は卵子、体は卵子、体は卵子っ!!(どうしてその発想に至ったんだ)

 

 

 《本当に何故そんな発想に……そういえば頂点がこんな奴だと我々のイメージの基準が童帝神(これ)ってことになるんじゃ……》

 

 

 魂と肉体が一つになるイメージ、まさに受精こそ最適解だな(((やめろ新人、その先は地獄だぞ)))

 

 もう一つ思い付いてたのは魂の俺が男、肉体の俺が女、飛び込むイメージが性交ってのも考えたんだが、流石にイメージとはいえ、本当の合体(意味深)は現実でヤりたいから、取り止めたけどこれなら上手く行きそうだぞ(これと同類とか心外だぞマジで)

 

 あとはイメージを確立するだけだ(我々=変態の図式は勘弁)

 

 魂は精子、体は卵子、合体イメージは受精(でもトップがこれでお察し)

 

 …………脳内補完完了!!(諦めようぜ……)

 

 

 《体に戻った時、痛みは残ってる可能性が高いから気を付けろよ……って集中してて聞いちゃいないか。先輩方の声も聞こえてなかったっぽいし。ま、アンタなら大丈夫さ。それじゃあ私はこれで》

 

 

 行くぜ! 受精ッッッ!!!!!!(盛大に無視)

 

 

 

 

 

 魂の俺は肉体目掛けて、飛び込んだ。

 待っててくれよみんな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ズキッ。

 

 

 

 直後、股下に痛みが走る。

 耐えられない程の痛みじゃない。

 

 

 ──役目を全うせよ。

 

 

 声が聞こえた、否。

 正確には音はない。思念か。

 

 

 ──貴様は何者だ。

 

 

 俺? 俺は童貞の頂点、童 帝 神(ザ・ヴァージニティ)だ。

 

 

 ──違う。

 

 

 ……何が?

 

 

 ──()()()()()()貴様は何者だ。

 

 

 は? ただの人間……。

 

 

 ──違う。

 

 

 即刻否定かよ……。

 

 

 ──己の役目を全うせよ。

 

 

 だから何を……!

 

 

 ──生来より定められた役目を全うせよ。

 

 

 俺は……()()は! 

 

 

 ──役目の果てに、その命投げ出せ。

 

 

 ……────ならない、絶対に。

 

 

 

 

 ズキッ。

 

 

 

 

 

 

 ()()の意識は何かに塗り潰され、闇へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [管理者の魂が不正侵入に成功][深刻なエラーが発生しました][残存命令に従い封印再構築を実行中でしたが失敗][封印に重大な破損が見られます][再度の封印は現状において続行不可能です][残存命令に従い失われた保存情報のサルベージと修復作業は継続して実行][封印の順次崩壊に伴い、閲覧不可だった保存情報が随時解放されます。記憶逆流による意識混濁にご注意下さい][体に魂を装填……認証完了][エラーを無視して再起動を開始します]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マシュは限界だった。

 

 

 

 

 

 いくら宝具を解放してる上、デミ・サーヴァント特有の『憑依継承(サクスィード・ファンタズム)』によって獲得している、魔力をそのまま防御力に変換する『魔力防御』も同時展開。

 なおかつスキル『今は脆き雪花の壁』も併用し、全体の守りを固めに固め、自身は含まれないが防御限界値以上のダメージ削減を発揮する『自陣防御』も活用するという、現状の彼女が可能な究極防御を用いても、限界は来る。

 

 それほどまでにフィン・マックールの猛攻を耐え抜くのは厳しい状況だった。

 何せ島の周囲にある海水を補填して宝具を連射してきているのだ。

 そう何発も何発も必殺に等しい攻撃宝具を叩き込まれては、これだけ防御を固めても、時機にぶち抜かれる。

 大量のケルト兵も押し寄せて来ているため、この場から攻めに転じフィンに接近戦を挑むのも、ましてや離脱することも叶わない。

 

 ならばと、隙を見て何回か遠距離から婦長がフィンを銃撃する。

 しかし、たいていフィンが持つ自動攻撃機能付きの魔法の槍が弾ききるか、ダメージを多少与えられたとしても、両手で掬えばたちまち回復効果のある水となる宝具『この手で掬う命たちよ(ウシュク・ベーハー)』で、あらかじめ大量に掬っておいた水を水袋に入れているために、直ぐ回復されるという酷い戦況だった。

 

 しかもその水を部下にも別の水袋に入れて渡しておくという用意周到っぷりにより、一騎当千のラーマを相手にディルムッドは全快状態。

 にもかかわらず、2本の槍のうちの1本である黄の短槍、必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)の効果によって、ラーマには治癒不能の傷を負わせるという手段。

 さらにラーマが羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)を放とうとすると、もう1本の槍である紅の長槍、破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)を使って剣の魔力的効果を打ち消しに来るというえげつない戦法により、優位をキープしながら戦ってくるという有り様だ。

 

 おかげでフィンを止める一手が確保できず、立て続けの宝具解放をマシュは甘んじて受け止めるしかなくなっていた。

 マシュの背後にはマスターの藤丸立香と、未だ立ったまま失神している賢者がいる。

 よって守りに専念するほか道がないのだ。

 

 だが防御を徹底しても、状況は芳しいとはとても言えなかった。

 このままでは破られるのも時間の問題だ。

 

 

「マシュ殿、降参して私の嫁になるのであれば、仲間の命は頂戴しないが?」

 

「ッ……何度でも返答しますよ。お断りです!」

 

「はっはっは! それでこそ我が嫁に相応しい反応だ! その気丈な振る舞い、実に好みだ。では君の態度に私も応えよう。おかわりだ無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)!」

 

 

 またもや槍より放たれる渦巻く水が収束した一撃。

 それは一本の線の如く。極圧縮された水の一閃。ただの水と侮るなかれ。堕ちたとはいえ腐っても神霊。それを容易く滅ぼすことを可能とする宝具。

 マシュがいくら防御に優れしサーヴァント、シールダーであってもそんな宝具を何発も撃たれては、どうしようもない。

 ただ守るだけではいずれ敗れる。

 

 

「逃げて下さいマスター……これ以上は防ぎ切る自信がありません」

 

「できないよ。ならなおのこと、私が近くにいなきゃ全力を発揮できないでしょ!」

 

 

 マスターとサーヴァントは近くにいればいるほど、霊的繋がりが強固となり、サーヴァントは全力を出せるようになる。

 だからこそマスターが近くにいた方が良いのは本当だ。

 しかし、状況が状況だった。

 

 

「確かにそうです。ですが、このままでは全滅です。わたしはマスターをサーヴァントとして守り抜く義務があります」

 

「マシュ……」

 

「それにマスターだからではなく、先輩をわたしが守りたいんです。だからこの場を離れて態勢を立て直して下さい。マスターさえ生き残れば、まだ負けではありません」

 

「で、でも! マシュの後ろにはわたしだけじゃなくて、気絶してる賢者さんだって……!」

 

 

 マシュは顔を半分程後ろに振り向き、チラッと片目で背後の賢者のアヴェンジャーに視線をやった。

 未だ直立不動のまま失神している。

 

 

「それは杞憂ですよ先輩。わたしのスキルの一つを使えば動けない賢者さんを守れます。……わたしが盾を構えたまま特攻をかけるので、その間にリリィさんとナイチンゲールさんは、賢者さんを運んで下さい」

 

「マシュさん!? 何を言ってるんですか? 特攻をかけるつもりならわたしがやります! わたしはいなくてもどうにでもなりますけど、マシュさんがいなくなるのは駄目です。誰がマスターを守るんですか!」

 

 

 マシュはスキル『時に煙る白亜の壁』を賢者に張るつもりだった。

 だから万が一マシュが展開する防御をフィンの宝具が貫いても、賢者だけは無傷なはずだ。

 その上でみんながこの場から離脱する時間を稼ぐために特攻をかけるつもりだった。

 直ぐ様反論をしたのはリリィ。

 今の彼女は自信を失っている、だからこそ自己犠牲に躊躇がない。

 とてつもなく危うい思考回路に至っているのだが、幸か不幸かリリィ本人ですら気付いていなかった。

 ナイチンゲールだけは少し怪しんでいる様子だったが、この場では指摘をしなかった。

 それが戦場でパニックを起こす可能性を見越してなのか、ただの気まぐれなのか、はたまた適切な診断ができていないからなのか。

 

 だが、そういう裏事情を全て理解していなくとも、こういう局面でのマスターは選択を()()()()間違えない。

 

 

「そういう問題じゃないよ二人とも! それに特攻って何? マシュやリリィを犠牲にして生き残るなんて真っ平ごめんだよ。そんなことするくらいなら私は、マシュやリリィと一緒に最後まで足掻くよ」

 

「ですがこのままじゃ……!」

 

「みんなやられてしまいます、だからマスターだけでも!」

 

 

 確かに現状を鑑みれば、人類最後のマスターである藤丸立香だけでも生き残るのが最適解。

 サーヴァントはたとえ霊核を砕かれ消滅したとしても、再び召喚を可能とする。

 特にカルデア式の召喚方法なら、聖晶石(触媒)さえあればいくらでも召喚できる。

 であれば生粋の『魔術師』が人類最後のマスターだった場合、今回のような状況であれば、迷わずサーヴァントを使い捨てる策を取るのだろう。

 だが、奇しくも人類最後のマスターは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の『一般人』がなった。

 

 否、きっとそれは運命だったのだろう。

 人類史を救うためには、数多の英霊と縁を結びかつ慕われるマスターが適任だ。

 その点で言えば頭の固い魔術師よりも、藤丸立香のような何処にでもいる一般人がマスターの方が良いに決まっていた。

 しかし、適性がある一般人なら誰でもいい訳では決してない。

 

 善を知りながら悪を成し、善にありながら悪を許し、悪に苛まれようとも善を貫こうとする。

 恐怖心で挫けそうになろうとも、いざとなれば立ち直り、前に進み絶望に抗うだけの心の強さ。

 敵として現れたサーヴァントの『非道な行為そのもの』に怒ることはあっても、仲間になった同一存在のサーヴァント自体は快く受け入れる度量の深さ。

 全てのサーヴァントを憎まず慈しみ、個々人と向き合うその姿勢、その在り方。

 

 

 それこそが藤丸立香が人類最後のマスターたる証。

 

 

 故に、彼女はこう答える。

 

 

「それでも、だよ」

 

 

 つい先程まで失意にまみれていたとはとても思えない、凛とした佇まい。

 静かな音質なのに輪郭がはっきりとした耳に残る声。

 さらに、強い意志を宿した瞳まで向けてくるマスターに、二人はたじろいだ。

 

 

「世界を救うなんて役目以前に、敵の大将が相手って訳でもないのに、身近な仲間を犠牲にしなきゃ乗り超えられないようじゃ、この先の戦いを生き残れるとはとても思えないよ」

 

「それは……」

 

「……確かに」

 

「だから私はみんなで勝つことを諦めない。……ずっと足りない頭で必死に考えてたんだ。この現状を打破する手だてを」

 

 

 立香は胸の中心に己の手を当て目を閉じ、思いっきり息を吐き、そして、と続けた。

 

 

「魔術礼装を変えてる余裕も無ければ、長々と作戦を練ってる余裕もない。だから思い付いた一手にかけようと思う。どちらにしろ玉砕する気だったのなら、私にみんなの命預けてくれる?」

 

 

 真剣な眼差しで述べる彼女に、未だフィンの宝具を受け止めながら後ろに半分振り向いていたマシュと、迫り来るケルト兵を蹴散らしながらもマスターから視線を外していなかったリリィ。

 そして、まさに害虫駆除の如く無機質な瞳、機械的な動作でケルト兵を屠っていたナイチンゲールも話は聞いていた。

 ただし、ラーマは少し離れた場所でディルムッドとしのぎを削り合いながら、横から割り込むようにして襲いかかるケルト兵を薙ぎ倒していたので彼には届いてはいない。

 ……賢者? 彼も気絶してるので当然反応はない。

 

 つまり聞いていたのは女性サーヴァント3人だけだ。

 ループする無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)なBGMをバックに、彼女達は顔を見合わせ頷く。

 

 

「「「マスターの御心のままに」」」

 

「……ありがと、みんな」

 

 

 サーヴァント達の同意を得た藤丸立香は手短に策を説明し、この状況を打破する為に指揮を取る。

 

 しかし、策を聞いてリリィは不安が拭えないでいた。

 マスターのオーダーをやり遂げたい気持ちはある。

 自分の役割に不満がある訳じゃない。

 ただ自信が喪失していたのだ。

 そんなリリィの様子を間近で見て、流石にマスターも気付いた。

 

 

「リリィ、あまり気負わないで」

 

「わ、わたしは別に」

 

「いや、聖剣持ってる手元が震えてるし……やっぱり賢者さんのこと?」

 

「そ、れは……」

 

「大丈夫だよ賢者さんなら。賢者さんはそんなに柔じゃないって。それにあれはリリィのミスじゃない。事故だよ」

 

「でも……!」

 

 リリィはベオウルフをマスター達やぶっ飛ばされた賢者の元へ行かせない為に宝具を解放した。

 賢者はベオウルフの猛攻からマシュとリリィを守るために立ち上がり戦いに割り込んだ。

 あれはどちらも互いのことを思っての行動だった。

 だから事故というのはあながち間違いではない。

 

 

「賢者さんのことを思うなら、今は私を信じて。リリィは負い目があって自分を責めてるのかもしれない。でも今は私のことを信じて戦って欲しい。私なんかじゃ信じるに値しないかもしれないけど……」

 

「い、いえ! 申し訳ありません。今は悩むのをやめます。この局面を切り抜けなければ、賢者さんに謝るどころの話じゃないですもんね。それにわたしではなく、マスターのことを信じることならできます! 行きましょう!」

 

「う、うん。お願いするねリリィ」

 

 

 些か彼女の発言に引っ掛かりを覚えたマスターだったが、ここはいったん飲み込む。

 作戦と言うには少々お粗末な即興の策の実行を開始した。

 直後のことだった。

 

 

親指かむかむ智慧もりもり(フィンタン・フィネガス)

 

 

 その場におけるあらゆる情報や状況等を整理して、『最善の答え』を導き出す宝具の行使。

 フィンは水の一撃を連射しながらも、魔術を用いて彼女達の話に聞き耳を立てていたのだ。

 さらには彼は何気にスキル・千里眼を有している、未来予知や透視レベルではないにしろ、然れどBランク。

 遠方の標的の捕捉、動体視力の向上など、視力の良さは折り紙付きだ。彼女達の様子を視認し把握することだってお手のもの。

 そうやって集めた情報を元にすることで、知恵の鮭の脂の逸話による()の宝具の効力を存分に発揮できる。

 故に彼女達の策を崩す手筈は親指を舐めた時点で整ってしまったのだ。

 

 

「マシュ殿の健気な抵抗の姿勢に、我が愛を込めた宝具をただただ連発していたのだが……勝負を決しに来るようならば遊びは抜きにしよう」

 

 

 フィン・マックールは()()()()()()()()()()()()を全て見抜いた。

 まずマシュの盾の内側から飛び出したリリィによる、初っぱなから放たれし不意討ち気味な勝利すべき黄金の剣(カリバーン)を、危なげなく無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)で相殺。

 その間に逆側から飛び出したナイチンゲールがフィン目掛けて爆走。襲い来るケルト兵を全て牽き潰しながら迫るその様は、看護士とはとても思えない。

 マシュのスキル『時に煙る白亜の壁』をナイチンゲールに付与したため、今の彼女は無敵なのだ。

 そして、一直線にフィンの元までたどり着くと、そのまま肉薄する。

 

 

「遠慮なく終わらせます!」

 

「はっはっは、冗談はよしこさんだ」

 

 

 だがこれも親指による智慧で把握していたフィンは、スキル『女難の美』を用いて回避し、無敵が解けた瞬間を狙って、自動攻撃機能付きの魔法の槍が彼女を的確に叩く。

 

 

「軽傷!」

 

「回復役は後々残しておくと面倒なのでな、血塗れの聖女(バーサーカー)殿にはここで退場────」

 

 

 この後の手は、マシュが背後にマスターを庇いながら盾を持って突撃してくるはずだが、ナイチンゲールの攻撃を最初から見切っていたので手間取ることはなかった。

 即ちマシュ達が迫るまでだいぶ余裕があったのだ。

 だからフィンは、ここでナイチンゲールを始末する方針に切り替えた。

 それが最善だとあの『智慧』は告げた。

 

 ただし『知識』ではなく『智慧』であるため、知りようのないことを知ることはできない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()を整理して、『最善の答え』を導く。

 

 

 

 

 

 そこに穴があった。

 

 

 

 

 

「ラーマ! 『緊急回避』! 令呪をもって命ずる! 宝具を解放しその場所からフィン・マックールを狙い撃て!」

 

「ッ! しまった! 我が槍を避けられたか!」

 

「!? しょ、承知した! 羅刹王すら屈した不滅の刃、その身で受けてみよ!」

 

「『瞬間強化』! やっちゃえラーマ!」

 

「喰らえ! 『羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)』!!」

 

 

 

 

 

 そう、藤丸立香は誰にも口にはせず、心にのみ秘めていた策を最初から用意していた。

 それは何故か。

 既にカルデアには()()()()()フィン・マックールが召喚されていた。

 それだけの話。

 単純に知っていたのだ。

 保有する宝具も、その効果も。

 であれば、対策をするのはマスターとして当然の帰結。

 情報を知られさえしなければ、『最善の答え』とやらは出せはしない。

 

 

 

「なんと!? そう来るか……!」

 

「王よ! どうかお逃げ下さい!」

 

 

 

 

 読み誤った。

 ただし()()()

 

 

 

 

 智慧を得ていなくとも、これでもフィオナ騎士団団長。

 戦士としての判断力が鈍った訳ではない。

 コサラの王が放ちしマスターが強化をも施した宝具。

 あれは受け止めるのも相殺するのも無謀だと、フィンには瞬時に認識できていた。

 そして、並大抵の手段では避けることもできない、と。

 よりにもよって、回避の可能性があったスキル『女難の美』は使ったばかり。

 連続行使は難しかった。

 この場から離脱するにも、吹き飛ばしたナイチンゲールが銃を乱射してきていて、その対処に若干時間をロス。

 飛来し着弾するまで残り数秒。

 普通の方法では避けられない。

 

 だからフィンは真上に軽く跳び、宝具を()()()()()()放出した。

 

 

「仕方あるまい! とう! 無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)!」

 

「なっ……! 地上に向けて!?」

 

「水の勢いで飛んだ!? って、婦長が炸裂した水の余波に巻き込まれた……しかもラーマの宝具までかわされた!」

 

 

 無茶な方法で上空に舞い上がったフィンは当然無傷ではなかった。だが、ラーマの宝具を直撃するのに比べれば大した傷ではない。後で水袋の水を用いれば充分に回復が可能だ。

 だから彼は傷を後回しにした。

 支配下においた水を操り、自身の後方に噴射して推進力を、槍先に攻防用として渦巻く水の奔流を用意。

 そのまま本陣、謂わばマスターの元へ凄まじい勢いで突っ込んできたのである。

 

 

「いやはや肝を冷やしたが、いざ! 華麗に! 舞うが如く!」

 

「甘かった……!」

 

「マスター……ぐっ」

 

 

 マシュは限界だった。

 藤丸立香を守ろうとしたのだが、膝を地に着いてしまったのだ。

 体力的にも精神的にも、絶え間無く飛んでくる宝具を受け止めていたおかげで消耗していた。

 マスターの目前まで迫るフィンを盾で守るのはもう不可能。

 そこで前に出たのがリリィだった。

 

 

「この聖剣(つるぎ)は愛する人々を守るために輝くもの……やらせはしません! はぁっ!」

 

「君も素晴らしい少女剣士だ。しかし此度の私は本気だ。相手が悪かったと諦めてくれたまえ! フッ!」

 

 

 宙での接触にもかかわらず、水の勢いに任せて魔法の槍の自動攻撃機能を発揮させ、空中で水飛沫を伴う演舞のようなアクロバティックな槍捌きが炸裂し、リリィは弾き飛ばされる。

 

 

「うっ! 私は……まだ……」

 

「すまないが仕舞いだ。さあ、栄光と勝利の時!」

 

 

 至近距離からの宝具解放。

 どうやら渦巻く水の奔流をもってマシュとリリィ、そしてマスターの3人をまとめて潰すつもりのようだ。

 ラーマは再びディルムッドとケルト兵の相手で手一杯。

 ナイチンゲールは消滅はしていないが、駆け付けるには時間が足りない。

 

 もうこの一瞬において勝ち目は無かった。

 

 

無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)!!」

 

 

 無慈悲にも放たれし水の一閃が迫る。

 絶望的な光景に3人は思わず目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陰鬱な神気(メランコリー・オーラ)、展開」

 

 

 あるはずのない幻聴。

 直後に轟く衝撃音。

 しかし、3人に痛みはない。

 

 

「む! 君は……!?」

 

「────からの、鬱憤の弾丸(グラッジ・ブレット)!」

 

「ぐわっ!」

 

 

 次の瞬間、弾幕の如くけたたましい射出音が連続する。

 だが3人に何かが起きた訳でもない。

 二度目の声、そして今傷を一切負っていないという事実。

 3人は万感の思いを胸に目を見開く。

 

 

 

 

 

 

 視界の先にあったのは白く濁ったローブに包まれた、安心感を与えてくれる頼れる背中。

 彼は半分だけ振り向き、一言告げた。

 

 

 

 

 

「……待たせたな」

 

 

「「「賢者さん……!!」」」

 

 

 

 

 

 今ここに、この場での最強戦力が復活を遂げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後の登場……賢者の本性を知らなければなぁ(白目)

あとフィンに関しては無敗の紫靫草(マク・ア・ルイン)のバーゲンセール状態……だって公開されてる攻撃宝具これしかないんだもん
どうかとも思ったけど、本編よりも強い状態で描写するには作者の実力ではこれが限界だったんや、お許しくだせぇ


では前回の後書きで述べた通り更新が遅いことについて

まず、すまない。リアルが面倒で下ネタにかまけてる時間があまり取れず、急に作者が一時的に賢者モードになってしまったんだ……更新が遅くなって本当にすまない

言い訳させてもらうと、原作関連に逐一目を通しながら執筆するスタイルなので、無駄に時間がかかる……なるべくキャラ崩壊とかしたくないから仕方ないけども
リアル事情が無きゃそれでも書き続けられるんだが……如何せん疎かにできないのが現状。現実は辛いよ、心が荒む荒む
頼むからまとまった時間をくれ(切望)
あと疲労を無かったことにしてくれ(無茶な願い)

そして文章力下さい(それは努力しろよ)

リアルが忙しくてもほぼ毎日とか、毎週投稿してる作者さんたちを改めて尊敬しますわ……まあ私が要領悪いだけかもしれませんが(苦笑)
リアルが忙しかろうと月1回は更新できるように頑張りたいです(できるとは言ってない)


あ、次回の後編は少々お待ちを


追伸
改めて全話読み返して思ったんだが……この作品の主人公の賢者って奴、頭おかしくね?(リアル賢者モードの弊害)

あと、どうでも良いけど作者はおへそが好きです(唐突な告白)

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