Fate/Grand Order  「炎の記憶」   作:乾燥わさび

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序章2

 メビウスによると、司令部の惨状を見た俺はそのまま倒れてしまっていたらしい。脳は痺れ、手足は震えている。あんな景色、地獄だ。

 目が覚めると俺はベッドに寝かされていた。とても簡易的なタイプのものだったせいか肩や腰が硬くなっている。

 

「さて、少しは落ち着いたかしら?紅茶くらいなら入れるわよ。さすがにあの惨状を見て堪えたのかしら。」

「え、どういう……あ!あぁぁぁ!!な、な、なんだあれは!あんなもの、、なんで、、俺をどうしようと、いうんだよ!」

 

 惨状という言葉を聞き思い出す。あの光景を脳が強制的に呼び起こし胃が暴れだしそうになる。うまく言葉を紡げない。喉だけではこの感情を満足に表せることができない。ひとしきり叫ぶと糸が切れたように力が抜けてしまう。

 

「まあ、無理もないでしょう。それでこそ人間というものよ。残虐、非道徳的、薄情、冷酷。そんな言葉を人は嫌うわ。言ったはずよ、誰にも役割がある。動物の本能として同種で殺しあうことはありえない。それも言ってみれば役割よ。まぁ聞いてないかしら。」

 

 なんだ、よくわからない。彼女の音は耳をすり抜けていく。一方、口から洩れる音はまるで無機物のように冷たい。

 

「俺をどうしたいんだ。お前は、なんなんだ。それにほかに人はいないのか。」

「そうね、聞きたいことだらけでしょう。でもごめんなさい、時間がないの。いくら彼でもそう長くは持たないわ。」

 

 あくまで冷静、まるで自分とは無関係。彼女の言葉には意志が感じられなかった。事務的、という言葉がぴったりだろう。

 と、考えていると視界が暗くなる。

 

「ほら、早く着替えてくれる?あなたにすべてが託されてる。遠坂ロア。」

 

 視界を遮ったのはどうやら衣服のようだ。白い制服?胸と腰にベルトがあって…。直感がこのデザインをダサいと訴えている。まぁ、とりあえず着てみるけど…。

 

「似合ってるじゃない。」

「嘘だろ。」

「いいえ、似合ってるわよ。その生気のない顔にぴったり。まるで囚人服ね。」

「それはどうもありがとう、まったくうれしくないね。」

 

 どこまでも人を苛つかせるのが得意なんだろうこいつは。真顔で言ってくるのがなおさら質が悪い。面白がってるのか、それとも真面目に言ってるつもりか。

 

「それだけまともに喋ることができるのなら、少しは落ち着いてきたのかしら?あなたが可能ならば少しずつ説明するわ。」

「ああ、だいぶ吐き気は収まったから大丈夫だ。とりあえずなんだけど、カルデアってなんだ?ここはどんな施設なんだ?」

「そうね、そこからよね。よく聞いていてちょうだい。」

 

 

 

 

 

 

「理解が早くて助かるわ。さすがカルデアが選んだ人材ね。」

「勝手に選んでおいて責任を押し付けないでくれ。簡単に言うと、ここは人類の未来が焼却されるのを防ぐ機関の施設でそのためにたくさんのマスターと呼ばれるエージェントを招集したが、一人足りなくなり急遽俺が連れて来られたと。」

「まぁ、そういった感じね。君がカルデアにたどり着くまでの間に事故が発生。マスターは全滅、生き残った職員は十数人といったところよ。」

 

 遠坂ロア、特質した点はないどこにでもいる少年。私の思うように行動し、死を見れば怒りを吠える。非常に扱いやすく都合がいい。私の目的のためにも彼を死なせてはならない。

 

「ということは、俺は唯一のマスターというわけか…。俺一人に全人類を押し付けるなんて、ひどい役割を受け持ったもんだな。といってもなんで事故なんか…。」

 

 今回の事故は間違いなく意図的に仕組まれたものだろう。そもそも一人足りないというのがおかしかった。入館する際に各マスターの情報は記録されていて、その時点だと予定の人数通りだったはずだ。

 

「全マスターが揃ったタイミングで偶然事故が起こるのは考えにくいわ。だけど、それをあなたが考える必要はない。昔から感情の起伏がないと言われるけど、本当に今は余裕がないの。あなたにはすぐに特異点に向かってもらうわ。」

「特異点?どこなんだそれ。」

「酷でしょうけど、また司令部に向かうわよ。そこから飛んでもらうわ。」

「……あそこか。想像するのさえ嫌なんだが、行くしかないんだろ?」

「当たり前よ、何のためにここにいると思ってるの。救ってもらうわよ、世界を。」

「そのために最強の剣とか無敵な鎧とかの支給はあるんだよな?」

「あるわけないじゃない、その身一つでなんとかしてちょうだい。さ、行くわよ。」

「ちょ、待って、冗談でしょ。待ってって。」

 

 どこで見落としていたのだろう。マスターの補充の際にロンドンで確認されたとてつもない魔力量を貯蔵する少年。カルデアで当初集めたマスターの誰よりも飛び抜けて多い魔力を持つこの少年を何故最初から招集しなかったのか。

 

 

 




だいぶ短いですが、きりがいいのでここまでです。
心情を表すのは難しいな、と悩む日々です…。
ゆっくり投稿していきますがぜひお付き合いください。

メインキャラクターは原作とがらりと帰るつもりですし、オリジナルキャラも多数登場します。初めて見るキャラクター、気に入っていただけるよう頑張りますのでどうぞよろしくお願いします<(_ _)>
次話でやっとレイシフトできそうです。
どんなサーヴァントが活躍するのかお楽しみに。

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